英国的読書生活

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天才物理学者の優雅な生活

2011-10-19 | イギリス


イアン・マキューアン「ソーラー」

 

 

主人公マイケル・ビアードは、何とノーベル物理学賞受賞者だ。量子物理学の世界でアインシュタインと並び評されるピアード先生の生活は、さぞかしアカデミックな毎日・・と思いきや、何ともチャライのであります。禿げ、デブ、チビという三重苦を、まったくもってハンディと考えず、有り余る頭脳をもって果敢に女性にアタックする。結果、4度の結婚に失敗し、5人目の奥さんも研究所の部下に寝取られてしまっているという有様・・・。でも、彼は決して反省することはない。ほとばしる食欲と性欲のはざまで、女たらしたる自分の立ち位置を独自の量子物理学理論で忽ちとして昇華し、正当化してしまうのだ。

人工光合成を作り出すという部下のアイディアを盗用することで足を踏み入れたソーラービジネスは、夢の事業となるはずであったが、様々な利権を刺激することとなり・・・・。愛人と愛人が鉢合わせとなるという人類共通の悲劇の場で彼がとった行動とは・・・。

3.11後の脱原発の動き、ノーベル賞の季節、光より速い物質の発見?によるアインシュタイン理論への?、日本語版の刊行はまさにタイムリー。

エゴとエゴがぶつかりあう環境活動家のツアーの実態、その極寒の中、立小便を敢行したピアード先生を襲った悲劇、ヒースローエキスプレス車中で繰り広げられるスナック菓子をめぐる攻防・・・、笑える箇所は沢山あります。でも、ピアード先生の頭の中は物理学者ですからけっこう難解な部分も。読後感は、「土曜日」「贖罪」には及ばないな。