◆ 停職6月処分を適法とした、歴史を逆行する極悪東京地裁判決
5月22日、東京地裁民事第19部(清水響裁判長)は須藤高裁判決・最高裁決定を無視し、処分を加重して良い「具体的事情」を作出して根津の停職6月処分を適法としました。河原井さんについては、2012年最高裁判決に従い処分を取り消しましたが、損害賠償は認めませんでした。
◆ 2012年1月16日 最高裁判決
2012年1月16日最高裁判決は、
①職務命令は憲法19条に違反するとは言えない」として戒告を容認しましたが、
②「戒告を超える減給以上の処分は違法」とし、根津を除くすべての人たちの減給以上の処分を取り消しました。
しかし減給を超える重い処分、停職処分をしても良い特例として、
③「過去の処分歴」や「不起立前後の態度等」、「学校の規律や秩序を害する具体的事情があり」それが「受ける不利益」よりも重い場合、を挙げ、根津の2006年停職3月処分を取り消しませんでした。
◆ 画期的な2015年須藤・高裁判決 2016年最高裁決定
須藤・高裁判決は、「『過去の処分歴』は前回根津停職処分において考慮されて」おり、2006年処分から2007年処分に至るまでの間に「処分を加重する新たな個別具体的な事情はない」として、2007年停職6月処分を取り消しました。
根津が受ける不利益について、「停職6月処分を科すことは、…根津がさらに同種の不起立行為を行った場合に残されている懲戒処分は免職だけであって、…極めて大きな心理的圧力を加える」と停職6月の過酷さを明示したうえで、「自己の歴史観や世界観を含む思想等により忠実であろうとする教員にとっては、自らの思想や信条を捨てるか、それとも教職員としての身分を捨てるかの二者択一の選択を迫られることとなり、…日本国憲法が保障している個人としての思想及び良心の自由に対する実質的な侵害につながる」と判示。「君が代」起立を求める職務命令は憲法19条の「間接的制約」と性格付けをしてきた最高裁判決から一歩踏み込み、「実質的制約」に道を拓きました。
都が根津・累積過重処分適法を主張するために「特段の事情」として挙げた2点(停職出勤そして朝日新聞紙上においての不起立の呼びかけ)については、「これらの行為によって具体的に学校の運営が妨害されたような事実はなく、…停職期間の加重を基礎づける具体的な事情として大きく評価することは、思想及び良心の自由を保障する日本国憲法の精神に抵触する可能性があり、相当ではない。」と判示しました。
また、損害賠償については、「苦痛は、本件処分の取り消しによって回復される財産的な損害の補てんをもっては十分ではない」とし、都に河原井・根津に対し各10万円の損害賠償金の支払いを命じました。
◆ 須藤高裁判決・最高裁決定を無視した2008年事件・地裁判決
判決は教育について、「学校教育法及び学習指導要領において定める…教育活動は一定の価値観やこれに基づく価値の選択を前提とせざるを得ないものであるから、その意味で価値中立的であることは不可能である。」と、時代錯誤も甚だしいことを言います。
この教育観に立っての判決ですから、「通達及び職務命令は学習指導要領の適正な実施のために発せられた公務員組織内部の命令として『不当な支配』ではなく、憲法13条、23条、26条に違反しない」と、通達及び職務命令の違憲違法性について検討する必要はない、公務員は命令に従うのが当然と言わんばかり。「通達及び職務命令は違憲違法とはいえない」と、多少とも遠慮がちに書いた2012年最高裁判決からさえもひどく後退した判決です。
こうした認識を清水裁判長は持ちつつも、河原井さんについては「処分の加重を根拠づける事情もうかがわれない」とし、2012年最高裁判決に従って処分は取り消しました。損害賠償は本件処分当時、2012年1月の最判が出されておらず、処分の量定に際して都教委が注意義務を尽くさずに停職6月処分を選択したとまでは認めることはできないとして、損害賠償の必要はないとしました。
◆ 《根津・処分を加重してよい「具体的事情」2つ:ロゴ入りトレーナー着用と「過去の処分歴」》
根津については、「OBJECTION HINOMARU KIMIGAYO」「強制反対 日の丸・君が代」とロゴの入ったトレーナーを、着用しないよう職務命令が出されたにも関わらず着用したこと、さらにはお蔵入りしたはずの「過去の処分歴」を持ち出し、それらが「停職処分を選択することの相当性を基礎づける具体的事情」だとして処分を適法としました。
都教委は「処分説明書」(2008・3・31)の処分理由に「君が代」不起立の他に、このトレーナー着用が職務命令違反・職務専念義務違反であるとあげていました。このトレーナーを私は2007年度以前の学校でも、以降の学校でも着用していましたが、着用を禁止したのは、この校長だけでした。
裁判長の偏見と推測で判決は、次のように言います。
「トレーナー等着用行為は、単なる服装ではなく根津の意図的な表現行為であり、同僚や生徒に対して、日の丸・君が代に関する起立斉唱行為に反対することを訴えかけるという性質を持った行為であったと言うべき。」「根津は、あえて勤務時間中に勤務場所における本件トレーナー着用行為を繰り返し」「校長らの警告も無視して本件職務命令が発せられるような状況を自ら作出し・・・着用を続けた。このような一連の根津の言動は、自己の思想及び良心と社会一般の規範等により求められる行為とが抵触する場面において、やむをえず不作為を選択したというものではなく、自ら学校の規律や秩序を乱す行為を積極的に行ったものと評価せざるを得ない」。
そして、「根津の過去の処分歴に係る非違行為は、積極的に式典や研修の進行を妨害する行為が含まれているほか、その頻度も…高いものであるから、規律や秩序を害する程度は相応に大きいものである。また、トレーナー等着用行為を行い・・・根津はあえて学校の規律や秩序を乱す行為を選択して実行している。・・・このような過去の処分歴に係る一連の非違行為の内容や頻度等及び本件トレーナー等着用行為を含む根津の一連の言動に鑑みると、・・・学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から、…停職処分を選択することの相当性を基礎づける具体的な事情があったものと認めることができる」と結論づけます。
根津憎し、権力におもねらない者憎しという清水裁判長の悪感情が満ち満ちた判決です。と同時に、安倍首相の息がかかった最高裁の今後を悲観させる判決でもあります。
清水極悪判決を前に、須藤高裁判決・最高裁決定が出されたことを改めてすごく嬉しく思います。
※ 2012年1.16最高裁判決以前の東京の「君が代」不起立処分は、
不起立1回が戒告、
2回で減給(1/10)1月、
3回で減給(1/10)6月、
4回で停職1月、
5回で停職3月、
6回で停職6月。
河原井さん・根津さんらの「君が代」解雇をさせない会
5月22日、東京地裁民事第19部(清水響裁判長)は須藤高裁判決・最高裁決定を無視し、処分を加重して良い「具体的事情」を作出して根津の停職6月処分を適法としました。河原井さんについては、2012年最高裁判決に従い処分を取り消しましたが、損害賠償は認めませんでした。
◆ 2012年1月16日 最高裁判決
2012年1月16日最高裁判決は、
①職務命令は憲法19条に違反するとは言えない」として戒告を容認しましたが、
②「戒告を超える減給以上の処分は違法」とし、根津を除くすべての人たちの減給以上の処分を取り消しました。
しかし減給を超える重い処分、停職処分をしても良い特例として、
③「過去の処分歴」や「不起立前後の態度等」、「学校の規律や秩序を害する具体的事情があり」それが「受ける不利益」よりも重い場合、を挙げ、根津の2006年停職3月処分を取り消しませんでした。
◆ 画期的な2015年須藤・高裁判決 2016年最高裁決定
須藤・高裁判決は、「『過去の処分歴』は前回根津停職処分において考慮されて」おり、2006年処分から2007年処分に至るまでの間に「処分を加重する新たな個別具体的な事情はない」として、2007年停職6月処分を取り消しました。
根津が受ける不利益について、「停職6月処分を科すことは、…根津がさらに同種の不起立行為を行った場合に残されている懲戒処分は免職だけであって、…極めて大きな心理的圧力を加える」と停職6月の過酷さを明示したうえで、「自己の歴史観や世界観を含む思想等により忠実であろうとする教員にとっては、自らの思想や信条を捨てるか、それとも教職員としての身分を捨てるかの二者択一の選択を迫られることとなり、…日本国憲法が保障している個人としての思想及び良心の自由に対する実質的な侵害につながる」と判示。「君が代」起立を求める職務命令は憲法19条の「間接的制約」と性格付けをしてきた最高裁判決から一歩踏み込み、「実質的制約」に道を拓きました。
都が根津・累積過重処分適法を主張するために「特段の事情」として挙げた2点(停職出勤そして朝日新聞紙上においての不起立の呼びかけ)については、「これらの行為によって具体的に学校の運営が妨害されたような事実はなく、…停職期間の加重を基礎づける具体的な事情として大きく評価することは、思想及び良心の自由を保障する日本国憲法の精神に抵触する可能性があり、相当ではない。」と判示しました。
また、損害賠償については、「苦痛は、本件処分の取り消しによって回復される財産的な損害の補てんをもっては十分ではない」とし、都に河原井・根津に対し各10万円の損害賠償金の支払いを命じました。
◆ 須藤高裁判決・最高裁決定を無視した2008年事件・地裁判決
判決は教育について、「学校教育法及び学習指導要領において定める…教育活動は一定の価値観やこれに基づく価値の選択を前提とせざるを得ないものであるから、その意味で価値中立的であることは不可能である。」と、時代錯誤も甚だしいことを言います。
この教育観に立っての判決ですから、「通達及び職務命令は学習指導要領の適正な実施のために発せられた公務員組織内部の命令として『不当な支配』ではなく、憲法13条、23条、26条に違反しない」と、通達及び職務命令の違憲違法性について検討する必要はない、公務員は命令に従うのが当然と言わんばかり。「通達及び職務命令は違憲違法とはいえない」と、多少とも遠慮がちに書いた2012年最高裁判決からさえもひどく後退した判決です。
こうした認識を清水裁判長は持ちつつも、河原井さんについては「処分の加重を根拠づける事情もうかがわれない」とし、2012年最高裁判決に従って処分は取り消しました。損害賠償は本件処分当時、2012年1月の最判が出されておらず、処分の量定に際して都教委が注意義務を尽くさずに停職6月処分を選択したとまでは認めることはできないとして、損害賠償の必要はないとしました。
◆ 《根津・処分を加重してよい「具体的事情」2つ:ロゴ入りトレーナー着用と「過去の処分歴」》
根津については、「OBJECTION HINOMARU KIMIGAYO」「強制反対 日の丸・君が代」とロゴの入ったトレーナーを、着用しないよう職務命令が出されたにも関わらず着用したこと、さらにはお蔵入りしたはずの「過去の処分歴」を持ち出し、それらが「停職処分を選択することの相当性を基礎づける具体的事情」だとして処分を適法としました。
都教委は「処分説明書」(2008・3・31)の処分理由に「君が代」不起立の他に、このトレーナー着用が職務命令違反・職務専念義務違反であるとあげていました。このトレーナーを私は2007年度以前の学校でも、以降の学校でも着用していましたが、着用を禁止したのは、この校長だけでした。
裁判長の偏見と推測で判決は、次のように言います。
「トレーナー等着用行為は、単なる服装ではなく根津の意図的な表現行為であり、同僚や生徒に対して、日の丸・君が代に関する起立斉唱行為に反対することを訴えかけるという性質を持った行為であったと言うべき。」「根津は、あえて勤務時間中に勤務場所における本件トレーナー着用行為を繰り返し」「校長らの警告も無視して本件職務命令が発せられるような状況を自ら作出し・・・着用を続けた。このような一連の根津の言動は、自己の思想及び良心と社会一般の規範等により求められる行為とが抵触する場面において、やむをえず不作為を選択したというものではなく、自ら学校の規律や秩序を乱す行為を積極的に行ったものと評価せざるを得ない」。
そして、「根津の過去の処分歴に係る非違行為は、積極的に式典や研修の進行を妨害する行為が含まれているほか、その頻度も…高いものであるから、規律や秩序を害する程度は相応に大きいものである。また、トレーナー等着用行為を行い・・・根津はあえて学校の規律や秩序を乱す行為を選択して実行している。・・・このような過去の処分歴に係る一連の非違行為の内容や頻度等及び本件トレーナー等着用行為を含む根津の一連の言動に鑑みると、・・・学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から、…停職処分を選択することの相当性を基礎づける具体的な事情があったものと認めることができる」と結論づけます。
根津憎し、権力におもねらない者憎しという清水裁判長の悪感情が満ち満ちた判決です。と同時に、安倍首相の息がかかった最高裁の今後を悲観させる判決でもあります。
清水極悪判決を前に、須藤高裁判決・最高裁決定が出されたことを改めてすごく嬉しく思います。
※ 2012年1.16最高裁判決以前の東京の「君が代」不起立処分は、
不起立1回が戒告、
2回で減給(1/10)1月、
3回で減給(1/10)6月、
4回で停職1月、
5回で停職3月、
6回で停職6月。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます