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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

「従軍慰安婦」記述を自主規制した数研教科書

2015年03月24日 | こども危機
 ◆ 「従軍慰安婦」削除の検定申請とその問題点-数研出版
浪本勝年(日本教育法学会理事)

 『朝日新聞』に従軍慰安婦問題の特集記事(2014年8月5日付及び6日付)が掲載された。下村博文文部科学大臣は、その直後の同年8月15日、記者会見で、「現時点においては、既に検定合格した現行の教科書における慰安婦に関する記述の訂正を発行者に求めることは考えておりません」と明確に語っていた(文部科学省HP「大臣記者会見録」)。
 ところが『読売新聞』が、本年1月9日「教科書『従軍慰安婦』削る」との見出しの下に数研出版が昨年11月20日、2015年度使用高校公民科教科書の「現代社会」2点と「政治・経済」1点の記述について、「従軍慰安婦」「強制連行」との用語を削除するという4か所の検定申請を行い、文部科学省は12月11日これを承認した、と報じた(記述の詳細については別表参照)。
 驚いたのは、私だけではなかろう。数研出版は、改訂の理由について「客観的事情の変更等」としている(『読売新聞』)。この一連の経過を踏まえ、本件検定済教科書の改訂検定申請の制度的な問題点について考えてみよう。
 ◆ 訂正の理由
 同記事によれば、「従軍慰安婦」と「強制連行」との言葉を削除した理由を、数研出版は「客観的事情の変更等」としている。
 教科用図書検定規則の「検定済図書の訂正」(第14条)においては「客観的事情の変更に伴い明白に誤りとなった事実の記載があることを発見したときは、…必要な訂正を行わなければならない」(第1項)とある。
 では、『朝日新聞』が昨年8月、従軍慰安婦問題に関する記事を取消したからといって、「従軍慰安婦」及び「強制連行」の事実が一切なくなり、そのため「明白に誤り」となったといえるかどうか。答えは、否である
 ◆ 数研出版の担当者の発言
 同記事によれば、数研出版の担当者は「訂正申請の経緯については、お答えできる立場の者がいない」と話した、とのことだが、同社の担当の一個人が「勝手に」訂正申請をした、とは考えられない。
 この種の回答は、何か外圧でもあったのかと「邪推」させることにつながる。あるいは、政府の意図を忖度し、採択を有利にしようと「先取り」したものであろうか。
 いずれにせよ、同社はこの訂正申請の経緯について、明確な見解を述べるべきである。
 ◆ 下村文科相の1.9発言
 下村文科相は、本年1月9日の定例記者会見において『読売新聞』記者の、日本史の教科書では、まだ「従軍慰安婦」「強制連行」との記述が残っているが…、との発言(質問)について、(訂正申請するかどうかは)「教科書会社が独自に判断されることだと思います」と答えている。当然のことだ。
 さいわい「数研出版」以外には現在この種の検定申請はないとのことであるが、政府の意向に従えとする検定基準改正(2014年1月17日)後の検定への波及を食い止めるようにするとともに、現行高校教科書から削除しないよう執筆者・教科書会社への要請が必要となる。(なみもと かつとし)
  ※ 数研出版の高等学校用公民科教科書の改訂検定による記述の変化
【現代社会】
○現行版の記述(2014年度使用中)
 1990年代に提起された第二次世界大戦中の「従軍慰安婦」問題、韓国・朝鮮籍の元軍人・軍属への補償問題、強制連行・強制労働への補償問題など、日本には第二次世界大戦の未解決の問題がある
●訂正後の記述(2015年度以降使用)
 1990年代には、第二次世界大戦中に日本から被害を受けた個人が、個人への補償は未解決だとして、謝罪を要求したり補償を求める裁判を起こしたりした
【政治・経済】
○現行版の記述(2014年度使用中)
 戦時中の日本への強制連行「従軍慰安婦」などに対するつぐないなど、個人に対するさまざまな戦後補償問題も議論されている
●訂正後の記述(2015年度以降使用)
 韓国については、戦時中に日本から被害を受けた個人が、謝罪を要求したり補償を求める裁判を起こしたりしている(戦後補償問題)
 注1)数研出版が2014年11月20日に改訂申請を行い、文部科学省がこれを同年12月11日に承認した。
 注2)『読売新聞』2015年1月9日号の記事をもとに浪本勝年が作成した、
 
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