舞台の脚本というが、事実が下敷きになっているかわからない。
大戦中のポーランドの小さな田舎街の話だ。
以前旅回りの売れない俳優をやっていた老人が、それでは食べていけないので役所にやとわれて書記をやっている。
老人は傍らこの街の青年に芝居を教えていた。
その小さな街に突然ナチの将校が来る。
将校は、学校の先生、医者、ジャーナリスト、それから俳優といった知識人を一つところに集めて処刑するという。
戦時下だ。
そして、一人ひとり職業を聞いていったら、この人は役場の書記だという。
将校は、それでは知識人ではないと、彼を外そうとすると、
「いや、私は俳優だ」
という。
しかし、俳優といったって遊びで芝居をしているのだろうと取り合わなかった。
困惑している将校の前で、「俳優」であることを証明するために男は『マクベス』を演じる。
幻の刀が空に刺さっているのを追いかけていくマクベスの場面。
その芝居を青年もじっと見ている。
果たして『マクベス』は好演だった。青年にもそれがわかった。
そして将校は、言う。
「あなたは俳優である。しかも優れた俳優である。」
「……列に戻ってください。」
隊列は街の外に連れ出されていく。
男の夢はワルシャワの観衆の前でシェークスピアをやるのが夢だったという場面があるという。
物理的な死よりも、自分自身に対する誇りをこの一人の青年の目を通して証明したかったと解釈するのは加藤周一だ。
近しい一人こそ、観衆一般ということ?。
以上、加藤周一『私にとっての20世紀』という本を参考にしました。
大戦中のポーランドの小さな田舎街の話だ。
以前旅回りの売れない俳優をやっていた老人が、それでは食べていけないので役所にやとわれて書記をやっている。
老人は傍らこの街の青年に芝居を教えていた。
その小さな街に突然ナチの将校が来る。
将校は、学校の先生、医者、ジャーナリスト、それから俳優といった知識人を一つところに集めて処刑するという。
戦時下だ。
そして、一人ひとり職業を聞いていったら、この人は役場の書記だという。
将校は、それでは知識人ではないと、彼を外そうとすると、
「いや、私は俳優だ」
という。
しかし、俳優といったって遊びで芝居をしているのだろうと取り合わなかった。
困惑している将校の前で、「俳優」であることを証明するために男は『マクベス』を演じる。
幻の刀が空に刺さっているのを追いかけていくマクベスの場面。
その芝居を青年もじっと見ている。
果たして『マクベス』は好演だった。青年にもそれがわかった。
そして将校は、言う。
「あなたは俳優である。しかも優れた俳優である。」
「……列に戻ってください。」
隊列は街の外に連れ出されていく。
男の夢はワルシャワの観衆の前でシェークスピアをやるのが夢だったという場面があるという。
物理的な死よりも、自分自身に対する誇りをこの一人の青年の目を通して証明したかったと解釈するのは加藤周一だ。
近しい一人こそ、観衆一般ということ?。
以上、加藤周一『私にとっての20世紀』という本を参考にしました。