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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

自己申告書②-シリーズ東京の教育

2011年12月25日 | 暴走する都教委
 『尾形修一の教員免許更新制反対日記』から
 自己申告書②-シリーズ東京の教育


 「自己申告書」というか、教員の「人事考課制度」について、続き。
 こういう問題については、よく「民間ではやってる」という言い方をする人がいる。僕は全国の民間企業の事情は知らないが、それは違うのではないかと思っている。こういうと、すぐに「教育の本質」論に行っちゃう人もいる。「教育労働はそもそも短期的な業績評価になじまない」とか。それはそうだと僕も思うけど、でも「目標を立てる」「自己評価する」ことに意味がないとは言えない。
 公務員の世界では、とかく前例踏襲、冒険は避けるということになりやすい。学校にもそういうところはある。「利益」という形で、すぐに見える成果がないので、同じことをやり続けて時代とずれていても気づかない。本来は、そういう「官僚主義」「事なかれ主義」を脱するために、「情報公開」や「業績評価」があったはずである。ところが、そこがお役所。
 「情報公開」制度ができると、管理職からは「情報公開に備えて、職員会議録は細かく書かずに結論だけ書くように」などと言われる。「自己申告書」も、管理職から「自己評価しやすい目標を設定するように」と言われる。複数校で複数の管理職から同じように言われたので、全都的な対応なのではないかと思う。これではかえって「事なかれ主義」を助長するようなものである。
 民間企業では、営業活動を差し置いて営業報告書を出すことが自己目的化することはないだろう。だが、お役所の世界では「民間にならう」が自己目的化して、「紙の上で何か新味を出す」ことが業務の改善以上に大事になってしまうのである。
 「目標」が「わかりやすい授業を展開する」、「方法」が「ICT機器(電子黒板)などを活用する」、「最終申告」では「授業を工夫してわかりやすい授業を展開した」と紙に書く(パソコンを打つ)だけなら、こんな文書を量産することに何の意味もないだろう。
 多分、民間と大きく違うことが2点ある。
 まず、評価対象者の数。企業では、常識的な配置数で各部課が存在し、それぞれ上司が評価者となるはずだが、学校の場合は評価者が校長しかいない。小規模の小中ならともかく、全定併置の高校の場合、事務職員を含めて100名ぐらいいる。校長が一人で全員を正しく評価できるはずがない。そんなに全員の仕事ぶりを熟知できるものではない。それは教員が生徒を評価する場合だって同じなんだけど、だからこそ成績評価ではテストの点数が大きな意味を持つわけである。教師にはそんなものがないから、どうやって評価するのか。もめることがあるのも当然。
 もう一つ、企業では一人の社員は持ち場の仕事に関して目標設定すればいいはずで、営業職なのに人事や製品開発や総務の評価改善まで書かないといけないということはないだろう。一方、教師は授業以外に、生活指導、進路指導、特別活動指導、研修、学校経営への関与なんかを全部やらないといけないことになっていて、だからあの小さい紙にチョコチョコといろいろなことを少しずつ書き込む「懐石料理型」の申告書になってしまうのである。
 官僚主義の改善として民間の手法を導入する、なんてなれば、かえって官僚主義が激化するというのが、この「自己申告書」なんだと思う。パラドックス(逆説)という程のことでもなく、そうなることは誰でも判っていた。でも、導入する方の都庁の役人も同じような申告書を書いてるわけで、何か新しいことを導入する、それを改善すると毎年書き続けざるをえない。困ったね。
 僕は何にもない時代が一番良かったとは思わない。変化の激しい時代に、同じことをやってるだけではダメだと思う。学校の側にも、説明責任の不足など多くの問題があった。だけど、あんな小さな紙にチョコチョコ書くだけをお互いにやり合ってても、特にいいことは生じないだろう。教師に求められていることは「メイン・ディッシュの味付け」なんだと思うから、「懐石料理型」の申告書はやめたほうがいい
 そして、そんなのをもとに給料に連動する業績評価を行うというような無意味なことはやめるべきだ。

『尾形修一の教員免許更新制反対日記』(2011年12月15日)
http://blog.goo.ne.jp/kurukuru2180/e/0de121287d4972581615053c2b3cade7

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