三條美紀さんという非常に美人の女優さんをご記憶だろうか?元女優の紀比呂子(キノキロコ)さんの実の母親である。どのような事情でこの女優さんが我が家に訪れ、マージャンを楽しむようになったかは知らぬ。私は既に高校生だったが、父は適当に「息子です」と彼女に云ったきり、それ以外のことは一切私には説明がなかった。彼女と一緒だったのは建設会社の社長とその友人、それに運転手だった。社長と三條さんとはその当時から恋仲だったようだが、その後に結婚した。
運転手はマージャンに加わらなかったが、私に自分の経験したことをいろいろと話してくれた。彼は私を自分の弟のような気がすると云った。最初は怖い人だと感じていたが、何回も会うようになると、その風貌とは違って非常に優しい人だった。お互いに親しくなると、「自分は特攻(陸軍特別攻撃隊)の生き残りだ」と云い、そのことを、当時の状況を含めて話してくれた。
他の隊のことは知らないが、自分の隊では特攻は上から指名されるものではなく、上官がどのような任務かを隊員に充分に説明し、決して生きて帰れないことを伝えた上で志願者を募ったそうだ。「志願する奴は居るか!」と聞かれた時、真っ先に手を挙げたのは自分だったと照れたように彼は云った。「どうして志願したの?」と聞くと、しばらく考えてから、「真っ先に手を挙げたのは見栄があったんだと思う」。そして続けた。「この戦況ではいずれ敵から攻撃されて戦死するだろう。それなら俺から敵艦に突っ込んでやれと云う気になったんだ」と昔を思い出すように云った。あの戦争では誰もが生きて帰れないだろうと覚悟していたそうだ。而し、彼のように率先して死んでやろうと考える兵と、少しでも最後の最後まで生きてやろうと考える兵とがいたようだ。
全ての特攻志願兵は別の兵屯地に移され、非常に豪華な食事を与えられた。中でも雪のように白かった米のメシは涙が出るほど嬉しかった。当時を思い浮かべるように嬉しそうな、そして寂しそうな顔をして私に云った。
その特攻出撃基地からは毎日のように仲間が飛び立って行ったが、真っ先に手を挙げた彼の順番は終戦の日まで巡って来なかった。彼はどのようにしてあの順番を決めたのか、誰がそれを決定したのか、未だに解せないと最後に云った。
2月の半ばに上野動物園に行った。天候が良かったせいか非常な混雑ぶりだった。その日は気温が上がるとの天気予報だったので、出来る限り身軽な服装で行った。予報を信じてよかった。多くの人は、特に外国人はダウンジャケットを着ている人までいた。脱いで手に持っているがまるで大きな荷物を抱えているようだった。
子供のころ親に連れられて、また自分が親になってからは子供たちを連れて上野動物園には何度も行ったが、それとは別に動物の写真を撮ることだけを目的に上野動物園に行ったのは今回で丁度100回目になった。もの好きと云われればそれまでだが、動物の写真を撮っていると実に楽しく時間を過ごせる。カメラを構えなくとも、動物たちを見ているだけでも彼らの可愛さが伝わってくる。
運転手はマージャンに加わらなかったが、私に自分の経験したことをいろいろと話してくれた。彼は私を自分の弟のような気がすると云った。最初は怖い人だと感じていたが、何回も会うようになると、その風貌とは違って非常に優しい人だった。お互いに親しくなると、「自分は特攻(陸軍特別攻撃隊)の生き残りだ」と云い、そのことを、当時の状況を含めて話してくれた。
他の隊のことは知らないが、自分の隊では特攻は上から指名されるものではなく、上官がどのような任務かを隊員に充分に説明し、決して生きて帰れないことを伝えた上で志願者を募ったそうだ。「志願する奴は居るか!」と聞かれた時、真っ先に手を挙げたのは自分だったと照れたように彼は云った。「どうして志願したの?」と聞くと、しばらく考えてから、「真っ先に手を挙げたのは見栄があったんだと思う」。そして続けた。「この戦況ではいずれ敵から攻撃されて戦死するだろう。それなら俺から敵艦に突っ込んでやれと云う気になったんだ」と昔を思い出すように云った。あの戦争では誰もが生きて帰れないだろうと覚悟していたそうだ。而し、彼のように率先して死んでやろうと考える兵と、少しでも最後の最後まで生きてやろうと考える兵とがいたようだ。
全ての特攻志願兵は別の兵屯地に移され、非常に豪華な食事を与えられた。中でも雪のように白かった米のメシは涙が出るほど嬉しかった。当時を思い浮かべるように嬉しそうな、そして寂しそうな顔をして私に云った。
その特攻出撃基地からは毎日のように仲間が飛び立って行ったが、真っ先に手を挙げた彼の順番は終戦の日まで巡って来なかった。彼はどのようにしてあの順番を決めたのか、誰がそれを決定したのか、未だに解せないと最後に云った。
2月の半ばに上野動物園に行った。天候が良かったせいか非常な混雑ぶりだった。その日は気温が上がるとの天気予報だったので、出来る限り身軽な服装で行った。予報を信じてよかった。多くの人は、特に外国人はダウンジャケットを着ている人までいた。脱いで手に持っているがまるで大きな荷物を抱えているようだった。
子供のころ親に連れられて、また自分が親になってからは子供たちを連れて上野動物園には何度も行ったが、それとは別に動物の写真を撮ることだけを目的に上野動物園に行ったのは今回で丁度100回目になった。もの好きと云われればそれまでだが、動物の写真を撮っていると実に楽しく時間を過ごせる。カメラを構えなくとも、動物たちを見ているだけでも彼らの可愛さが伝わってくる。