【南相馬避難勧奨指定から1年】仮置き場有無で除染に差 地域分断の懸念もより転載
屋根、雨どいの除染に当たる作業員=21日、南相馬市原町区片倉
東京電力福島第一原発事故に伴い、南相馬市の四地区で計57地点・59世帯が最初に特定避難勧奨地点に指定されてから21日で1年になった。順次追加され、指定箇所が7地区計142地点・153世帯と県内最多に達する中、仮置き場の確保の有無で除染作業の進度に地域差が出始めている。除染の見通しが立たず、避難の長期化が想定される地域では、賠償問題も絡み地域コミュニティーの分断が進むことへの懸念も広がる。
■帰還への期待
旧警戒区域の市内小高区に隣接する原町区片倉地区は2地点・2世帯が特定避難勧奨地点に指定され、周辺住民を含む7世帯22人が市内外で避難生活を送っている。住民の理解を得て仮置き場の造成が進み、並行して今月、他地区に先駆けて住宅などの除染が始まった。
21日には片倉字岩下の平田勲さん(67)宅の除染作業が公開された。空間放射線量は地上1メートルで毎時2マイクロシーベルト。委託業者が31日まで高圧放水による屋根、雨どいなどの除染作業を続ける。平田さん宅は特定避難勧奨地点にはなっていないが、放射線の影響を心配して夫婦で茨城県内に避難している。「線量が下がれば自宅に戻りたい」と除染の効果に期待を寄せる。
行政区長の渡部範夫さん(62)は「除染が住民の帰還につながることを願う」と前を向く。
■3地区未確保
市内の指定状況は【地図】の通り。原町区片倉、押釜、高倉、鹿島区橲原の四地区は地区内に1カ所ずつ仮置き場の設置が決まり、8月末から1日約200人の作業員が生活圏の本格的な面的除染を始める予定だ。
しかし、馬場、大谷、大原の3地区は仮置き場の設置場所が決まらず、除染作業に取り掛かれない事態に直面する。このうち、大原地区は全約120世帯のうち、市内最多の49地点・計51世帯が特定避難勧奨地点に指定されている。実際の避難数は周辺住民を含め約70世帯に上る。行政区は地区内6カ所を仮置き場の候補地に挙げ、市と連携して昨年12月から住民との協議を進めているが同意を得られず、整備の見通しは立っていない。
■計画見直し
市は特定避難勧奨地点を含む放射線量が比較的高い地域から除染に取り掛かり、平成26年3月末までに避難区域を除く市内の生活圏全域の作業を終える計画を掲げる。
しかし、仮置き場の確保が困難なことから当初、今年2月の開始を予定していた除染作業は大幅に遅れ、大原地区を含め計画の見直しを余儀なくされている。担当者は「住民と粘り強く対話を続け、仮置き場問題を解決していきたい」と話す。
■くすぶる不公平感
同一地区に住居を構え、同じ放射線問題を抱えながらも、特定避難勧奨地点への指定の有無により、東京電力の賠償内容には大きな差がある。
大原地区行政区長の深野良興さん(73)は「除染を進め、1日も早く地域を元通りにしなければ、(賠償内容への)住民間の不公平感や不満は高まるばかりだ」と訴え、市と住民が一体となって地域の今後の在り方を考える必要性を強調する。
(2012/07/22 11:30カテゴリー:3.11大震災・断面)
屋根、雨どいの除染に当たる作業員=21日、南相馬市原町区片倉
東京電力福島第一原発事故に伴い、南相馬市の四地区で計57地点・59世帯が最初に特定避難勧奨地点に指定されてから21日で1年になった。順次追加され、指定箇所が7地区計142地点・153世帯と県内最多に達する中、仮置き場の確保の有無で除染作業の進度に地域差が出始めている。除染の見通しが立たず、避難の長期化が想定される地域では、賠償問題も絡み地域コミュニティーの分断が進むことへの懸念も広がる。
■帰還への期待
旧警戒区域の市内小高区に隣接する原町区片倉地区は2地点・2世帯が特定避難勧奨地点に指定され、周辺住民を含む7世帯22人が市内外で避難生活を送っている。住民の理解を得て仮置き場の造成が進み、並行して今月、他地区に先駆けて住宅などの除染が始まった。
21日には片倉字岩下の平田勲さん(67)宅の除染作業が公開された。空間放射線量は地上1メートルで毎時2マイクロシーベルト。委託業者が31日まで高圧放水による屋根、雨どいなどの除染作業を続ける。平田さん宅は特定避難勧奨地点にはなっていないが、放射線の影響を心配して夫婦で茨城県内に避難している。「線量が下がれば自宅に戻りたい」と除染の効果に期待を寄せる。
行政区長の渡部範夫さん(62)は「除染が住民の帰還につながることを願う」と前を向く。
■3地区未確保
市内の指定状況は【地図】の通り。原町区片倉、押釜、高倉、鹿島区橲原の四地区は地区内に1カ所ずつ仮置き場の設置が決まり、8月末から1日約200人の作業員が生活圏の本格的な面的除染を始める予定だ。
しかし、馬場、大谷、大原の3地区は仮置き場の設置場所が決まらず、除染作業に取り掛かれない事態に直面する。このうち、大原地区は全約120世帯のうち、市内最多の49地点・計51世帯が特定避難勧奨地点に指定されている。実際の避難数は周辺住民を含め約70世帯に上る。行政区は地区内6カ所を仮置き場の候補地に挙げ、市と連携して昨年12月から住民との協議を進めているが同意を得られず、整備の見通しは立っていない。
■計画見直し
市は特定避難勧奨地点を含む放射線量が比較的高い地域から除染に取り掛かり、平成26年3月末までに避難区域を除く市内の生活圏全域の作業を終える計画を掲げる。
しかし、仮置き場の確保が困難なことから当初、今年2月の開始を予定していた除染作業は大幅に遅れ、大原地区を含め計画の見直しを余儀なくされている。担当者は「住民と粘り強く対話を続け、仮置き場問題を解決していきたい」と話す。
■くすぶる不公平感
同一地区に住居を構え、同じ放射線問題を抱えながらも、特定避難勧奨地点への指定の有無により、東京電力の賠償内容には大きな差がある。
大原地区行政区長の深野良興さん(73)は「除染を進め、1日も早く地域を元通りにしなければ、(賠償内容への)住民間の不公平感や不満は高まるばかりだ」と訴え、市と住民が一体となって地域の今後の在り方を考える必要性を強調する。
(2012/07/22 11:30カテゴリー:3.11大震災・断面)