ピアノを始めてほんの少しして、
似たような覚えなければならない音符に
自信を無くして
歩みを止めたNちゃん。
音符を読むのが嫌で
面倒くさくて
音符を読むことから
あーでもない
こーでもない
と色々理由をつけて
逃げまくった。
最初、覚えるのは早かったし
コツを掴むのも早かったのだけれど、
自分が覚えたものが
合っているのか
間違っているのか
不安になったらこちら
前へ進めなくなったみたいだった。
情報整理したり、
間違えても大丈夫なことを話したり、
色々したけれど、
Nちゃんの後ろ向きな姿勢は揺るがず、
ならば、と
Nちゃんの本に出てくる音符を
五線に書き出して
「ヒント」として使うようにした。
何の音か迷ったら「ヒント」を見て
確かめることができるように。
ルールは一つ。
楽譜に何の音かは
書き込まないこと。
音符ではなく
カタカナを読むようになるのを
避けるため。
不安な音符が来たら、
ヒントから逐一探すように。
曲が止まってもいい、
イチイチ確かめていいことに。
少し安心した様子のNちゃん。
一つ一つヒントで確認しながら
ほんの少しピアノを弾くようになった。
でも、一音一音、何度でも、
ヒントで確認するのを
止める気配はなかった。
1ヶ月、いや、
2ヶ月が過ぎても、
Nちゃんの逐一確認する作業は
ずっと続いていた。
そのうち、確認が面倒くさくなって
ヒントからは離れるだろうと
当初の私の予想に反し、
確認の徹底っぷりはすごかった。
絶対に分かっているはずの
「ド」の音さえ確認していたのだから。
それがこの日のNちゃん。
最初の1、2音を確認したあと、
突然ヒントを裏返し(隠して)、
どんどん音符を読み始めた。
逐一確認するのをやめたことに
私も気付いたけれど、
平静を装って素知らぬフリ。
一曲、しっかりNちゃんの力で
読み通せたところで、
Nちゃん、すごいね
ヒント見てないね
と声をかけると、
とってもとっても嬉しそうなNちゃん。
「ヒント見てなかったんだよ」
と懸命に申告する。
知ってるよ
分かってたよ
私も嬉しい。
でもきっと、
Nちゃんの方が喜んでいる。
もっとずっと早く
ヒントを手放せていたはずが、
自信の無さから
ヒントに頼り続けていたNちゃん。
あとはいつ手放すか、だけだった。
ピアノ自体から
逃げずに頑張ってもらえて
よかったーーー!!
感激の瞬間だった。