=私学教員ユニオン=
◆ 休業のしわ寄せ非常勤に
~一定の成果引出し活動強化へ (『労働情報』試練に立たされる《連帯》)
1、コロナ一斉休校によって最も影響を受ける私学非常勤講師
私たち私学教員ユニオンは、小・中・高の私立学校の教員を組織している個人加盟型の労働組合である。
2月27日夜、政府は新型コロナウイルスのさらなる感染拡大防止のため、全国の公立と私立の小・中・高・特別支援学校について、3月2日から春休み明けまで一斉休校することを決めた。
今回の一斉休校の措置によって最もしわ寄せを受けているのは、非常勤講師という非正規雇用で働く教員である。
非常勤講師は、1年更新であり、また担当授業に対して「一コマ**円」(授業は50分で、単価は2千円~3千円程度であることが多い)という対価が払われる労働契約が締結されているが、
授業以外の業務である授業準備や、テスト作成・採点等の付随業務を行い、事実上フルタイムに近い労働をしていることが多い。
ところが、それらの付随業務に対価が払われないことが多く、実際の時給は最低賃金に近い場合もあり、手取り月15万円ほどの非常勤講師もいる。
そのため、複数の学校での非常勤講師を掛け持ちしたり、全く関係のない飲食店などのアルバイトを掛け持ちして生活を成り立たせている「ワーキングプア」状態の非常勤講師も存在しているのが実情だ。
このように、普段から生活が苦しい非常勤講師は、今回の一斉休校により担当授業がなくなると、給与が支払われず生活困窮に追い込まれてしまう。
私たちの労働組合へも休業補償や、来年度以降の雇用はどうなるのかという不安の労働相談が多数寄せられている。
なお、公立学校は文科省から一斉休校による非常勤講師への賃金は10割保証をするよう通達が出ているため賃金が払われていることがほとんどであるが、私学は各学校法人に最終的な決定権限があるため、対応が一律ではなく、そのしわ寄せは私学において特に顕著に現れているといえる。
現在、公立学校では約15%、私学においては約30%が非常勤講師として働き、授業という教育現場における最も基幹的な業務を任されている。
しかし、一度今回のような危機が起こると、真っ先に理不尽にも被害を受けているのが低賃金・細切れ雇用で「雇用の調整弁」として働く非常勤講師なのである。
2、具体的な相談事例
われわれに寄せられている私立学校で働く非常勤講師からの相談事例は以下のようなものになる。どれも切実な生活不安を抱えているものである。
3、私学教員ユニオンの行動
私学教員ユニオンへは、一斉休校が報じられてすぐに、非常勤講師からの休業補償に関する労働相談が複数寄せられるようになったため、2月29日、3月1日に、緊急の労働相談ホットラインを実施した。
そこでは、50件を超える相談が寄せられ、非常勤講師の窮状が明確になった。
また、そのホットラインの様子はNHKを中心としたメディアで全国放送されることで、さらに多くの労働相談が寄せられ、非常勤講師の置かれた実態を社会的に告発することができた。
その上で、3月24日、私学教員ユニオンの組合員の非常勤講師と一緒に、日本私立中学高等学校連合会という業界団体と文科省へ、相談から見える非常勤講師の置かれた実態を伝えるとともに、休業補償の全額払いと雇用確保(雇い止めをしないこと)を求める要請行動を行い、文科省で記者会見を行なった。
その記者会見の様子も、NHKなどのメディアで全国放送されることとなった。
その結果、3月31日に文科省と厚労省が、「新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえた私立学校における業務体制の確保について(第2報)」とという通達を出し、非常勤講師へ休業補償や雇用について「十分な対応」を行うとともに、最低限、労基法の定める平均賃金の6割にあたる休業補償は支払うよう求める通達を出すに至った。
まだまだ不十分なものであるが、一斉休校の情勢の中で瞬時に社会的な発信をしながら組織的に対応した成果ではあろう。
現在、一斉休校が解除された自治体もあれば延長される自治体もあり、引き続き、生活困窮が予想される私立学校の非常勤講師が存在している。
今後も、今回のコロナ危機によって苦境に立たされる非正規雇用の教員を仲間にし、さらに大きな労働運動を作っていきたい。
『労働情報 No.993』(2020.5)
◆ 休業のしわ寄せ非常勤に
~一定の成果引出し活動強化へ (『労働情報』試練に立たされる《連帯》)
佐藤学(私学教員ユニオン)
1、コロナ一斉休校によって最も影響を受ける私学非常勤講師
私たち私学教員ユニオンは、小・中・高の私立学校の教員を組織している個人加盟型の労働組合である。
2月27日夜、政府は新型コロナウイルスのさらなる感染拡大防止のため、全国の公立と私立の小・中・高・特別支援学校について、3月2日から春休み明けまで一斉休校することを決めた。
今回の一斉休校の措置によって最もしわ寄せを受けているのは、非常勤講師という非正規雇用で働く教員である。
非常勤講師は、1年更新であり、また担当授業に対して「一コマ**円」(授業は50分で、単価は2千円~3千円程度であることが多い)という対価が払われる労働契約が締結されているが、
授業以外の業務である授業準備や、テスト作成・採点等の付随業務を行い、事実上フルタイムに近い労働をしていることが多い。
ところが、それらの付随業務に対価が払われないことが多く、実際の時給は最低賃金に近い場合もあり、手取り月15万円ほどの非常勤講師もいる。
そのため、複数の学校での非常勤講師を掛け持ちしたり、全く関係のない飲食店などのアルバイトを掛け持ちして生活を成り立たせている「ワーキングプア」状態の非常勤講師も存在しているのが実情だ。
このように、普段から生活が苦しい非常勤講師は、今回の一斉休校により担当授業がなくなると、給与が支払われず生活困窮に追い込まれてしまう。
私たちの労働組合へも休業補償や、来年度以降の雇用はどうなるのかという不安の労働相談が多数寄せられている。
なお、公立学校は文科省から一斉休校による非常勤講師への賃金は10割保証をするよう通達が出ているため賃金が払われていることがほとんどであるが、私学は各学校法人に最終的な決定権限があるため、対応が一律ではなく、そのしわ寄せは私学において特に顕著に現れているといえる。
現在、公立学校では約15%、私学においては約30%が非常勤講師として働き、授業という教育現場における最も基幹的な業務を任されている。
しかし、一度今回のような危機が起こると、真っ先に理不尽にも被害を受けているのが低賃金・細切れ雇用で「雇用の調整弁」として働く非常勤講師なのである。
2、具体的な相談事例
われわれに寄せられている私立学校で働く非常勤講師からの相談事例は以下のようなものになる。どれも切実な生活不安を抱えているものである。
(1)50代、非常勤講師
3月の授業がなくなったが、「3月の給与は支給しない」とメールがあった。私学は、生徒から授業料十補助金もすでに支給されているはずなのに、支払いがないのは納得できない。
(2)20代、非常勤講師
公立中学校・私立高校の非常勤講師を掛け持ちしているが、両方とも休校で授業がなくなった。公立中学は、研修やテスト作成で全額賃金が補償されることになったが、私立高からは、休業手当について何も言われていない。どうなるのか。
(3)30代、非常勤講師
2週間休校になった。非常勤は原則、出勤が認められない。休業補償は6割出るようだが、生活の大きな打撃。全額支給を求めると、6割以上は払わないと学校言われた。生活ができない。
(4)40代、非常勤教員
今回のコロナの影響で、10万円以上給与がマイナスになる。有休も消化できない。これまでも、台風や学級閉鎖、学校行事で授業がないときには、一方的に賃金がゼロになっても我慢してきた。今回は生活ができない。
3、私学教員ユニオンの行動
私学教員ユニオンへは、一斉休校が報じられてすぐに、非常勤講師からの休業補償に関する労働相談が複数寄せられるようになったため、2月29日、3月1日に、緊急の労働相談ホットラインを実施した。
そこでは、50件を超える相談が寄せられ、非常勤講師の窮状が明確になった。
また、そのホットラインの様子はNHKを中心としたメディアで全国放送されることで、さらに多くの労働相談が寄せられ、非常勤講師の置かれた実態を社会的に告発することができた。
その上で、3月24日、私学教員ユニオンの組合員の非常勤講師と一緒に、日本私立中学高等学校連合会という業界団体と文科省へ、相談から見える非常勤講師の置かれた実態を伝えるとともに、休業補償の全額払いと雇用確保(雇い止めをしないこと)を求める要請行動を行い、文科省で記者会見を行なった。
その記者会見の様子も、NHKなどのメディアで全国放送されることとなった。
その結果、3月31日に文科省と厚労省が、「新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえた私立学校における業務体制の確保について(第2報)」とという通達を出し、非常勤講師へ休業補償や雇用について「十分な対応」を行うとともに、最低限、労基法の定める平均賃金の6割にあたる休業補償は支払うよう求める通達を出すに至った。
まだまだ不十分なものであるが、一斉休校の情勢の中で瞬時に社会的な発信をしながら組織的に対応した成果ではあろう。
現在、一斉休校が解除された自治体もあれば延長される自治体もあり、引き続き、生活困窮が予想される私立学校の非常勤講師が存在している。
今後も、今回のコロナ危機によって苦境に立たされる非正規雇用の教員を仲間にし、さらに大きな労働運動を作っていきたい。
『労働情報 No.993』(2020.5)
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