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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

日本のアウン・サン・スー・チー?!

2007年10月18日 | 増田の部屋
 ◎ 3人の都議を名誉毀損で提訴した増田都子さん 控訴審傍聴記

 2007年10月11日、裁判所前は騒然としていた。10月の晴れた空の下、日の丸がはためき、手書きのプラカードを首から下げた男性たち、マイクなのに大声でがなりたてる声。「偏向教師・増田都子!」「北朝鮮に帰れ!」……。噂どおり、都議会議員の土屋たかゆき(民主)・古賀俊昭(自民)・田代ひろし(自民)の3氏が率いる数十名の団体が街宣を行っているのである。

 関連サイト:
 ・増田都子のホームページ
 ・増田都子(ウィキペディア)
 ・土屋たかゆき(公式サイト)
 ・土屋敬之(ウィキペディア)
 ・古賀俊昭(ウィキペディア)
 ・田代ひろし(公式サイト)

 その日は、東京高裁で、増田都子さんがこの3人の都議会議員を、名誉毀損とプラバシー侵害で訴えた裁判の控訴審、第2回口頭弁論が開かれる日であった。

◎ 日本国憲法に忠実な教員はクビ?! 東京の苛烈な右傾化
 現在の日本、特に東京において、戦争放棄を謳う日本国憲法に基づき、「アジア太平洋戦争は侵略戦争である」と教えることに、不安を覚える教員は少なくないのではないだろうか。増田都子さんは、これをはっきりと生徒に伝え、分限免職された中学校の社会科教員である。

 増田さんは、ここ10年ほど、都教委と、上記3人の都議会議員、および産経新聞社から「偏向教師」とレッテルを貼られ、個人情報を漏洩され、街頭宣伝で誹謗中傷されるなど、多くの人権侵害を受けているという。
 2000年以降、増田さんは、これらの誹謗中傷に対し、いくつかの裁判を起こしてきたが、本件は、この3人の都議会議員が、増田さんを誹謗中傷する本を展転社という出版社から出版したことに対し、増田さんが名誉毀損とプライバシー侵害で訴えた裁判の控訴審である。
 ちなみに展転社は南京虐殺の生き証人・李秀英さんを「偽証人」などと誹謗中傷した本でも、名誉毀損での敗訴が確定している。

 (略)

 1審では、増田さんが訴えた、問題の書籍に記述された27箇所の名誉毀損部分のうち、11箇所が認定され、増田さんの実質勝訴となった。その後、負けた3人の都議は控訴、増田さんも認定されなかった16箇所の認定を求めて控訴、双方が控訴しあう裁判となったのが本件である。

◎ 日本のアウン・サン・スー・チー?! 弾圧に笑顔で応える増田さん
 裁判所前で繰り広げられる光景を見て、「弾圧とはこういうことか、こんな個人攻撃が許されるのだろうか」とショックを受けながら歩いていると、増田さんを見つけた。驚いたことに増田さんはニコニコしている。「もう、呆れちゃうでしょ。いつもこんな調子なのよ」と言いながら。

 増田さんとは2、3度お会いしたことがあったが、いつもお洒落なファッションが印象的な人である。その日の装いも、薄紫の花模様が品のよい華やかさをたたえた薄手のワンピース。しかも、増田さんは美人なのである。秋の爽やかな日差しのなか、にこやかに微笑む姿からは、とても猛烈な右翼の攻撃を受けている人には見えない。

 と、感心していると、サラリーマンには珍しい紐タイを締めた大柄な男性が一人、増田さんに近づいて来る。男性は、上からのしかかるように、額がくっつきそうになるほど顔を近づけて、「増田さーん、ダンナが泣いてるよぉ~、ダンナが泣いてるよぉ~」と繰り返す。どうして、彼に増田さんの連れ合いのことが分かるのか不明だが、増田さんは、やはりニコニコしながら「こういうことはやめてくださいと言っているでしょう」と言い返す。男性の明らかな脅しにも驚くが、増田さんのニコニコに、筆者は、より驚きを禁じ得ない。

 なぜ、増田さんはこのようなヒドイ目に合いながら、こんなにもにこやかでいられるのだろうか。筆者には、その晴れやかな笑顔から、彼女の中にある、消そうとしても消えない民主主義への信頼が、光のごとく発散しているように思え、なぜか、ミャンマーで民主化運動を支えつづけるアウン・サン・スー・チー氏の姿がだぶるのだった。

◎ クジ引き当たって、あな嬉し。なのに傍聴席には空席が……
 傍聴席54に対し、傍聴希望者は98名並び、抽選となった。いつもなら番号が張り出されるそうだが、今回は珍しくクジ棒を引く、本当のクジ引きだった。いつもはクジ運が悪いのだが、棒の先に赤い印のついた当たりクジを引いて、「こういう時にクジ運をとっておいて良かった!」と胸をなでおろした。

 810号法廷。損害賠償請求控訴事件・第2回口頭弁論。原告側に増田さんと弁護人、被告側に、古賀俊昭都議会議員と弁護人が一人。古賀氏は、真っ青なスーツに真っ赤なネクタイというお洒落な?装い。開廷を待っていると、開廷時刻である午後2時直前に息を切らして入って来る人がいて、それは都議側の2人目の弁護人であった。今回は土屋・田代両都議は欠席だった。

 傍聴席は満席のはずが、何故か3席の空席。筆者の隣りの傍聴者の方が、「都議側の支援者は、傍聴券確保のために動員をかけて呼ばれた人たちだから、傍聴券をとったら帰る人もいるのよ」と教えてくれた。傍聴したいのにクジで外れて傍聴できない人もいるのに何と言うことだろう。

◎ 審理は淡々。裁判長はちょっぴりイライラ?
 本件を担当する裁判官は、大谷禎男裁判長・杉山正巳裁判官、鈴木昭洋裁判官。2時開廷の予定が、時間になっても裁判官は現れず、2時15分になってやっと裁判官が現れた。遅れた理由の説明もなく、裁判が始まる。

 まず大谷裁判長は、増田さん側も都議側も準備書面の提出が遅れたことを指摘。さらに裁判長が「これで準備書面は完結していますか?」と両者に問うと、都議側の息を切らして入ってきた方の弁護人が、「1時にファクスで準備書面を送ったのですが、届いていますか?」と聞く。裁判長は見ていないらしく、しばらくの間、受付に問い合わせ届けさせるなどのやり取りがあった。ちょっと福田康夫首相に似ている大谷裁判長は、書類を待っている間、少しばかり苛立たしげな様子。なかなか書類が届かないため、いったん次回陳述となったが、直後ファクスが届けられ、陳述扱いとなる。これらの陳述に対する反論を両者が次回行うということになり、2時30分、閉廷となった。

【増田さん側の主張の要旨】

◎ 一審では11箇所の名誉毀損を認定。今回は残りの16箇所の認定を求める

 3人の都議が出版した書籍は、一貫して、原告(増田さん)の紙上討論授業を「洗脳教育」「マインドコントロール」「偏向教育」「偏狭な思想」などという決めつけを行い、そこから、原告が教師として不適格であると述べている。増田さんは、書籍には27箇所の名誉毀損の表現があるとして訴え、1審では11箇所が認められた。今回の2審では、残りの16箇所についても認めてほしいとの主張を展開している。

 増田さんの授業に対する決め付けが根拠になっている以上、それが事実であるかの判断は重要である。増田さんらは、1審の判決がその検討なしに不認定を行っているとし、再度、増田さんが行った米軍基地問題や天皇の戦争責任などをテーマにした紙上討論の授業が、教育的効果及び教育基本法第8条の趣旨及び当時の学習指導要領と整合性があるかどうか、検討してもらいたいと述べている。

 ここに、問題となっている増田さんの紙上討論授業の一部を紹介しておく。

(略)

◎ 日本国憲法を遵守する教師は偏向教師か、理想の教師か

 増田さんは言う。

 「教員は公立私立にかかわらず、47年教育基本法に基づき「(憲法の)理想の実現を教育の力にまつ」ことを課されているのですから、この「憲法の理想」という「特定の政治的思想」「政治思想」を、すべての教員は持って教育活動をする責務があります。そして裁判官も含め、都知事だろうが都議会議員だろうが○○議員だろうが、すべての公務員が、この日本国憲法の尊重擁護義務に基づき、「日本国憲法の思想」という特定の「政治的思想」「政治思想」に基づく仕事をしなければならない責務があるのです」

 いったい彼女ほど、憲法の尊重擁護義務を履行し、憲法の理想を実現しようと尽くしている公務員がいるだろうか。増田さんの言葉を聞きながら、筆者は、また思うのである。増田さんの内側から発せられる輝きは、日本国憲法の輝きなのかもしれない、と。

次回期日:
 平成19年(ネ)第2856号 損害賠償請求控訴事件
 2007年12月11日(火) 午後2時~ 東京高裁810号法廷

関連裁判:
 増田都子さんの不当な免職取消し裁判
 2007年12月10日(月) 11:30~ 東京地裁722号法廷


関連記事:
・個人情報漏洩、誰が守るの:東京高裁判決
http://www.news.janjan.jp/area/0702/0702160133/1.php

(しみずえいこ)

『JANJAN』 2007/10/15
http://www.news.janjan.jp/living/0710/0710143901/1.php

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