田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

詩14 こころが波立たない 麻屋与志夫

2023-04-22 03:40:15 | 
詩14 こころが波立たない

こころが波立たない
いかりもかなしみも
ひからびたはっこつ

寒さも気にならない
ふるえるおののきも
しわのなかに潜んだ
暑さだっておなじだ

霜柱をふみに
野に立つと
幾千万の煌めく針
その美しさにも
こころが波立たない
煌めく針の尖端にも
おののかない
夏になっても
汗も出ないよ

どうしちまったんだ
どうなっているんだ
あわてるな
あわてるな

終末までには
まだ ある
時間はある



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詩13  大樹チャント釣り 麻屋与志夫

2023-04-21 05:28:09 | 
詩13  大樹チャント釣り

釣りのきらいなジイチャンは
大樹チャンに袖をひかれても
釣りにはいけない
街の舗道に釣竿をひきずって
きょうも 
反省の糸をたれて
あるいています

なにか釣れるかな
ジイチャンの獲物は街にいない
ジイチャンには餌がない
すいっと魚がよってくる
餌がない

ジイチャンは
ジイチャンを
疑似餌にする
ジイチャンは
リールから伸びる
釣り糸の先の餌だ
なにが釣れるかな
なにを釣りたいの
わかんない
わからない

なにを釣るのか
わかっていれば
ジイチャンも
釣りが
すきに
なった
はずだ

ジイチャンはダンプに轢かれる
舗道で平面になってからもなお
生きている
なにを釣ればいいの
なにを釣ればいいの
なにを釣れば
なにを
なに


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詩12美智子さんは夜行性 麻屋与志夫

2023-04-20 15:52:22 | 
詩12美智子さんは夜行性

夜行性二足歩行動物である美智子さん

きょうも日暮れからわたしは

黒の大きなリックを背負う

パラソルの陰に 身を潜ませなくてすむ 美智子さん

ごきげんだ

わたしは帰路のリックの重みを予感して

憂鬱だ

紫外線は オハダの大敵なの

こうして あなたと 夜

歩くのが好き

たどりついたスーパーであなたは

貪欲に爪をのばし

片っぱしからカートの

バスケットに獲物を

なげこむ

サイフは支払いの予感におののく

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詩11シーツの海の美智子さん 麻屋与志夫

2023-04-20 15:35:51 | 
詩11シーツの海の美智子さん

今日は金曜日 塾はお休み
ゴミ出しの日 遅い朝におどろいて
妻の部屋にかけこむ
おい ゴミヤさんがきてしまうぞ
詰めて置いてくれればおれが
すてにいくのに
すてにいくのに

純白のシーツの海の
波間に
あなたは たゆたゆたゆ
四角の海に対角線をひいて
いますこし ねていたいわ
わたしは 
すごすごと 退去する

キッチンの廃棄物 ポリ袋に詰め込む
臭い 生ごみ 廃棄物 キライ
わたしとあなたが
生きるためにスピンオフした
残りかす

詩を書くためには おおくのものを すててきた
いまさら ゴミ捨てなんか 厭うきもちは ない
手触りの いやな廃棄物 なんでも すてます
捨てます すてます ステマス

おい ゴミはだしておいたからな
ゆっくりと朝寝をたのしむといい
妻の寝室からは応えはもどってこない
シーツの海で 溺れてやしないか
枕の暗礁にのりあげてはいないか
シーツに顔をおしつけて
窒息してはいないか
今度は 忍び足
そっと そっと襖をあけると
いない
いるべき シーツの海に
あなたがいない

どこか 遠くで
化粧室の鏡台のあたりで
カタコトカタコト
ビンの揺れる音がする
化粧水のいい匂い
美智子さんは
お目覚めです

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詩10 あなたに〈美智子〉さん 麻屋与志夫

2023-04-20 15:25:06 | 
詩10 あなたに〈美智子〉さん

象のように 巨大でないから

やさしい象の目をしていないから

ぼくは 象にはかなわないから

あなたの髪で故郷につなぎとめられた

というのは ぼくの詭弁だ

あなたの豊旗雲の黒髪は でも

あなたの華奢で 大きな存在は

あなたの好きな切り子細工のグラスの

空にすかすと 刻々とかわる光の波動

のように

歳月が変転したが

あなたと過ごした時は

黒髪につながれた

象でない 象である

ぼくには

楽しいものでした

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9詩 美智子さんベッドからおちた

2023-04-20 12:21:23 | 
9詩 美智子さんベッドからおちた

美智子さんんベッドからおちた
キングサイズの広大な
シーツの海を
しわくちゃにして
輾転反転
ただよっていたあなた

まだ地球が平坦だったころ
海の果ては滝のよう
地の果ては崖のよう
そのような場所から
夢の果てから
真っ逆さまに
墜落したように
あなたはおちた
悲鳴が
わたしをあなたのところへ
よびよせる
よびよせる

美智子さんのいちだいじ
ロシナンテのように
よたよたよたよた
あくせくあくせく
トロットトロット

腰に痣
わきばらにあざ
うでにも アザ

アタマウッタ
イタイイタイ

パク パク
おぼれた魚
人魚のなみだ

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詩8 ブーゲンビリア  麻屋与志夫

2023-04-20 08:51:53 | 
詩8 ブーゲンビリア

ことしの夏
ブーゲンビリアは
咲かなかった
南国の真紅の花
文学作品でしかしらなかった
情熱の血ふぶきの花

ヨーカ堂のフロントの花屋で
鉢植えの花を妻と選んでいた
ときだね きみとあったのは
来春の市長選にはでるから よろしく
とあいさつされたのは

そのきみが 当選の報をきいたのは
臨死の床
そして息をひきとるまでの
百五十秒
にっこり と 笑って 死んだ
と 新聞は報じていた
きみはなにを考えていたのだろう

花を思え 咲かなかった真紅の
ブーゲンビリアを追慕せよ
一秒に一ひら花弁を造形せよ
ヒャクトゴジュウの花弁を
友の墓前に捧げよ

はじめて 友のしにあった
詩人は 死人のように
青い夏を生きています
ことしは冷夏
さむざむとした夏だ
ブーゲンビリアは 咲きません
きみのところでは
どうなんだい……

注 市長当選後、数秒で他界した稲川武君へ。

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詩7  誰もいない部屋で手をたたく 麻屋与志夫

2023-04-19 21:39:18 | 
詩7  誰もいない部屋で手をたたく

毎日の授業で話しすぎるので
のどのいたみがとれません
ヤスリをかけられたように
こそばゆくて
いたみます

塾生は遊びざかりのこどもたち
かれらの話声を封じようと
いたむ声帯をふるわせて
すませました
今宵の授業

誰もいない部屋にもどって
声が出ないので
手をたたいたら
ミュ―とムックがはしってきた
猫は足音をたてない
肉球が音を吸いとる
どうしてかな
とても力強い足音がした

誰もいない部屋で手をたたくと
カミサンのかわりに
ミュ―とムックがとんでくる


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詩6  鹿沼 詩可沼 麻屋与志夫

2023-04-19 14:40:18 | 
詩6  鹿沼 詩可沼

ぼくに一掬の詩魂があれば流れ出て詩の河にそそげ

猫の朝
猫は悪魔 なんていやねえ
悪魔は猫 なんて嘘よーね
魔導師の使い魔は 犬か豚
ミュ―とムック アタシとボクは宿主を見守る眼球
燦々と輝く黄金色の四球
二日酔いのご主人さまには
ウィスキー色に映える
四杯のストレートグラス

アタシはミュー 猫のなきごえ ちがうわー
ミュタントのミュー ネコデナイネコだわよ
ミューミューミューミューミューミューミュー
我が輩にはもう名前があるのでR
母ミュ―の胎内よりいでしときより6キロ
あったのでR なんていっちゃって 実は
不肖の息子 だったりして 名は無食
ムッツリスケベエのアノヒトハ
木喰上人の信奉者でありまして
そこで我が輩 名はムックウとはっします
水濁って 魚住む詩可沼にと湯あみしゃした
ナンッチヤッテ かっこつけちゃっているが
ねね なにも食わずにおおきくなった
無を喰らい6キロにいたった ぼくムック

巨漢の 宿主の のたまうく朝ごとの祝詞
おまえらホンマニ飢えたら
おれを 喰らえ 85キロの生肉だぞ
か細き 奥さまは こころの処女膜をふるわせて
いますこし 寝ていたいわ おねがい
ミュ―とムック ムックおまえ もう太らないで
ミッキーロークも肥え うちの宿六も肥ふとり
ああ男たちよ わたしの夢をさまさないで
また すやすやと 寝息をたて 白河夜船

朝だ朝だ 夜明けだ朝だ あさきゆめみて
詩を書こう
詩を書こう
ミチコよ 目覚めよ ミューとムック もうナクな
朝食のうたげに腹いっぱい詩可沼の水と固形食をやるぞ
詩可沼は朝から梅雨寒
詩の書ける日 仕事は休み 日常の死の日


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詩5  いまは黄泉の国にいるともだちに 麻屋与志夫

2023-04-19 09:07:06 | 
詩5   いまは黄泉の国にいるともだちに

ことしも葉桜の季節になった
どうして花をみずに葉をみにくるのだろう
花が咲くころは華やかすぎてきらいだ
人ごみのなかで花など見上げてたのしくなるなんておかしなことだ
いつもきみたちと会っていたのはここだ
千手山公園の天辺のベンチ
葉桜の下で故郷の街を見下して青春の夢を語り合った
政治家に、なりたかったきみ
お金もちになりたかったきみ
女の子にモテタクテいたきみ
演劇にうちこみたかったきみ
絵かきに、なりたかったきみ
小学校の先生になりたかったきみ
成功したものも挫折したものも
いまはみんな泉下のひと
さびしいよ さびしいよ
桜の葉をみあげながらいまぼくは言の葉をつむいでいる
いつになっても完成しない小説をかいている
いちばんひ弱だったぼくが長生きして
こうして言の葉を茂らせているなんて
不公平だよな
過去った遠い盛夏のアブラゼミの鳴き声
でも でもいますこし猶予をくれ
ぼくらの生きた
この街でのぼくらの青春を
ぼくがきみらとのことを書きとめるまで
いますこしそこでまっていてくれ
そのうち会いにいくから

2017,4

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