☆ 島々から連帯を求めて
琉球弧~九州で進む大軍拡を止めよう!(労働者通信)
和田香穂里/戦争をさせない種子島の会・前西之表市議会議員
今、南の島々では、恐ろしい勢いで軍拡が進められている。島々が戦場になるという危機感が高まっている。しかし、首都圏をはじめとする都市部には、その危機感は伝わっていないのではないか。
各地での闘いに連帯連携する取り組みは、待ったなしで求められている。島々の緊迫する状況の一端を、南から北上して見ていこう。
● 与那国島
島民を大きく分断して2016年に自衛隊が配備されて以降、表面的には島は自衛隊と「共存」しているかに見えていたが、昨年11月、日米共同統合演習「キーンソード23」の一環で、米軍が上陸し、島の公道を26tの戦車が走った。
12月には防衛省がミサイル配備計画を公表、今年に入ってから「有事」に備えたシェルター造設の計画が持ち上がっている。
● 石垣島
住民投票を求める1万4千筆の署名は市議会で否決され、貴重な水源地の保全も、国の特別天然記念物カンムリワシの営巣も、全てないがしろにされたまま、島の霊山である於茂登岳の麓にミサイル基地建設が強行された。
今年3月中旬には車両やミサイルが搬入され、基地開設となる見通し。
● 宮古島
2019年、陸自駐屯地が開設、「弾薬庫は作らない」の説明が覆され、民家から約100mの距離に弾薬庫が作られた千代田駐屯地に続いて、保良地区でも民家から250mほどしかない弾薬庫建設が着工されている。
2月19日におこなわれた「宮古島駐屯地創立4周年記念行事」では12式地対艦ミサイルの発射訓練がおこなわれた。下地島空港の軍事利用も再浮上している。
● 沖縄島
基地負担軽減は一向に進まない中、自衛隊基地機能強化や配備増強が計画され、更なる負担と危険が押し付けられようとしている。
その一つがうるま市の勝連分屯地に計画されている地対艦ミサイル部隊の配備であり、奄美・宮古・石垣と併せた4カ所のミサイル部隊を指揮統制する連帯本部として、23年度に配備するとされる。
● 奄美大島
2019年3月、奄美駐屯地が開設、ミサイル部隊が配備された。
開設以降は、オスプレイ他米軍機が市街地上空を低空飛行する姿が多く見られてきたが、昨夏は日米共同訓練で、アメリカ軍のロケット砲システムや、電波妨害などをおこなうアメリカ軍の電子戦部隊が初めて展開されている。
● 馬毛島(種子島)
自衛隊馬毛島基地建設が1月12日に着工された。陸・海・空自衛隊の訓練拠点として、F戦闘機、オスプレイ、水陸起動団など併せて12種類の訓練計画は、米軍空母艦載機離着陸訓練(FClP/NLP)と併せて年間150日、飛行回数2万8千回超に及ぶ。
また戦時には武器・弾薬・人員・物資などの集積展開拠点(兵站拠点)となる。そして現在硫黄島でおこなわれている米軍FCLP/NLPの恒久的な施設とされる。
馬毛島を行政区に持つ西之表市ほか種子島の2町にも、隊舎など関連施設が設置される。
他の島々は「敵基地攻撃能力」を押し付けられ、馬毛島は島々の戦闘を支える「継戦能力」の実働を担わされるのだ。
*
これらの島々で共通している問題がいくつもある。
まず防衛省は初めに「島を守る」と嘘を吐いて「住民の安心安全を守る」かのように装うが、住民の反対はもちろん、不安や疑問、期待すらも全く顧みることなく、基地建設やミサイル配備が強行されている。
基地に反対か賛成かで住民が分断され、その禍根は長年にわたって残される。自然破壊や環境汚染への具体的な対策はなされない。建設労働者の大量移入によって、宿泊施設のパンクや家賃高騰などが起きる。基地関連交付金や補助事業、工事や事業の中核となる大手ゼネコン、おこぼれに与ろうとする島外企業の参入で、地元の産業や経済は混乱し、或いは大きなダメージを受け、「活性化」を期待し「自衛隊が来れば安心」とも言ってきた賛成派からさえ「こんなはずじゃなかった」との声が上がる。無論、騒音や治安悪化は避けられない。
万が一戦争となれば、ミサイルを持つ島々は当然攻撃のの標的となるが、離島ゆえに住民の避難が困難を極めることも共通している。
「申し訳ないが、自衛隊に住民を避難させる余力はないだろう。自治体にやってもらうしかない」と自衛隊幹部が言う通り、住民避難は自治体任せだが、離島の住民を安全に避難させる実現可能な計画など作れるはずがない。
島が戦場となり逃げ惑う住民が犠牲となることを前提とした基地・ミサイル配備なのだ。
何よりも、計画段階からの賛成派首長や議員の台頭と、配備後の自衛隊員票の増加によって、基地ありきの政治しかおこなわれなくなり、民主主義や自治が壊されていく。
戦争と直結する基地は平和な暮らしとは無論共存できないが、基地計画が持ち上がった時かち、自分たちのことは自分たちで決めるという当たり前のまちづくりすらできなくなっている。自衛隊基地・ミサイル配備問題に向き合うことは、反戦平和の闘いであると同時に、民主主義と自治を守る闘いでもある。
島々ばかりではない。鹿児島県鹿屋基地には米軍無人機部隊が配備され、佐賀空港にはオスプレイ配備が計画されている。
2018年に発足した佐世保の水陸起動団は、日本版海兵隊と言われ、種子島ほか各地での方面隊演習や共同訓練で「島嶼奪還」訓練を繰り返している。
これらの背景は全て米国の対中戦略であり、米海兵隊も島々への展開を想定している。島々が中国の太平洋進出を阻む米の防衛線となる時、戦略に組み込まれた自衛隊が、米軍の戦争の最前線で「守る」ものは何なのか。
島の暮らしや島民の命ではないことは明白だが。
安保3文書の閣議決定で「敵基地攻撃能力」を「合法化」する以前から、南の島々ではミサイル配備を中心とする軍拡が進められてきた。
今こそこの現状を直視し、全国から各現地での闘いに連帯連携する取り組みに繋げて欲しい。
島々で今日も声を上げ闘う仲間たちは、その声が国会に届かない歯がゆさを身に染みて感じている。距離や時間や旅費などの物理的なハードルを越える厳しさも痛感している。けれど決して声を上げ続けることを止めはしない。
この国が戦争へとひた走るその道を、私たちがここで止めるのだという、強い思いを一つにして広く繋がっていきたい。大軍拡を止めよう!平和な島々を取り戻そう!
『労働者通信 NO.379』(2023年3月10日)
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