国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

北朝鮮はなぜイスラエルを滅亡させようとするのか?

2007年09月27日 | 韓国・北朝鮮
●イスラエル - Wikipedia

・国連によるパレスチナ分割決議

第一次世界大戦でユダヤ軍・アラブ軍は共にイギリス軍の一員としてオスマン帝国と対決し、現在のヨルダンを含む「パレスチナ」はイギリスの委任統治領となった。

現在のパレスチナの地へのユダヤ人帰還運動は長い歴史を持っており、ユダヤ人と共に平和な世俗国家を築こうとするアラブ人も多かった。ユダヤ人はヘブライ語を口語として復活させ、 アラブ人とともに衝突がありながらも、安定した社会を築き上げていた。

しかし、1947年の段階で、ユダヤ人入植者の増大とそれに反発するアラブ民族主義者によるユダヤ人移住・建国反対の運動の結果として、ヨルダンのフセイン国王らの推進していたイフード運動(民族性・宗教性を表に出さない、平和統合国家案)は非現実的な様相を呈し、イギリスは遂に 国際連合にこの問題の仲介を委ねた。

イスラエルはこの国連決議181(通称パレスチナ分割決議、1947年11月29日採択)に基づき、1948年5月14日に独立宣言し、誕生した「ユダヤ人」主導国家である。この決議は人口の三分の一に満たないユダヤ人に、国土の三分の二以上を与える内容であった。さらに、その領域は第一次中東戦争の結果、国連決議よりも大幅に広いものとなっている。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A8%E3%83%AB





●シオニズム - Wikipedia

シオニズムとは、イスラエルの地(パレスチナ)に故郷を再建しよう、あるいはユダヤ教、ユダヤ・イディッシュ・イスラエル文化の復興運動(ルネサンス)を興そうとするユダヤ人の近代的運動。後者の立場を「文化シオニズム」と呼ぶことがあるが、実際には様々な関係があると思われる。「シオン」(エルサレム市街の丘の名前)の地に帰るという意味である。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%82%AA%E3%83%8B%E3%82%BA%E3%83%A0






●世界は『嘘だらけのヨーロッパ製世界史』でできている 9月26日 岸田秀

「アメリカは、なぜ遠い国(当時はベトナムを指した)まで行って余計な戦争をするのか?」

 という問いの答えは、「彼らがインディアンの土地を奪って国を作ったから。国の成り立ちが他国民の略奪だった彼らは、その罪悪感を正当化するため、他の国におせっかいをし続けなくてはいられない」というもの。
http://blog.goo.ne.jp/2005tora/e/f6d3b14ce39099e4da5149e7dc0c72db






巨大な暴力への抵抗〈小出裕章〉 〈こいでひろあき:京都大学 原子炉実験所〉
(この記事は2004年 6月「科学・社会・人間」89号に掲載されたものです。)

Manifest Destiny (神に与えられし定め)
英国からの102人の移住者が、わずか180トンの帆船・Mayflower号に乗って北アメリカ大陸北東岸に到着したのは1620年の晩秋のことであった。その年の冬は寒さが厳しく、農耕の経験を持たない都市生活者だった移住者は、その半数が春を待たずに死んだ。その土地の先住民は移住者に作物の栽培法・魚の採り方・肥料の作り方を教えて彼らを支えた。

ところが、移住者はすぐに先住民の土地を奪うようになり、英国からの独立戦争を経、1776年に米国は建国された。その独立宣言には「すべての人は平等である」と謳われているにもかかわらず、先住民については「老若男女・身分を問わずに殺戮するという戦法で知られる残酷なインディアン野蛮人」と記されている。実際にそうしたのは移住者の側であり、やがて太平洋に達するまで、数限りない先住民を虐殺しながら領土を強奪した。それを正当化するために考え出された理由が「Manifest Destiny (明白な運命)」であり、アメリカ大陸は神が米国民に与えたものだというのであった。







太田述正コラム#0622(2005.2.8)

イ マニフェスト・デスティニー
 フランスからのルイジアナの購入(Louisiana Purchase。注5)によって、一挙に領土が拡大した米国は、1836年にメキシコ(注6)から独立したテキサスを1845年に併合します。

(注5)フレンチ・インディアン戦争に敗北したフランスは、カナダは英国に、(大)ルイジアナはスペインに割譲させられたが、1800年にフランス(皇帝になる前のナポレオン)はスペインとの条約で再びルイジアナを入手した。ところが、ハイチでの奴隷反乱を鎮圧できなかったナポレオンは、ハイチ(イスパニョーラ島)が確保できないのなら、当時イスパニョーラ島に比べて経済的価値が低かったルイジアナを持っていても仕方がないとして、来るべき対英国戦の軍資金確保も兼ね、1803年に約1,500万米ドルで米国にルイジアナを売却した。この結果、米国の面積は二倍に増えた。(http://gatewayno.com/history/LaPurchase.html。2月8日アクセス)
 (注6)メキシコは、スペインから1821年に独立を果たしていた。

独立したテキサスは、米国に併合されることを望んでいたというのに、実際の併合までこんなに時間がかかったのにはわけがありました。
そもそも、メキシコ領テキサスに移り住んでいた米国人達が、メキシコからの独立を図ったのには様々な理由があったのですが、その中に、多くが奴隷保有者であった彼らの、メキシコ政府の奴隷保有を禁じた新政策に対する反発がありました。
米国の北部の人々は、テキサスが奴隷保有州として米国に加わることで、工業中心で(英国の工業製品との競争に晒されていて)保護貿易志向の北部と、奴隷労働によるプランテーション農業中心で(英国等に綿花等を輸出していたことから)自由貿易志向の南部との間の力のバランスが崩れることを恐れ、テキサスの併合に反対し続けたのです。
ところが、奴隷制を廃止していた英国が、テキサスを保護国化するという(根も葉もない)噂が出てきた上、テキサス政府がこの噂を利用して、米国の疑心暗鬼を募らせるような言動をわざと行ったため、米国の併合反対論者の中から賛成に転じる人々が出て、ようやくテキサスは米国に併合されるのです。

この1845年に、マニフェスト・デスティニー(Manifest Destiny)という言葉が米国で登場します。 
 マニフェスト・デスティニーとは、テキサス併合を正当化するねらいで、米国は北米大陸を支配する運命を担っている、とある米ジャーナリストが主張した際に用いた言葉であり、その後人口に膾炙することになります。その背景としては、既にご説明した、米国の人々の選民思想(注7)があります。その選民たる彼らが、アングロサクソン文明を移植するとすれば、その対象は(英領を除く)北米大陸全域であると考えられていた、ということなのです(注8)。

(注7)選民思想の「選民」には、黒人やインディアンは含まれていなかった点に注意が必要。インディアンは、白人の植民の邪魔になるので、どんどん西方へと放逐された。民度が低いから、というのだ。しかし、例えばチェロキー族の識字率は、南北戦争頃までの南部の白人のそれを上回っていたし、高度の農業を営んでいたインディアン部族も少なくなかった。また、インディアンの中には、英語フランス語を含む多言語を駆使して商取引に従事する者や手練れの企業経営者さえいた。
 (注8)こんなスローガンめいた言葉が生まれたのは、米国の拡大に賛成する勢力(Hamiltonian ideal信奉勢力。民主党員に多かった)が、建国以来せめぎあってきたところの米国の拡大に反対する勢力(Jeffersonian idea信奉勢力。ホイッグ党員に多かった)に対して何とか主導権を取りたいという気持ちがあったからだろう。両者の争点は、上述した奴隷州問題だけではなく、民主主義は大きな領土と人口の国でも成り立つのか、といった争点もあった。
ちなみに、モンロー・ドクトリン(Monroe Doctrine)が1823年にモンロー米大統領によって打ち出されるが、これは1823年に、復辟していたブルボン王朝のフランスが、同じブルボン家を国王としていただくスペインと手を結び、(ロシア・プロイセン・オーストリアの)神聖同盟の支援の下、次々に独立を宣言していた中南米諸国を取り戻そうという動きを見せたことに対し、英国が米国に提携して対抗しようともちかけたところ、米国は提携を断って、中南米は米国の勢力圏であり、欧州諸国による一切の米州への介入に反対する、というドクトリンを打ち出したものだ。しかし、当時の米国には、モンロー・ドクトリンを実施するのに必要なだけの海軍力を保有してはいなかった。この時のフランス等の動きが成功しなかったのも、その後中南米への欧州勢力の介入がなかったのも、大西洋の制海権を握っていた英海軍のおかげであり、米国は英国の軍事力にただ乗りしたことになる。米国がモンロー・ドクトリンを実施に移し始めるのは、20世紀に入ってからだ。(http://usinfo.state.gov/usa/infousa/facts/democrac/50.htm。2月7日アクセス)

 テキサス併合の勢いをかって、米国拡大賛成派が反対派を押さえて、マニフェスト・デスティニーを一気に実現してしまったのが、1846??48年の米墨戦争(注9)です。

 (注9)米国では一般にMexican War、メキシコでは一般に、North American Invasion of Mexicoと呼ばれる。

 米墨戦争は、米国がメキシコからカリフォルニア等の広大な領土を侵略するために仕掛け、その目的を達成した、文字通りの侵略戦争であり、そのことを当時の心ある米国人は皆自覚していました。
 この米墨戦争に参加し、後に南北戦争で北軍の勇将として大活躍し、大統領にもなったグラント(Ulysses S. Grant)は、回顧録の中で、「私は、米国がメキシコに対して行った戦争ほど邪悪な戦争はないと思う。当時私はまだ一人の若者に過ぎなかったが、そう思っていた。しかし遺憾ながら、<そう思いつつも、>私は米軍を離脱するだけの道義的勇気を持ち合わせていなかった。」と記していますし、米墨戦争が終わり、メキシコにとって屈辱的な講話条約(Treaty of Guadalupe Hidalgo)の調印式に臨んだ米国全権は、後に「もしこれら<調印式に臨んでいる>メキシコ人達が、その時私の心中を透視できたならば、彼らが<惨めな敗戦を喫した>自分達メキシコ人を恥じる思いよりも、私が自分が米国人であることを恥じる思いの方が強いことを知ったことだろう。」と激白しているところです。
(以上、Manifest destiny、インディアン迫害、及び米墨戦争については、http://www.pbs.org/kera/usmexicanwar/dialogues/prelude/manifest/manifestdestiny.html以下。2月8日アクセス)による。米墨戦争については、http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B1%B3%E5%A2%A8%E6%88%A6%E4%BA%89(2月8日アクセス)も参照した。)






【私のコメント】
北朝鮮はイスラエルと対立するシリアやイランに対して、ミサイル兵器や核兵器を譲渡することでイスラエルを滅亡させようとしている、と私は想像している。しかし、アジア大陸の東の果ての小国北朝鮮がなぜ、アジア大陸の西の果てのパレスチナ紛争にそれほどまで真剣に関与するのだろう?それは、テルアビブ空港乱射事件を起こした日本赤軍についても生じる疑問である。この疑問を解くには、イスラエル側の要因・日本赤軍側の要因・北朝鮮側の要因の三つを分析する必要があるだろう。

<イスラエル側要因:最後の新大陸国家、イスラエル>

米国は先住民の住む土地を奪い先住民を虐殺することによって成立した国家である。それを正当化するために、アメリカ大陸は神が米国民に与えたものだという「マニフェスト・デスティニー (明白な運命)」という理屈が作り出された。同様に、イスラエルもまた先住民の住む土地を奪い先住民を虐殺することによって成立した国家である。それを正当化するために「シオニズム」という理屈が作り出された。米国の建国理念・イスラエルの建国理念には共に、先住民に対する配慮が完全に欠如している。イスラエル建国は1947年11月29日採択のパレスチナ分割決議によって正当化されており、それを採択したときの米ソ両国は国際金融資本によってほぼ完全に支配されていたことも重要であろう。イスラエルの建国は明らかに米国の「マニフェスト・デスティニー」の延長線上にある。イスラエルは最後の新大陸国家とも言えるのではないだろうか。


<日本赤軍側要因:大東亜戦争の理念の延長線上にあるパレスチナ紛争>

上記のようにイスラエルが米国建国理念の延長線上にある国家であるという認識に立つならば、パレスチナ紛争は米国の侵略に対するアジアの抵抗活動という観点で「世界を植民地化する米英を打倒する」という大東亜戦争の理念の延長線上にある。日本赤軍は大日本帝国の降伏後も大東亜戦争をパレスチナという戦場で戦い続けているのだ。これこそ、江田島孔明氏の言う「満州の残滓」であろう。そして、北朝鮮もまた日本赤軍と同様の「満州の残滓」であるからこそ、日本赤軍のメンバーを自国に保護し続けてきたのだと考えられる。


<北朝鮮側要因:屈辱の歴史を払拭して日中露に胸を張れる大英雄を必要とする朝鮮民族>

前回の記事「歴史なき民族の苦しみ:スロバキアとの比較から見る韓国・朝鮮民族の苦悩」でも書いたが、朝鮮民族はその屈辱的歴史に苦しんでいる。朝鮮民族は事大主義と決別した偉大な歴史、その偉大な歴史を作る偉大な英雄を必要としている。それも、朝鮮民族が日本・ロシア・中国という三つの超大国に対して胸を張れるくらいの偉大な歴史・英雄である。

北朝鮮のシリア・イランに対する軍事支援は、米国の「マニフェスト・デスティニー」の延長線上に建国されたイスラエルを滅亡させる可能性がある。それがもし実現するならば、金正日はアラブ世界から大英雄と称えられることは間違いない。もっと大きな視点で、国際金融資本による世界侵略の最終攻勢点であるパレスチナで大勝利を挙げたと考えるならば、国際金融資本を除く全世界にとっての英雄とも考えられる。私は、金正日(父である金日成も含む)はそのような考えで日本赤軍を保護し、ミサイル開発や核開発を実行してきたのだと想像する。そして、日本の支配階層も大東亜戦争の継続という観点から北朝鮮を技術的に支援し、英雄を必要とする朝鮮民族の願いを聞き入れて、イスラエルにとどめを刺すという大役を金正日に任せたのではないかと考える。


<韓国の未来と金正日>

現在の韓国人の多くは金正日を「貧しい独裁国家の指導者」としか考えていないだろう。しかし、未来の韓国人は朝鮮史唯一無比の大英雄として金正日の名を挙げるのではないかと私は想像する。近い将来に韓国は恐らく経済競争で中国に敗北し、韓国の有力製造業の多くは中国に乗っ取られるだろう。朝鮮半島南部に残される五千万人の人々は、「日本に次ぐ先進国との自負」「中国に対する優越感」を失い、求心力を失った韓国には崩壊の危機が訪れる。その時、朝鮮半島に安定した国家を作る求心力はもはや「英雄金正日」しか残されていないのではないか。

私は韓国は近い未来に滅亡すると考えているが、それは経済的には中国に敗北・吸収され、政治的には北朝鮮に敗北・吸収される形態ではないかと想像する。
コメント (9)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 歴史なき民族の苦しみ:スロ... | トップ | 日本政府は大阪市に首都機能... »
最新の画像もっと見る

9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown ()
2007-09-28 07:52:20
単に北は資金が欲しいからじゃないですか
返信する
Unknown (Unknown)
2007-09-28 08:47:29
京さんの意見にも同感するけど。
持続力には 理屈や信念の裏づけが必要で。
返信する
Unknown (P)
2007-09-28 09:06:48
信念云々以前に買うやつがいないだけでしょ。
アメリカとかとの正規ルートなら問題も少ないだろうけど
北朝鮮のはいわば非合法なわけだから買い手も限られる。
アングラ商品なわけだから買い手も限られる。
で、買ったのがもう滅ぶか相手を滅ぼすかぐらいに
追い詰められてる国だったってことじゃないのかな。
返信する
Unknown (jjとは別の人)
2007-09-28 10:58:40
オカルトだが、雛形経綸で考えると、ユダヤ=朝鮮
で、文明の周期が西洋→東洋だから、ユダヤ精神は朝鮮が引き継ぐ。で、ユダヤは朝鮮の影になる。この先、半島系カルト教団の内のひとつが勝ち残り、2週目ユダヤ教となると予想。この教団の反体制派が2週目メシアで朝鮮人。大本教は、朝鮮に肩入れしていただろ?で、白頭山=エルサレムであり、2週目はここでの血で血を洗う抗争を軸に時代が進む。中国=ローマ帝国で、日本は運がよければギリシャ、悪ければカルタゴ。
返信する
Unknown (Unknown)
2007-09-28 19:51:04
>ギリシャ、悪ければカルタゴ。

彼がアレクサンドロス大王になるか、ハンニバルになるか、それが運命の別れ道だな。
返信する
Unknown (ねこ)
2007-09-28 22:40:43
中国=ローマ帝国
アメリカ=ローマ帝国 のような。

日本は二つのローマ帝国に挟まれ、本当に大変だ・・。

返信する
Unknown (jjとは別の人)
2007-09-29 12:00:07
トム ハーパーのキリスト神話を読んでみ。そして、隣の民族、および、その信じるところの宗教と比較してみろ。そうすれば、俺の予測(予言ではない)が根も葉もないことでは無い事がわかるだろう。最近、キリスト教についての情報が色々出てきたが、特に、それの成立状況は半島ウォッチャーにとって一見の価値あり。
返信する
Unknown (CatSit1)
2007-09-29 13:25:58
金正日のツラ構えでは無理じゃね?

「狂人とも見えぬ。
 かといって、刺客、密偵とも思えぬ。
 挙措容姿に、品も凄味もない。」

 (小松左京「おしゃべりな訪問者」”嵐が来れば”より)
返信する
これは関係ありますかね? (Unknown)
2007-10-01 10:00:47
北朝鮮人材2万人が中東派遣
http://japanese.joins.com/article/article.php?aid=91538&servcode=500&sectcode=500

金潤圭(キム・ユンギュ)アチョングローバルコーポレーション会長(前現代峨山副会長)は、北朝鮮人材2万人を中東建設事業に派遣することで北朝鮮と合意したと先月29日、明らかにした。

このためアチョングローバルコーポレーションは先月、ドバイに「アチョンミドルイースト」という支社を設立している。
返信する

コメントを投稿