【意見広告】(後編)
◎ 最高裁は都に「自制」を求めている。
都立高校に自由の回復を!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/65/719f6873a394610a3a3dab8b1704264f.jpg)
《撮影:平田 泉》
■【最高裁1・16判決】 裁判官 櫻井龍子(行政官出身)の補足意見
・・・本件が、さきに当小法廷が判示した起立斉唱に係る職務命令の合憲判断に関する判決(多数意見の引用する平成23年6月6日判決)に関係するものであるので、以下の点を付言しておきたい。
さきの上記判決において、多数意見は上記職務命令の合憲性を是認しつつ、思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があることを認めたものであり、そのことは、上記職務命令に従って起立斉唱することに自らの歴史観、世界観等との間で強い葛藤を感じる職員が存在することを踏まえたものといえ、処分対象者の多くは、そのような葛藤の結果、自らの信じるところに従い不起立行為を選択したものであろう。式典のたびに不起立を繰り返すということは、その都度、葛藤を経て、自らの信条と尊厳を守るためにやむを得ず不起立を繰り返すことを選択したものと見ることができる。
前記2(1)の状況の下で、毎年必ず挙行される入学式、卒業式等において不起立を行えば、次第に処分が加重され、2、3年もしないうちに戒告から減給、そして停職という形で不利益の程度が増していくことになるが、これらの職員の中には自らの信条に忠実であればあるほど心理的に追い込まれ、上記の不利益の増大を受忍するか、自らの信条を捨てるかの選択を迫られる状態に置かれる者がいることを容易に推測できる。
不起立行為それ自体が、これまで見たとおり、学校内の秩序を大きく乱すものとはいえないことに鑑みると、このように過酷な結果を職員個人にもたらす前記2(1)のような懲戒処分の加重量定は、法が予定している懲戒制度の運用の許容範囲に入るとは到底考えられず、法の許容する懲戒権の範囲を逸脱するものといわざるを得ない。
最後に、本件の紛争の特性に鑑みて付言するに、今後いたずらに不起立と懲戒処分の繰り返しが行われていく事態が教育の現場の在り方として容認されるものではないことを強調しておかなければならない。教育の現場においてこのような紛争が繰り返される状態を一日も早く解消し、これまでにも増して自由で闊達な教育が実施されていくことが切に望まれるところであり、全ての関係者によってそのための具体的な方策と努力が真摯かつ速やかに尽くされていく必要があるものというべきである。
■【最高裁2・9判決】 裁判官 横田尤孝(検察官出身)の補足意見。
・・・都教委が、本件通達発出後これまで本件職務命令違反者に対して行ってきた、おおむね違反1回目は戒告、2回目及び3回目は減給、4回目以降は停職という懲戒処分の量定は、免職処分にまでは至らないとはいえ、一般論としては問題があるものと思われる。
思うに、厳粛・整然と行われるべき式典の円滑な進行を阻害し、儀式的行事の教育的意義を損なう違反行為に対してこれを放置することはできないが、違反者に重い処分を課したからといって、事柄の性質上、根本の問題が解決するわけでもない。国旗及び国歌をめぐる職務命令違反行為とそれに対する懲戒処分の応酬という虚しい現実は、本来教育の場にふさわしくない状況であるといわなければならない。
関係者は、ともども、こうした現実が多感な生徒に及ぼす影響とこの問題に関する社会通念の在り所について真摯に考究し、適切妥当な解決のための具体的な方策を見いだすよう最大限の努力をすることが望まれる。この稔りなき応酬を終息させることは、関係者全ての責務というべきである。
■【最高裁2・9判決】 裁判官 宮川光治(弁護士出身)の反対意見
・・・国歌を斉唱することは、国を愛することや他国を尊重することには単純には繋がらない。国歌は、一般にそれぞれの国の過去の歴史と深い関わりを有しており、他の国からみるとその評価は様々でもある。また、世界的にみて、入学式や卒業式等の式典において、国歌を斉唱するということが広く行われているとは考え難い。
思想の多様性を尊重する精神こそ、民主主義国家の存立の基盤であり、良き国際社会の形成にも貢献するものと考えられる。幸いにして、近年は式典の進行を積極的に妨害するという行為はみられなくなりつつある。そうした行為は許されるものではないが、自らの真摯な歴史観等に従った不起立行為等は,その行為が式典の円滑な進行を特段妨害することがない以上、少数者の思想の自由に属することとして、許容するという寛容が求められていると思われる。関係する人々に慎重な配慮を心から望みたい。
◎ 元都立高校教職員・元保護者・卒業生・市民 有志(都立高校の自由をとりもどす会)
呼びかけ人代表 坂牛哲郎(元都高教委員長)小嶋昌夫(元都高教副委員長)
世話人 富田浩康(元都高教副委員長)西村昭(元執行委員)安藤哲雄(元支部長)福井祥(元支部長)
連絡先小嶋昌夫 jimasa@seaple.ne.jp 西村昭 nishi3373@jcom.home.ne.jp
『都政新報』(2012/3/2【意見広告】)
◎ 最高裁は都に「自制」を求めている。
都立高校に自由の回復を!
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《撮影:平田 泉》
■【最高裁1・16判決】 裁判官 櫻井龍子(行政官出身)の補足意見
・・・本件が、さきに当小法廷が判示した起立斉唱に係る職務命令の合憲判断に関する判決(多数意見の引用する平成23年6月6日判決)に関係するものであるので、以下の点を付言しておきたい。
さきの上記判決において、多数意見は上記職務命令の合憲性を是認しつつ、思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があることを認めたものであり、そのことは、上記職務命令に従って起立斉唱することに自らの歴史観、世界観等との間で強い葛藤を感じる職員が存在することを踏まえたものといえ、処分対象者の多くは、そのような葛藤の結果、自らの信じるところに従い不起立行為を選択したものであろう。式典のたびに不起立を繰り返すということは、その都度、葛藤を経て、自らの信条と尊厳を守るためにやむを得ず不起立を繰り返すことを選択したものと見ることができる。
前記2(1)の状況の下で、毎年必ず挙行される入学式、卒業式等において不起立を行えば、次第に処分が加重され、2、3年もしないうちに戒告から減給、そして停職という形で不利益の程度が増していくことになるが、これらの職員の中には自らの信条に忠実であればあるほど心理的に追い込まれ、上記の不利益の増大を受忍するか、自らの信条を捨てるかの選択を迫られる状態に置かれる者がいることを容易に推測できる。
不起立行為それ自体が、これまで見たとおり、学校内の秩序を大きく乱すものとはいえないことに鑑みると、このように過酷な結果を職員個人にもたらす前記2(1)のような懲戒処分の加重量定は、法が予定している懲戒制度の運用の許容範囲に入るとは到底考えられず、法の許容する懲戒権の範囲を逸脱するものといわざるを得ない。
最後に、本件の紛争の特性に鑑みて付言するに、今後いたずらに不起立と懲戒処分の繰り返しが行われていく事態が教育の現場の在り方として容認されるものではないことを強調しておかなければならない。教育の現場においてこのような紛争が繰り返される状態を一日も早く解消し、これまでにも増して自由で闊達な教育が実施されていくことが切に望まれるところであり、全ての関係者によってそのための具体的な方策と努力が真摯かつ速やかに尽くされていく必要があるものというべきである。
■【最高裁2・9判決】 裁判官 横田尤孝(検察官出身)の補足意見。
・・・都教委が、本件通達発出後これまで本件職務命令違反者に対して行ってきた、おおむね違反1回目は戒告、2回目及び3回目は減給、4回目以降は停職という懲戒処分の量定は、免職処分にまでは至らないとはいえ、一般論としては問題があるものと思われる。
思うに、厳粛・整然と行われるべき式典の円滑な進行を阻害し、儀式的行事の教育的意義を損なう違反行為に対してこれを放置することはできないが、違反者に重い処分を課したからといって、事柄の性質上、根本の問題が解決するわけでもない。国旗及び国歌をめぐる職務命令違反行為とそれに対する懲戒処分の応酬という虚しい現実は、本来教育の場にふさわしくない状況であるといわなければならない。
関係者は、ともども、こうした現実が多感な生徒に及ぼす影響とこの問題に関する社会通念の在り所について真摯に考究し、適切妥当な解決のための具体的な方策を見いだすよう最大限の努力をすることが望まれる。この稔りなき応酬を終息させることは、関係者全ての責務というべきである。
■【最高裁2・9判決】 裁判官 宮川光治(弁護士出身)の反対意見
・・・国歌を斉唱することは、国を愛することや他国を尊重することには単純には繋がらない。国歌は、一般にそれぞれの国の過去の歴史と深い関わりを有しており、他の国からみるとその評価は様々でもある。また、世界的にみて、入学式や卒業式等の式典において、国歌を斉唱するということが広く行われているとは考え難い。
思想の多様性を尊重する精神こそ、民主主義国家の存立の基盤であり、良き国際社会の形成にも貢献するものと考えられる。幸いにして、近年は式典の進行を積極的に妨害するという行為はみられなくなりつつある。そうした行為は許されるものではないが、自らの真摯な歴史観等に従った不起立行為等は,その行為が式典の円滑な進行を特段妨害することがない以上、少数者の思想の自由に属することとして、許容するという寛容が求められていると思われる。関係する人々に慎重な配慮を心から望みたい。
◎ 元都立高校教職員・元保護者・卒業生・市民 有志(都立高校の自由をとりもどす会)
呼びかけ人代表 坂牛哲郎(元都高教委員長)小嶋昌夫(元都高教副委員長)
世話人 富田浩康(元都高教副委員長)西村昭(元執行委員)安藤哲雄(元支部長)福井祥(元支部長)
連絡先小嶋昌夫 jimasa@seaple.ne.jp 西村昭 nishi3373@jcom.home.ne.jp
『都政新報』(2012/3/2【意見広告】)
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