沖縄のごみ問題を考える

一般廃棄物の適正な処理に対する国の施策と県の施策と市町村の施策を比較しながら「沖縄のごみ問題」を考えるブログです。

最終処分場を整備していない市町村において国の財政的援助を受ける方法(重要)

2015-09-01 16:18:31 | 最終処分場
沖縄県の廃棄物処理計画が溶融炉(ガス化溶融炉を含む)の整備を推進して最終処分場の延命化を図る計画であることは、このブログで何度も説明しています。

しかし、昨年の9月に、会計検査院から、溶融炉を整備している場合であっても「溶融スラグの利用が行われていない場合は補助目的を達成していないとみなす」という意見表示が行われました。

幸いにして、沖縄県内で該当する市町村はありませんでしたが、内地ではこの問題が極めて大きな問題になっています。

溶融スラグの多くは、普通、公共事業において「路盤材」等として利用されていますが、内地では公共事業そのものが減っているために全量を利用することが困難になってきているからです。

このため、東京都は8ヶ所ある溶融炉を溶融スラグの将来的なニーズに合わせて廃止していくことに決めています。

沖縄県における溶融スラグの将来的なニーズがどのくらいあるかは分かりませんが、県が溶融炉の整備を推進しても溶融スラグの利用先が減ってきた場合は溶融炉を整備したことが県の失敗に繋がる可能性もあります。

このブログの管理者は、沖縄県においては溶融炉の整備の推進は抑制して、「その他の焼却灰の安定的な利用」を図る措置を講じることが重要であると考えています。

つまり、沖縄県においては、その措置を講じるための技術開発を産学官共同で推進して行くことが重要な施策になると考えています。

※国は廃棄物処理施設の整備に対して財政的援助を行うことになっているので、「その他の焼却灰の安定的な利用」については自主財源により行うことになります。ただし、溶融炉の整備や維持管理費に支出する自主財源よりも「その他の焼却灰の安定的な利用」に支出する自主財源の支出の方が少なければ、結果的の財政負担を削減することができます。

溶融炉の休止に関する国と県と会計検査院の考え方の違い

2015-09-01 14:59:35 | 溶融炉
会計検査院の意見表示によると国や県は溶融炉の休止に関する認識が不十分であったようです。

しかし、会計検査院の意見表示は昨年の9月30日に行われているので、現在は認識が十分な状況になっているものと思われます。

なお、溶融炉を休止する場合は廃棄物処理法の規定に基づく所要の手続き(県に対する届出)が必要になりますが、この事務処理については国は直接的には関与しないことになっています。そのため、市町村と県との間で事務処理が行われることになります。

ただ、県にとっては休止も廃止も同じこと(休止の場合は再開の届出に関する事務処理が残るだけ)なので、この手続きについては適正に行われているものと思われます。なぜなら、市町村は毎年前年度のごみ処理の状況を県に報告しているからです。

※会計検査院の考え方(意見表示)に基づけば、中城村北中城村清掃事務組合が行っていた県に対する休止の届出は、県の技術的援助により再稼動に対する意思を確認した上で廃止の届出に変更されていることになります。また、座間味村と渡名喜村が行っていた休止の届出も、諸々の状況から判断して廃止の届出に変更されていると思われます。

沖縄県内で休止している溶融炉の特徴

2015-09-01 12:07:49 | 溶融炉
沖縄県内で休止している溶融炉(再稼動を予定している伊平屋村を除く)には幾つかの特徴があります。

中城村北中城村清掃事務組合の溶融炉は川崎重工業製のものですが、国内では同組合が発注した1基しかありません。しかも、現在では処理方式そのものがガス化溶融炉に移行しているためメーカー側は受注活動を行っていません。その意味では「超レア物」ということになりますが、言い方を変えると「ガラパゴス型プラント」でもあります。

したがって、仮に再稼動したとしても長寿命化を行うことは困難かも知れません。休止中にどのようなメンテナンスが行われるのかは分かりませんが、10年後に再稼動するためにメンテナンスを行うというのも、休止の理由(維持管理費が高い)や溶融炉の特徴を考えると無理があります。なぜなら、本当に10年後に再稼動すると約20年前に機種を変更したプラントを再稼動することになるからです。

同組合の溶融炉は、諸々の状況から判断して休止ではなく廃止していると見るのが妥当と思われます。

座間味村と渡名喜村の溶融炉はガス化溶融炉ですが、メーカーに関する情報がほとんどなく実態がよく分かりません。また、座間味村とは工事費のことで裁判になっています。発注を見合わせた伊平屋村も契約の問題で裁判になっています。その意味では「訴訟がらみのプラント」ということになるかも知れません。

したがって、こちらの溶融炉は再稼動そのものが困難と思われます。

座間味村と渡名喜村の溶融炉も、諸々の状況から判断して休止ではなく廃止していると見るのが妥当と思われます。

溶融炉の整備を推進している沖縄県がどのように判断してどのような技術的援助を行っているか、とても興味がありますが、この3ヶ所の溶融炉について休止中という判断をしているとすれば、会計検査院から「認識が不十分である」という指摘を受けても仕方がないと考えます。

ちなみに、会計検査院は財産処分に関する所要の手続きを行わずに溶融炉を1年以上休止している場合は不適正と判断して、再稼動するか廃止するように国(環境省)に是正改善処置要求を行っています。

※会計検査院は座間味村と渡名喜村が溶融炉を休止していることについて不適正であるという判断をしていますが、中城村北中城村清掃事務組合の溶融炉も両村と同じ年に供用を開始して1年以上休止しているので、仮に同組合が財産処分に関する所要の手続きを行っていない場合は、会計検査院の判断としてはやはり不適正ということになると思います

溶融炉を休止している市町村の長寿命化計画は誰がいつ頃決めるのか?

2015-09-01 10:07:39 | ごみ処理計画
国が市町村(一部事務組合を含む)に要請しているインフラ長寿命化計画(行動計画)の策定期限は平成28年度末です。

この計画には予算の見通し等も明示することになっているので、遅くとも来年の今頃には策定に着手することになります。

なお、沖縄県内で休止している溶融炉は4ヶ所ありますが、休止を決断した首長は5名います。

その中で、伊平屋村は平成24年度に溶融炉の再稼動を前提とした循環型社会形成推進地域計画を策定しているので、現在は長寿命化計画を策定中か策定済の状態になっているはずです。ちなみに、伊平屋村は休止している溶融炉の中では一番最後に整備(平成17年供用開始)しています。

残りの3ヶ所はいずれも平成15年に供用を開始していますが、中城村北中城村清掃事務組合には首長が2名いることになります。ちなみに、この3ヶ所は今年で供用開始から13年目になるので環境省のマニュアル等によれば既に長寿命化の時期を迎えていることになります。しかし、まだ、長寿命化計画は策定していません。

そこで、この3ヶ所がいつ頃長寿命化計画を策定することになるのか、首長選挙の時期とリンクしながら考えてみたいと思います。

と言っても、座間味村と渡名喜村の首長選はインフラ長寿命化計画の策定期限である平成28年4月以降に行われることになっているので、期限までに現首長のもとで策定すれば間に合います。ただし、既に長寿命化を行う時期を迎えているので、選挙前には長寿命化に着手することになると思われます。

問題は中城村北中城村清掃事務組合です。

ここは、昨年の3月に現首長(2名)が溶融炉を10年間休止することを決めてごみ処理計画を改正しています。しかし、そのごみ処理計画は国の補助制度を活用しない(活用できない)計画になっています。したがって、組合は自主財源によって焼却炉の長寿命化を行うことになります。しかも、座間味村や渡名喜村と同様に、既に長寿命化を行う時期を迎えています。

ところが、中城村の首長選は来年の6月に行われます。そして、北中城村の首長選は来年の12月に行われます。

そうなると、同組合については少なくとも中城村の首長選が行われる前(来年の5月頃)には長寿命化計画を策定しておかなければならないことになります。なぜなら、同組合におけるごみ処理施設の長寿命化事業は予算措置(財源の確保)がとても難しい計画になっているからです。

なお、同組合が長寿命化事業を行う場合は組合に負担金を支出している中城村と北中城村において各首長が予算を調整して各村の議会の承認を受けなければなりません。

長寿命化計画の策定に当っては予算(財源の確保を含む)の見通しを明示しなければならないので、同組合は少なくとも年内には長寿命化計画の策定に着手しなければ、中城村の首長選までに間に合わない状況になると考えます。

※仮に、両村の首長に選挙後も首長を続ける意思があるとしても、それとこれは「別問題」になります。

溶融炉と人口の関係

2015-09-01 07:04:53 | 溶融炉
この表を見れば一目瞭然。溶融炉を稼動している市町村は全て人口が10万人以上の市町村です。

平成26年9月の会計検査院の意見表示によれば、沖縄県内で溶融炉を休止している市町村のうち渡名喜村は機器類の故障が理由になっています。座間味村と伊平屋村については理由が示されていませんが、管理者の調査によれば「維持管理費が高い」という理由であると思われます。

中城村北中城村清掃事務組合は会計検査院が調査を行った平成25年度は稼動していたので意見表示の対象になっていませんが、平成26年3月に改正したごみ処理計画によれば、やはり「維持管理費が高い」という理由になっています。

国は市町村の計画が国の補助金の規定に適合していれば、基本的に市町村に対して財政的援助を行います。そして、平成27年度における国の補助金の規定(循環型社会形成推進交付金交付要綱)によれば、市町村の計画は国と都道府県の計画との整合性を確保することが要件になっています。

そうなると、沖縄県内で溶融炉を休止している市町村はどうなるのか?

国はごみ処理施設の長寿命化を推進する計画を策定しています。

沖縄県は溶融炉の整備を推進して最終処分場の延命化を図る計画を策定していますが、溶融炉の整備を義務付けている訳ではないので、市町村が他の方法で最終処分場の延命化を図る計画を策定すれば、県の計画との整合性を確保することができます。

しかし、沖縄県内で溶融炉を休止している市町村は全て最終処分場の整備は行っていません。

中城村北中城村清掃事務組合は平成26年度から平成35年度までの10年間は溶融炉の再稼動は行わずに最終処分場の整備も行わない(焼却灰は民間の最終処分場に委託処分する)計画を策定しているので、国の補助制度は活用しない(ごみ処理計画の見直しを行わなければ活用できない)ことが決定しています。

伊平屋村は焼却炉と一緒に溶融炉の長寿命化を行う計画(循環型社会形成推進交付金交付要綱に基づく地域計画)を策定しているので、再稼動するものと思われます。

座間味村と渡名喜村については今のところ再稼動を行う考えはないように思われます。

ブログの管理者としては、休止の理由を前提にした場合、溶融炉の再稼動はできる限り回避すべきであると考えます。その意味では伊平屋村よりも中城村北中城村清掃事務組合の計画の方が市町村の身の丈に合った計画になると思いますが、組合が国の補助制度を活用せずに組合の身の丈に合ったごみ処理を行うことが可能かどうかについては大きな疑問を感じています。

果たして座間味村と渡名喜村はどのような決断をするのか?

インフラ長寿命化基本計画(行動計画)の策定期限は平成28年度末になっているので、残されている時間はあまりありません。

循環型社会形成推進交付金地域計画作成マニュアル

伊平屋村地域計画