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響
「もの言える自由」裁判交流会ニュース 2009年8月17日発行NO.14
♪ 三行半の上告棄却
2009年7月2日付けで「上告棄却」の決定が最高裁第1小法廷で出されました。
本年2月18日に東京高裁(民事第12部 柳田幸三裁判長 大工強・花村良一裁判官)で「控訴棄却」の判決が出され、3月に上告。4月28日に最高裁判所に上告理由書・上告理由書骨子を提出してから実質1ヶ月半での「決定」でした。
10月17日(土)13:30~ 上告棄却報告会を行います。
会場:武蔵野市芸能劇場(三鷹駅北口より1分)
武蔵野市中町1-15-10 TEL:0422-55-3500
内容:Ⅰ、弁護団・原告より
Ⅱ、講演:土屋英雄教授
「判決をどう見るか」〔仮題〕
資料代:500円
土屋英雄教授〔筑波大大学院人文社会学研究科教授〕は、精神の自由、思想・良心の自由、信教の自由等に関する研究の専門家で、多数の著作のある方です。
「判決をどう見るか」〔仮題〕の講演を3時から、前半は1時半から弁護団と原告の話と意見交流を行います。
関連する裁判の今後に資するような観点も含めて、土屋先生のお話を通して、改めてこの裁判と判決の意味について考えたいと思います。どうぞご参加下さい。
♪ 原告より
余りにも早く「三行半」=「上告棄却」が決定されました。その早さに驚き、「決定理由」の文章が本当に3行と半分だったというお粗末には笑うしかありませんでした。
私の提訴が、もし仮に「憲法に保障された人権の問題ではない」と判断されるのだとしても、なぜこれが憲法問題ではないのか、その理由なり根拠なりを述べなくては、裁判官は職責を果たしたことになりません。
あの東京高裁民事第12部(柳田幸三裁判長)の「(控訴人は違法であると主張するが)当裁判所が採用しない見解に立脚するものであるから、いずれも採用することができない。」と、憲法上の根拠を述べずに日本語として通じないような文章ではぐらかした判決が、あれでよい、と最高裁第1小法廷の5人の裁判官が本気で考えたとしたら、職業倫理に欠けるというか、憲法に対して傲慢な人たちだと思います。
憲法はそのような恣意的な判断を許さない、絶対的なものであるという姿勢を裁判官が骨の髄から持たなければ、軸は時の権力の動向にひきずられてずれてゆくのは、ある意味で当たり前かもしれません。
たまたま8月30日の衆議院選挙の際、最高裁判事の「国民審査」も行われるというので、インターネットを見ると、審査対象の最高裁判事についての情報が載っています。この事件の主任裁判官だった甲斐中辰夫氏はすでに「国民審査」を受けたことがあり、対象外。残り4人の裁判官は審査対象です。インターネット(「忘れられた一票2009」)で4人の経歴を知ることができました。裁判官出身以外の2人の経歴と、この判決の落差に驚かされました。
宮川光二裁判官は、弁護士出身で修習生のころから主に公害問題に携わった公害裁判のプロフェッショナルだと紹介されています。行政相手に闘った経歴の持ち主なのです。
桜井龍子裁判官は、労働省出身で育休法制定にも携わるなどの経歴も「人間味のある条文解釈に努めたい」などの言葉も、就任記者会見での応対の様子も良くて、それなのになぜ?と残念でなりません。上記2人は2008年9月に最高裁判事になりました。
金築誠志裁判官は2009年1月に最高裁判事となったばかりのエリート裁判官で、最高裁調査官、東京地裁の裁判長、最高裁人事局長、大阪高裁長官と、輝かしい経歴を重ねた人だそうです。こういう立場の人なら、この判決も驚くに値しないことでしょうか?
涌井紀夫裁判官も東京地裁判事を皮切りに、最高裁で行政局課長・人事局課長、上席調査官、総務局長などを歴任して2006年に最高裁判事になったエリート裁判官です。2008年住民基本台帳ネットワークについて住民3人の離脱の訴えを棄却しました。しかし中には良い判決も。国籍法に関して子どもを国籍取得上差別するのは法の下の平等に反すると判断。戦時中に連行され広島で被爆した韓国人の元徴用工らが慰謝料を求めた訴えに対しても、「被爆者援護法の解釈を誤っており『被爆者が出国したら適用外』としたのは違法」として国に賠償命令。
一人の教員が裁判に訴えるに至った、「底なし沼」に足を踏み入れたような、異論を許さない閉塞した学校現場の状況は、裁判官には理解されなかったのかもしれません。それとも裁判官も同じような状況に置かれているのか。…しかし最高裁裁判官として、地裁・高裁判決のでたらめさに気づかなかったとしたら、その職業的怠慢は、許されないものです。
「もの言える自由」裁判は、大変残念な結果をもって終わりました。「底なし沼」は学校だけでなく、裁判所にまで続いているのかもしれないと知らされました。
この裁判を物心両面で支えて下さった会員の皆様に、このような結果を報告しなければならないのは心苦しい思いです。しかし提訴以来3年余の間に、この裁判を理解し、支援して下さる方々とのよき出会いがあったことに、私は希望を見出しています。裁判官に通じなかったとしても、私の言葉が通じ、受けとめてくれた方々がいたという、確かな手応えは私の心に残っています。
一面識もないのに、会費を振り込んで会員となり会報を読んでくださった方々、アンケートに答え、あるいは陳述書を書いてくださった豊多摩高校関係者の皆様、教職員や管理職の立場からの陳述書を書いてくださった方々、短時間の法廷でも裁判の傍聴に駆けつけてくださった方々、地裁の単独審理の小さな法廷のため傍聴抽選で法廷に入れなくても毎回多くの方が来て下さることに支えられました。
弁護団の精力的な力強い活動には深く感謝申し上げます。
又、控訴審で3人の学者の方々から、すばらしい説得力ある意見書を提出していただきました。
そして何よりも、それぞれ仕事とご家族の事情もある多忙な中で、事務局の皆さんが献身的にこの裁判を支えて下さいました。
すべての皆様、有難うございました。心からの感謝を申し上げます。
2009.8.15(池田幹子)
「もの言える自由」裁判交流会ニュース2009年8月17日発行NO.14
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「もの言える自由」裁判交流会ニュース 2009年8月17日発行NO.14
♪ 三行半の上告棄却
2009年7月2日付けで「上告棄却」の決定が最高裁第1小法廷で出されました。
本年2月18日に東京高裁(民事第12部 柳田幸三裁判長 大工強・花村良一裁判官)で「控訴棄却」の判決が出され、3月に上告。4月28日に最高裁判所に上告理由書・上告理由書骨子を提出してから実質1ヶ月半での「決定」でした。
10月17日(土)13:30~ 上告棄却報告会を行います。
会場:武蔵野市芸能劇場(三鷹駅北口より1分)
武蔵野市中町1-15-10 TEL:0422-55-3500
内容:Ⅰ、弁護団・原告より
Ⅱ、講演:土屋英雄教授
「判決をどう見るか」〔仮題〕
資料代:500円
土屋英雄教授〔筑波大大学院人文社会学研究科教授〕は、精神の自由、思想・良心の自由、信教の自由等に関する研究の専門家で、多数の著作のある方です。
「判決をどう見るか」〔仮題〕の講演を3時から、前半は1時半から弁護団と原告の話と意見交流を行います。
関連する裁判の今後に資するような観点も含めて、土屋先生のお話を通して、改めてこの裁判と判決の意味について考えたいと思います。どうぞご参加下さい。
♪ 原告より
余りにも早く「三行半」=「上告棄却」が決定されました。その早さに驚き、「決定理由」の文章が本当に3行と半分だったというお粗末には笑うしかありませんでした。
私の提訴が、もし仮に「憲法に保障された人権の問題ではない」と判断されるのだとしても、なぜこれが憲法問題ではないのか、その理由なり根拠なりを述べなくては、裁判官は職責を果たしたことになりません。
あの東京高裁民事第12部(柳田幸三裁判長)の「(控訴人は違法であると主張するが)当裁判所が採用しない見解に立脚するものであるから、いずれも採用することができない。」と、憲法上の根拠を述べずに日本語として通じないような文章ではぐらかした判決が、あれでよい、と最高裁第1小法廷の5人の裁判官が本気で考えたとしたら、職業倫理に欠けるというか、憲法に対して傲慢な人たちだと思います。
憲法はそのような恣意的な判断を許さない、絶対的なものであるという姿勢を裁判官が骨の髄から持たなければ、軸は時の権力の動向にひきずられてずれてゆくのは、ある意味で当たり前かもしれません。
たまたま8月30日の衆議院選挙の際、最高裁判事の「国民審査」も行われるというので、インターネットを見ると、審査対象の最高裁判事についての情報が載っています。この事件の主任裁判官だった甲斐中辰夫氏はすでに「国民審査」を受けたことがあり、対象外。残り4人の裁判官は審査対象です。インターネット(「忘れられた一票2009」)で4人の経歴を知ることができました。裁判官出身以外の2人の経歴と、この判決の落差に驚かされました。
宮川光二裁判官は、弁護士出身で修習生のころから主に公害問題に携わった公害裁判のプロフェッショナルだと紹介されています。行政相手に闘った経歴の持ち主なのです。
桜井龍子裁判官は、労働省出身で育休法制定にも携わるなどの経歴も「人間味のある条文解釈に努めたい」などの言葉も、就任記者会見での応対の様子も良くて、それなのになぜ?と残念でなりません。上記2人は2008年9月に最高裁判事になりました。
金築誠志裁判官は2009年1月に最高裁判事となったばかりのエリート裁判官で、最高裁調査官、東京地裁の裁判長、最高裁人事局長、大阪高裁長官と、輝かしい経歴を重ねた人だそうです。こういう立場の人なら、この判決も驚くに値しないことでしょうか?
涌井紀夫裁判官も東京地裁判事を皮切りに、最高裁で行政局課長・人事局課長、上席調査官、総務局長などを歴任して2006年に最高裁判事になったエリート裁判官です。2008年住民基本台帳ネットワークについて住民3人の離脱の訴えを棄却しました。しかし中には良い判決も。国籍法に関して子どもを国籍取得上差別するのは法の下の平等に反すると判断。戦時中に連行され広島で被爆した韓国人の元徴用工らが慰謝料を求めた訴えに対しても、「被爆者援護法の解釈を誤っており『被爆者が出国したら適用外』としたのは違法」として国に賠償命令。
一人の教員が裁判に訴えるに至った、「底なし沼」に足を踏み入れたような、異論を許さない閉塞した学校現場の状況は、裁判官には理解されなかったのかもしれません。それとも裁判官も同じような状況に置かれているのか。…しかし最高裁裁判官として、地裁・高裁判決のでたらめさに気づかなかったとしたら、その職業的怠慢は、許されないものです。
「もの言える自由」裁判は、大変残念な結果をもって終わりました。「底なし沼」は学校だけでなく、裁判所にまで続いているのかもしれないと知らされました。
この裁判を物心両面で支えて下さった会員の皆様に、このような結果を報告しなければならないのは心苦しい思いです。しかし提訴以来3年余の間に、この裁判を理解し、支援して下さる方々とのよき出会いがあったことに、私は希望を見出しています。裁判官に通じなかったとしても、私の言葉が通じ、受けとめてくれた方々がいたという、確かな手応えは私の心に残っています。
一面識もないのに、会費を振り込んで会員となり会報を読んでくださった方々、アンケートに答え、あるいは陳述書を書いてくださった豊多摩高校関係者の皆様、教職員や管理職の立場からの陳述書を書いてくださった方々、短時間の法廷でも裁判の傍聴に駆けつけてくださった方々、地裁の単独審理の小さな法廷のため傍聴抽選で法廷に入れなくても毎回多くの方が来て下さることに支えられました。
弁護団の精力的な力強い活動には深く感謝申し上げます。
又、控訴審で3人の学者の方々から、すばらしい説得力ある意見書を提出していただきました。
そして何よりも、それぞれ仕事とご家族の事情もある多忙な中で、事務局の皆さんが献身的にこの裁判を支えて下さいました。
すべての皆様、有難うございました。心からの感謝を申し上げます。
2009.8.15(池田幹子)
「もの言える自由」裁判交流会ニュース2009年8月17日発行NO.14
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