溶融炉を休止(事実上は平成27年度から廃止)している中城村北中城村清掃事務組合(以下「組合」という)のごみ処理計画が国の補助金を利用できる計画であれば、沖縄県民は溶融炉に依存しないごみ処理を行うことができるのでメデタシ・メデタシということになりますが、残念ながらそうはいきません。もしも国が組合に補助金を交付した場合は、沖縄県内だけでなく全国の市町村のごみ処理計画が一挙に流動化してしまいます。そして、国が補助金を交付した瞬間に全国の都道府県の廃棄物処理計画が無意味な計画になってしまいます。
上の画像にあるように、市町村が国の補助金を利用するためには様々な条件をクリアしなければなりません。特に、実際に補助金を利用したい場合は国や県と協議を行って「地域計画」という補助事業を対象にした具体的な計画を作成しなければなりません。もちろんこの「地域計画」は組合のごみ処理計画に即して作成されます。したがって、組合は今のごみ処理計画を見直さなければ国の補助金は利用できないことになります。
県の計画は溶融炉の整備を重視していますが、国の計画は各市町村の地域的特性等を考慮して4つのメニューが用意されています。そのため、このメニューにあるどれかを選べば原則として国の補助金を利用することができます。県の計画は県全体を視野に入れた計画であり、県内の全ての市町村に溶融炉の整備を義務付けている訳ではない(義務付けることはできない)ので、各市町村は国のメニューから自分のところの身の丈に合った最適なメニューを選定することができます。
さて、ここからが本題です。
組合は平成26年度から溶融炉を休止(廃止)していますが、最終処分場の整備や焼却灰の資源化は行わない計画を策定しています。そうなると、焼却炉の整備(長寿命化や更新等)だけを行うことになります。しかし、これは国のメニューにない計画です。
仮に組合が焼却炉の長寿命化や更新に当ってどうしても国の補助金を利用したいと考えた場合は、国のメニューにあるように溶融炉を再稼動するか、最終処分場を整備するか、安定した焼却灰の資源化を行う必要があります。組合が行っている「焼却炉+焼却灰の民間委託処分」は国のメニューにありません。
国のメニューのうち、溶融炉を再稼動することは「運転経費が高い」という理由で休止した意味がなくなります。また、組合のごみ処理施設は既に長寿命化を行う時期を迎えているので、溶融炉を再稼動するとすぐに長寿命化を行うことになり、組合としては最悪の事態になります。しかも、このブログで前にも書きましたが組合の溶融炉は国内では最も人気のない極めて特殊な溶融炉(客観的に見ると、いわゆるメーカー側の実験炉に近い溶融炉)なので、長寿命化が可能かどうかも危ないところがあります。
とは言え、今から最終処分場を整備するというのは不可能です。
ではどうすればよいか?
答えは1つしかありません。国が用意している最後のメニュー、つまり溶融処理以外の方法で安定した焼却灰の資源化を図るというメニューです。ただし、このメニューについては、ここで説明していると長くなるので、別な機会に説明させていただきます。
※4つ目の最後のメニューについては、溶融炉の整備を推進している県にとっては不要と思われますが、溶融炉の維持管理に苦労をしている市町村にとっては必要だと考えています。