◆ 差別・選別・弱肉強食が一層強まる社会で教育は (レイバーネット日本)
公開議案は、「都立高校改革推進計画・新実施計画(第二次)」の策定について。
パブリックコメント128件のうち25件が「立川高校定時制の閉課程をしないで」というものだったが、2019年度から3か年の「新実施計画(二次)」はその声を全く無視したもので、「雪谷高校の閉課程は2020年度、江北高校の閉課程は2021年度、小山台高校及び立川高校の閉課程年度は未定」と、昨年までの計画をそのまま強行するものだった。
「夜間定時制課程は、全日制課程の高校等への進学がかなえられなかった生徒のセーフティネットの機能を有していますが、新実施計画策定後も、夜間定時制課程を希望する生徒は減少を続けています」と言い、「セーフティネットの機能」の認識は都教委にあるが、それは捨てて「減少」を優先する。
皮肉にも、4校の閉課程方針は、「目標2:生徒一人一人の能力を伸ばす学校づくりの推進」の項に書いてある。「夜間定時制課程を希望する生徒」はここで言う「生徒一人一人」に入れない。
「学力」の低い生徒については、能力を伸ばすことは無理、採算も取れないから切り捨てるということだ。
進学指導重点校への予算加配や理数教育の充実、医学部進学への支援などの「エリート」には金をふんだんに使うのに、夜間定時制4校には金を出さない。何という差別か!
公開報告は
①「第10期東京都生涯学習審議会建議(『地域と学校の協働』を推進する方策)について」
②「東京都中学校英語スピーキングテストについて」
③「『学校における働き方改革の成果と今後の展開』について」
④「北多摩地区特別支援学校(仮称)の設置候補地について」
非公開議案にも、非公開報告にも懲戒処分が上がっている。
①「第10期東京都生涯学習審議会建議(『地域と学校の協働』を推進する方策)について」
現在、行っている事業は、学校の求めに応じて必要な支援を地域のボランティアが行うための仕組みづくりを目指す「学校支援地域本部事業」が1024校、放課後等に子どもたちと地域住民等との交流機会を提供する「放課後子供教室推進事業」が1240教室、学習習慣が十分身についていない中学生等に対し、地域住民等の協力を得て学習支援を行う「地域未来塾」が458教室。
「子どもたちの教育を学校のみで担うのは量的・質的に困難」だから「地域と学校の協働」を推進するのだという。
建議は、「アクティブ・シニア(元気高齢者)をはじめとした地域の人々の交流拠点として、学校を活用することの重要性を指摘するとともに、都立高校等にとって『地域と学校の協働』を進める意義について整理した」という。
小中学校では、元気高齢者の活用で「教員の負担軽減」を図ろうとするものらしいが、そのことについて、委員から「負の側面、モンスターペアレンツならぬモンスター高齢者が入り込んでくることも検討してほしい」と発言があった。十分想像できることだ。
すでに行っている上記3事業は、教員の負担軽減になっているのかについて説明が欲しかったが、それがなかった。担当教員(副校長など)は調整にかなりの時間を費やし、「教員の負担軽減」どころではないだろうに。
「高校生が地域コミュニティとつながる意義」では、「高校が存立する地域との関わり」の例として「小学校に出向き放課後の学習支援、廃材を利用して作成した小物を高齢者施設の居住者にプレゼント等」を挙げる。
強制ボランティアのノルマを高校生は課せられるということか。
他に、企業・NPOと普通科高校との協働、不登校・中途退学対策としてユースソーシャルワーカーの全校への派遣を挙げるが、教員の負担増ははっきりしている。
高校は全てで、小中学校でも学区のない学校を都教委はつくっているというのに、なぜ今「地域と学校の協働」なのか、不可解だ。戦中の隣組を想起させる。
②「東京都中学校英語スピーキングテストについて」
2022年度の都立高入試から英語にスピーキングテストを導入することになった。
タブレット等端末に回答音声を録音する方法で、会場は大学等の外部施設で、11月第4土曜日から12月第2日曜日までの週休日・祝日に実施。
問題作成からテスト、採点まですべてを資格・検定試験の民間団体が行う。
15日の東京新聞によると、「岩手県が04年度から3年間対面形式で実施したが、負担が大きいとして取りやめた」という。
慣れない場所でのテストに、子どもたちの精神的負担は大きいだろう。それでも、スピーキングテストが必要なのだろうか。
③「『学校における働き方改革の成果と今後の展開』について」
昨年度に比べ、今年度は教員の在校時間が縮まったという。
部活動指導員が導入(中・高)された学校・担当教員は2時間32分減/週、印刷などの手伝いをするスクール・サポート・スタッフが導入(小・中)された学校では、3.2時間減/週、副校長を補佐する人を入れ、学校マネジメント強化モデル事業を実施した学校の副校長は小学校で11時間55分減/週、中学校で8時間減/週。
これによって、例えば中学校教員の週あたりの在校時間は昨年の64時間35分から今年は61時間14分になり、過労死ライン相当の割合は、昨年度の68.2%から今年度は48.5%に減ったと「成果」を報告。
来年度の取り組みとして都立学校では、
ア.「管理職が長時間労働となっている教員に対する指導・助言や産業医面接の勧奨を実施」
イ.「長期休業機関中において学校閉庁日を原則5日以上設定」
ウ.「各学校で定時退庁日を設定する等」などをあげるが、
仕事量を減らすものではない。
アに至っては、仕事処理の遅い教員だとして個人の責任に転嫁する。
「今後の展開」・解決策は、大幅定員増しかないのだ。
8時間労働を保障するのは使用者である都教委の責任であることを都教委には認識してもらいたい。
都立学校の教員から聞いた話だが、「退勤時のタイムカードを刻印した後、管理職から『そのまま帰るのではないよね』と言われた同僚がいる」という。
調査となれば、こんなことが起きるのは悲しいかな、現実なのだ。
④「北多摩地区特別支援学校(仮称)の設置候補地について」
「知的障害」特別支援学校はどこも入学者が多く、教室が不足していて、教室を間仕切りしたり特別教室を転用したりしている。羽村特別支援学校の在籍児童・生徒も「特別支援教育」へ転換する直前の2006年度と比べると、1.7倍に増加。そこで、東大和市に北多摩地区特別支援学校(仮称)を設置するという。
2006年度に私が転任した中学校でその年度、管理職は「市教委からの調査です。授業についていけない生徒、座っていることができない生徒、声を出す生徒がクラスに一人はいるでしょう。その生徒の氏名を書いて提出してください」と言った。
調査はこの年度中に3回あり、3回目には「まだ一人も名前を上げていない担任は、必ず書いてください」とまで言った。
特別支援の名の下、分離=差別を徹底したのだった。これによって、羽村特別支援学校の児童・生徒数も増加したのだ。
2005年に足立区の小中学校では、都学力テストの点数をあげるために、子どもの答案を指さして誤答を教える不正や点数が取れない子どもに欠席を勧めるなど、教育の場とは思えないことが学校ぐるみで起きた。このことから推察すれば、点数の取れない子どもを普通学級から外すことに躊躇しない教員は多いのだろう。
ある教育委員は、「近隣の小中学校との交流を(この学校の方針に)入れたい」と発言した。また、都教委が年間35時間を課すオリンピック・パラリンピック教育では、特別支援学校と普通小中高との交流を求めるが、短時間時間の交流で差別心がなくなることはあり得ない。
分離しないで誰もが地域の小中学校に通えるようにし、ともに触れ合うことが差別解消・共生につながることを、国際的な流れはノーマライゼーションであることを、教育委員には認識してほしい。これについても、教員の大幅定員増をすれば実現できること。
ここでも、特別支援学校の子どもたちは、「都立高校改革推進計画・新実施計画(第二次)」が言う「生徒一人一人」から外されている。
差別・選別・弱肉強食の教育=差別・選別・弱肉強食の社会が一層進行している。
『レイバーネット日本』(2019-02-18)
http://www.labornetjp.org/news/2019/0214nedu
公開議案は、「都立高校改革推進計画・新実施計画(第二次)」の策定について。
パブリックコメント128件のうち25件が「立川高校定時制の閉課程をしないで」というものだったが、2019年度から3か年の「新実施計画(二次)」はその声を全く無視したもので、「雪谷高校の閉課程は2020年度、江北高校の閉課程は2021年度、小山台高校及び立川高校の閉課程年度は未定」と、昨年までの計画をそのまま強行するものだった。
「夜間定時制課程は、全日制課程の高校等への進学がかなえられなかった生徒のセーフティネットの機能を有していますが、新実施計画策定後も、夜間定時制課程を希望する生徒は減少を続けています」と言い、「セーフティネットの機能」の認識は都教委にあるが、それは捨てて「減少」を優先する。
皮肉にも、4校の閉課程方針は、「目標2:生徒一人一人の能力を伸ばす学校づくりの推進」の項に書いてある。「夜間定時制課程を希望する生徒」はここで言う「生徒一人一人」に入れない。
「学力」の低い生徒については、能力を伸ばすことは無理、採算も取れないから切り捨てるということだ。
進学指導重点校への予算加配や理数教育の充実、医学部進学への支援などの「エリート」には金をふんだんに使うのに、夜間定時制4校には金を出さない。何という差別か!
公開報告は
①「第10期東京都生涯学習審議会建議(『地域と学校の協働』を推進する方策)について」
②「東京都中学校英語スピーキングテストについて」
③「『学校における働き方改革の成果と今後の展開』について」
④「北多摩地区特別支援学校(仮称)の設置候補地について」
非公開議案にも、非公開報告にも懲戒処分が上がっている。
①「第10期東京都生涯学習審議会建議(『地域と学校の協働』を推進する方策)について」
現在、行っている事業は、学校の求めに応じて必要な支援を地域のボランティアが行うための仕組みづくりを目指す「学校支援地域本部事業」が1024校、放課後等に子どもたちと地域住民等との交流機会を提供する「放課後子供教室推進事業」が1240教室、学習習慣が十分身についていない中学生等に対し、地域住民等の協力を得て学習支援を行う「地域未来塾」が458教室。
「子どもたちの教育を学校のみで担うのは量的・質的に困難」だから「地域と学校の協働」を推進するのだという。
建議は、「アクティブ・シニア(元気高齢者)をはじめとした地域の人々の交流拠点として、学校を活用することの重要性を指摘するとともに、都立高校等にとって『地域と学校の協働』を進める意義について整理した」という。
小中学校では、元気高齢者の活用で「教員の負担軽減」を図ろうとするものらしいが、そのことについて、委員から「負の側面、モンスターペアレンツならぬモンスター高齢者が入り込んでくることも検討してほしい」と発言があった。十分想像できることだ。
すでに行っている上記3事業は、教員の負担軽減になっているのかについて説明が欲しかったが、それがなかった。担当教員(副校長など)は調整にかなりの時間を費やし、「教員の負担軽減」どころではないだろうに。
「高校生が地域コミュニティとつながる意義」では、「高校が存立する地域との関わり」の例として「小学校に出向き放課後の学習支援、廃材を利用して作成した小物を高齢者施設の居住者にプレゼント等」を挙げる。
強制ボランティアのノルマを高校生は課せられるということか。
他に、企業・NPOと普通科高校との協働、不登校・中途退学対策としてユースソーシャルワーカーの全校への派遣を挙げるが、教員の負担増ははっきりしている。
高校は全てで、小中学校でも学区のない学校を都教委はつくっているというのに、なぜ今「地域と学校の協働」なのか、不可解だ。戦中の隣組を想起させる。
②「東京都中学校英語スピーキングテストについて」
2022年度の都立高入試から英語にスピーキングテストを導入することになった。
タブレット等端末に回答音声を録音する方法で、会場は大学等の外部施設で、11月第4土曜日から12月第2日曜日までの週休日・祝日に実施。
問題作成からテスト、採点まですべてを資格・検定試験の民間団体が行う。
15日の東京新聞によると、「岩手県が04年度から3年間対面形式で実施したが、負担が大きいとして取りやめた」という。
慣れない場所でのテストに、子どもたちの精神的負担は大きいだろう。それでも、スピーキングテストが必要なのだろうか。
③「『学校における働き方改革の成果と今後の展開』について」
昨年度に比べ、今年度は教員の在校時間が縮まったという。
部活動指導員が導入(中・高)された学校・担当教員は2時間32分減/週、印刷などの手伝いをするスクール・サポート・スタッフが導入(小・中)された学校では、3.2時間減/週、副校長を補佐する人を入れ、学校マネジメント強化モデル事業を実施した学校の副校長は小学校で11時間55分減/週、中学校で8時間減/週。
これによって、例えば中学校教員の週あたりの在校時間は昨年の64時間35分から今年は61時間14分になり、過労死ライン相当の割合は、昨年度の68.2%から今年度は48.5%に減ったと「成果」を報告。
来年度の取り組みとして都立学校では、
ア.「管理職が長時間労働となっている教員に対する指導・助言や産業医面接の勧奨を実施」
イ.「長期休業機関中において学校閉庁日を原則5日以上設定」
ウ.「各学校で定時退庁日を設定する等」などをあげるが、
仕事量を減らすものではない。
アに至っては、仕事処理の遅い教員だとして個人の責任に転嫁する。
「今後の展開」・解決策は、大幅定員増しかないのだ。
8時間労働を保障するのは使用者である都教委の責任であることを都教委には認識してもらいたい。
都立学校の教員から聞いた話だが、「退勤時のタイムカードを刻印した後、管理職から『そのまま帰るのではないよね』と言われた同僚がいる」という。
調査となれば、こんなことが起きるのは悲しいかな、現実なのだ。
④「北多摩地区特別支援学校(仮称)の設置候補地について」
「知的障害」特別支援学校はどこも入学者が多く、教室が不足していて、教室を間仕切りしたり特別教室を転用したりしている。羽村特別支援学校の在籍児童・生徒も「特別支援教育」へ転換する直前の2006年度と比べると、1.7倍に増加。そこで、東大和市に北多摩地区特別支援学校(仮称)を設置するという。
2006年度に私が転任した中学校でその年度、管理職は「市教委からの調査です。授業についていけない生徒、座っていることができない生徒、声を出す生徒がクラスに一人はいるでしょう。その生徒の氏名を書いて提出してください」と言った。
調査はこの年度中に3回あり、3回目には「まだ一人も名前を上げていない担任は、必ず書いてください」とまで言った。
特別支援の名の下、分離=差別を徹底したのだった。これによって、羽村特別支援学校の児童・生徒数も増加したのだ。
2005年に足立区の小中学校では、都学力テストの点数をあげるために、子どもの答案を指さして誤答を教える不正や点数が取れない子どもに欠席を勧めるなど、教育の場とは思えないことが学校ぐるみで起きた。このことから推察すれば、点数の取れない子どもを普通学級から外すことに躊躇しない教員は多いのだろう。
ある教育委員は、「近隣の小中学校との交流を(この学校の方針に)入れたい」と発言した。また、都教委が年間35時間を課すオリンピック・パラリンピック教育では、特別支援学校と普通小中高との交流を求めるが、短時間時間の交流で差別心がなくなることはあり得ない。
分離しないで誰もが地域の小中学校に通えるようにし、ともに触れ合うことが差別解消・共生につながることを、国際的な流れはノーマライゼーションであることを、教育委員には認識してほしい。これについても、教員の大幅定員増をすれば実現できること。
ここでも、特別支援学校の子どもたちは、「都立高校改革推進計画・新実施計画(第二次)」が言う「生徒一人一人」から外されている。
差別・選別・弱肉強食の教育=差別・選別・弱肉強食の社会が一層進行している。
『レイバーネット日本』(2019-02-18)
http://www.labornetjp.org/news/2019/0214nedu
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