【暮らし】(TOKYO Web)
◆ 授業のない学校 世田谷 東京サドベリースクール
来年の入試に向けて最後の追い込みの晩秋。学校はカリカリとしがちだが、こんな時節にも授業もテストもない「学校」が東京都世田谷区にある。米国の学校をモデルに三年前に開設された「東京サドベリースクール」。子どもの自主性を尊重し、好奇心やコミュニケーション力を伸ばすのが狙いだ。学校を訪ねた。 (砂本紅年)
閑静な住宅街にある洋風の一軒家。ソファのあるリビングで、子どもたちは遊んだり、話したりしていた。通っているのは六~十七歳の十四人。台所で料理したり、庭の木にツリーハウスを作ったり、テレビで映画を見たり-。何をするも自由。授業もチャイムもない。教師もいない。スタッフの大人が二、三人いるだけだ。
スタッフの杉山まさるさん(32)は「勉強でも何でも、基本的に子どもが何かを『やりたい』と言うのを待つ」と話す。最初は掃除の時間もなかった。部屋が汚れ、子どもから「掃除をしよう」と声が上がったという。自分で考えて、行動しなければ何も変わらない学校だ。
モデルは、米ボストンのサドベリースクール。「人は生まれながら向上心を持つ」「人は学びたいと思った時、最速で知識を吸収する」という同校の理念に賛同した会社経営者らが中心になり、東京校は開設された。
オープンから通う奈菜さん(14)=仮名=は「授業がないので、最初はみんな『暇だ』って言います」と笑う。でも、次第に動きだす。「やりたいことを見つけないと楽しくない。父は作家で、私も好きなことを仕事にしたい。何でも提案すれば実現できるのがここの良さ」
料理好きでみんなの弁当を作る子、野球と英語に一生懸命な子などさまざま。「『好き』が見つかった時のエネルギーはすごい。それを実現するには、周りも巻き込むコミュニケーション力も大切」と杉山さんは話す。
もめごとがあるとひたすら話し合う。奈菜さんは「自由と自分勝手は違う。他人の自由も尊重するのが自由」と言う。
同校のような形式は「オルタナティブ(代替)教育」と呼ばれ、不登校の子どもが通うフリースクールなどと同様に、法的には学習塾と同じ扱い。公的助成はなく学費は一般の私立より高い。子どもたちは、近くの小中学校に籍を置いて卒業資格を得る。大学受験は高等学校卒業程度認定試験経由。それに、就職などで不利になりかねない。
それでも、同校を選ぶには理由がある。七歳の娘を通わせる母親(51)は高学歴で職歴もある。だが、それでも自分らしく生きていない感じがあった。「今の学校の在り方に疑問があった。自分の好きなことや特徴を知り、自分で物事を決め、自分で歩ける人になってほしい」
見学していた聖心女子大の森下暁里さん(22)は「普通の学校では『皆と同じ』がいいとされるが、就職活動では個性といわれて困った」と学校教育の矛盾を指摘。「こんな学校があってもいい」
海外の教育事情に詳しい東海大の小貫大輔教授(国際学)は「中央で決めたタイプの画一的な学校しか認めない日本の教育行政は、先進国では特殊。戦後、国民の教育レベルを一定水準に引き上げる効果があったが、現代にはそぐわない」と話している。
『東京新聞』(2012年11月6日【暮らし】)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2012110602000113.html
◆ 授業のない学校 世田谷 東京サドベリースクール
来年の入試に向けて最後の追い込みの晩秋。学校はカリカリとしがちだが、こんな時節にも授業もテストもない「学校」が東京都世田谷区にある。米国の学校をモデルに三年前に開設された「東京サドベリースクール」。子どもの自主性を尊重し、好奇心やコミュニケーション力を伸ばすのが狙いだ。学校を訪ねた。 (砂本紅年)
閑静な住宅街にある洋風の一軒家。ソファのあるリビングで、子どもたちは遊んだり、話したりしていた。通っているのは六~十七歳の十四人。台所で料理したり、庭の木にツリーハウスを作ったり、テレビで映画を見たり-。何をするも自由。授業もチャイムもない。教師もいない。スタッフの大人が二、三人いるだけだ。
スタッフの杉山まさるさん(32)は「勉強でも何でも、基本的に子どもが何かを『やりたい』と言うのを待つ」と話す。最初は掃除の時間もなかった。部屋が汚れ、子どもから「掃除をしよう」と声が上がったという。自分で考えて、行動しなければ何も変わらない学校だ。
モデルは、米ボストンのサドベリースクール。「人は生まれながら向上心を持つ」「人は学びたいと思った時、最速で知識を吸収する」という同校の理念に賛同した会社経営者らが中心になり、東京校は開設された。
オープンから通う奈菜さん(14)=仮名=は「授業がないので、最初はみんな『暇だ』って言います」と笑う。でも、次第に動きだす。「やりたいことを見つけないと楽しくない。父は作家で、私も好きなことを仕事にしたい。何でも提案すれば実現できるのがここの良さ」
料理好きでみんなの弁当を作る子、野球と英語に一生懸命な子などさまざま。「『好き』が見つかった時のエネルギーはすごい。それを実現するには、周りも巻き込むコミュニケーション力も大切」と杉山さんは話す。
もめごとがあるとひたすら話し合う。奈菜さんは「自由と自分勝手は違う。他人の自由も尊重するのが自由」と言う。
同校のような形式は「オルタナティブ(代替)教育」と呼ばれ、不登校の子どもが通うフリースクールなどと同様に、法的には学習塾と同じ扱い。公的助成はなく学費は一般の私立より高い。子どもたちは、近くの小中学校に籍を置いて卒業資格を得る。大学受験は高等学校卒業程度認定試験経由。それに、就職などで不利になりかねない。
それでも、同校を選ぶには理由がある。七歳の娘を通わせる母親(51)は高学歴で職歴もある。だが、それでも自分らしく生きていない感じがあった。「今の学校の在り方に疑問があった。自分の好きなことや特徴を知り、自分で物事を決め、自分で歩ける人になってほしい」
見学していた聖心女子大の森下暁里さん(22)は「普通の学校では『皆と同じ』がいいとされるが、就職活動では個性といわれて困った」と学校教育の矛盾を指摘。「こんな学校があってもいい」
海外の教育事情に詳しい東海大の小貫大輔教授(国際学)は「中央で決めたタイプの画一的な学校しか認めない日本の教育行政は、先進国では特殊。戦後、国民の教育レベルを一定水準に引き上げる効果があったが、現代にはそぐわない」と話している。
『東京新聞』(2012年11月6日【暮らし】)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2012110602000113.html
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