田舎住まい

吸血鬼テーマーの怪奇伝記小説を書いています。

お母さん、タスケテ!!秀子死ぬ イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-08 09:02:48 | Weblog
8

調理の時間に魚を三枚におろした。
――ときみたいに。
我田先生は秀子の喉に!!
ナイフ押し当てた。
このあたりから。
――切り裂こうかしら。
と、にたにたわらいながら。
慎重にナイフを喉にあてがって。
見当をつけている。

魚を切るように!!
ナイフを肉にさしこんだ。

そのまま――。
耳ら耳まで一気に引き裂いた。

秀子は首筋に激痛がはしった。
秀子は首筋に手をやった。
ぬらっとした感触。
その上にはなにもなかった。
首はなかばまで切られていた。
重みで前にたれさがっていた。
それを意識できたのは一瞬だった。

真っ赤に染まった手をみられなかった。
なぜなら、それを見るための。
目が。
首が――。
肩からたれさがっていた。

肩の上。
そこにはなにもなかった。

切断面からドバッと吹き出した血。
血血血血血血。
床に溜まることもなく。
一か所に吸い込まれていく。
血が流れていく。

秀子にはそれが見えない。

痛い。
痛い。
ひどく、だるい。
寒い。
寒い。
体が震えだした。
なにも、考えられない。
感覚が麻痺していく。
感覚がなくなる。
それでも、痛い。
いたい。
イタイ。
お母さんタスケテ。
ヒデコはワルイコデシタ。
イイコニナリマス。
ダカラタスケテ。
唇はパクパク動いている。
声はでていない。
オカアサンワタシノサイゴノネガイキイテ。
とぎれる。
意識がもうろうとする。
体がひくひくする。
ひくひく痙攣する。
秀子はまるでバスルームの吸込口みたい、とおもった。
たれさがった首。
そして目。
見た。
血を見た。
もう、痛みも恐怖もなにもない。
それが秀子の最後の意識だった。
死んだ。

……血はぽこぽこと音を立てていた。
床の節穴から地下に流れ落ちている。
いや、よくみると節穴なんかあいていない。
そんなことは、分明だ。
なにかが地下にいる。


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首筋にナイフ イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-08 00:16:52 | Weblog
7

我田先生は、苦しむわたしの顔をうっとりと楽しんでいる。
先生はわたしの顔をのぞきこんでいる。
先生がおかしい。
そうにちがいない。
富子がいうようにおかしい。

やっと秀子にもそれがわかった。
今日の先生はすこしおかしい。
わかったときには、もう遅かった。

必死で先生の手から逃げようとした。
でも先生の腕力には秀子はかなわない。
小柄な先生のどこにこんな力があったの?

「秀子さんは悪い子よね。悪い子にはおしおきがいるのよ。先生がいまオシオキしてあげますからね」

先生が悪魔に変身した。
いやはじめから悪魔だったのだ。
先生が大型のタカッターナイフをとりだした。
いままで、どこに隠していたのだろう。
チヤキチヤキ音を立てている。
引き伸ばす。
音をたてて引き伸ばす。
生け贄の女児を威嚇して楽しんでいる。

恐怖の音。
音で秀子をおどしている。
先生は楽しんでいる。
先生でないものに変容している。  
ナイフを逆手に握る。
握ったナイフをジッと見ている。
ナイフの鋭利な刃をジッと見ている。
潤いのない両目が赤く充血している。
目が赤く光っている。 
光っている。  
赤い。 
秀子は立ち上がろうとした。
恐怖に顔が歪んでいる。
恐怖にガクガク震えている。
逃げようとした。     
片手でがっしりと肩を押さえつけられている。
いくらもがいても動けない。 
小柄な先生のどこにこんな力があったの?
身動きすることすらできない。

ああ、わたしは殺される。
殺される。
刻まれるんだ。
喉にナイフ。
これから刻まれるのだ。
鋭利なナイフだ。
鋼がひんやりとした。

その感触は恐怖だ。 


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口をふさがれた イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-07 23:12:45 | Weblog
6

ちがう、先生の声がいつもの声とちがう。
暗い。
低く暗い。
しわがれて男の声のように太い。

ちがう。
これは先生の声じゃない。
わたしのことなんかすこしも恐がっていない。
後ろを振り向こうとしたが動けなかった。

眩暈がした。
暗いのは先生の声だけではない。 
暗く陰湿な声に保健室まで光を失っていく。
それなのに薄闇が鏡になった。
うしろにいる先生の表情まで鮮明に映している。

おかしい。   
闇の中で背後の先生が見えるなんてどう考えてもおかしいのだ。
秀子はじぶんが、意識の目でみているのだとわからない。
上半身が震えだした。

「そうよ。そうよ。もっと恐がって」

ちがう。

わたしのよく知っている先生とちがう。

いままでの先生とはちがうものになっている。

いままでの先生とはまったくちがう。

「そうよ。そうなのよ。先生が怖い存在だってことが……ようやくわかってもらえたようね。うれしいわ。うれしいわ」
けっして聞いてはいけない。
これは悪魔の声だ。
秀子は恐怖のために意識が混乱した。
じぶんのおかれている状況がようやくわかった。
口をふさがれた。  
息がつまる。 
苦しい。
息ができない。
耳がきんきんする。
必死で抵抗した。
立ち上がるんだ。
なにかヤバイ感じ。  

動けない。 
苦しい。    
顔が恐怖と窒息感でゆがんでいる。
苦しい。
 

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悪魔の声 イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-07 18:31:07 | Weblog
5

「ババァ。うざいのよ……」
だれかが、小声で言う。
我田先生がねちねち小言をいっている。

6年1組のクラスだ。
かつて翔太がいたクラスだ。
イジメにあったクラスだ。

「あらぁ。秀子さん。わたしがいつからババァになったの。まだ結婚もしていないのよ」
秀子のこえだと分かってしまった。

「その顔で男ひっかける気かよ」
「あらあら、うれしいこといってくれるのね。あんたらには、わたしの美しさがわからないのよ。ガキが。あんたらまだ小学生ですよね」
「きまってるじゃん。いちおう我田先生の生徒ですからね」
「わかってるのね。先生に逆らうとどういうことになるのかじっくりと教えてあげるから保健室にいきなさい」
「いいのかよ、いきがって……」
秀子はぷりぷりしながら席を立った。

「いかないほうがいいんじゃない。今日の我田先生いつもとちがうみたい」
隣の席から富子が注意する。
「へいき、へいき。いざとなったらたたきのめしてやる」
1、65メエトルもある小学生は小柄な担任の女教師について保健室にはいった。
先生用の肘掛けのあるフエイクの革張りに椅子にふんぞりかえった。
うしろから先生に頭をかかえこまれた。
動けない。
いがいと力強い腕だ。
あばれたが動けない。
「なにするんだよ」
秀子は背中の我田にドスの効いた声をかける。
とても小学生とはおもえない恫喝に満ちた声。
いつもなら、秀子のこの一喝でおとなしくなる。
先生だって例外ではない。 
我田の動きが一瞬止まった。    
それみろ、いくらいばっていてもセンコウはセンコウダ。
いくら暴力教師といわれていても強いものには逆らえない。
なぐりあいになればぜったいに負けないからね。
我田が秀子の脅しの声に怯んだ。
動きが止まった? 
ちがう。
今日はなにかちがう。
どこか、へんなのだ。
怯えて挙措がとまったわけではなさそうだ。
秀子を叩こうとした手をひっこめたのは。
そんなしおらしい心情からではなかった。   
我田は楽しんでいた。
先生はこれから起きることを思い。
これからの動作が。
いかにご主人さまによろこばれるか。
知っていたので……楽しんでいたのだ。
「さあ……。どうしょうかしらね」
秀子はギクットした。



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勝平のいる場所 イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-06 14:11:01 | Weblog
4

東北自動車道を神沼インターで下りた。
太陽は高く昇っている。
曙光をあびて早稲田インターから高速にのった。
とばしにとばしてついた神沼のインターだ。
ここからではまだ30分はかかる。

4駆を走らせてかけつけた家。
留守番をたのんでおいた父の姿は消えていた。
キッチンに飲みかけの徳利かおかれていた。
飯碗にはまだ食べきっていないご飯がのこっていた。
食事を中断して外出したようだ。
父のじまんのハーレーダビットソン1200ccがない。
ガレージの中はがらんとしていた。

ミュウとムックは元気だった。
同じような、おおきなあくびをしている。
翔太と誠にからだをすりよせてきた。

「ミュウ。オヤジはどこだ。猫には7つの命があるんだろう。超能力だってあるよな。教えてくれよ」
「バイクは学校においてある。ぼくには見える」

翔太がいう。
緊張している。

「なにか急におもいたって、でかけたのだ」 

翔太がミュウとムックの餌をもってもどってきた。
ゆっくり餌をやってはいられない。
誠は2日も家を留守にしていた。
2匹の猫はいいあわせたように体をすりよせている。
あまりよろこぶのは猫として照れくさい。
というように……。
体をすりよせながら……
おおきなあくびをまたしている。
翔太にミュウがまとわりつく。
離れない。
頭を翔太の足にこすりつけペロペロなめだした。
ニャアニャア鳴いた。
翔太がひょいとミュウをだきあげた。
4駆の助手席にムックはすでにのりこんでいる。

「もう猫だけで留守番をするはゴメンだ。どんなことがあってもついていくから」
とムックがいっているようだ。

 ミュウとムックは「犬猫だ」と誠と翔太が驚嘆する。
……犬のような行動を、もともと二匹の猫たちはしていた。 
 
呼ぶと真っ直ぐにとんでくる。
犬みたいだ。
なでてやると、背筋をぴんとのばして、後ろ足をつっぱって応える。
さあ散歩にいこうか、というとうれしそうについてくる。
散歩の好きな猫。
犬みだいだ。
人のことばを理解できるところがすごい。
人の心の動きを敏感にとらえる。
犬のような猫だ。
いや、犬よりも上かもしれない。
ミュウが猫のミュウタントであることをねがた。
進化してくれることを期待していた。
両脇にミュウとムックを従えた翔太。
誠は翔太の肩をたたいた。

「出発するぞ」
親子代々、イジメにあった。
近づきたくない場所だ。
その嫌悪感が激し過ぎる。
その場所のことをおもっただけで、不愉快になる。
PTSD。心的外傷後ストレス障害を呼び起こす場所。 
もちろん、自己診断だ。
だが、父をたすけるためだ。

あまり行きたくない北小学校に向かった。
誠は4駆をスタートさせる。
もちろん、翔太が勝平ジイチャンのいるところを。
誠に告げた。
翔太には勝平のいる場所が見えている‼

見えているのだ。



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あさから愛機ハルに向かう/麻屋与志夫

2011-10-06 04:19:54 | Weblog
10月6日 木曜日
ブログです。
 
●朝起きると雨。
秋雨にはさびしさがともなう。
カミサンが気をきかして蓋をしておいた風呂。
まださめていなかった。
それでも、ぬるい。
ゆっくりと浴槽にひたりながら「クノイチ」の構想をねる。
至福のときをすごす。

●誇張。
大風呂敷をひろげる。
とむかしはいった。
わたしの小説はマジメスギル。
もっと、大袈裟に書いたり、大きな問題をテーマとしたい。
そんなこと、書けるのかな。
そんなこと、書いたことないものな。
などとかんがえながら、浴室のそとの雨音にみみをかたむけていた。
さびしい雨音をききながら……。
まだかなえられていない夢にむかって精進しよう。
がんばろうとおもった。

●こちらは、老いた駄馬。
いくら鞭をいれてもはしりだせない。
毎日、こつこつ努力するしかない。

●若い人のブログ小説をときおり読ませてもらっている。
少しの間読まずにいると、あれ、このひとこんなにうまかったのか、とおどろかされる。
いつのまにか進化している。
おお化けに化けている。
努力のタマモノというより、天性の才能にめざめたかんじがする。
ウラヤマシイナ。
まぶしい。
文章もきらきらひかっている。
おもしろくて、一気に読み切る。

●ひとのことをうらやんでも、仕方ない。
風呂からでて、水を一杯飲んで、パソコンをひらいた。

●Good morning HAL。



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翔太は能力者 イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-05 12:06:46 | Weblog
3

「パパ。オジイチャンを助けに行ってあげて」

翔太がむっくりと起き上がる。

「なにがあったんだ。どうしたんだ」
「オジイチャンが、悪魔と戦っている。すごく恐いヤツ。アノママデハオジイチャンガアブナイ」
遥かな距離をへだてた遠隔の地。
神沼でおきていることを透視する能力も。
翔太に芽生えた。

うれしかった。
泣くほど、うれしかった。
いや、さきほどから、涙をこぼしている。
泣いている。
戦慄をもってよろこびをうけいれた。 
翔太は能力者だった。 
……遺伝だ。

わたしよりも、先祖の能力をすなおに受け継いでいる。
「ジイチャンガアブナイ」
それだけ言うと、またすやすやと寝てしまった。
まるで、翔太の口をかりて亡き母が、神沼にいる夫の危機を知らせてきたようだ。
こんな超常現象を起こすことのできるのは母だ。
母の並子には超能力がそなわっていた。
といつも思ってきた。
母が孫の翔太にのりうつってくれたのだ。
母が翔太の中にいる。

まちがいない。
父になにか起きているのだ。
それを母が知らせているのだ。
夫の危機を知らせている。
警告を発しているのだ。

「翔太もつれていく」
「やめて。やめてよ。まだ病院から無理につれかえったばかりじゃないの」

美智子は怒りだした。
誠には眠気がまた打ち寄せてきた。
深い眠りの底に連れさろうとしている。
異常なことが起こっている。
明確に認知できた。
そして……眠気はわたしが神沼にいくことをジャマしているのだ。
わたしが父を助けにいくことをジャマしているものがいる。

妻にはわからない。
妻の現実認識と誠のそれが、まったく噛み合わないでいる。

「早稲田にまできて、いがみあわないでよ」

冴子と理佐が口をそろえて父をにらみつける。
女の子はみんな妻の味方だ。
さびしい。
さびしい。
翔太には隔世遺伝でわたしの母の並子の能力が伝わっていたのだ。
どうして、いままでそれに気づいてやれなかったのだ。
いや……目覚めたばかりなのかもしれない。
父のもつ小説を書く才能はどうやらわたしにかろうじて流れている。
ほどほどの文才はあるつもりだ。
だが――なにか得体のしれないものを洞察する能力はない。
受け継げなかった。
父の母、誠からみれば祖母貞子の能力にかんする家族内での言い伝えはかぎりがない。
成尾での尾形一族の家族伝説の中でわたしは育った。
尾形一族から祖母の貞子、母の並子と続いて嫁のきたために。
わが家の武骨な家系に。
能力者を派出する血が流れこんできたのだ。
それを翔太が濃く受け継いでいる。
そうだ、これこそがわが家の血なのだ。
インビジブルなものを視覚化してとらえることができる。 
遠隔の地でも一族の危機をシンクロニシテイに察知することができる。
――能力がある。
まだ気づいていない。
未知の力も秘めているはずだ。


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中間試験早く終わるといいな/麻屋与志夫

2011-10-05 06:17:01 | Weblog
10月5日 水曜日

ブログです。
●朝早く起きてパソコンをひらく。
訪問者数がすくなかった。
がっかりしながら考えた。
そうか、中間試験のまっただなかだ。

●わたしのブログ小説の読者は中学生と高校生だ。
稀にはおとなのかたもお気に入りに登録して読んでくれている。
パソコンの彼方のことだ。
よくはわからない。
ぜひぜひ、コメントをお寄せください。
読者の顔が見えない。
翔太君のような能力がわたしにあればいいのですが。ね。

●いま書いている「イジメ教師は悪魔の顔」はもうじきおわります。
学校からイジメがなくなることをねがってかいています。
イジメの原因は教師にあるという私見をもっています。
内部告発をしているような気分でそのことを、かきつづけています。
ただそれだけでは、教師を糾弾するだけではもうしわけがない。
真剣に教壇に立っている先生がたのほうが、多いわけですから。
――ラストは驚きの結末を迎えます。
ご期待ください……とPR。

●はやく試験おわるといいね。
がんばってください。
分かっていると思いますが。
受験生の内申書は二学期までというのが何処の県でも常識です。
この中間と、期末は命がけでがんばってください。

●わたしも、おもしろい小説をかこうと日夜精進しています。

●次回作はいままででいちばん評判のよかった「クノイチ48」にする予定です。

●「クノイチ48帝都血戦」という題にしようかな。
〈血〉としたのは、ごぞんじのようにまたまた吸血鬼が登場するからです。

●試験100点とってよ。
英語は音読。
暗記してね。
近くにいるのだったら。
わたしのブログの読者だったら。
無料特訓してあげるのにね……。

●小説は午後アップします。



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悪意の正体か見えてきた イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-04 14:39:33 | Weblog
2

翔太を揺り起こす。

「ジイチャンがあぶない」

寝言をいっている。
だが――。
あまりにことばがしっかりしている。

「ジイチャンがあぶない」

部屋の外からは……。
都会の明け方の騒音が忍び込んでくる。
都会はもう目覚めているのだ。
翔太の声を聞いているうちに。
誠も父の姿が見えてきた。

暗い洞窟にうずくまっている。
黒っぽい後ろ姿がイメージできる。
父の前方にさらに暗い闇がわだかまっている。
なにか蠢いている。
なんであるのか?
その実体は分からない。       
タールを流したような闇が幾重にも重なっている。
圧倒的に邪悪なものが父に迫っている。
分厚い闇のなかで――。
なにか巨大な〈悪〉が始動している。
忌まわしいもの。
動きだしてはいけないもの。
凶悪な物の怪‼。 

翔太が見ているものを――。
――誠に転写しているのだ。
翔太の圧倒的な能力。
誠はうれしかった。
ついに、誠がうけつぐことのできなかった。
超能力。

隔世遺伝だ。

翔太が成尾家の能力を受け継いだ。

誠には漠然とリスクを予知することはできても。
イメージとしてとらえることはできない。
迫りくる悪意の波動を。
おぼろげではあるが。
感じることができる。
その能力のために。
いままでどんなに助けられたか。      
そうした能力は母から受け継いだものだ。
幼いときから、イジメにあってきた。
その危険な辛さと。
戦うための能力の発現は。
誠にはあった。
はやくからかった。

だがそこまでだった。

能力というものは、親から子へと伝わりつづける。
それがありがたいことに翔太には。
誠より強く伝わったらしい。
翔太は。
いま。
その能力が。
ますますつよくなっている。

進化しているのだ。

翔太が熱をだしたのは。
知恵熱のようなものだった。
能力に目覚めるための通過儀式だった。
翔太がいよいよ目覚めた。
うれしさのあまり。
誠は感激の涙をこぼしていた。

「翔太……起きて。翔太……どうしたの。熱はないわ」

妻は誠を見ていう。

熱はない。
そういうことではない。
熱にうかされているわけではない。

翔太……なにがあるんだ。

なにが起きているんだ。



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勝平ジイちゃんが危ないよ イジメ教師は悪魔の顔/麻屋与志夫

2011-10-03 09:26:15 | Weblog
第六章 翔太の覚醒。

 悪しき者の角はことごとく切り離されるが
 正しい者の角はあげられるであろう。             詩編 七十五 十

 1

美智子が誠を揺り起こす。
すこし邪険に。
……やはり退院させたのはまちがいだったのだ。
また翔太は熱をだしたにちがいない。
なにか、わけのわからないことをいっている。
うなされるいる。 
まるで、目覚めているときとおなじ口調で……。

カツヘイジイチャンが危ない。
お父さん、起きてよ。ジイチャンが戦っているよ。
とうわ言のようにいいつづける。

「誠ちゃん起きて。なんか翔太がおかしいのよ。誠ちゃん、起きて」

「お父さん、起きてよ。ジイチャンがあぶない」

翔太がベッドに起き上がった。
まだ目はとじている。   
でもねぼけているようすはない。
すごくはっきりとことばを口にしている。
妻と翔太に呼びかけられている。

きこえていた。
誠にはわかっていた。
誠は目覚めかけていた。
浅い眠りの淵に漂っていた。
病院の、医者の態度を理解しかねて眠れなかった。
やはりカルト宗教の支配下にある病院なのだろうか。
残念ながら、それをたしかめるための友人はいなかった。
医者の友だちは何人かいる。
だが、彼らは友情よりも同業者とのつきあいを優先する。
フランクになんでも話なしてくれるだろうか。
わからない。
だいいち、平和ボケした日本。
異様なものにたいする警戒心が。
欠如している。
特に学校や児童がらみの事件では。
なにか……これは……おかしい。
なにか起きそうだ、と認識できない。   
凶悪な犯罪が起こる。
あとから防犯をさわぎだす。
被害者がでてしまってから、残ったものへカウンセラーがかけつける。
心のケアなどを叫ぶ。

ひさしぶりで家族が全員そろった。
大学にかよっている冴子と理佐。
二人の娘たち。
翔太、妻の美智子。
いつのまにか、うつらうつらしていた。
だから翔太の声は、はじめから耳にひびいていた。

「マコチャン。起きてよ。
もうだいじなときには、いつものんびりとねているんだから」

翔太はまたすやすやと眠っていた。
横になってしまった。

「翔太。なにがあったんだ? ジイチャンになにが起きているんだ」
 

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