《10・6予防訴訟第3回最高裁要請行動「添付資料」から》
自由権規約19条(意見と表現の自由)に関する「一般的意見34」の最終版が確定し(2011.7.21採択)、そのパラグラフ38に、「disrespect for flags and symbols(旗やシンボルに敬意を払わないこと)」の文言が加わりました。旗やシンボルに敬意を払わないことを理由に、公権力が人権を制約することは許されないというのです。
この文言は、「敬意の要素を含む」(注;過日の一連の最高裁判決の文言)国旗国歌への起立斉唱命令の違憲性を争っている本件訴訟と、極めて密接な関連があることを指摘させていただきます。
以下に、パラグラフ38の英文と、私たちが翻訳した和文を示します。
「一般的意見34最終版」(英文)は、国連人権高等弁務官のHPからダウンロードできます。
http://www2.ohchr.org/english/bodies/hrc/comments.htm
38. As noted earlier in paragraphs 13 and 20, concerning the content of political discourse, the Committee has observed that in circumstances of public debate concerning public figures in the political domain and public institutions, the value placed by the Covenant upon uninhibited expression is particularly high. Thus, the mere fact that forms of expression are considered to be insulting to a public figure is not sufficient to justify the imposition of penalties, albeit public figures may also benefit from the provisions of the Covenant. Moreover, all public figures, including those exercising the highest political authority such as heads of state and government, are legitimately subject to criticism and political opposition. Accordingly, the Committee expresses concern regarding laws on such matters as, lese majeste, desacato, disrespect for authority, disrespect for flags and symbols, defamation of the head of state and the protection of the honour of public officials, and laws should not provide for more severe penalties solely on the basis of the identity of the person that may have been impugned. States parties should not prohibit criticism of institutions, such as the army or the administration.
38. 上記パラ13および20で述べたように、政治的言説の内容に関して、委員会は、政治的領域および公的機関の公人に関する国民的議論においては、規約が自由な表現に対して特に高い価値を認めていることに留意してきた。したがって、表現の形態がある公人に対して侮辱的とみなされるという事実だけで、刑罰を科すことが十分に正当化されるわけではない。たとえ、公人もまた、規約の規定から恩恵を受けることのできる存在であるとしても。さらに、国家元首や政府の最高責任者等の最高政治権力の行使者をはじめ、すべての公人は、合法的に、批判および政治的反対の対象になる。したがって、委員会は、不敬罪lese majeste、侮辱罪desacato、権威に対する無礼、国旗やシンボルに対して敬意を払わないこと、国家元首に対する名誉毀損、および公務員の名誉の保護等に関する法令に対して、懸念を表明する。また、法令は、非難の対象となったとされる人物が誰であるかということのみを根拠にして、より厳しい刑罰を与えるべきではない。締約国は軍隊や行政等の組織に対する批判を禁ずるべきではない。
国連自由権規約委員会は、1983年に自由権規約19条(表現の自由)に対する「一般的意見10」を採択しましたが、その後2010年10月に、27年間蓄積されてきた先例や審査をもとに全面改定を目指し、54項目に及ぶ新たな「一般的意見34草案」を公開して全世界から意見を求めていました。そして2011年7月21日に「一般的意見34最終版」が確定することになったのです。
これこそ最新の、自由権規約19条(意見と表現の自由)の、詳細な条文の解釈と運用の指針です。そして同規約は締約国(注;もちろん日本も含む)にとって自動執行力のある条約です。
文書全体は、テーマ毎に9つの章に分かれ、52のパラグラフからなっています。
【参考】
『一般的意見34最終版』の構成
①パラグラフ 1~ 8 一般見解(19条全体について)
②パラグラフ 9~10 意見を持つ自由(19条1項について)
③パラグラフ11~12 表現の自由(19条2項について)
④パラグラフ13~17 表現の自由とメディア(19条2項の具体的課題)
⑤パラグラフ18~19 情報へのアクセス( 同上 )
⑥パラグラフ20 表現の自由と政治的権利( 同上 )
⑦パラグラフ21~36 19条3項の適用(19条3項について)
⑧パラグラフ37~49 ある特定の分野における表現の自由に対する制限の限定的範囲(19条3項の具体的課題)
⑨パラグラフ50~52 19条と20条との関係
International Covenant on Civil and Political Rights 第19条(意見と表現の自由)
1 すべての者は、干渉されることなく意見を持つ権利を有する。
2 すべての者は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。
3 2の権利の行使には、特別の義務及び責任を伴う。したがって、この権利の行使については、一定の制限を課することができる。ただし、その制限は、法律によって定められ、かつ、次の目的のために必要とされるものに限る。
(a)他の者の権利又は信用の尊重
(b)国の安全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護
2011年10月6日
◎ 自由権規約19条に関する『一般的意見34』最終版が確定し、
パラグラフ38に「旗やシンボルに敬意を払わないこと」との文言が追加されたこと
パラグラフ38に「旗やシンボルに敬意を払わないこと」との文言が追加されたこと
自由権規約19条(意見と表現の自由)に関する「一般的意見34」の最終版が確定し(2011.7.21採択)、そのパラグラフ38に、「disrespect for flags and symbols(旗やシンボルに敬意を払わないこと)」の文言が加わりました。旗やシンボルに敬意を払わないことを理由に、公権力が人権を制約することは許されないというのです。
この文言は、「敬意の要素を含む」(注;過日の一連の最高裁判決の文言)国旗国歌への起立斉唱命令の違憲性を争っている本件訴訟と、極めて密接な関連があることを指摘させていただきます。
以下に、パラグラフ38の英文と、私たちが翻訳した和文を示します。
「一般的意見34最終版」(英文)は、国連人権高等弁務官のHPからダウンロードできます。
http://www2.ohchr.org/english/bodies/hrc/comments.htm
38. As noted earlier in paragraphs 13 and 20, concerning the content of political discourse, the Committee has observed that in circumstances of public debate concerning public figures in the political domain and public institutions, the value placed by the Covenant upon uninhibited expression is particularly high. Thus, the mere fact that forms of expression are considered to be insulting to a public figure is not sufficient to justify the imposition of penalties, albeit public figures may also benefit from the provisions of the Covenant. Moreover, all public figures, including those exercising the highest political authority such as heads of state and government, are legitimately subject to criticism and political opposition. Accordingly, the Committee expresses concern regarding laws on such matters as, lese majeste, desacato, disrespect for authority, disrespect for flags and symbols, defamation of the head of state and the protection of the honour of public officials, and laws should not provide for more severe penalties solely on the basis of the identity of the person that may have been impugned. States parties should not prohibit criticism of institutions, such as the army or the administration.
38. 上記パラ13および20で述べたように、政治的言説の内容に関して、委員会は、政治的領域および公的機関の公人に関する国民的議論においては、規約が自由な表現に対して特に高い価値を認めていることに留意してきた。したがって、表現の形態がある公人に対して侮辱的とみなされるという事実だけで、刑罰を科すことが十分に正当化されるわけではない。たとえ、公人もまた、規約の規定から恩恵を受けることのできる存在であるとしても。さらに、国家元首や政府の最高責任者等の最高政治権力の行使者をはじめ、すべての公人は、合法的に、批判および政治的反対の対象になる。したがって、委員会は、不敬罪lese majeste、侮辱罪desacato、権威に対する無礼、国旗やシンボルに対して敬意を払わないこと、国家元首に対する名誉毀損、および公務員の名誉の保護等に関する法令に対して、懸念を表明する。また、法令は、非難の対象となったとされる人物が誰であるかということのみを根拠にして、より厳しい刑罰を与えるべきではない。締約国は軍隊や行政等の組織に対する批判を禁ずるべきではない。
国連自由権規約委員会は、1983年に自由権規約19条(表現の自由)に対する「一般的意見10」を採択しましたが、その後2010年10月に、27年間蓄積されてきた先例や審査をもとに全面改定を目指し、54項目に及ぶ新たな「一般的意見34草案」を公開して全世界から意見を求めていました。そして2011年7月21日に「一般的意見34最終版」が確定することになったのです。
これこそ最新の、自由権規約19条(意見と表現の自由)の、詳細な条文の解釈と運用の指針です。そして同規約は締約国(注;もちろん日本も含む)にとって自動執行力のある条約です。
文書全体は、テーマ毎に9つの章に分かれ、52のパラグラフからなっています。
【参考】
『一般的意見34最終版』の構成
①パラグラフ 1~ 8 一般見解(19条全体について)
②パラグラフ 9~10 意見を持つ自由(19条1項について)
③パラグラフ11~12 表現の自由(19条2項について)
④パラグラフ13~17 表現の自由とメディア(19条2項の具体的課題)
⑤パラグラフ18~19 情報へのアクセス( 同上 )
⑥パラグラフ20 表現の自由と政治的権利( 同上 )
⑦パラグラフ21~36 19条3項の適用(19条3項について)
⑧パラグラフ37~49 ある特定の分野における表現の自由に対する制限の限定的範囲(19条3項の具体的課題)
⑨パラグラフ50~52 19条と20条との関係
International Covenant on Civil and Political Rights 第19条(意見と表現の自由)
1 すべての者は、干渉されることなく意見を持つ権利を有する。
2 すべての者は、表現の自由についての権利を有する。この権利には、口頭、手書き若しくは印刷、芸術の形態又は自ら選択する他の方法により、国境とのかかわりなく、あらゆる種類の情報及び考えを求め、受け及び伝える自由を含む。
3 2の権利の行使には、特別の義務及び責任を伴う。したがって、この権利の行使については、一定の制限を課することができる。ただし、その制限は、法律によって定められ、かつ、次の目的のために必要とされるものに限る。
(a)他の者の権利又は信用の尊重
(b)国の安全、公の秩序又は公衆の健康若しくは道徳の保護
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます