とあるスナックで
小林
コー
小林
小林
それでは続きを読んでいきましょう。 p-181
・・・。
しかし、日本の場合はもともと海外からの資金が大量に入ってきているわけではありませんので、慌てて海外へと逃げ出す資金が物理的にありません。むしろ、経済的なダメージが発生すると、「国内の一大事に海外へと投資をしている場合ではない!」という状況になり、通常は日本から海外へと貸し出されている資金が、日本国内に向かって戻ってきます。東日本大震災の際に発生した円高が、その何よりの証拠です。生命保険会社や損害保険会社は海外資産を売って、国内の支払いに振り向けなければなりません。実際に海外資産の売却がなかったとしても、「日本が世界最大の投資家である」ことは日本以外の投資家の間では常識です。日本人が海外資産を売却するのではないかという思惑が働いただけでも、円高に振れる理由に十分なり得ます。日本が債務国であれば、国難に見舞われると、海外からの投資資金は慌てて日本から逃げ出します。その場合は、円安になってもおかしくはありません。しかし、日本は債権国であるからこそ、円高となります。世界中に資金をどこの国よりも貸しているのは日本であることを忘れると、相場の動きはわからなくなるでしょう。
というわけで、日本は対外純債務国であり、海外から大挙して引き上げられてしまう資金など、もともと国内に存在しないのですから、今の状況では国家破綻になりえません。
これが債権国と債務国の大きな違い、ということになります。
それでもヘッジ・ファンドが大規模な空売りをしてくる可能性があるのでは?という疑問を持つ方もいるかもしれません。しかし実はサプライム危機以降、ヘッジ・ファンドの経営状況はあまりよろしくありません。積極的に国債の暴落を仕掛けるほど大量の資金がないのです。また、2012年7月からはボルカー・ルールが施工される予定です。これは、商業銀行にたいしてヘッジ・ファンド等への投資・出資を禁ずるものです。これによって、金融機関から巨額の資金を調達して暗躍してきたヘッジ・ファンドは、ますます身動きがとりにくくなるでしょう。その解説をする前に、日本についての基本情報をもう少しだけ確認していただければと思います。
日本の財政破綻の可能性は極めて小さい
日本は過去20年間、ひたすら経済が低迷している状況ではないか。それがどうして債権国であり続けられるのだろうか、と疑問を持たれるのも当然です。しかし、我々が感じる景況感は多かれ少なかれ既存のメディア報道に影響を受けますので、ずっと悪い悪いといい続けられると全てが悪いような錯覚に陥られるかも致し方ありません。例えば、日本の大手企業は2006年に株価が上昇し、社内留保も格段に増えた状況がありました。確実に景気は回復していたはずなのに、一般には給料は上がらず、派遣切りなどもあり、これでは景気は悪くなる一方という感覚になります。しかし、正確な数字を追いかけていくと、往々にして感覚と実態にはズレが生じているものです。
最新の日本の対外的な貸し借りの状況は、財務省が発表する「本邦対外資産負債残高の概要」でも確認することができます。左の図表19のグラフを見てもわかりますが、日本の対外純資産は公表されている期間を通じて右肩上がりに増加しています。つまり、国内での貸し借りをしてもまだ余っている資金が海外への貸出しとなり、それがひたすら増え続け、2010年のデータでは何と251兆円もの資金を海外に貸し出しているのです。
給与は上がっていないし、企業が儲かっているという話も耳にしません。それなのに日本はいったいどこでそんなに儲かっているのかと思われるでしょう。
日本の収支がプラスになるためには、対外的な経済取引の総和がプラスになっていなければなりません。モノ(財)の取引である貿易収支、サービス収支、あるいは海外資産の生み出す利子所得や配当などを示す所得収支などの合計がプラスとなっているか。これら複数の収支項目を合計したものが経常収支になりますが、左の図表20のように、日本の場合は長期間、この経常収支が黒字で推移しています。特に所得収支はここ数年毎月1兆円前後の黒字で推移しています。2011年は貿易収支が31年ぶりに赤字に転落しましたが、所得収支のプラスで補って余りあるほどで、結果的に経常収支はプラスとなりました。
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しかし、日本の場合はもともと海外からの資金が大量に入ってきているわけではありませんので、慌てて海外へと逃げ出す資金が物理的にありません。むしろ、経済的なダメージが発生すると、「国内の一大事に海外へと投資をしている場合ではない!」という状況になり、通常は日本から海外へと貸し出されている資金が、日本国内に向かって戻ってきます。東日本大震災の際に発生した円高が、その何よりの証拠です。生命保険会社や損害保険会社は海外資産を売って、国内の支払いに振り向けなければなりません。実際に海外資産の売却がなかったとしても、「日本が世界最大の投資家である」ことは日本以外の投資家の間では常識です。日本人が海外資産を売却するのではないかという思惑が働いただけでも、円高に振れる理由に十分なり得ます。日本が債務国であれば、国難に見舞われると、海外からの投資資金は慌てて日本から逃げ出します。その場合は、円安になってもおかしくはありません。しかし、日本は債権国であるからこそ、円高となります。世界中に資金をどこの国よりも貸しているのは日本であることを忘れると、相場の動きはわからなくなるでしょう。
というわけで、日本は対外純債務国であり、海外から大挙して引き上げられてしまう資金など、もともと国内に存在しないのですから、今の状況では国家破綻になりえません。
これが債権国と債務国の大きな違い、ということになります。
それでもヘッジ・ファンドが大規模な空売りをしてくる可能性があるのでは?という疑問を持つ方もいるかもしれません。しかし実はサプライム危機以降、ヘッジ・ファンドの経営状況はあまりよろしくありません。積極的に国債の暴落を仕掛けるほど大量の資金がないのです。また、2012年7月からはボルカー・ルールが施工される予定です。これは、商業銀行にたいしてヘッジ・ファンド等への投資・出資を禁ずるものです。これによって、金融機関から巨額の資金を調達して暗躍してきたヘッジ・ファンドは、ますます身動きがとりにくくなるでしょう。その解説をする前に、日本についての基本情報をもう少しだけ確認していただければと思います。
日本の財政破綻の可能性は極めて小さい
日本は過去20年間、ひたすら経済が低迷している状況ではないか。それがどうして債権国であり続けられるのだろうか、と疑問を持たれるのも当然です。しかし、我々が感じる景況感は多かれ少なかれ既存のメディア報道に影響を受けますので、ずっと悪い悪いといい続けられると全てが悪いような錯覚に陥られるかも致し方ありません。例えば、日本の大手企業は2006年に株価が上昇し、社内留保も格段に増えた状況がありました。確実に景気は回復していたはずなのに、一般には給料は上がらず、派遣切りなどもあり、これでは景気は悪くなる一方という感覚になります。しかし、正確な数字を追いかけていくと、往々にして感覚と実態にはズレが生じているものです。
最新の日本の対外的な貸し借りの状況は、財務省が発表する「本邦対外資産負債残高の概要」でも確認することができます。左の図表19のグラフを見てもわかりますが、日本の対外純資産は公表されている期間を通じて右肩上がりに増加しています。つまり、国内での貸し借りをしてもまだ余っている資金が海外への貸出しとなり、それがひたすら増え続け、2010年のデータでは何と251兆円もの資金を海外に貸し出しているのです。
給与は上がっていないし、企業が儲かっているという話も耳にしません。それなのに日本はいったいどこでそんなに儲かっているのかと思われるでしょう。
日本の収支がプラスになるためには、対外的な経済取引の総和がプラスになっていなければなりません。モノ(財)の取引である貿易収支、サービス収支、あるいは海外資産の生み出す利子所得や配当などを示す所得収支などの合計がプラスとなっているか。これら複数の収支項目を合計したものが経常収支になりますが、左の図表20のように、日本の場合は長期間、この経常収支が黒字で推移しています。特に所得収支はここ数年毎月1兆円前後の黒字で推移しています。2011年は貿易収支が31年ぶりに赤字に転落しましたが、所得収支のプラスで補って余りあるほどで、結果的に経常収支はプラスとなりました。
コー
なるほどね。だからすぐに日本は国家破綻にはならないという事か。 p-190
・・・・。
海外から資金を借りているのか、それとも海外へと資金の貸出しをできる立場なのか。そこには雲泥の差があるのですから、債務国であるギリシャやイタリアと債権国である日本を同じステージで語るのは意味がありません。
それでも債務国と我が国をどうしても同列で語りたいならば、国家破綻するまでには、次のステップを踏む必要があります。逆にこのステップを踏まなければ、国家破綻にはたどり着けません。
(1)日本国民が国債を買うのをやめ、買い手が国内に誰もいなくなった状態となる。
(2)更に日本政府が調達しようとする資金に不足が発生する一方で、今現在、発行残高の5%程度しか日本国債を所有していない海外の投資家たちがどんどん日本国債を買い進め、デフォルトした国々同様、海外の投資家が全体の50%~70%を保有するような状況になる。
(3)海外投資家が相当量の日本国債を買い込んだ後に、彼らが一斉に日本国債を売り出したくなるような経済危機が日本を訪れる。
果たしてこのような状況になるまで、何年かかるでしょう。少なくともこれまでの20年間で(1)の状態になることすら起きていないのです。今後の1年や2年でそういった状況が突然発生するとは考えにくいのです。
家計も企業も借金をしない、それどころか貯蓄が有り余っている。その貯蓄を基に政府が国債を発行して、結果的に財政赤字が発生しているという側面があるのです。本当の意味での財政赤字で四苦八苦しているならば、海外に250兆円余りもの資金を提供する余裕などありません。
・・・・。
海外から資金を借りているのか、それとも海外へと資金の貸出しをできる立場なのか。そこには雲泥の差があるのですから、債務国であるギリシャやイタリアと債権国である日本を同じステージで語るのは意味がありません。
それでも債務国と我が国をどうしても同列で語りたいならば、国家破綻するまでには、次のステップを踏む必要があります。逆にこのステップを踏まなければ、国家破綻にはたどり着けません。
(1)日本国民が国債を買うのをやめ、買い手が国内に誰もいなくなった状態となる。
(2)更に日本政府が調達しようとする資金に不足が発生する一方で、今現在、発行残高の5%程度しか日本国債を所有していない海外の投資家たちがどんどん日本国債を買い進め、デフォルトした国々同様、海外の投資家が全体の50%~70%を保有するような状況になる。
(3)海外投資家が相当量の日本国債を買い込んだ後に、彼らが一斉に日本国債を売り出したくなるような経済危機が日本を訪れる。
果たしてこのような状況になるまで、何年かかるでしょう。少なくともこれまでの20年間で(1)の状態になることすら起きていないのです。今後の1年や2年でそういった状況が突然発生するとは考えにくいのです。
家計も企業も借金をしない、それどころか貯蓄が有り余っている。その貯蓄を基に政府が国債を発行して、結果的に財政赤字が発生しているという側面があるのです。本当の意味での財政赤字で四苦八苦しているならば、海外に250兆円余りもの資金を提供する余裕などありません。
小林
この本の著者、岩本沙弓は、かつて銀行の短期金融市場取引を中心にトレーディング業務に従事していたようですね。
なるほど日本が財政破綻するかどうかは、上の3項目をチェックしなければならないということですか。いろいろ勉強になりますね。
なるほど日本が財政破綻するかどうかは、上の3項目をチェックしなければならないということですか。いろいろ勉強になりますね。