沖縄のごみ問題を考える

一般廃棄物の適正な処理に対する国の施策と県の施策と市町村の施策を比較しながら「沖縄のごみ問題」を考えるブログです。

中城村北中城村清掃事務組合のごみ処理計画と国の補助金を考える

2015-09-08 11:30:53 | 補助金

溶融炉を休止(事実上は平成27年度から廃止)している中城村北中城村清掃事務組合(以下「組合」という)のごみ処理計画が国の補助金を利用できる計画であれば、沖縄県民は溶融炉に依存しないごみ処理を行うことができるのでメデタシ・メデタシということになりますが、残念ながらそうはいきません。もしも国が組合に補助金を交付した場合は、沖縄県内だけでなく全国の市町村のごみ処理計画が一挙に流動化してしまいます。そして、国が補助金を交付した瞬間に全国の都道府県の廃棄物処理計画が無意味な計画になってしまいます。

上の画像にあるように、市町村が国の補助金を利用するためには様々な条件をクリアしなければなりません。特に、実際に補助金を利用したい場合は国や県と協議を行って「地域計画」という補助事業を対象にした具体的な計画を作成しなければなりません。もちろんこの「地域計画」は組合のごみ処理計画に即して作成されます。したがって、組合は今のごみ処理計画を見直さなければ国の補助金は利用できないことになります。

県の計画は溶融炉の整備を重視していますが、国の計画は各市町村の地域的特性等を考慮して4つのメニューが用意されています。そのため、このメニューにあるどれかを選べば原則として国の補助金を利用することができます。県の計画は県全体を視野に入れた計画であり、県内の全ての市町村に溶融炉の整備を義務付けている訳ではない(義務付けることはできない)ので、各市町村は国のメニューから自分のところの身の丈に合った最適なメニューを選定することができます。

さて、ここからが本題です。

組合は平成26年度から溶融炉を休止(廃止)していますが、最終処分場の整備や焼却灰の資源化は行わない計画を策定しています。そうなると、焼却炉の整備(長寿命化や更新等)だけを行うことになります。しかし、これは国のメニューにない計画です。

仮に組合が焼却炉の長寿命化や更新に当ってどうしても国の補助金を利用したいと考えた場合は、国のメニューにあるように溶融炉を再稼動するか、最終処分場を整備するか、安定した焼却灰の資源化を行う必要があります。組合が行っている「焼却炉+焼却灰の民間委託処分」は国のメニューにありません。

国のメニューのうち、溶融炉を再稼動することは「運転経費が高い」という理由で休止した意味がなくなります。また、組合のごみ処理施設は既に長寿命化を行う時期を迎えているので、溶融炉を再稼動するとすぐに長寿命化を行うことになり、組合としては最悪の事態になります。しかも、このブログで前にも書きましたが組合の溶融炉は国内では最も人気のない極めて特殊な溶融炉(客観的に見ると、いわゆるメーカー側の実験炉に近い溶融炉)なので、長寿命化が可能かどうかも危ないところがあります。

とは言え、今から最終処分場を整備するというのは不可能です。

ではどうすればよいか?

答えは1つしかありません。国が用意している最後のメニュー、つまり溶融処理以外の方法で安定した焼却灰の資源化を図るというメニューです。ただし、このメニューについては、ここで説明していると長くなるので、別な機会に説明させていただきます。

※4つ目の最後のメニューについては、溶融炉の整備を推進している県にとっては不要と思われますが、溶融炉の維持管理に苦労をしている市町村にとっては必要だと考えています。

 

 

 


中城村北中城村清掃事務組合に対する県の技術的援助を考える

2015-09-08 06:32:11 | ごみ処理計画

現在、このブログの管理者が一番関心を持っているのが、中城村北中城村清掃事務組合(以下「組合」という)のごみ処理計画です。果たして県はこの計画に対してどのような技術的援助(市町村の自治事務に対する助言)を行ったのか、今日はそのことを考えてみたいと思います。なお、画像は昨日の投稿で使用したものをそのまま転用しています。

まず、溶融炉の休止について考えます。

沖縄県は県の廃棄物処理計画によって溶融炉の整備を推進しています。したがって、県は組合に対して溶融炉の休止を推奨するような技術的援助はできません。仮に県の職員がそのような技術的援助を行った場合は地方公務員法違反になります。また、組合が溶融炉を休止する理由は 「運転経費が高い」という理由であり、これは会計検査院も指摘しているように補助金適正化法に違反する不適正な理由になるので、県としては事故や故障等のやむを得ない理由がなければ溶融炉の休止を回避する技術的援助を行うことになります。そうなると、組合は県の技術的援助には従わずに強い意志を持って溶融炉を休止していることになります。ちなみに市町村のごみ処理は「自治事務」になるので、県の技術的援助に従わなくても問題はありません。

次に、焼却灰の資源化について考えます。

県は溶融炉の整備を推進している訳ですから、当然のこととして溶融炉を休止しても焼却灰の資源化を図るように技術的援助を行うことになります。一方、組合は今後10年間は焼却灰の資源化は行わずに民間の最終処分場に処分するとしています。県にとっては最終処分場の延命化を図るために溶融炉の整備を推進しているので、この計画についてはかなり厳しい技術的援助(指導に限りなく近い助言)が行われたと思われますが、結果的に組合は組合の計画を実施するためにごみ処理計画を改正しています。ここにも組合の強い意志が現れています。

次に、国の補助金について考えます。

実は、このブログの管理者にとってこのことが一番気になっているところです。市町村のごみ処理計画が都道府県の廃棄物処理計画との整合性を確保していない場合は国の補助金を利用することはできません。仮に利用できるとしたら県内で溶融炉を整備している市町村は自分の都合で勝手に休止することができるようになってしまいます。そうなったら県の計画は実効性のない計画になってしまいます。したがって、県はここでも念を押すように組合に対して溶融炉の休止を回避するための技術的援助を行ったものと思われます。しかし、組合は国の補助金は使わないという前提でごみ処理計画を改正しています。組合のごみ処理施設は既に長寿命化を行う時期を迎えているので溶融炉を休止しても焼却炉の方は長寿命化することになります。そのような時期に自主財源でごみ処理を行う計画に改正するのは、普通に考えればかなりの勇気がいることですが、組合はその決断をしています。このことは、組合にとって溶融炉が相当な負担になっていたことを示しています。組合が溶融炉を長寿命化すればその負担も長期化することになります。その意味では組合が休止を決断したことは評価したいと考えます。しかし、そのことによって組合の負担がどこまで軽減されるのか、このブログの管理者は逆に負担が増加する可能性が高い(ほぼ間違いなく増加する)と考えていますが、組合(中城村民と北中城村民)が決めたことであり、市町村の「自治事務」に関することなので見守っていきたいと思います。

最後に、最終処分場について考えます。

このブログの読者の皆さんはごみ処理に対する関心の高い方々ですから沖縄県において最終処分場が不足していることはご存知のはずです。県もそれを補うために溶融炉の整備を推進しています。したがって、県は組合に対して最終処分場を整備することを求める技術的援助を行っているはずです。そして、それができなければ沖縄県全体のことを考えて溶融炉の休止を回避するように説得を試みたはずです。一部の市町村ではなく県全体のことを考えて事務処理を行っている県の職員としては当然のことです。しかし、組合は最終処分場の整備は行わない計画を策定しています。このブログの管理者は県の計画に従わずに溶融炉を休止した組合の自主性と勇気は評価しますが、失礼ながらここだけは評価できません。なぜなら、組合は他の市町村にある既存の民間の最終処分場に焼却灰を委託処分する計画を策定しているからです。溶融炉に対する負担がどんなに重いとしても組合のごみ処理を他の市町村にある既存の施設(組合が安定的に専用使用することができない施設)に依存して行うという計画は評価できません。その施設が沖縄県において慢性的に不足している最終処分場であればなおさらです。このブログの管理者は溶融炉を休止することは大賛成ですが組合に対してこの計画だけは見直していただきたいと考えています。

以上が、組合に対する県の技術的援助に関する考察ですが、この考察は、あくまでも一般論としての考察になります。なお、上の画像をご覧いただければ分かりますが、組合の計画は県の計画を上位計画として策定していることになっています。このことは一般的に考えれば組合の計画は県の計画との整合性を確保している計画ということになります。しかし、このブログの管理者は整合性は確保されていないと考えています。ただし、この問題については一般論だけでは間に合わないかなり高度な考察が必要になるので、別の機会に考えてみたいと思います。

※市町村のごみ処理計画に対する県の技術的援助には限界があります。それは、県の職員が国の基本方針に即して定められている県の廃棄物処理計画から逸脱した技術的援助を行うことができないからです。行った場合は地方公務員法違反になります。このブログの管理者としては、溶融炉を休止又は廃止する場合であっても市町村のごみ処理計画が住民にも分かりやすい形で県の計画との整合性を確保することができるように県の計画をより柔軟性のある計画(溶融炉に依存しない計画)に改正していただけることを強く希望します。