国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

韓国からの撤退の意志を鮮明にした米軍:李明博新政権への痛烈な一撃

2007年12月29日 | 韓国・北朝鮮
12月26日の韓国聯合ニュースで米韓両国の同盟軍事協助本部創設の白紙撤回という重要なニュースが報道された。米軍は純粋な韓国軍支援体制に移行する意向であり、新たな機構を設置することに反対だというのだ。第二次大戦以後半世紀以上の長きに渡って朝鮮半島南部に駐留してきた在韓米軍は今後撤退して韓国軍が単独で北朝鮮や中国のランドパワーに対抗せねばならないことになる。親米色を鮮明にしている李明博新大統領の登場に対して、米軍は韓国を事実上切り捨てるという非情な一撃を与えたことになる。 現在の朝鮮半島情勢は、1973年のパリ・ベトナム和平協定直前のベトナム情勢と類似している。親北朝鮮の大統合民主新党は南ベトナム解放民族戦線に相当し、全羅道を支配している。米軍はイラク戦争中に在韓米軍実戦部隊の中東派遣を開始しており、事実上米軍の撤退は始まっている。これまで米韓両国軍が共同で行使してきた戦時作戦統制権も、2012年4月17日から韓国軍の手に渡ることが既に決定済みであり、ハンナラ党の再協議要求を米国は拒否していることを12月25日の世界日報が報道している。 米国は明らかにベトナム和平協定の韓国版を希望していると思われる。しかし、李明博新大統領が就任すればそれを韓国に飲ませることは不可能だろう。盧武鉉現政権の期間中に電撃的に朝鮮半島和平協定が結ばれ、米国が朝鮮戦争の終戦を宣言して韓国から撤退するのではないかと私は想像する。また、永らく膠着状態にあった日本人拉致問題も盧武鉉現政権の期間中に電撃的に解決され、日朝両国の国交が回復されるのではないかと私は想像する。 その後に起きるのはベトナム戦争末期の南ベトナムと同様の韓国国内の内戦であろう。北朝鮮及び全羅道の親北朝鮮勢力は韓国内でハンナラ党が支配する京畿道(ソウル)と慶尚道(釜山)を攻撃し、米軍に見捨てられた韓国保守派は敗北して済州島に脱出すると想像する。 . . . 本文を読む
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南北連絡鉄道vs大運河:韓国の再ランドパワー化を拒否する象徴的事業としての韓半島大運河計画

2007年12月23日 | 韓国・北朝鮮
日本でかつて田中角栄首相によって提唱された列島改造論では新幹線と高速道路の建設が中心であったことからもわかるように、経済的合理性を考えるならば韓国での大規模公共事業としては道路建設や鉄道整備が最も適している。運河建設はどう考えても合理的でない。 ここで注意すべきなのは、盧武鉉大統領が推進してきた南北間の鉄道連絡である。鉄道という長距離貨物輸送に適した交通機関のレールが韓国から北朝鮮を介して中国やロシア、更には遠く欧州や中東まで結ばれることは、伝統的にランドパワーであった韓国を再びランドパワーとして発展させる事に繋がる。李明博新大統領は盧武鉉大統領のランドパワー的政策を中止して、韓国を海運・水運を通じて日本や米国と結びつけるシーパワー的政策に転換することを狙っていると思われる。結果的に李明博新大統領は南北朝鮮の統一には否定的であり、軍事境界線を維持していきたいと考えていることだろう。 この政策の背景には、韓国の発展は軍事境界線によって大陸と切り離され事実上島国となったことが起爆剤であったというハンナラ党及び韓国保守層の認識(それは真実であると思われる)が存在すると思われる。彼らにとっては南北統一や南北の鉄道連結は悪夢以外の何者でもなかったのだろう。李明博新大統領は今後、南北朝鮮の鉄道連絡を衰退させると想像される。彼らにとって大運河とは、韓国の再ランドパワー化を拒否するための象徴的事業なのではないかと想像する。 運河建設は明らかに南北連絡鉄道に対する対案として準備されている。ソウルから北へ向かう鉄道と南へ向かう運河、ランドパワー的交通機関の鉄道とシーパワー的交通機関の運河は全く対照的である。大統合民主新党とハンナラ党はランドパワー指向とシーパワー指向という全く異なる性格を持つ政党であり、それが韓国政治の世界で激突し続けているのだ。 . . . 本文を読む
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とうとうトルコ陸軍が国境を越えてイラク領内に侵攻:ルビコン川を渡ったトルコ

2007年12月20日 | トルコ系民族地域及びモンゴル
トルコ陸軍がとうとう国境を越えてイラク領内に侵攻し始めた。以前から空爆は継続されており、国境を越えた陸軍の行動も未確認ではあったが報道されていた。しかし、今回はイラク領内への陸軍の侵攻が公式に認められた。更にクルド自治政府系テレビの報道によると、トルコ軍はイラク側の村幾つかを基地にしているとのことで、それが真実であるとすればトルコ軍がイラク領土内に駐留する体制、即ち占領体制が開始されたと想像される。人数・作戦行動範囲ともに小規模ではあるが、トルコ軍はとうとうルビコン川を渡って後戻りのできないイラク北部占領作戦に突入した様に思われる。このトルコ軍の作戦を米国が容認していることも注目される。米国がイラク占領でわざと負けようとしているのと同様に、トルコもまたクルド人及びクルド人居住地域という不良資産を一挙に切り捨てるために泥沼のイラク北部占領作戦を実行して敗北しようとしているのではないかというのが私の想像である。現在のトルコの行動は第二次大戦での日本の作戦にも似通っていると思われる。第二次大戦で日本は米国・英蘭連合・中国の三カ国を敵に回したが、現在のトルコはイラク・北キプロスの二正面作戦であり、近未来にはコソボを巡ってセルビア・ロシア連合をも敵に回す可能性がある。また、日中戦争が宣戦布告なしに拡大し泥沼化したのと同様に、トルコの対イラク軍事活動は宣戦布告なしに空爆→陸軍の侵入・占領と拡大しつつある。日中戦争で重慶の蒋介石政府が停戦交渉対象から外されて停戦できなくなったのと同様に、トルコ政府はバグダッド政府のみを交渉相手としてクルド自治政府をPKK関連交渉の相手として認めておらず、停戦交渉の相手がいなくなっている。私の想像が正しいならば、トルコ軍は今後イラク北部での占領地域を徐々に拡大し、クルド自治政府を「PKKを支援している」との理由で激しく非難して軍事攻撃して泥沼のゲリラ戦に突入することだろう。そして、北キプロスやコソボの紛争にも介入して二正面・三正面作戦に突入し、敗北して国土を切り刻まれることだろう。トルコ政府はその敗北によって不良資産を切り捨てる事に成功し、第二次大戦後の日本のように急速に先進国化することを狙っているのではないだろうか。JJ予知夢のいう「2035年のトルコ大国化」はその様なシナリオが国際社会で既に合意されていることを示している様に思われる。 . . . 本文を読む
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名誉殺人、強姦被害者に鞭打刑・死刑、改宗=死刑、異教徒男性との結婚禁止:中近東イスラム社会の前近代性

2007年12月17日 | 中近東地域
名誉殺人に代表されるように、中近東イスラム圏では女性の人権が著しく侵害されている。名誉殺人はイスラムに由来するものではなくイスラム以前の地域風習の影響という説もある。東南アジアイスラム圏で名誉殺人が存在しないのはそのせいかもしれない。日本でこの「名誉殺人」が問題となることはないかもしれないが、欧州ではイスラム移民の中で実際に名誉殺人が起きている。これこそ、欧州文明と中近東イスラム文明の衝突に他ならない。イスラム文化を持った中東移民の流入を押しとどめない限り、欧州文明は将来滅亡しかねない危険があるだろう。 日本は石油の安定輸入の観点から中近東イスラム圏との友好関係を必要としている。しかし、その裏にはこの「名誉殺人」に代表される深刻な女性の人権侵害が存在することを念頭に置かねばならないだろう。 . . . 本文を読む
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コソボ問題の謎:セルビア民族主義という毒をもって、バルカン半島のイスラム教徒という毒を制する戦略?

2007年12月15日 | 欧州
私が不思議に思うのは、ロシアと良好な関係にあると想像される独仏両国(特に仏)がコソボ問題ではロシアと対立しており結果的に緊張を激化させていることである。また、セルビアの大統領選挙という重要な時期に敢えてコソボ独立問題をぶつけて選挙の争点にしてしまっていることも謎である。もし本当にコソボ問題を平和的に解決したいならば、独仏連合はコソボ独立を先延ばしにすると共に、セルビア側が妥協できるような大きな譲歩(例えばコソボ共和国の領土縮小など)をコソボ側に飲ませるべきだろう。それをせずに一方的にコソボ側の独立の意向を丸飲みしてセルビアに無理強いするのは、故意に対立を激化させているようにしか感じられないのだ。では、その裏に存在する独仏連合+ロシアの真意は何だろうか? コソボに住むアルバニア系住民はアルバニア人、ボスニア・ヘルツェゴビナのボスニア人と同様に欧州内のイスラム教徒として異端者的存在である。その裏には、彼らをイスラム化させたトルコの強い影響力が存在すると想像される。独仏連合としては、コソボやアルバニア、ボスニアをEUに統合する際に可能な限りトルコやイスラムの影響力を排除していきたいと考えている筈だ。その為に、彼らはセルビア民族主義という毒を用いてバルカン半島のイスラム勢力というもう一つの毒を制することを目指しているのではないかと私は想像する。 この私の想像が正しいならば、1月20日のセルビア大統領選直後からコソボで軍事衝突が開始され、ロシアがセルビア側を支援して紛争は一気に国際問題化するだろう。そして、1990年代にはコソボ独立を支持してセルビアを空爆した欧米諸国は一転して傍観姿勢に廻り、苦境に陥ったコソボはトルコに支援を求めて露土戦争が再現されることになると想像する。事態は東方正教会とトルコの間の宗教戦争に突入し、ボスニアやアルバニア、キプロス、トルコ本土などにも戦火が及ぶことだろう。その戦争はトルコの敗北・ロシア側の勝利に終わり、バルカン半島のイスラム勢力はトルコとの絆を失って欧州キリスト教文明の中で細々と生き長らえることになると想像する。松藤民輔氏は来年は株安・金高・ドル高になる、戦争か革命が起きると主張している。マーク・ファーバー氏も来年はユーロ・ポンド売りを推奨している。その理由が、来るべきバルカン半島での大戦争によるユーロの下落なのかもしれない。 . . . 本文を読む
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ホロコーストの韓国版としての従軍慰安婦問題

2007年12月11日 | イスラエルと韓国の類似性
従軍慰安婦強制連行問題は韓国国民にとって「歴史上例を見ない残虐な日本の植民地支配」の確たる証拠である。それが米国・欧州などで次々に非難されていることは韓国人に「日帝支配の残虐さ」の被害者であることを深く認識させることに繋がるだろう。ホロコースト問題がイスラエルのユダヤ人にとって「歴史上例を見ない残虐なナチスドイツのユダヤ人政策」の確たる証拠であり、それが全世界で激しく批判されていることでイスラエル人に「ナチスドイツの残虐さ」の被害者であることを深く認識させているのと似た状態になっているのである。被害者であること、手酷い攻撃を受けたことに執着する国民は自らを客観視できず、あらゆる批判に耳を貸さずに攻撃的となる。イスラエルのユダヤ人がパレスチナ人迫害に対する全世界からの批判に耳を貸さずに自らの正義を主張し続けるのは「ホロコーストの被害者」という洗脳が国民全体に行き渡っているからであろう。韓国人もまた同様に、第二次大戦中やベトナム戦争中の残虐行為、あるいはワールドカップサッカーで露呈した国民性の低劣さなどへの反省を行わずに自らの正義を主張し続けている。その裏には「日帝支配の被害者」という洗脳が国民全体に広まっている事実があるのではないかと私は想像する。イスラエルと韓国は建国の事情から日独両国との関係、現在の国民性に至るまで類似点が非常に多い。日韓の間の領土問題となっている竹島問題も韓国国民を激怒させる敏感な問題であるが、イスラエルもヨルダン川西岸地区やガザ地区のユダヤ人入植者問題という敏感な領土問題を抱えている点でよく似ている。 イスラエルは米国の「イスラエルロビー批判」の高まりによって追いつめられており、田中宇氏や江田島孔明氏はイスラエルの滅亡を予想している。韓国もまた勝ち目のない竹島問題や近未来の米軍撤退によって追いつめられている点で類似している。ただ、韓国はイスラエルと異なって侵略者ではないし、イスラエルが周辺国と軍事的に激しく対立しているのとは対照的に、韓国の現政権は軍事的に対立している北朝鮮政府との融和姿勢を鮮明にしている。近未来の韓国はイスラエルのような滅亡を経験することはないだろう。しかし、韓国とイスラエルの余りの類似性を考えるならば、韓国は近未来に何らかの破滅を経験するのではないかと私は想像している。 . . . 本文を読む
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JJ予知夢の「華南共和国」と、中国分裂を巡る日本の対中大戦略:日本は中国をどの様に分裂させるか?

2007年12月09日 | JJ予知夢
日本政府は恐らく、首都北京以外の大都市への日本企業進出を促すことでそれらの都市を発展させ、北京に対してそれらの都市が独立を目指すことで中国分裂の核となることを目指して対中大戦略を実行してきたのだと想像する。この私の想像を前提にすると、中国は大連を核とする東北三省、北京を核とする河北省、青島を核とする山東省、上海を核とする 江蘇省・浙江省、台湾の強い影響を受け廈門を中心とする福建省、香港を核とする広東省・広西壮族自治区・海南省の六つの先進地域が分離独立し、内陸部の貧困地域と対立する状況が想像される。これはブログ『依存症の独り言』の2005年8月26日付けの記事『中国は崩壊後どうなる?』で示された先進四地域+四川省の五分裂と比較的類似したシナリオである。 一方、JJ予知夢によると広東省の国=華南共和国は福建省から上海までを領土に含んでいる。つまり、華南共和国は香港・上海の二大都市が連合して首都北京から独立するものであると考えられる。また、JJ予知夢では「西に大きく分かれている」と中国内陸部が別の国になっていることを示唆している。この場合、北京政府は渤海を取り巻く河北省・北京・天津+山東省+東北三省だけを支配していることになるだろう。 ただ、非北京語圏同盟としての上海・香港連合は上海語と広東語の相違により分解する運命にあると思われる。また、北京政府には大連や青島を支配し続ける政治的資源はなく、両地域の独立を阻止することはできないだろう。JJ予知夢の描く華南共和国や北京中心の中共は中国分裂の過渡的体制に過ぎず、将来的には大連・北京・青島・上海・廈門・香港の六大都市を首都とする先進六カ国+複数の内陸国家に分裂していくシナリオを日本政府は描いているのではないかと私は想像する。 . . . 本文を読む
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