=阪口正二郎一橋大教授意見書=
◆ 作業着としてのトレーナー着用と「表現の自由」の関係
お忙しい中、傍聴に駆けつけてくださり、ありがとうございます。
今日の法廷は08年事件(河原井、根津ともに停職6か月処分)です。
根津の処分理由については、「君が代」不起立のほかに、日常の教育活動で「Objection Hinomaru Kimigayo」とのロゴの入ったトレーナーを着用していたことが職務命令違反、職務専念義務違反だというのです。
今日提出の準備書面は、そのトレーナー着用について、阪口正二郎教授(一橋大)に書いていただいた意見書をもとに準備書面にしたものです。
以下、準備書面の主張を記します。
1.まず前提として、問題とされていることは、儀式における『行為』ではなく、「服装」であること。
2.根津がトレーナーを着用したのは、作業着としてであった。それを、根津を嫌悪した都教委と校長は、単なる『行為』に過ぎないトレーナー着用を恣意的に「表現行為」と仕立て上げ、職務命令違反に問うたのであった。
単なる「行為」に過ぎないものを「表現行為」との意味付けを付与し、それを理由に規制することを許せぱ、それは「表現の自由」だけでなく「行為の自由」に対してまで著しい萎縮効果を及ぼす。
憲法21条は「表現する自由」と同時に、その裏返しとして「表現しない自由」を含む。それを「消極的表現の自由」とすれば、その自由を侵害する。
3.根津には汚れてもいい作業着を着用する必然性があった。卒業式等ではなく、日常的授業において服装を規制するためには、学校の業務に支障がある場合に限られるべき。しかし、そうした事実はなく、職務命令は合理性を欠く。
職務専念義務違反については、「積極的な表現行為」が問題になった判例においてさえ、諸事情を具体的に検討して結論を導こうとしたが、本件では検討をしていない。着用によって苦情も業務への支障もなく、注意力のすべてが職務の遂行に向けられなかった行為でもない。
なお、組合バッジ着用において、着用者に対する処分を繰り返し、訓告、減給、出勤停止へとエスカレートしていった事件において、処分の相当性の点で行きすぎであるとして、減給、出勤停止を少数派の弱体を図る支配介入を認定した判例がある。
根津のトレーナー着用を恣意的に「表現行為」と意味づけし規制しようとしたことには、根津を停職6月ひいては免職に追い込むための意図があった。
4,本件トレーナー着用は原告の表現の自由、服装の自由等の憲法上保障された人権、優位利益・価値にかかわるものであって、処分の裁量権審査を慎重にすべき。
本件における事情からは、本件処分をすべき個別具体的事情は存在しない。
■ 次回法廷は7月11日(月)13:30~527号法廷
◆ 作業着としてのトレーナー着用と「表現の自由」の関係
2016.5.12
傍聴に駆けつけてくださった皆様お忙しい中、傍聴に駆けつけてくださり、ありがとうございます。
今日の法廷は08年事件(河原井、根津ともに停職6か月処分)です。
根津の処分理由については、「君が代」不起立のほかに、日常の教育活動で「Objection Hinomaru Kimigayo」とのロゴの入ったトレーナーを着用していたことが職務命令違反、職務専念義務違反だというのです。
今日提出の準備書面は、そのトレーナー着用について、阪口正二郎教授(一橋大)に書いていただいた意見書をもとに準備書面にしたものです。
以下、準備書面の主張を記します。
1.まず前提として、問題とされていることは、儀式における『行為』ではなく、「服装」であること。
2.根津がトレーナーを着用したのは、作業着としてであった。それを、根津を嫌悪した都教委と校長は、単なる『行為』に過ぎないトレーナー着用を恣意的に「表現行為」と仕立て上げ、職務命令違反に問うたのであった。
単なる「行為」に過ぎないものを「表現行為」との意味付けを付与し、それを理由に規制することを許せぱ、それは「表現の自由」だけでなく「行為の自由」に対してまで著しい萎縮効果を及ぼす。
憲法21条は「表現する自由」と同時に、その裏返しとして「表現しない自由」を含む。それを「消極的表現の自由」とすれば、その自由を侵害する。
3.根津には汚れてもいい作業着を着用する必然性があった。卒業式等ではなく、日常的授業において服装を規制するためには、学校の業務に支障がある場合に限られるべき。しかし、そうした事実はなく、職務命令は合理性を欠く。
職務専念義務違反については、「積極的な表現行為」が問題になった判例においてさえ、諸事情を具体的に検討して結論を導こうとしたが、本件では検討をしていない。着用によって苦情も業務への支障もなく、注意力のすべてが職務の遂行に向けられなかった行為でもない。
なお、組合バッジ着用において、着用者に対する処分を繰り返し、訓告、減給、出勤停止へとエスカレートしていった事件において、処分の相当性の点で行きすぎであるとして、減給、出勤停止を少数派の弱体を図る支配介入を認定した判例がある。
根津のトレーナー着用を恣意的に「表現行為」と意味づけし規制しようとしたことには、根津を停職6月ひいては免職に追い込むための意図があった。
4,本件トレーナー着用は原告の表現の自由、服装の自由等の憲法上保障された人権、優位利益・価値にかかわるものであって、処分の裁量権審査を慎重にすべき。
本件における事情からは、本件処分をすべき個別具体的事情は存在しない。
■ 次回法廷は7月11日(月)13:30~527号法廷
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