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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

7月11日は共謀罪法施行の日、廃止運動の始まり

2017年07月10日 | 平和憲法
 ◆ 共謀罪法反対は終わらない (多面体F)


 あれだけ世論が分かれ反対の声が急速に盛り上がった共謀罪法は、6月15日委員会採決抜きの「奇策」により参議院本会議で強行採決して成立してしまった。参議院での審議は、いままで強行採決の前提条件と考えられていた30時間の半分程度の17時間50分しかやっていなかった。しかも審議といってもあの「答弁不能」の金田法務大臣のもとであった。そして7月11日に施行される。
 6月19日(月)夕方、国会閉幕後の国会正門前に行った。これは一種の残念会かと感じながら集会に向かったが、海渡雄一弁護士は「廃止運動の始まり」なので、ぜひ21日の学習会に来てほしいと呼びかけていた。
 そこで21日(水)午後、梅雨の雨が強まりまさに台風どきの強雨のような雨のなか、参議院議員会館1階の講堂に出かけた。
 「いわゆる共謀罪に関する院内学習会」(主催 日本弁護士連合会 参加150人)で、海渡弁護士(日弁連・共謀罪法案対策本部副本部長)の基調報告は最後だったのだが、「共謀罪法案反対運動の経過と到達点・今後の課題 私案」というタイトルで今後の取り組みを示しているので、この報告の「今後の課題」の部分を中心に報告する。
 ●共謀罪法廃止の3つの根拠
 今後この法律を廃止させたい。廃止させる根拠は3つある。
 まず憲法違反である。共謀罪法は刑罰法規の明確性の原則に反し、広範に過ぎ、処罰範囲を不明確なものとし、被告人とされた者の防御を困難にする。
 そこで適正な刑事手続きによらねば刑罰を科せられない憲法31条、プライバシーの権利を保障する13条、思想・良心の自由を保障する19条などに反する違法なものである。
 次に、国際人権規約違反である。公正な裁判を保障する国際人権規約14条、プライバシーの権利を保障する17条、思想・表現の自由を保障する18・19条に反する重大な疑いがある。
 最後に国会法56条の3に反することだ。この条文は「特に必要があるとき」に各議院が委員会に中間報告を求め、中間報告の後、さらに議院が「特に緊急を要すると認めたとき」議院の会議で審議できるというものだ。
 しかし与党議員は誰一人必要性を発言していない。また「特に緊急を要する」とは、戦争や大規模災害が起きているとか、国の予算執行が止まっているというような事態で、この法律を通さないと国民生活に重大な支障をきたすというような場合のことだ。そんな「事態」はまったく起こっていない。
 この法律は憲法違反、国際人権法違反、さらに国会法にすら違反して成立した法律、つまり3つダメが並んだ法律であるから、廃止運動の根拠となる。
 ● 日弁連はなぜ法案に反対したか
 日弁連が共謀罪法案に反対してきた理由のポイントは2つある。
 犯罪の実行でなく着手前の行為への処罰であり「犯罪の成立要件があいまいになること」、市民のプライバシーに立ち入って監視するので「共謀罪の捜査手段によって監視社会が強められること」である。
 基地建設に反対する市民団体、労働組合、ブラック企業への批判ビラをつくろうとする団体、きのこ狩りや「音楽教室」などにも適用される可能性がある。
 ● テロ対策ではない国連条約
 政府がいう国連条約(TOC条約 国連越境組織犯罪防止条約)はテロ対策の条約ではない。
 起草者のニコス・パッサス教授自身が「テロを対象から外したのは『非民主的な国では政府への抗議活動を犯罪とみなす場合がある。だからイデオロギーに由来する犯罪は除外された』」と説明した。さらに「条約はプライバシーの侵害につながるような捜査手法の導入を求めていない」と、条約締結を新たな施策導入の口実としないよう注意を促した。
 また政府が「条約上、共謀罪をつくることが絶対必要」というとき必ず出してきたのがUNODC(国連薬物・犯罪事務所)による口上書だった。しかしこれをよく読むと、「締約国の国内法に委ねられている。本条約と全く同じ方法で規定される必要はない」とはっきり書かれている。
 ● 共謀罪を通信傍受の対象からはずすべき
 共謀罪を通信傍受の対象からはずせば、基本的に共謀罪を適用できなくすることができる。このことは実践的な目標として非常に重要だ。
 また国連・特別報告者ジョセフ・カナタチ氏の提案にもあるが、通信傍受、GPSデータや通信履歴収集などの捜査機関の任意提供の依頼について、適切な手続きと独立した判断機関の設置が必要である。
 その他、共謀罪は過去3回廃案になったが2006-07年段階で与党自民党がつくった修正案より後退している点すらあること(「自首の必要的減免規定」の復活や「二重処罰禁止規定」の消滅など)、カナタチ氏の「プライバシー権や表現の自由の制約へのおそれ」の指摘、濫用の危険性が政府の修正では不十分であること、など駆け足だったが幅広い論点の説明があった。
 とくにカナタチ氏が6月9日の日弁連シンポジウムのために寄せた書簡からの、国内での公安などの監視機関に対する独立した事前許可機関が発行する令状、海外での国際データアクセス委員会が発行する国際データアクセス令状などの提案が詳しく紹介された。
 最後に海渡弁護士は「いったん人がつくった法は人の力で廃止できる。あの治安維持法も敗戦でなくなった」と述べた。
 立命館大学大学院法務研究科教授・松宮孝明さんは6月1日の参院法務委員会の参考人を務めた方だ。
 共謀罪はテロ防止とは関係がないこと、法定刑とのバランスが取れていないなど「できの悪い」法律なので、今後裁判所や警察で混乱が起こりそうなことなどを述べた。
 たとえば傷害罪に未遂という罪はない。傷害の共謀をしたが思い直してやめても刑は軽くならないので、やめるくらいなら傷害を実行したほうがよいと、推奨することにもなる。
 共謀罪法の運用責任者は中村格・警察庁組織犯罪対策部長だが、この人は元TBSワシントン支局長のレイプ事件もみ消し疑惑で、逮捕状の執行を止めた張本人であり、この人が共謀罪を手にすれば恣意的運用の懸念が大きいと、これから始まる「恐怖」を伝えた。
 その他、通信傍受法3条1項3号は現在のままでも憲法21条の「通信の秘密は、これを侵してはならない」と矛盾があり違憲の可能性があるという指摘があった。
 また、カナタチ氏から6月15日付け(共謀法成立の日)の「法案成立に際してのコメント」が届いた。氏は日弁連を通してこのコメントを日本国民に発表してほしいと希望している。そこで司会の米倉洋子弁護士から一部が読み上げられた。
「私は、政府が参議院において法案がきちんと議論されることを認めないような行動に出たということに失望しています。(略)政府が反対論を強引に押し潰して、友好的かつ建設的な批判を無視し、世論及び法的論理に逆行し、プライバシー権・表現の自由・結社の自由を保護する義務を怠るというのは良い徴候とは言えません。(略)
日本政府は今日に至るまで、私の懸念に対して、公にも内々にも、満足な回答どころかいかなる回答をもしていません。(略)私は日本を訪問し、様々な方法でプライバシー関連法や許可・監督の仕組みを強化する選択肢を模索するためにお招きいただくよう、最大限友好的な表現で再度日本政府に呼び掛けています。(略)私はこの長い道を全ての日本市民とともに進んで歩んでいくつもりであり、道中新たな友を多く作ることを期待しております」
 院内学習会なので、議員も何人も参加していた。
 逢坂誠二・民進党衆議院議員は「与党議員の行動をみて三権分立の危機を感じる。11年前の共謀罪審議のときには、「自首の必要的減免規定」を「自首の任意的減免規定」へ修正したり、二重処罰禁止が取り決められた。いまは政府に付和雷同する与党になっている」と批判した。
 山添拓・日本共産党参議院議員は、議院運営委員会のメンバーでもあり「中間報告で採決というやり方に、維新も含めて野党議員は怒った。これに対し自公の議員は誰一人説明ができず、顔すら上げられなかった。それでいて挙手だけする。論理も道理もない。あるのは数の力だけだ」と憤った。
 その他、福島瑞穂・社会民主党参議院議員、畑野君枝・日本共産党衆議院議員からもスピーチがあった。
 わたくしが初めて共謀罪反対の集会に出たのは2月21日昼の議員会館前集会で、このときは稲田防衛相、金田法相の辞職を求める集会だった。

2月21日の集会での糸数慶子議員と菱山南帆子さん(左) まだ寒い時期で木には葉がない

 次に、3月6日に今回と同じ参議院議員会館講堂で「話し合うことが罪になる共謀罪の国会提出を許さない院内集会」という集会に参加した。このときは内田博文・神戸学院大学教授の「治安維持法と共謀罪」という講演がメインで海渡弁護士から主催者あいさつがあった。このころは3月7日法案の閣議決定、3月10日国会提出といわれていた。しかし反対の声も大きく衆議院入りしたのは3月22日にずれこんだ
 その少し前の3月16日には日比谷公園スタートの国会請願デモに参加した。6月の集会で司会を務めた米倉洋子弁護士がデモの前にスピーチを行った。
 手元のメモを集計するとわたしは全部で19回、5月11日以降1か月あまりで13回も集会に参加した。当時は5月18・19日ごろ衆議院で強行採決されると目され(実際には5月23日)緊迫していた。
 毎回議員のスピーチ付きで、民進・社民・共産は毎回、自由・沖縄の風はときどきスピーチした。
 民進・共産は各10人ほどの議員のスピーチを聞いたことになる。多い人で3回程度だったが、社民は議員の数が少ないせいもあり、わたくしが参加した集会だけで福島さんのスピーチを7回も聞いた。共謀罪の集会では夫婦ともに登壇されることが多かった。
 たいていは立ったままのスピーチだが、この日は席があったせいだろう、海渡さんの講演風景を福島さんがかなり長いあいだタブレットで撮影されていた。
 共謀罪法反対はこれで終わりではない。戦争法は成立後2年近くになるが毎月19日に大きな反対集会が続いている。共謀罪法反対もこれが始まりだ。
『多面体F』(2017年06月29日)
http://blog.goo.ne.jp/polyhedron-f/e/8edbe2e34a62dc875903002c72a52d1b
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