《週刊新社会から》
★ 『デンマークに見る 普段着のデモクラシー』(かもがわ出版)
小島ブンゴード孝子・澤渡夏代プラント:著
★ 希望のオルタナティブを
本紙に「デンマークからこんにちは」というコラムの運載があったことをご記憶でしょうか。小島ブンゴード孝子さんはデンマークを「小さくて大きい国」と紹介。「外を見て内を知る」刺激剤と述べています。
それに発奮した読者の一人が当時の私。以来、北欧社会保障制度の専門書などにも挑戦。「国際結婚でデンマーク在住半世紀」という、お二人の生き方に感銘。
とはいえ、私の理解には壁があったのも事実。それが無知に潜む「思い込み」のためだと気づかされたのは本書のおかげです。
まずタイトルに惹かれますが“普段着のデモクラシー”って何?という疑問は当然。出版社の表現に「幸福な国デンマークの大元には生活に根ざしたデモクラシーが」とあって、言い得て妙です。
本書はブンゴード孝子/澤濃夏代プラントのお二人の共著3冊目とのこと。本書で「デンマークのデモクラシーは、生活文化のようなもの」と解説しています。
また、デンマークの近代民主主義を理解する上で欠かせない人物の一人、ハル・コックの言説は「民主主義はシステムでも数義でもない。それはひとつの生活形式である。」というもの。これらをキーワードと押さえつつ、人びとの豊かな生活スタイルに想いを馳せて本書を読み進めるのも一考です。
本書の構成は5章からなり、
第1章は「北欧の光」。デンマークを照らす「光」の影響が紹介され、歴史と国民性を理解するための導入部となっています。
第2章はデンマークの「国のかたち」。デモクラシーの歩みが概説されています。
第3章はデンマークの「人のかたち」。デモクラシーの育ち方について、幼年期、義務教育など成長段階ごとの事例が紹介され、まさに目から鱗の連続です。
第4章は「生活の中のデモクラシー」。「信頼と連帯」、「対話」の大切さ、国民負担と公平ざ、多様性と平等などが略説されます。
そして第5章は「異文化をくらして」。お二人のアイデンティティ、デモクラシー感が披瀝されています。
こうしてデンマークの謎、人びとが“しあわせ”といえるわけが.紐解かれました。
ただし「決してユートピアではありません。」と著者が戒めていることもお忘れなきように。本書を参考に、私たちの希望のオルタナティブをぜひ明らかにしたいものです。(東京都・阿部静夫)
『週刊新社会』(2024年1月1日)
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