◆ 沖縄戦の教訓 (東京新聞【本音のコラム】)
ヒロシマがあっても、日本は降伏しなかった。ナガサキがあって、ようやく敗戦を認めた。それで「本土決戦」は免れた。
なんと日本の指導者たちは愚鈍にして無責任だったことか。全島戦場となった沖縄の悲劇が、本土決戦の前哨戦だった。
記録映画『沖縄スパイ戦史』(三上智恵・大矢英代(はなよ)監督)は、沖縄の十代の少年たちが「護郷隊」という名のゲリラ部隊に組織され、米軍と戦った事実を掘り起こした。少年たちは戦車に突っ込む爆破隊員や斬り込み隊員にされて戦死した。
負傷して生き残り、精神に重い後遺症を抱え「兵隊幽霊」と言われた証言者が登場する。
中東やアフリカなどの内戦で死傷した少年とおなじ酷(むご)さが沖縄でも行われていた。
スパイ容疑で日本兵に虐殺されたり、作戦の邪魔になるとマラリア猖獗(しょうけつ)の地へ移住させられ、大量の死者が発生していた。
その指導者は陸軍中野学校でスパイ教育を受け、米軍上陸に備えて派遣された、まだ二十代初めの若者たちだった。
人類最大の悪としての戦争は、勝つためにはすべてが許され、最大の善に転化する。
映画は島民を犠牲にした青年将校たちを人間的に視(み)ようとしている。
いま、宮古島、石垣島、与那国島に自衛隊員が派遣され、ミサイル防衛に当たろうとしている。
基地は戦争を呼び、戦争は若い隊員の人間性と島民との関係を必ず破壊する。
『東京新聞』(2018年8月7日【本音のコラム】)
鎌田 慧(かまたさとし・ルポライター)
ヒロシマがあっても、日本は降伏しなかった。ナガサキがあって、ようやく敗戦を認めた。それで「本土決戦」は免れた。
なんと日本の指導者たちは愚鈍にして無責任だったことか。全島戦場となった沖縄の悲劇が、本土決戦の前哨戦だった。
記録映画『沖縄スパイ戦史』(三上智恵・大矢英代(はなよ)監督)は、沖縄の十代の少年たちが「護郷隊」という名のゲリラ部隊に組織され、米軍と戦った事実を掘り起こした。少年たちは戦車に突っ込む爆破隊員や斬り込み隊員にされて戦死した。
負傷して生き残り、精神に重い後遺症を抱え「兵隊幽霊」と言われた証言者が登場する。
中東やアフリカなどの内戦で死傷した少年とおなじ酷(むご)さが沖縄でも行われていた。
スパイ容疑で日本兵に虐殺されたり、作戦の邪魔になるとマラリア猖獗(しょうけつ)の地へ移住させられ、大量の死者が発生していた。
その指導者は陸軍中野学校でスパイ教育を受け、米軍上陸に備えて派遣された、まだ二十代初めの若者たちだった。
人類最大の悪としての戦争は、勝つためにはすべてが許され、最大の善に転化する。
映画は島民を犠牲にした青年将校たちを人間的に視(み)ようとしている。
いま、宮古島、石垣島、与那国島に自衛隊員が派遣され、ミサイル防衛に当たろうとしている。
基地は戦争を呼び、戦争は若い隊員の人間性と島民との関係を必ず破壊する。
『東京新聞』(2018年8月7日【本音のコラム】)
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