《『労働情報』連載 沖縄》
◆ 歴史の歯車を逆に回させない
オスプレイ拒否、普天間閉鎖 辺野古反対にこだわる
台風11号接近のため、8月5日に予定された「オスプレイの沖縄配備に反対する県民大会」が延期された。
7月18日超党派の実行委員会発足このかた、岩国基地への垂直離着陸輸送機MV22、タカ目タカ科の猛禽ミサゴ(オスプレイ)に由来するまがまがしい機体12を強引に搬入、全国的に反対運動が広がった。県内でも市民による騒音パレードなど、これまでにない形態の運動を含めた、絶対阻止の機運が盛り上がった。
岩国、東京など県外各地での8・5「オスプレイNO」の集会は沖縄を鼓舞した。森本敏防衛大臣のオスプレイ試乗という茶番劇もあり、県民の反対の気持ちを高める材料に事欠かない。改めて設定される県民大会で、島ぐるみ、安全運航要求ではなくあくまでオスプレイの配備拒否を表明する。さらに、普天間飛行場閉鎖、辺野古新基地建設・高江オスプレイパッド設置阻止を貫く運動を展開していく構えは崩せない。
後ろに政府・与党やタカ派(あるいは沖縄通)政治家・官僚らの策略が見え隠れする、名護市でのいかがわしい動きもあるが、住民・市民の反基地の運動も押し返すだけの力量を備えてきている。
◆ 住民要望伝える気なく
森本大臣は、訪米する際の記者会見で次のように語っている(8月3日)。
記者の質問「今回の訪米で、モロッコの事故調査、これは当初は先月というか7月末と言われていたが、米側から説明を受ける予定か」。
森本回答「いや、説明ではなくて、いつ頃行われるのかということがだいたいわかるのではないか。おおむね調査は最終段階にきて、ただあの事故はフロリダの事故と違って死亡者が出ているので、普通アメリカの場合、こういう場合は家族の方にまず説明するということが重要。というのは、誰に責任があるかということによって、損害賠償だとかいろいろな問題が起こるので、そのご家族に中身を説明して了解を頂いてから外国に提供するということなので、その時間が少しかかっているということ。そう遠くない時期に『日本側に説明できる準備が出来ました』と言ってくると思う。もうそう遠くないと思う。日時はいずれ公表できると思う」(「です、ます」調を言い切りに直し)。
そして、8月4日に垂直離着陸機MVオスプレイに試乗して、「快適だった」とか、「想像していた以上に飛行が安定している」「市街地にあまり大きな影響を与えることはないだろう」(NHKニュース4日当日)と語った。
語るに落ちるとはこのことだ。森本防衛相訪米の本当の目的は、バネッタ国防長官と「日米防衛協力の指針(ガイドライン)」の見直し合意ではなかったか。
モロッコ事故の米側の報告書はほぼできていて、損害賠償が絡む死亡者の遺族への説明が済んで、8月中にこちらに言ってくるのを待つばかり。10月運用の変更はないという国防長官の宣言を承り、日本各地の低空飛行訓練に際しては住民の安全に配慮することで合意。普天間については「辺野古移設」確認だって!。
◆ 強気で要塞化押し付け
いつもこうなんだ。「沖縄の負担軽減」と言いながら、米側がしっかり沖縄基地の機能強化(地位協定に守られた、実質的な自由使用)、日米軍事同盟強化で日本への肩代わりという実を取るー。今回はこれまでと違い、負担軽減のオブラートにくるまず、あからさまな抑止力強化「強行」姿勢がめだつことにも気づく。
森本防衛相は「地元の合意は前提ではない」と明言した(7月27日)。だから、安全確認のはずのオスプレイ試乗で、2つのエンジン停止の際のオートローテーション機能を試さなかったという。
専門家からも、沖縄の市民運動からも同機能が欠如している(機体降下で生じる空気抵抗で回転翼を回して安全に着陸する自動回転能力がない)と再三指摘され、県からその機能があるかと質問書が提出されている。にもかかわらず、防衛省パンフで「ローテーションにより、安全に着陸できる」と説明しているのを実証することなく、安全を証言したのである。
欠陥機といえば、2007年に周辺住民の猛反対を押し切って、一定期間の配備を繰り返してきた、新鋭機のステルス戦闘機F22ラプターが、7月28、29日とまた嘉手納飛行場にやってきた。
敵のレーダー機能を跳ね返す世界最強の戦闘機と米空軍が誇る、これも「猛禽類」という名の機種で、2011年5月に墜落し、操縦士にたいする酸素供給システムに不具合があることが判明、今年5月まで飛行中止になっていた。
1年後の今年5月不具合は改善されたとして、高度や距離を制限して運用開始したもの。嘉手納町議会は急きょ配備中止と即時撤去を求める意見書を可決、6日沖縄防衛局と外務省沖縄事務所に突きつけた。
◆ 怪しい動きいろいろ
「県民大会にはぜひ仲井眞弘多知事の参加を」、大会計画以来県議会の与野党、議会首長共々の地方自治体、参加民間団体からの切なる要望である。
日米政府に対する全県民一致の「オスプレイNO」を突きつけるためには、行政の長もともに行動すべきだとみんなが思つている。延期になって、その8月5日に知事と前原誠司民主党政調会長と会見の日程が組まれていたことが露見した。
前原氏は、内閣府沖縄担当相時代から仲井眞知事とは昵懇の仲であることは知られる。過去にもしばしば秘密会談が行われてきた。
仲井眞知事は、今年度発足の沖縄振興新法成立や一括交付金確保への謝意表明、来年度予算概算要求をめぐる協力を要請したとしらばっくれているが、県民大会への参加を引き延ばしている真意を疑われるのも当然だ。
前原氏は台風襲来の5日に来県、知事との会談後、5、6日には名護市の辺野古誘致派市会議員や島袋吉和前市長、基地工事マフィアと呼びたい経済人と懇談した。
前原氏とこれら容認派との会談はしばしば行われ、今回は初めて前原氏の口から、基地と経済振興とのリンクが強調された。名護市の容認派は、8日夜、「辺野古区民の真実の声を全国に広げる市民集会」を開いて、気勢を上げる。
島袋前市長は「辺野古移設は名護市民の悲願」という報告を行う。普天間の危険を除去するため代替地受入れというが、基地受け入れではなく、ついてくる資金受け入れ歓迎の「誘致」派なのだ。
もはや名護市民が稲嶺進市長を当選させた段階で破たんした考えである。集会ではまた、辺野古の市有地の座り込みテント村追い出しを画策して、黙認している現市長を窮地に立たせる報告を行うことも、宣伝チラシで予告している。
かつて辺野古のV字型基地を容認した北部市町村会が、「北部12市町村住民の生命と財産、安心・安全及び生活環境を守る立場から」、日米政府に「北部地域の基地負担軽減と普天間飛行場の辺野古移設の撤回を求める」ことを決議、8月3日上京して関係各省庁に要請している。
SACO合意から16年経過して、沖縄の民意も変ったことを理由に挙げている。
そんな情勢下の容認派と与党幹部の頻繁な接触を、歴史の歯車を逆に回す行為といわずしてなんといおう。
高江のある東村の村長も12市町村会の一員、それぞれの議会ではオスプレイ配備反対や、中止要求の意見書を可決している。
8月7日、高江の住民の会と社民、社大、共産の国会議員や県議会議員ら約40人が、伊集盛久・東村村長にオスプレイパッドにほかならない着陸帯設置の中止を表明するよう求めた。
しかし、伊集村長はオスプレイだけの着陸帯ではないと認識していると矛盾した回答で、要求に応じなかった。このあたりも、今後の運動が抱える課題になりそうだ。
『労働情報』(845・6号 2012/8/15&9/1)
◆ 歴史の歯車を逆に回させない
オスプレイ拒否、普天間閉鎖 辺野古反対にこだわる
由井晶子(ジャーナリスト)
台風11号接近のため、8月5日に予定された「オスプレイの沖縄配備に反対する県民大会」が延期された。
7月18日超党派の実行委員会発足このかた、岩国基地への垂直離着陸輸送機MV22、タカ目タカ科の猛禽ミサゴ(オスプレイ)に由来するまがまがしい機体12を強引に搬入、全国的に反対運動が広がった。県内でも市民による騒音パレードなど、これまでにない形態の運動を含めた、絶対阻止の機運が盛り上がった。
岩国、東京など県外各地での8・5「オスプレイNO」の集会は沖縄を鼓舞した。森本敏防衛大臣のオスプレイ試乗という茶番劇もあり、県民の反対の気持ちを高める材料に事欠かない。改めて設定される県民大会で、島ぐるみ、安全運航要求ではなくあくまでオスプレイの配備拒否を表明する。さらに、普天間飛行場閉鎖、辺野古新基地建設・高江オスプレイパッド設置阻止を貫く運動を展開していく構えは崩せない。
後ろに政府・与党やタカ派(あるいは沖縄通)政治家・官僚らの策略が見え隠れする、名護市でのいかがわしい動きもあるが、住民・市民の反基地の運動も押し返すだけの力量を備えてきている。
◆ 住民要望伝える気なく
森本大臣は、訪米する際の記者会見で次のように語っている(8月3日)。
記者の質問「今回の訪米で、モロッコの事故調査、これは当初は先月というか7月末と言われていたが、米側から説明を受ける予定か」。
森本回答「いや、説明ではなくて、いつ頃行われるのかということがだいたいわかるのではないか。おおむね調査は最終段階にきて、ただあの事故はフロリダの事故と違って死亡者が出ているので、普通アメリカの場合、こういう場合は家族の方にまず説明するということが重要。というのは、誰に責任があるかということによって、損害賠償だとかいろいろな問題が起こるので、そのご家族に中身を説明して了解を頂いてから外国に提供するということなので、その時間が少しかかっているということ。そう遠くない時期に『日本側に説明できる準備が出来ました』と言ってくると思う。もうそう遠くないと思う。日時はいずれ公表できると思う」(「です、ます」調を言い切りに直し)。
そして、8月4日に垂直離着陸機MVオスプレイに試乗して、「快適だった」とか、「想像していた以上に飛行が安定している」「市街地にあまり大きな影響を与えることはないだろう」(NHKニュース4日当日)と語った。
語るに落ちるとはこのことだ。森本防衛相訪米の本当の目的は、バネッタ国防長官と「日米防衛協力の指針(ガイドライン)」の見直し合意ではなかったか。
モロッコ事故の米側の報告書はほぼできていて、損害賠償が絡む死亡者の遺族への説明が済んで、8月中にこちらに言ってくるのを待つばかり。10月運用の変更はないという国防長官の宣言を承り、日本各地の低空飛行訓練に際しては住民の安全に配慮することで合意。普天間については「辺野古移設」確認だって!。
◆ 強気で要塞化押し付け
いつもこうなんだ。「沖縄の負担軽減」と言いながら、米側がしっかり沖縄基地の機能強化(地位協定に守られた、実質的な自由使用)、日米軍事同盟強化で日本への肩代わりという実を取るー。今回はこれまでと違い、負担軽減のオブラートにくるまず、あからさまな抑止力強化「強行」姿勢がめだつことにも気づく。
森本防衛相は「地元の合意は前提ではない」と明言した(7月27日)。だから、安全確認のはずのオスプレイ試乗で、2つのエンジン停止の際のオートローテーション機能を試さなかったという。
専門家からも、沖縄の市民運動からも同機能が欠如している(機体降下で生じる空気抵抗で回転翼を回して安全に着陸する自動回転能力がない)と再三指摘され、県からその機能があるかと質問書が提出されている。にもかかわらず、防衛省パンフで「ローテーションにより、安全に着陸できる」と説明しているのを実証することなく、安全を証言したのである。
欠陥機といえば、2007年に周辺住民の猛反対を押し切って、一定期間の配備を繰り返してきた、新鋭機のステルス戦闘機F22ラプターが、7月28、29日とまた嘉手納飛行場にやってきた。
敵のレーダー機能を跳ね返す世界最強の戦闘機と米空軍が誇る、これも「猛禽類」という名の機種で、2011年5月に墜落し、操縦士にたいする酸素供給システムに不具合があることが判明、今年5月まで飛行中止になっていた。
1年後の今年5月不具合は改善されたとして、高度や距離を制限して運用開始したもの。嘉手納町議会は急きょ配備中止と即時撤去を求める意見書を可決、6日沖縄防衛局と外務省沖縄事務所に突きつけた。
◆ 怪しい動きいろいろ
「県民大会にはぜひ仲井眞弘多知事の参加を」、大会計画以来県議会の与野党、議会首長共々の地方自治体、参加民間団体からの切なる要望である。
日米政府に対する全県民一致の「オスプレイNO」を突きつけるためには、行政の長もともに行動すべきだとみんなが思つている。延期になって、その8月5日に知事と前原誠司民主党政調会長と会見の日程が組まれていたことが露見した。
前原氏は、内閣府沖縄担当相時代から仲井眞知事とは昵懇の仲であることは知られる。過去にもしばしば秘密会談が行われてきた。
仲井眞知事は、今年度発足の沖縄振興新法成立や一括交付金確保への謝意表明、来年度予算概算要求をめぐる協力を要請したとしらばっくれているが、県民大会への参加を引き延ばしている真意を疑われるのも当然だ。
前原氏は台風襲来の5日に来県、知事との会談後、5、6日には名護市の辺野古誘致派市会議員や島袋吉和前市長、基地工事マフィアと呼びたい経済人と懇談した。
前原氏とこれら容認派との会談はしばしば行われ、今回は初めて前原氏の口から、基地と経済振興とのリンクが強調された。名護市の容認派は、8日夜、「辺野古区民の真実の声を全国に広げる市民集会」を開いて、気勢を上げる。
島袋前市長は「辺野古移設は名護市民の悲願」という報告を行う。普天間の危険を除去するため代替地受入れというが、基地受け入れではなく、ついてくる資金受け入れ歓迎の「誘致」派なのだ。
もはや名護市民が稲嶺進市長を当選させた段階で破たんした考えである。集会ではまた、辺野古の市有地の座り込みテント村追い出しを画策して、黙認している現市長を窮地に立たせる報告を行うことも、宣伝チラシで予告している。
かつて辺野古のV字型基地を容認した北部市町村会が、「北部12市町村住民の生命と財産、安心・安全及び生活環境を守る立場から」、日米政府に「北部地域の基地負担軽減と普天間飛行場の辺野古移設の撤回を求める」ことを決議、8月3日上京して関係各省庁に要請している。
SACO合意から16年経過して、沖縄の民意も変ったことを理由に挙げている。
そんな情勢下の容認派と与党幹部の頻繁な接触を、歴史の歯車を逆に回す行為といわずしてなんといおう。
高江のある東村の村長も12市町村会の一員、それぞれの議会ではオスプレイ配備反対や、中止要求の意見書を可決している。
8月7日、高江の住民の会と社民、社大、共産の国会議員や県議会議員ら約40人が、伊集盛久・東村村長にオスプレイパッドにほかならない着陸帯設置の中止を表明するよう求めた。
しかし、伊集村長はオスプレイだけの着陸帯ではないと認識していると矛盾した回答で、要求に応じなかった。このあたりも、今後の運動が抱える課題になりそうだ。
『労働情報』(845・6号 2012/8/15&9/1)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます