田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

詩4 朝 めざめると  麻屋与志夫

2023-04-18 22:06:49 | 
詩4  朝 めざめると

目をさます

目覚める
の あいだには
どんな感性のちがいがあるのか
目覚める という感じではないのだ
中年になってからは
目覚めるには
一日への希望の出発がある
目をさます 倦怠の闇にまだ捕らわれている

朝 目を覚ますのは
ミュとムック 
二匹の猫が起こしに来るからだ
きまった時間に律儀に寝どこに
もぐりこんでくる
かのじょとかれは
わたしがトイレに入っていると
ちゃんと
待っている
かおをかしげて二匹で低く「ニャァ」と朝の挨拶

おなかを空かしているときの猫は
すごくコケティッシュだ
食事をねだるときの猫は
すごくファンタスティックだ
ひともいつも飢えていればいいのに

飢えのためなら
目覚める

目を覚ます
もない
とび起きてさあ仕事だ

庭の紫陽花は咲いているか
無花果の木にかけた農薬は
カミキリ虫を駆除したか
黒竹は雨で傾いだままか

二匹の猫 ミュとムックが
起こしに来る
時間だ

注 この頃母猫ミューとその息子のムックがわが家にはいました。初代の猫の家族です。


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詩3 愛猫リリの旅たちに捧げる

2023-04-18 09:10:05 | 
詩 3 愛猫リリの旅たちに捧げる 

だれかに見られているようで
ふりかえって見上げる棚の上から
わたしたちを見下していた
リリはもういない。
うとうととネボケ眼でわたしたちを
くびをかしげて、眺めていた
リリ、の視線はもうない。

部屋の隅にツメトギ台がポツンと置いてある
バリバリと狩りにでる雄叫びのような
猛々しいツメトギの音はもう聞かれないのだね
リリ、リリ、さびしいよ。

ネズミをくわえてきたり
子雀をくわえてきたり
ビンボーな老人老婆の
わたしたちを養おうとしていた
けなげな勇姿
リリ、リリ、リリはもういない。

よびかけると
かわいいちいさな顔をかしげ
おおきなあくびをしていた
白く鋭い牙をのぞかせて
ワイルドなリリ
リリ、リリ、リリはもういない。

病院につれていく
キャリーバックのなかで
さいごに猫らしくニャオ―と
鳴くことができた
あれがリリ、リリのおわかれの挨拶だったのだね
リリ、リリ、リリ、リリはもういない。

さいごにニャオ―と猫らしく鳴けたね
リリ、リリのおわかれの挨拶
たしかにうけとったからね
リリ、リリこれからもいつもいっしょだ
オワカレナンカジャないよ
リリ、リリこれからもいつもいっしょだ
わたしたちと一体になったのだから

一晩泣き明かして
目蓋のはれあがった妻のひとみに
リリ、リリ、リリ、リリ、リリがいる。

いくら探しても見つからなくなった
サッカ―ボール
指で妻がハジクとリリがくわえて
もどってきた
手製のミニボール
それがふいにリリ、リリの遺体のわきに
あらわれた
リリが一晩よこになっていた
籐椅子のうえにあった
それを見て
妻はまた泣きだした
リリ、リリ、リリ、リリ、リリ、リリ
骨壷にこのボールはいれてやるからね
無限に広がるピッチで独りサッカ―
たのしみなさい
ナデシコ猫のリリよ。

よく見えるよ
よく見えるよ
リリの快活にとびまわる姿が
リリリリリリリリリリリリリリリリリリ
よく見えるよ
よく見えるよ
わたしたちはいつもいっしょだ
いっしよだ
わたしたちは
いつもいっしだ
リリよ

ビンボウな老書生はこんな即興の詩しか
リリに捧げられない
ゴメンよ。リリ。




在りし日のリリ

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詩2  リリよ  麻屋与志夫

2023-04-17 20:33:58 | 
詩2 リリよ

冷凍室をあけると薄緑のアイスノンが目につく
リリは一晩この人工の氷にひやされていた
ほんとうは
人肌であたためていたかったのだが
かなしくてそれができなかった
週刊誌大の氷のうえで
ひと晩独りぼっちだったのだね
リリ
つめたかったろう
リリ
さびしかったろう

こころぼそかったろう
くやしかったろう
病気にさえならなければ
まだまだ生きていられたのに
たった1年8カ月のいのちだったね

腐敗したっていい
腐臭を部屋に充満させたっていい
氷で冷やしておくなんてこと
しなければよかった
腐って
臭くて
リリのことがイヤニなっていれば
リリの
みにくい容姿をみていたならば――
こんなにかなしまなくてすんだ

リリ、リリ、リリ
おまえはさいごまで
かわいいかった

あまりにあいらしいので
「リリ、カワイイ」
ワタシタチノ言葉に応えて
目を細めて
よく――
くるりとよこになったね

あの
あいらしいすがた
いまでも目にうかぶよ

どうして人間のかんがえから
ぼくらはぬけだせないのだろう
かなしいよ
かなしいよ
氷のうえに置き去りにして
ゴメンよ
ほんとうは
庭の隅に埋めたかった
土葬にして
毎日涙をながして
おまえの上にそそいだら
猫の木の芽が
でたかもしれない
大木になったら
ぼくは
おまえに寄りかかって
まいにち、嘆きの詩を
きかせてやれたのに
おまえは
一握りの
骨と灰になってしまった

2016,5



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詩 アダムとイブに残す言葉 麻屋与志夫

2022-04-17 10:00:39 | 
アダムとイブに残す言葉   詩

言葉の鱗で全身を鎧ってきた。
幾重にも いくえにもウロコを重ねて
全身をうろこで鎧っている

それが北斎の享年になったら
ホロホロと剝がれていく

I LOVE YOU
愛してらあな
このぶよぶゆ
肉のかたまり

万葉のむかしから
言の葉でわたしたちは
全身を飾りたててきた

像 花にあらざる時は夷狄
心 花にあらざる時は鳥獣
芭蕉さんだっていってるよ
言の葉があって花がある
葉も花もみんな言葉なんだよ
みんな みんな言葉なんだよ

このぶよぶゆした肉の塊を
言葉を鎧として 守るのだ
                                                                                                                     
戦争があるのは敵のぶよぶゆ
肉をほろぼすためなんだよ

人間なんかたいしたものじゃない
全身をはやく言葉でおおいかくせばいい。
ほら わたしたちの始祖が
アダムとイブがイチジクの葉で隠したように
全身を言の葉で隠せばいいのだよ
ブヨブユした醜いものが
みえないようにしようよ
そうすれば
わたしたち
神になれる
戦争もない
だって
ほら ほら
神様が
いってるよ
始めに
言葉ありき

わたしなんか
ぼろぼろ
全身を鎧ってきた
言葉の鱗が
剝げ落ちてきた
ショウガナイヨナ
画聖北斎の享年なんだから
でも でもだよ 
まだ 言の葉で
身を包むことはやめないよ
やめたらいまは
ひからびて
骨皮筋衛門
醜いからだ
晒すことになるもの

だから遺言かくには
まだ いかないんだ




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