episode6 二階の窓に人影が
蒸し暑い夜。
「お父さん、車止めて!!」
「どうした。塾にわすれものか?」
「二階の窓に人影が見えた」
小学校の二階の窓。
たしかに人影を見た。
橋本修はこの小学校を去年卒業している。
「ぼくの一級センパイが東中の三年生のとき、あそこから飛び降り自殺してるんだよ」
「そんなこともあったな」
父親の修三も覚えている。
やはりこの小学校の卒業生です。
小さな田舎町だ。
何代にもわたって、同じ学校の卒業生。
そんな家庭がおおい。
それにしても、かわったものだ。
門扉は固く閉ざされている。
外部からの侵入を拒んでいる。
昔のように学校が安全な場所ではなくなってしまった。
たしかに修がいうように。
人影が見えたようなきがする。
息子は不満らしかった。
修三は校門から離れた。
このさきでは、クリーンセンターの所長が拉致され、殺されてしまった。
街灯もなく闇が支配している。
それからまもなく、銀輪のかすかなおとがした。
タケシと文彦のふたりずれだ。
修とおなじ塾からのかえりだ。
東京に本部のある大きな塾だ。
東京だったら、この時間でも人通りは途絶えません。
ここは田舎街。
ほとんど真っ暗です。
自転車のライトが闇をきりさいている。
かれらは、校門をのりこえました。
高校一年生。自殺した生徒とは中学で同級生だった。
怖いもの知らずのとしごろです。
幽霊が出るという「噂」を聞いて、校舎に忍び込んだのでしょう。
黒い影が教室の机にすわっていた。
「ぼくも進学したいよ」
幽霊がいいました。
その声は。たしかに聞きおぼえがある。
「おまえ、黒岩か?」
タケシがふるえながらききました。
ふりかえった顔は、崩れています。
「ぼくも宇都宮高校を受験したいよ」
「ああ、黒岩なら宇高なんがチョロいよ」
「これ、やってみるか?」
文彦はふるえながら、数学の問題をわたしました。
幽霊は問題を解くことに熱中している。
数学の得意だった黒岩。
幽霊になっても数学の問題を解くことに熱中している。
文彦はタケシの腕をつついた。
ふたりはそっと階段をおりた。
校門でふりかえった。
幽霊はまだ机にむかっていた。
それからまもなく、マサキと健が教室にはいた。
「ぼくも進学したいよ」
黒岩の幽霊がそっとつぶやいた。
マサキも健も恐怖のあまり腰をぬかしてしまった。
崩れた顔がせまってきます。
ウジが顔からはいだしている。
吐き気をもよおかような、腐ったにおい。
はって逃げた。
でも、幽霊のほうがはやく移動でる。
「ぼくも受験勉強したいよ」
そういって、ふたりの上におおいかぶさった。
ピチャピチャ。
ズルズル。
ふたりとも体液のすべてをぬきとられてしまった。
「ぼくも宇高へ進学したいよ」
幽霊が、まだつぶやいていた。
翌日校門の前で、マサキと健の、ふたりの自転車が発見された。
マサキと健がどこにいったのか、だれも知りません。
ただ、そのご、窓に映る影は三つになりました。
でも夜校舎に入ろうとする少年はいまのところ、いません。
今日も遊びに来てくれてありがとうございます。
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「お父さん、車止めて!!」
「どうした。塾にわすれものか?」
「二階の窓に人影が見えた」
小学校の二階の窓。
たしかに人影を見た。
橋本修はこの小学校を去年卒業している。
「ぼくの一級センパイが東中の三年生のとき、あそこから飛び降り自殺してるんだよ」
「そんなこともあったな」
父親の修三も覚えている。
やはりこの小学校の卒業生です。
小さな田舎町だ。
何代にもわたって、同じ学校の卒業生。
そんな家庭がおおい。
それにしても、かわったものだ。
門扉は固く閉ざされている。
外部からの侵入を拒んでいる。
昔のように学校が安全な場所ではなくなってしまった。
たしかに修がいうように。
人影が見えたようなきがする。
息子は不満らしかった。
修三は校門から離れた。
このさきでは、クリーンセンターの所長が拉致され、殺されてしまった。
街灯もなく闇が支配している。
それからまもなく、銀輪のかすかなおとがした。
タケシと文彦のふたりずれだ。
修とおなじ塾からのかえりだ。
東京に本部のある大きな塾だ。
東京だったら、この時間でも人通りは途絶えません。
ここは田舎街。
ほとんど真っ暗です。
自転車のライトが闇をきりさいている。
かれらは、校門をのりこえました。
高校一年生。自殺した生徒とは中学で同級生だった。
怖いもの知らずのとしごろです。
幽霊が出るという「噂」を聞いて、校舎に忍び込んだのでしょう。
黒い影が教室の机にすわっていた。
「ぼくも進学したいよ」
幽霊がいいました。
その声は。たしかに聞きおぼえがある。
「おまえ、黒岩か?」
タケシがふるえながらききました。
ふりかえった顔は、崩れています。
「ぼくも宇都宮高校を受験したいよ」
「ああ、黒岩なら宇高なんがチョロいよ」
「これ、やってみるか?」
文彦はふるえながら、数学の問題をわたしました。
幽霊は問題を解くことに熱中している。
数学の得意だった黒岩。
幽霊になっても数学の問題を解くことに熱中している。
文彦はタケシの腕をつついた。
ふたりはそっと階段をおりた。
校門でふりかえった。
幽霊はまだ机にむかっていた。
それからまもなく、マサキと健が教室にはいた。
「ぼくも進学したいよ」
黒岩の幽霊がそっとつぶやいた。
マサキも健も恐怖のあまり腰をぬかしてしまった。
崩れた顔がせまってきます。
ウジが顔からはいだしている。
吐き気をもよおかような、腐ったにおい。
はって逃げた。
でも、幽霊のほうがはやく移動でる。
「ぼくも受験勉強したいよ」
そういって、ふたりの上におおいかぶさった。
ピチャピチャ。
ズルズル。
ふたりとも体液のすべてをぬきとられてしまった。
「ぼくも宇高へ進学したいよ」
幽霊が、まだつぶやいていた。
翌日校門の前で、マサキと健の、ふたりの自転車が発見された。
マサキと健がどこにいったのか、だれも知りません。
ただ、そのご、窓に映る影は三つになりました。
でも夜校舎に入ろうとする少年はいまのところ、いません。
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