パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

全国教研で発表された芸術や理科での平和教育の試みの新鮮さ

2022年02月26日 | こども危機
  《ひのきみ通信》
 ◆ 日教組第71次全国教研 平和教育分科会の報告
   天羽高校分会 石井 泉


 新型コロナウィルス感染拡大の影響で全国教研は、昨年度が分科会なしのウェブによる全体集会のみ、今年度はウェブによる全体会(金曜夕方)と分科会(土日)の開催だった。
 分科会の実践交流復活は良かったが、早く従来のように一堂に会し対面で全国の仲間と交流できることを期待したい。今回も残念ながら千葉高教組からのレポートは出せなかったが、私は平和教育分科会を傍聴したので報告する。
 平和分科会には例年と比べると少ないが22本のレポートが出された。感染拡大で県教研(レポート選出)が実施できなかった単組があるなどの影響のようだ。毎年発表してきた北海道や広島からのレポートがなかったことも目立った。今回のレポート発表で、私が印象に残ったものは次の5本だった。
 第1は宮崎高教組(永迫直弘先生)の『学問の自由に関する授業実践~日本学術会議の任命拒否問題と軍事研究の禁止から~』
 「令和の滝川事件」とも指摘される任命拒否問題を、安全保障法制・共謀罪法反対が理由なら「思想良心の自由」をも侵害する問題と捉えるが、あえて「学問の自由」の問題として授業で取り上げた。
 「学問の自由」は無制限か?日本学術会議の掲げる軍事研究禁止は合理性があるか?任命拒否は「学問の自由」の侵害にあたるか?などのテーマを、生徒がグループ協議し活発に意見交換していた。
 「学問の自由」の学習や時事問題が平和教育の教材になりうるという指摘が素晴らしかった。
 第2は熊本高教組(青木栄先生)の『出会い・学び・発見・創造・発信~熊本における高校生による平和活動~』
 被爆者を父に持つ先生が、授業で生徒に語り続け、高校生と学びを深め、被爆体験や核廃絶運動の継承に取り組んだ報告だった。
 特に感動したのは、新型コロナウイルスが感染拡大した2020年2月以降も、高校生とできることを探し活動し続けていた。
 原水禁長崎大会のオリジナル朗読劇の上演、熊本県高校生長崎平和研修、高校生が作った平和新聞の小学校送付、高校生平和大使広島研修、高校生国連事務次長とのオンライン意見交換など、高校生たちの目覚ましい取り組みが報告された。
 第3は東京都高教組(小林恵子先生)の『理科の授業での平和教育』
 物理や学校設定科目「地球環境」の授業実践で、日本の公害第一号「足尾銅山鉱毒事件と田中正造」、水俣病とは、東電福島原発事故の放射能汚染、広島・長崎の原爆、チェルノブイリ原発事故、日本における原発などのテーマで、生徒たちが平和に繋がる学びを深めていた。
 難しいテーマなので、紙芝居や絵本・新聞記事・DVD・録画番組なども利用して生徒の関心を高めていた。理科の授業における平和教育の可能性を強く感じた。
 第4は鳥取高教組(坪倉潤也先生・前田孝行先生)の『国策と「蛍の光」歌詞の変遷~教研活動での議論を授業実践へ~』
 支部教研でのレポート発表「戦時中の新聞を用いた日本史授業」での議論を契機に、卒業式の歌として有名な「蛍の光」の歌詞の変遷(3・4番)を教材化した取り組みだった。
 なぜこのような歌詞が作られたのか?グループ協議し、政治的背景や意図を考えさせていた。また、県教研では「かつての教研では『日の丸・君が代』に関する授業実践も多くあった。戦時中に限らず、現代にも国威発揚や思想統制を考える材料が多い」という意見があったことも紹介された。
 第5は滋賀県教組(丸橋伊佐男先生)の『沖縄への修学旅行の平和学習をふまえたとりくみ』
 中学校美術の先生の実践報告で、[1]「平和について考える自画像」を描く、[2]ピカソの「ゲルニカ」を鑑賞し自分の思いを自画像の背景に描く、[3]作品展示・学級鑑賞会という内容だった。
 都高教の発表でも都の教研で「『書』芸術から戦争について考える~井上有一『噫横川国民学校』を題材にして~」のレポートがあったことが紹介されていた。芸術分野における平和学習の取り組みは非常に新鮮だし興味深かった。
 今回も平和分科会の実践報告を傍聴して非常に勉強になった。開催期間中に産経新聞が社会科教育分科会や国際連帯多文化共生教育分科会のレポートに対し不当な攻撃記事を掲載したようだ。平和教育に対する攻撃は止むことなく、危機にある。だからこそ、平和教育分科会が弾圧されず開催されることが重要だと思う。
 全国の小中高校特別支援学校の先生方が一堂に会して実践交流し、お互いに励まし勇気づけあう。そして、他教科の取り組みや各地の地域教材など多様な実践例を学ぶ機会は貴重である。
 戦争体験の伝承が叫ばれるが、若い教職員への平和教育の継承も急務である。千葉高教組の皆さんはもちろん他の高校の先生方も早く組合に加入して、全国教研に参加しないと損しますよ。来年は一緒に行きましょう。
『ひのきみ通信 第231号』(2022年2月12日)
http://hinokimitcb.web.fc2.com/html/22/231.htm#%E6%95%99%E7%A0%94
コメント    この記事についてブログを書く
« 日弁連が、政府見解で教科書... | トップ | 関西生コン支部関連裁判勝訴... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

こども危機」カテゴリの最新記事