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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

板橋高校卒業式事件国連カウンターレポート<4/5>

2013年11月01日 | 板橋高校卒業式
 ◎ D-5,フォルホーフ教授による『第6回政府報告書に対する意見』ダイジェスト
   ~「公共の福祉」の保護は表現の自由の権利に対する内在的かつ正当な制約になりうるか?

        ベルギー・ヘント大学およびデンマーク・コペンハーゲン大学教授 デレク・フォルホーフ(博士)

 (1)はじめに
 日本政府は、最高裁判決(2011.7.7)を例に引き、表現の自由に関する事案に「公共の福祉」概念を適用することによって日本の司法が自由権規約第19条を遵守していると主張している。本意見書は、果たしてそれが妥当とみなされるかどうかを検証するものである。
 (筆者はこれらすべての判決を弁護団による英訳版(非公式)によって読ませていただいた。)
 (2)事実関係と裁判手続き
 (D-2(2)参照。)
 (3)意見
 最高裁判決は「表現の自由は、民主主義社会において特に重要な権利として尊重されなければならない」と認めているが、その自由に関して「公共の福祉のため必要かつ合理的」な制限や制約の必要性のみを取り上げ、被告人の行為が「社会通念上許されず」、従って「明らか」に刑事罰に処すべき違法な行為と判断した。
 自由権規約第19条によれば、公の論議の的となる問題に関する情報や考えを表現し公表することを有罪とみなすことが最終的に正当化されうるのは、唯一そのような干渉が民主主義社会にとって「必要な」場合に限られる。
 同第19条の範囲によれば、表現の自由に関する制約および制限は十分な明確性を持ちかつ狭義に解釈されるものでなければならない(国連人権委員会、一般的意見34、2011年)。
 一方、制約もしくは制裁が「公共の福祉のために合理的」であることは、過度に曖昧で恣意的な適用の可能性が大きすぎるためこの条件を満たさない。
 ことことを、2008年の総括所見パラ10において、国連人権委員会は日本政府に勧告している。
 次の点もまた重要である。表現の自由の権利には攻撃的で不快な考えや意見を表明する権利も含まれる。これがまさに規約第19条が保護しようとする権利のエッセンスである:激しいスピーチ、つまり、平穏な状況を乱しかねないような考えの表明もまた規約19条の保護の範囲内にある。
 意見を持つ自由と表現の自由は、全ての人の完全な発達に欠かせない条件であり、自由で民主的な社会に不可欠である。それには、特に、政治的談話、公の関心事に関する論評、選挙運動および人権問題に関する議論が含まれる(国連人権委員会、一般的意見34、パラ2および11)。
 社会にとって重要な問題に関する国民的議論において、不快なあるいは不穏な考えや情報の表現が混乱を生じさせる特徴をもつこともしばしばある。個人に対する暴力も財産の破壊も伴わない場合、不快で批判的な意見表明やビラ配布による異議申し立ての行為を犯罪とみなすことは、規約第19条によって保障される保護を無視することになる
 この観点から、ある人が公衆の前で「その場の状況にそぐわない不相応な態様で」意見を表明し、「静穏な雰囲気の中で執り行われるべき卒業式の円滑な遂行に」支障を生じさせたとして、締約国がその人を起訴し有罪(2011・7・7最高裁判決)にすることは許されない。
 そのようなやり方は,関係者及び他の人々の表現の自由の行使を不当に制限する事につながる萎縮効果を生む。(「委縮効果」概念に関しては、国連人権委員会、一般的意見34、パラ47も参照のこと)。
 最も重要なことは、被告の行為には無秩序や暴力を引き起こす危険性を示す徴候は全くみられなかったことである。本件の記録書類ならびに地裁、東京高裁の判決から判断して、藤田氏の抗議は全く平穏なものであり、彼が式に参列していた人々を著しく妨害しまたは妨害する意図があった、または参列者を挑発して暴力や治安の妨害、もしくは公の秩序の侵害を引き起こそうとする他の何らかの行動をとったとみなす理由は何一つない。
 (4)結論
 自由権規約第6回定期報告の中で日本政府が藤田事件最高裁判決に言及している内容は、表現の自由の制約に関連し、かつその権利を制約する事案において、「公共の福祉」概念の使用を正当化する妥当な論拠と見なすことはできない
 2011年7月7日の最高裁判決を含めて日本の司法がこの事件に関して下した判断こそが、「公共の福祉」概念が実務上、自由権規約第19条が保障する表現の自由の権利に則さない態様で運用されていることを証明するものである。
 日本の司法当局は、表現の自由に関する事案において自由権規約に基づく履行を適法化するどころか、「公共の福祉」概念を援用・適用しており、2011年7月7日最高裁判決への言及は、いかに自由権規約第19条による表現の自由の権利の基本的保障に対する敬意を欠くものであるかを如実に物語っている。
 (続)

※カウンターレポート全文のPDFファイル
http://wind.ap.teacup.com/people/html/20130722itabashicounterreport.pdf
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