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1月第3月曜日オバマ大統領の二期目の就任式は、キング牧師の生誕を祝う祝日

2013年01月10日 | 平和憲法
  《東京新聞 論説委員のワールド観望》
 ◆ キング牧師に見守られ


 今月二十一日に行われるオバマ大統領の二期目の就任式は、キング牧師の生誕を祝う祝日に重なる。今年はまた、「私には夢がある」の一節で広く知られるキング牧師の演説から半世紀という節目にも当たる。
 さまざまな角度から二人の対比論が聞こえてきそうだ。

 ■ 「不渡りの約束手形」
 リンカーンの奴隷解放宣言から百年を機に、キング牧師が演説を行ったのは一九六三年八月。会場となったワシントンのナショナル・モールには全国から公民権運動を支持する黒人を中心に二十五万人の熱狂的な市民が集まった。
 演説をあらためて読み、映像を見ると、米憲法や独立宣言が全ての人を対象に保障したはずの理念、「生命、自由、幸福追求の不可侵の権利」が、こと黒人に関しては「不渡りのままの約束手形」に終わっていることへの怒りが痛切に伝わる。
 何より、激しい憤りを湛(たた)えながら、黒人聖職者特有の韻律と抑揚に満ちた語り口で非暴力の徹底を説く姿が多くの人の心を動かしたのだろう。
 弁舌の才ではオバマ氏も譲らない。

 ■ 見えぬ融和への道筋
 「建国の父たちが描いた夢を疑う者がまだいるなら、今日の結果こそがその答えだ」。キング牧師をほうふつさせるように語った四年前のオバマ氏の勝利宣言に米国社会の底知れぬ躍動感を見た人も多いのではないか。
 同じ演説で、オバマ氏は「目標は任期一期で達成されない。前途は遼遠だ」と過大な期待を戒めるように語ってもいるが、現実はそれ以上の失望感をもたらしてしまった。
 核兵器廃絶、イスラム対話はもとより、経済復興、失業率の半減まで、掛け声とは裏腹に成果はなかなかあがらず、共和党陣営から国家分断、政府機能麻痺を深めただけ、と痛罵されたことは、昨年の選挙戦で見られた通りだ。
 再選後、初の試練となった「財政の崖」問題も、危機を一時的に回避する妥協にとどまり、融和への見通しは決して明るくない。
 黒人、理想的現実主義、ノーベル平和賞受賞など、探せば二人の共通点は多い
 一方で、母が白人、父がケニア出身というオバマ氏に対しては、奴隷制の過去を共有する黒人とはみなされず、黒人への配慮も不十分、とする批判もなお根強くある。
 非暴力運動を貫いた聖職者と、合法的暴力装置たる軍の最高司令官を兼ねる政治家とでは、そもそも拠って立つ基盤から相いれまい。
 ■ 演説は理念描けるが
 半世紀の問に冷戦は終結し、今や黒人よりラテン系が人口の多数を占めるなど内外の時代状況も一変している。
 「黒人の米国、白人の米国、ラテン系の米国、アジア系の米国、があるのではない。あるのは米合衆国だけだ
 政治家オバマ氏を一躍世に知らしめた二〇〇四年党大会の基調演説は、「私には夢がある」に描かれた社会に通じるといわれる。自身よく引用するその米国像にどこまで近づけるか。
 オバマ政権二期目は、キング牧師の見守る中での船出になる。(安藤徹)

『東京新聞』(2012/1/8)

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