パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

神奈川県個人情報保護条例違反裁判

2009年10月10日 | 日の丸・君が代関連ニュース
 ▼ "君が代"不起立教員の氏名収集強行の神奈川県教委に、
   阪田弁護士が論理矛盾を指摘

永野厚男(教育ライター)

 卒業・入学式の"君が代"時に不起立した神奈川県立学校教諭たちが、神奈川県教育委員会に氏名収集されたのは県の個人情報保護条例違反だ、と訴えた裁判の第3回口頭弁論が09年9月28日、横浜地裁(北澤章功裁判長)で開かれ、原告教員側の阪田勝彦弁護士が以下の2点に絞リ、県教委の主張の論理矛盾を指摘した。
(1)県教育委は、「君が代に否定的感情を持っていてもピアノ伴奏を行うという選択をする者もいるため、職務命令でピアノ伴奏を求めても、それは客観的にその者の歴史観・世界観といった思想信条を直接否定する態様の行為(例えばマリア画の踏み絵)の強制ではない」という最高裁ピアノ判決を使い、「不起立教員の氏名収集は思想信条情報でない」と主張している。
 だが、本件教員たちが現実に不起立を「選択」した事実は、"君が代"への否定的歴史観・世界観の表われた思想信条情報以外の何ものでもなく、ピアノ判決とは適用範囲が全く異なる。
(2)県教育委は、「不起立教員の氏名収集は思想信条情報ではない」と言いながら、思想信条情報であることが前提となるはずの県個人情報保護条例6条但し書きに基づき、個人情報審議会へ諮問を行ったかと思えば、同審議会よリ「不適」との判断がなされる(08年1月)や、再び「思想信条ではない」と主張。県教委の態度は、全く信用できず、条例を無に帰しているというほかない。
 閉廷後の報告集会では、大阪の枚方市教委を相手に"君が代"裁判を闘ってきた(07年に大阪高裁で教員側勝訴の判決が確定)松田浩二さんが、以下の東豊中高校卒業式の件の判決を紹介した。
 卒業式等の"君が代"実施に際し、都教育委員会が禁じている「一時退出、不起立、不斉唱の各自の判断など、内心の自由の説明」について、9月9日大阪高裁(永井ユタカ裁判長)が一定程度、理解を示す趣旨の判決を出した。
 02年2月の大販府立東豊中高校の卒業式で、司会(教頭)の「国歌斉唱」の発声からテープ演奏が流れるまでの間に、式場中央寄りに歩み出て、「本校の職員会議で君が代は実施しないと決議されています。歌う歌わない、退出するしないは、皆さんの良心に従って判断してください」という趣旨の発言をし、府教委に戒告処分された中野五海(いつみ)教諭(当時)が処分取り消しを求めた裁判で、大阪高裁は主文では地裁判決を追認し控訴棄却した。
 しかし高裁判決は、02年度に東豊中高校で「外国籍の生徒の『"君が代"実施により自分のアイデンティティが傷付けられる』との訴えに共感する生徒たちが、『個人の思想・良心の自由との聞に重要な問題が生じる』と考え、3年生の過半数の"君が代"実施反対署名を校長(当時)に提出し、"君が代"実施反対の意見を表明するに至った」という事実を認定し、「校長が本件式次第化を強行したことが、本件行為の原因であることは明らかである」と明言。
 そして判決は、「君が代という国歌が担ってきた戦前からの歴史的役割に対する認識や歌詞の内容から、君が代に対し負のイデオロギーないし抵抗感を持つ者が、その斉唱を強制されることを思想信条の自由に対する侵害であると考えることには一理ある。とりわけ、『唱う』という行為は、個々人にとって情感を伴わざるを得ない積極的身体行為であるから、これを強要されることは、内心の自由に対する侵害となる危険牲が高い。したがって、君が代を斉唱しない自由も尊重されるべきである。本件訴訟における控訴人の主張は、以上の限りにおいて首肯しうるものを含んでいる」と、地裁判決にない生徒・教職員の"君が代"拒否の自由を「補足説明」した。

 松田浩二さんは続けて、「判決は『特段の事情(思想・良心の自由が直接侵害される等)があれば、本件行為(式の空白の時間に内心の自由を脱明)も許される余地がある』と判示しており、その意義は大きい」と述ぺた。
 この後、支援者から以下の訴えがあった。

 高校新学習指導要領(09年3月告示)は、卒業式等のいわゆる国旗国歌条項(特別活動の領域)の文言は、現行の指導要領と変化はない。警戒すべきことは、現行指導要領の文科省の”解説”が、
 「国旗・国歌に対する正しい認識をもたせ,それらを尊重する態度を育てることが大切である。」
 と、既に生徒の内心に踏み込んでいることだ。
 しかし新指導要領の”解説”は、これにも飽き足らず、
 「国旗・国歌の意義並びにそれらを相互に尊重することが国際的な儀礼であることを理解させ,それらを尊重する態度を育てるよう配慮すること。」
 という中学校社会科新指導要領の文言を丸写しした上、
 「このような中学校社会科における指導の趣旨を踏まえつつ、」
 という文言を加筆してしまった。
 この加筆を、文科省の藤田晃之・教科調査官は「中高の連続性から」と弁明。
 しかし、神奈川こころの自由裁判の判決(7月16日)が、"君が代"起立強制の"正当化"に"国際儀礼"を使っていることから、新指導要領”解説”への"国際儀礼"の加筆は、起立強制強化に利用される危険性がある。
 だが、この新指導要領”解説”の加箪のうち、「相互に尊重」を入れたことに伴う文科省や教育委員会の自己矛盾一一在日外国人生徒がいる学校の卒業式等で相互に(韓国や中国などの)国旗掲揚・国歌斉唱を絶対にやらせない一一は、裁判でもっと指摘していくと良いのではないか。

コメント    この記事についてブログを書く
« 在豪太平洋戦争研究者のお話... | トップ | 横浜市の教科書採択地区変更... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

日の丸・君が代関連ニュース」カテゴリの最新記事