◆ 安倍首相の空疎すぎる施政方針演説!
「非正規という言葉を一掃する」は真っ赤な嘘、裏に格差温存のカラクリ (リテラ)
本日、通常国会が召集され、安倍首相が施政方針演説をおこなった。その中身にはこれからが思いやられる空疎な言葉ばかりが並んだ。
たとえば、演説は「150年前、明治という時代がはじまったその瞬間を、山川健次郎は政府軍と戦う白虎隊の一員として迎えました」という一文からスタートし、“明治150周年”をアピール。
「明治という新しい時代が育てた数多の人材が技術優位の欧米諸国が迫る『国難』とも呼ぶべき危機のなかで、わが国が急速に近代化を遂げる原動力となりました」「明治の先人たちに倣って、もう一度、あらゆる日本人にチャンスを創ることで、少子高齢化もきっと克服できる」などと言い出した。
なぜ、欧米列強と同列で少子高齢化が語られるのか。さっぱり意味がわからないが、その後も安倍首相は「人づくり革命」「生産性革命」をぶち上げては“革命”を大安売り。
かと思えば、声をうわずらせながら「みなさん、日米同盟は、間違いなく、かつてないほど強固なものとなりました!」とアジり、トランプ大統領と電話会談を含めて20回以上も首脳会談をおこなってきたとアピールした上で、「個人的な信頼関係の下、世界のさまざまな課題にともに立ち向かってまいります」と宣言した。
例の「肥だめのような国」発言で世界中から非難の声があがり、もはや常軌を逸した差別主義者としてその名を轟かせているトランプとの「個人的な信頼関係」をひけらかす……。それがいかに恥ずかしいことか、安倍首相にはまったくわかっていないらしい。
その無知さ、傲慢さは憲法改正への言及でも表れていた。
年頭から「今年こそ」などと述べたことが批判を浴びたせいか期限を切ることは避けたが、「各党が憲法の具体的な案を国会にもち寄り、憲法審査会において議論を深め前に進めていくことを期待」と宣言。しかし、何度も指摘されつづけてきたように憲法改正の発議の権限は言うまでもなく立法府にあり、安倍首相の姿勢は三権分立を完全に無視している。
挙げ句、行政府の長がいけしゃあしゃあと各党に改憲案をもってこいと命令するとは、憲法を云々言う以前の大問題だ。
■ 「同一労働同一賃金」政策の裏にある“格差をつけるカラクリ”
しかし、きょうの施政方針演説でもっとも注意を向けるべきは、この一言だったはずだ。
それは、少子高齢化の次に安倍首相が口にした、演説の最大の目玉である「働き方改革」に言及するなかで発せられた。
「長年議論だけが繰り返されてきた『同一労働同一賃金』。いよいよ実現のときがきました。雇用形態による不合理な待遇差を禁止し、『非正規』という言葉を、この国から一掃してまいります」
非正規という言葉をこの国から一掃する──。
じつは安倍首相は2016年6月の記者会見をはじめ、この言葉を事ある毎に述べてきたが、今国会での「働き方関連改革法案」成立に血道を上げるなか、施政方針演説であらためて宣言したことの意味は重い。そして、一見すると、格差是正に向けた大胆な改革というようにも映るだろう。
しかし、騙されてはいけないのは、安倍首相はけっして「非正規雇用をなくす」あるいは「正規と非正規の格差をなくす」と言っているわけではない、ということ。たんに「非正規」という言葉を使わない、というだけの話なのである。
たしかに、働き方改革関連法案では、正社員と非正規の処遇改善を図る「同一労働同一賃金の導入」が盛り込まれ、ガイドライン案でも「基本給・各種手当、福利厚生や教育訓練の均等・均衡待遇の確保」が謳われている。
だが、基本給も手当も「実態に違いがなければ同一の、違いがあれば違いに応じた支給を求める」としており、能力や会社への貢献度による「違いに応じた支給」でよいと認めているのだ。
これでは理由をつけることで格差もつけられるし、賃金格差は埋まらないどころか格差そのものを容認することになる。
事実、昨年3月に発表された「働き方改革実行計画」では、「正規と非正規の理由なき格差を埋めていけば、自分の能力を評価されている納得感が醸成。納得感は労働者が働くモチベーションを誘引するインセンティブとして重要、それによって労働生産性が向上していく」と説明している。
ようするに、「理由なき格差」=格差に理由をつけることで納得させよう、というわけだ。
だいたい、「非正規という言葉をこの国から一掃する」という掛け声とは裏腹に、第二次安倍政権がはじまった2012年から16年までの4年間で、非正規雇用者は207万人も増加。一方、この間の正規雇用者は22万人増加でしかなく、雇用者数の9割が非正規というのが実態だ。
安倍首相が成果として誇る「就業者数185万人増加」とは、不安定就労の非正規雇用者を増やした結果でしかない。つまり、「非正規という言葉をこの国から一掃する」というのは、“見かけ倒し”の同一労働同一賃金の導入によって格差を容認するための詭弁でしかないのだ。
■ 高度プロフェッショナル制度と裁量労働制で残業ゼロに
しかも、この「同一労働同一賃金の導入」をさも格差是正策であるかのように打ち出す一方で、安倍政権の働き方改革関連法案の「本丸」は別にある。
それは高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)の導入と、1日にどれだけ働いても合意した「みなし労働時間」で定額賃金を支払う「裁量労働制」の拡大だ。
高プロ制度を大手メディアは「働いた時間ではなく成果で評価する」「働く時間ではなく成果に応じて賃金を払う」などと紹介しているが、成果に合わせて賃金を決めることは現行法でも可能なこと。しかし、高プロが導入されれば、労働基準法が定める週40時間労働や休憩、休日などの規制から除外されてしまう。
さらに、「高度の専門職」「年収は平均年収額の3倍程度の労働者」が対象とされているが、経団連は以前「年収400万円以上を対象」と主張していたことからも、この要件は引き下げられるという見方が強い。
また、「裁量労働制」の拡大では、専門職のほかに管理職や一部の営業職にまで対象を広げる。これは「1時間働いても8時間働いたことになるのだから、いいのでは」と思われがちだが、とんでもない。仕事が片付かなければ逆に何十時間でも働かせることが可能になるのだ。
「長時間労働を是正する」と言いながら、労働時間の規制をなくそうという法案を推し進める安倍首相。そもそも、この働き方改革関連法案では、時間外労働の上限規制を、過労死ラインの月80時間を超える「月最大100時間未満」にしようというのだから開いた口が塞がらない。
あたかも格差を是正するものだと見せかけて、そのじつ、格差を容認させようとするばかりか、労働者を消耗品のように使い捨てする大企業の主張を押し通そうとする。それが、安倍首相が法案成立を目論む働き方改革関連法案の中身だ。
通常国会で安倍首相は甘言を弄するのだろうが、騙されてはいけない。今国会でも、本サイトでは安倍首相の「嘘」を徹底チェックしていく。
(編集部)
『LITERA/リテラ 本と雑誌の知を再発見』(2018.01.22)
http://lite-ra.com/2018/01/post-3751.html
「非正規という言葉を一掃する」は真っ赤な嘘、裏に格差温存のカラクリ (リテラ)
本日、通常国会が召集され、安倍首相が施政方針演説をおこなった。その中身にはこれからが思いやられる空疎な言葉ばかりが並んだ。
たとえば、演説は「150年前、明治という時代がはじまったその瞬間を、山川健次郎は政府軍と戦う白虎隊の一員として迎えました」という一文からスタートし、“明治150周年”をアピール。
「明治という新しい時代が育てた数多の人材が技術優位の欧米諸国が迫る『国難』とも呼ぶべき危機のなかで、わが国が急速に近代化を遂げる原動力となりました」「明治の先人たちに倣って、もう一度、あらゆる日本人にチャンスを創ることで、少子高齢化もきっと克服できる」などと言い出した。
なぜ、欧米列強と同列で少子高齢化が語られるのか。さっぱり意味がわからないが、その後も安倍首相は「人づくり革命」「生産性革命」をぶち上げては“革命”を大安売り。
かと思えば、声をうわずらせながら「みなさん、日米同盟は、間違いなく、かつてないほど強固なものとなりました!」とアジり、トランプ大統領と電話会談を含めて20回以上も首脳会談をおこなってきたとアピールした上で、「個人的な信頼関係の下、世界のさまざまな課題にともに立ち向かってまいります」と宣言した。
例の「肥だめのような国」発言で世界中から非難の声があがり、もはや常軌を逸した差別主義者としてその名を轟かせているトランプとの「個人的な信頼関係」をひけらかす……。それがいかに恥ずかしいことか、安倍首相にはまったくわかっていないらしい。
その無知さ、傲慢さは憲法改正への言及でも表れていた。
年頭から「今年こそ」などと述べたことが批判を浴びたせいか期限を切ることは避けたが、「各党が憲法の具体的な案を国会にもち寄り、憲法審査会において議論を深め前に進めていくことを期待」と宣言。しかし、何度も指摘されつづけてきたように憲法改正の発議の権限は言うまでもなく立法府にあり、安倍首相の姿勢は三権分立を完全に無視している。
挙げ句、行政府の長がいけしゃあしゃあと各党に改憲案をもってこいと命令するとは、憲法を云々言う以前の大問題だ。
■ 「同一労働同一賃金」政策の裏にある“格差をつけるカラクリ”
しかし、きょうの施政方針演説でもっとも注意を向けるべきは、この一言だったはずだ。
それは、少子高齢化の次に安倍首相が口にした、演説の最大の目玉である「働き方改革」に言及するなかで発せられた。
「長年議論だけが繰り返されてきた『同一労働同一賃金』。いよいよ実現のときがきました。雇用形態による不合理な待遇差を禁止し、『非正規』という言葉を、この国から一掃してまいります」
非正規という言葉をこの国から一掃する──。
じつは安倍首相は2016年6月の記者会見をはじめ、この言葉を事ある毎に述べてきたが、今国会での「働き方関連改革法案」成立に血道を上げるなか、施政方針演説であらためて宣言したことの意味は重い。そして、一見すると、格差是正に向けた大胆な改革というようにも映るだろう。
しかし、騙されてはいけないのは、安倍首相はけっして「非正規雇用をなくす」あるいは「正規と非正規の格差をなくす」と言っているわけではない、ということ。たんに「非正規」という言葉を使わない、というだけの話なのである。
たしかに、働き方改革関連法案では、正社員と非正規の処遇改善を図る「同一労働同一賃金の導入」が盛り込まれ、ガイドライン案でも「基本給・各種手当、福利厚生や教育訓練の均等・均衡待遇の確保」が謳われている。
だが、基本給も手当も「実態に違いがなければ同一の、違いがあれば違いに応じた支給を求める」としており、能力や会社への貢献度による「違いに応じた支給」でよいと認めているのだ。
これでは理由をつけることで格差もつけられるし、賃金格差は埋まらないどころか格差そのものを容認することになる。
事実、昨年3月に発表された「働き方改革実行計画」では、「正規と非正規の理由なき格差を埋めていけば、自分の能力を評価されている納得感が醸成。納得感は労働者が働くモチベーションを誘引するインセンティブとして重要、それによって労働生産性が向上していく」と説明している。
ようするに、「理由なき格差」=格差に理由をつけることで納得させよう、というわけだ。
だいたい、「非正規という言葉をこの国から一掃する」という掛け声とは裏腹に、第二次安倍政権がはじまった2012年から16年までの4年間で、非正規雇用者は207万人も増加。一方、この間の正規雇用者は22万人増加でしかなく、雇用者数の9割が非正規というのが実態だ。
安倍首相が成果として誇る「就業者数185万人増加」とは、不安定就労の非正規雇用者を増やした結果でしかない。つまり、「非正規という言葉をこの国から一掃する」というのは、“見かけ倒し”の同一労働同一賃金の導入によって格差を容認するための詭弁でしかないのだ。
■ 高度プロフェッショナル制度と裁量労働制で残業ゼロに
しかも、この「同一労働同一賃金の導入」をさも格差是正策であるかのように打ち出す一方で、安倍政権の働き方改革関連法案の「本丸」は別にある。
それは高収入の一部専門職を労働時間規制から外す「高度プロフェッショナル制度」(高プロ)の導入と、1日にどれだけ働いても合意した「みなし労働時間」で定額賃金を支払う「裁量労働制」の拡大だ。
高プロ制度を大手メディアは「働いた時間ではなく成果で評価する」「働く時間ではなく成果に応じて賃金を払う」などと紹介しているが、成果に合わせて賃金を決めることは現行法でも可能なこと。しかし、高プロが導入されれば、労働基準法が定める週40時間労働や休憩、休日などの規制から除外されてしまう。
さらに、「高度の専門職」「年収は平均年収額の3倍程度の労働者」が対象とされているが、経団連は以前「年収400万円以上を対象」と主張していたことからも、この要件は引き下げられるという見方が強い。
また、「裁量労働制」の拡大では、専門職のほかに管理職や一部の営業職にまで対象を広げる。これは「1時間働いても8時間働いたことになるのだから、いいのでは」と思われがちだが、とんでもない。仕事が片付かなければ逆に何十時間でも働かせることが可能になるのだ。
「長時間労働を是正する」と言いながら、労働時間の規制をなくそうという法案を推し進める安倍首相。そもそも、この働き方改革関連法案では、時間外労働の上限規制を、過労死ラインの月80時間を超える「月最大100時間未満」にしようというのだから開いた口が塞がらない。
あたかも格差を是正するものだと見せかけて、そのじつ、格差を容認させようとするばかりか、労働者を消耗品のように使い捨てする大企業の主張を押し通そうとする。それが、安倍首相が法案成立を目論む働き方改革関連法案の中身だ。
通常国会で安倍首相は甘言を弄するのだろうが、騙されてはいけない。今国会でも、本サイトでは安倍首相の「嘘」を徹底チェックしていく。
(編集部)
『LITERA/リテラ 本と雑誌の知を再発見』(2018.01.22)
http://lite-ra.com/2018/01/post-3751.html
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