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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

東京都教育委員会のパワハラ体質。人権が侵害されている職場で、人権の大切さは教えられない。

2021年04月30日 | 日の丸・君が代関連ニュース
 ◆ 「君が代」強制パワハラでは (東京新聞【こちら特報部】
 卒業式などの「君が代」斉唱の際、立って歌わなかったのを理由に懲戒処分を受けた東京都立字校の教員ら十五人が三月末、処分取り消しを求める集団訴訟「東京「君が代』裁判第五次訴訟」を起こした。主に問われるのは、あくまでも憲法の「思想・良心の自由」を巡る問題だ。ただ、これまで、命令に従うか処分を受けるかの二者択一を迫られ葛藤に苦しみ、多くの教師が不眠やうつに追いやられてきた事実も忘れてはいけない。力を背景に起立斉唱を迫る都教育委員会の手法は、世間一般で言う「パワハラ」ではないのか。(石井紀代美)
 ◆ 服従しないと処分が・・・教員葛藤

 「何度懲戒処分を受けても立つことができないのは、変えることができない思想、世界観があるからだ。繰り返し懲戒処分で不利益を与え続けるのは、いわば、いじめやパワハラという気がします」
 東京地裁へ「五次訴訟」が提起された三月三十一日、都内で関かれた集会で、原告団事務局長の平松真二郎弁護士はそう語った。
 教職員に立って歌うよう職務命令を出し、従わない場合は懲戒処分にする。都教委は二〇〇三年十月二十三日に発出した通称「10・23通達」以降、このやり方を続けている。
 起立して歌う行為は「君が代・日の丸」に敬意を示しているとも捉えられる。その行為を強制するのは、憲法が保障する「思想・良心の自由」を侵害するというのが原告の主張だ。
 ◆ 1週間眠れず

 しかし、平松弁護士が言うように、いじめ、パワハラの側面もある。
 処分を受けた教職員関係者でつくる「被処分者の会」の近藤徹事務局長は「ふだん生徒に自分の頭で考えて行動するように教えてきたのに、自らそれに反して命令に屈してもいいのか。そんな葛藤に苦しむ多くの人が、うつになったり健康を崩したりした」と振り返る。
 集会に参加した元高校生物教諭の福嶋常光さん(72)もその一人だ。現役時代は〇四~〇六年に計三回不起立を行い、停職や減給、戒告の処分を受けた。後に一、二次訴訟に参加し、戒告以外が取り消された。
 「どんな歌であっても、人に強制していいはずがない。とても腹立たしい気持ちになりました」。通達が出された当時をこう思い返す。
 通達後初の式典は〇四年三月の卒業式。その一週間前から、福嶋さんは一睡もできなくなった
 強制は絶対におかしい。でも、処分は受けたくない。校長からも「何とかしないと、どうなるか分かりませんよ」と言われていた。布団の中であれこれ考えていると、遠くから新聞配達のバイクの音が聞こえて朝を迎えた。
 式の前日から胃の出血で血便が出た。持病の不整脈も悪化した。本番当日、国歌斉唱の直前まで決めかねていたが、強い不整脈に襲われて座ったという。
 毎回、式の終了後はほっとする。でも、次の年、その次の年と式は繰り返し、その都度精神的負荷は高まった。通常業務にそれが加わり疲れ果ててしまった福嶋さんは、定年まであと三年に迫った〇六年三月に早期退職した
 ◆ アレンジ不可

 元高校音楽教諭の池田幹子さん(73)の場合は、起立斉唱ではなくピアノ伴奏を命じられた。計四回断り懲戒処分を受けた。
 きっかけは一九七九年、福岡で起きた事件。音大の後輩だった教師が式本番で「君が代」にアレンジを加えて演奏し、分限免職になった。
 「アレンジしてはいけない音楽など、この世の中にあるのか。なぜアレンジさえ許されないのか」。間もなく、戦争で天皇のために命を投げ出すことを良しとする道徳を教え込む教育で、大きな役割を果たした歌だと知った。
 「自分の伴奏で、子どもたちに歌わせることはできないと思った」

 10・23通達後、池田さんは校長に「弾けないので、職務命令を出さないでほしい」と言ったが、聞き入れてもらえなかった。ふと気を抜くと頭の中で「君が代」が流れるようになり、夜寝る時は違う音楽をかけっぱなしにした。
 二〇〇四年三月の卒業式は、自分の子どもの卒業式と重なったこともあり、休暇を取った。そのため、直後の四月、杉並区の勤務校から遠く離れた羽村市の学校へ異動になった。
 〇五年三月、前任校の教え子が率業を迎え、来賓として式に招かれた時の出来寧は忘れられない。
 「おめでとうございます。いろいろな強制があるけれど、自分で判断し行動できる力を磨いていってください」。
 そんな一言のあいさつが「不適切」と問題視され、都教委が羽村まで事情聴取にやってきた。懲戒には当たらないが「指導」という処分を受けた。
 卒業・入学式のシーズンが近づくたび、池田さんの体にも異変が起きたという。下痢や食欲不振、心臓に差し込むような痛みを感じることもあった。精神状態が不安定になり、普通に歩いている時や電車に乗っている際、なぜか突然涙が出てきたこともあった。
 次第に、音楽室に一人でいると、天井の小さな穴から監視されているような感覚に襲われるようになった。「自然豊かな学校で、部屋の隅にはよくカメムシが出た。静かにじっとこっちを見ているカメムシが都教委に見えるようになってしまって」。
 その後、精神科で「抑うつ状態」と診断を受け、〇七年四月から五カ月間、病欠を取った。
 ◆ 重い負荷心身に異変
   ~不起立3回停職、減給、戒告→血便不整脈悪化<
   ~伴奏拒否の直後遠方に異動→うつ5ヵ月病欠


 福嶋さんも池田さんも口をそろえてこう語る。「当時はまだ、ほとんど使われていなかった言葉だけど、今で言う『パワハラ』だったんだと思います」
 当の都教委はどう考えているのだろうか。
 都教育庁職員課の石川大輔・担当課長は「起立斉唱の職務命令はこれまでの裁判で再三議論になってきたが、違憲違法ではないという最高裁判決が出ており、その有効性が認められている。業務に必要だから職務命令を出しているのであって、パワハラとは考えていない」と答えた。
 ただ、複数の教師を苦しませ、心身の健康を崩したことについては「個別の事実を把握しておらず、コメントできない」と言葉を濁す。
 労働災害やパワハラ礁件を多数扱ってきた笹山尚人弁護士は「パワハラには二つのレペルがある」と説明する。
 一つは、裁判で責任を問えるようなパワハラだ。治療費や慰謝料などを支払う責任が加害者側に生じるもので、違法性や過失の存在が前提になる。いわば「狭義のパワハラ」だ。
 この点、現時点では、裁判で「君が代」の起立斉唱命令は「違憲違法とまでは言えない」とされており、当てはまりそうにない。
 それに対し「広義のパワハラ」は一般的に、優越的な地位や力関係を背景に、労働環境を乱すことを言う。
 これには「十分該当する」とみる笹山氏は「子どもたちに正しいことを身をもって示そうとする規範意識が強いのが学校という職場。現場の教師が自信を持って正しいと言えないことを、懲戒処分という脅かしまでして行わせるのは、明らかに職場環境を乱している」と話す。
 何人もの教師に聞き取りを重ねてきた精神科医の野田正彰氏は、葛藤のメカニズムをこう説き明かす。
 「教師らの行為は、何かに抗議したというよりも、従おうにも従うことができなかったという表現が正確だ。人は、かけがえのないものを傷つけられ、喪失した時、うつになる。そんな状態になった教師が傷つけられたのは『自分で考え、判断し、一度きりの人生を生き抜いてほしい』というメッセージを子どもに伝え、自らもそうあろうとした教師としての職業倫理だ」
 ※ デスクメモ
 学校では、長時間労働の過酷さも間題になっている。パワハラまで加わるようでは、それこそ先生のなり手が減りかねない。そもそも心身の健康を害するまで人を追い込む行為を、子どもたちの前で正当化できるのか。人権が侵害されている職場で、人権の大切さは教えられない。(本)
『東京新聞』(2021年4月26日【こちら特報部】)

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