以前に土方歳三と伝習隊 でご紹介しました野口武彦著『新選組の遠景』(集英社)に、福田定良著『新選組の哲学』(中公文庫)が、絶版になっている旨、載っていました。
リンクをはっておりますが、ほんとうみたいですね。しかし、380円の文庫が2100円とは! 絶版って、こわいですねえ。
「哲学」といっても、小難しい話じゃないんです。
私にいわせれば、司馬遼太郎著『新選組血風録』の楽しいパロディです。
著者ご自身が後書きの「言訳」で、以下のように断っておられます。
『新選組の哲学』は新選組の研究者や哲学に関心をもっている人たちに文句を言われそうな本である。だから、この本に必要なのはその道の専門家の解説ではなく、著者自身の言訳であろう。
この本に出てくる新選組の隊士は実在の人物ではない。二十数年前、司馬遼太郎氏の『新選組血風録』を何度か読み返し、そのころNETから放映されていた同名の連続ドラマを見ているうちに、いつの間にかぼくのなかに根をおろしてしまった隊士たちである。かりに彼らがいくらかは面白く書けているとしても、その面白さは司馬さんの小説の面白さ、あるいはあのドラマの面白さの二番煎じでしかない。
野口氏が、『新選組の遠景』の中で、この『新選組の哲学』を紹介しておられるのは、「沖田総司伝説」という章の中で、です。以下、『新選組の哲学』が描く沖田総司像への、野口氏の言及です。
たとえ司馬遼太郎の作中人物であろうとも、ここにはその総司像を透過して、沖田総司の原質を見きわめる視線がつらぬかれている。「スポーツマンの明るさ」とは、
言い得て妙である。
(中略)
福田定良が沖田総司の生涯に見出しているのは、ひたすら<<剣>>一筋に生きようとしているのに心ならずも<<政治>>に引き込まれてしまった純朴な青年の悲劇である。
沖田総司像を「スポーツマンの悲劇」と位置づける福田氏の視線は、野口氏のおっしゃるよう卓見で、今回の大河新選組にも、引き継がれているように思います。
この『新選組の哲学』の中で、私のお気に入りは、「土方のタトエばなし」です。
冒頭に、俳句と歌が出てきます。
しれば迷ひしなければ迷わぬ恋の道
故郷の母の御袖にやどるかと思へば月のかげぞ恋しき
上は、言わずとしれた土方さんの俳句ですが、下はだれの歌だと思われますか? といったところから、お話は始まります。
実は、伊藤甲子太郎の和歌なんです。
で、この俳句と歌の論評も笑えるのですが、その後の土方さんのタトエ話が、おもしろいんです。
ある日、土方さんが沖田さんを呼んで、豆と茶を勧めつつ、語ります。
「もっと面白い話をしよう。そうだ、浮気の話がいい」と口をきるのですが、「浮気をされても、妻は夫を憎むわけにはいかない。といって、むろん、平気ではいられない。そういうもんだろう」と、真面目くさって続けるんです。
ここまで書けば、新選組好きで、勘のいい方ならば、どういうタトエ話なのか、おわかりになられるはず。
このタトエ話の間、沖田さんが入れる合いの手も絶妙で、パロディとして絶品です。
私のお気に入りなのです。
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「哲学」といっても、小難しい話じゃないんです。
私にいわせれば、司馬遼太郎著『新選組血風録』の楽しいパロディです。
著者ご自身が後書きの「言訳」で、以下のように断っておられます。
『新選組の哲学』は新選組の研究者や哲学に関心をもっている人たちに文句を言われそうな本である。だから、この本に必要なのはその道の専門家の解説ではなく、著者自身の言訳であろう。
この本に出てくる新選組の隊士は実在の人物ではない。二十数年前、司馬遼太郎氏の『新選組血風録』を何度か読み返し、そのころNETから放映されていた同名の連続ドラマを見ているうちに、いつの間にかぼくのなかに根をおろしてしまった隊士たちである。かりに彼らがいくらかは面白く書けているとしても、その面白さは司馬さんの小説の面白さ、あるいはあのドラマの面白さの二番煎じでしかない。
野口氏が、『新選組の遠景』の中で、この『新選組の哲学』を紹介しておられるのは、「沖田総司伝説」という章の中で、です。以下、『新選組の哲学』が描く沖田総司像への、野口氏の言及です。
たとえ司馬遼太郎の作中人物であろうとも、ここにはその総司像を透過して、沖田総司の原質を見きわめる視線がつらぬかれている。「スポーツマンの明るさ」とは、
言い得て妙である。
(中略)
福田定良が沖田総司の生涯に見出しているのは、ひたすら<<剣>>一筋に生きようとしているのに心ならずも<<政治>>に引き込まれてしまった純朴な青年の悲劇である。
沖田総司像を「スポーツマンの悲劇」と位置づける福田氏の視線は、野口氏のおっしゃるよう卓見で、今回の大河新選組にも、引き継がれているように思います。
この『新選組の哲学』の中で、私のお気に入りは、「土方のタトエばなし」です。
冒頭に、俳句と歌が出てきます。
しれば迷ひしなければ迷わぬ恋の道
故郷の母の御袖にやどるかと思へば月のかげぞ恋しき
上は、言わずとしれた土方さんの俳句ですが、下はだれの歌だと思われますか? といったところから、お話は始まります。
実は、伊藤甲子太郎の和歌なんです。
で、この俳句と歌の論評も笑えるのですが、その後の土方さんのタトエ話が、おもしろいんです。
ある日、土方さんが沖田さんを呼んで、豆と茶を勧めつつ、語ります。
「もっと面白い話をしよう。そうだ、浮気の話がいい」と口をきるのですが、「浮気をされても、妻は夫を憎むわけにはいかない。といって、むろん、平気ではいられない。そういうもんだろう」と、真面目くさって続けるんです。
ここまで書けば、新選組好きで、勘のいい方ならば、どういうタトエ話なのか、おわかりになられるはず。
このタトエ話の間、沖田さんが入れる合いの手も絶妙で、パロディとして絶品です。
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