満州族は漢族と比較して大学レベルの文化水準を持つものが十倍以上と異常に多く、文盲・半文盲者の比率は十分の一以下と異常に少ない。現在と違って大学が非常に狭き門であった1990年以前の大学卒業者というのは中国では非常なエリート階層であると考えられる。中国の総人口の1%に満たない少数派である満州族であるが、恐らく中国の大卒者の中では10%程度という圧倒的勢力を有していると思われ、
満州族が多数居住する遼寧、吉林、黒龍江・河北の4省ではその比率は更に高いと予想される。
もう一つの興味深い情報だが、中国の少数民族の自治区・自治県の成立時期を見ると、他の民族自治区域が建国間もない時期に続々と設置されているのとは対照的に、満州族の自治県は1985年6月から1990年6月までの短い期間に設置が集中している。 やはり、中華人民共和国時代でも漢民族優位主義の中で満州族への差別や迫害が存在したか、あるいは中華民国時代の迫害の記憶故に満州族がその出自を隠さざるを得なかったのだろう。そして、1980年代はその迫害が終焉して、自らの出自を隠していた人々が一斉にカミングアウトし始めた時期なのだろう。満州族自治県初設置の三ヶ月前の1985年3月にゴルバチョフがソ連書記長に就任したことが関係しているのかもしれない。 もし満州民族が中心となって満州国を再建した場合、それは日本にとっては基本的には好都合である。大陸全体が単一のランドパワーに占拠される体制ではなく、ロシア・満州・中国の三大国が並立する形態になるからだ。四世紀前と同様に満州国が統一朝鮮国家を軍事的に支配下に置き平和をもたらす可能性も期待でき、日本と中国を悩ましてきた朝鮮半島問題を一挙に解決するものである。 ただ、日本にとって憂慮されるのは、19世紀半ばに清からロシアに割譲されたアムール川以北と沿海州の領土返還要求が出る場合である。人口の9割が漢民族の新満州国が沿海州を領有すると、日本は西だけでなく北からも中国人の圧力を受けることになるからだ。日本政府・ロシア政府はこの問題を把握しているだろう。場合によっては、満州族中枢階層との間で既に何らかの秘密合意が出来上がっているか、あるいは合意形成中かもしれない。
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スタベノウ米上院議員は主に中国を対象とし、為替操作国からの輸入品に相殺関税を課す「2007年公正為替法案」の共同提出に引き続き、日本の外貨準備取り崩しで円相場を是正することを目指した「対日為替操作是正法案」を3月28日に提出した。米国の膨大な経常赤字が日本・中国などの東アジア工業国と中近東の産油国の買い支えによってこれまで維持されてきたことを考えると、両法案はドル暴落と米国の金利急騰+米国株暴落の引き金になる可能性があるだろう。米自動車メーカーの本拠地ミシガン州選出で労働組合を支持母体とするスタベノウ上院議員がこれらの法案を提出するのは一般の米国人には当然のことと受け止められるかもしれない。そして、米自動車メーカーには円安ドル高への批判が強いこと、民主党が現在米国の上下両院を支配していることを考えると、これらの法案が成立することはあり得るかもしれない。実際に法案が成立して実施されなくとも、成立の可能性が現実のものになるだけで世界の金融市場には激震が走りかねない。
私は、これらの法案は米国を真に支配する人々が米国を一度経済的に破綻させるためにわざと民主党議員に提出させているのではないかと思う。日本が朝鮮半島や満州などの不良資産を切り捨てて戦争の出来ない親米国家になるためにわざと第二次大戦で負けた様に、あるいはソ連が東欧や中央アジアなどの不良資産を切り捨てるためにわざと共産圏を崩壊させたように、米国は不良資産を切り捨てるためにわざと自滅路線を取っているのだろう。自滅作戦を成功させるには、自滅シナリオの主導権を握り、最も適切なタイミングで引き金を引く必要がある。他人任せにすると、自滅作戦が失敗しそうになった場合に挽回するのが困難になると思われるからだ。米国の国会議員が米国議会で引き金を引くというシナリオは、自滅作戦を完全に米国政府が制御し管理するために最適なものだろう。現在、米国によるイラン攻撃が迫っているとの報道が流れている。沖縄の米軍基地を含め極東にも米軍が展開中である。これらの米軍の活動は、米国政府が自滅作戦の引き金を引く直前にイスラエル・韓国(場合によってはトルコも?)等の国際金融資本系国家が何らかの不測の事態を発生させることで自滅作戦が失敗するか、あるいは不十分な威力に終わることを防ぐ事が目的ではないかと想像する。 . . . 本文を読む
ラトビアがロシアとの激しい対立の原因となってきた領土要求を遂に取り下げ、ロシアとの国境線確定で合意した。エストニアもロシア国境は未確定だが両国政府は現状の境界線を国境とすることに基本的に合意しており、それに異議を唱えているのは境界線の両側に分断されて居住する少数民族だけである。これで、ロシアに対して領土の返還を公式に要求する国は世界で唯一日本だけとなってしまった。孤立した日本はロシアの圧力に屈するしかないのだろうか?私はそうは考えない。ラトビアの対露領土返還要求撤回は欧州諸国の意見を反映したものである。ところが、2005年7月7日に欧州議会は北方四島を日本に返還すべきであるとの決議を行っているのだ。
2005/9/30のプラウダロシア語版に「ロシアは北方領土を返還するように忠告されている」と題する記事がある。ロシア人に領土返還を忠告しているのはEUと米国である。英語版では「プーチンは断固としてロシアの千島への主権を擁護し、日本はその返還を主張し続ける」という異なる題名になっているが、記事の内容は英語・ロシア語とも一部を除きほぼ同一で、従来のロシアの返還反対論とは異なり、日露両国の主張を公平に載せており、日本が放棄した「千島」の範囲の認識が両国間で異なる点に触れている。 日本が北方領土問題で妥協しそうにないこと、EUや米国も日本を支持していること、北方領土やロシア極東のロシア人が日本との交流で良い暮らしをしていることなどを列挙し、日本とロシアの領土問題での要求を公平に紙面に載せることで、ロシア極東以外の日本と縁の薄いロシア人に領土問題での対日譲歩の利益を説得する意図の記事であると思われる。この記事で興味深いのは、北方領土問題だけでなく現在の日本に関する記述が多く、日本に対する賞賛に満ちあふれていることだ。日本の金保有が世界最大など信じがたい情報も含まれている。日本の報道ではロシア側が強硬姿勢とするものが多いが、「微妙な問題だが、善意を持てば、(両国にとって、また、住民にとって適切な解決策を見つけることができると確信する」とプーチンが述べている点から見て、日露両国は既に領土返還で基本的に合意済みであり、何らかの交換条件と引き換えに日本に四島の主権の全て又は一部を引き渡すというような落とし所が既に準備されていると予測する。 . . . 本文を読む
樺太を鉄道で本土と一体化することで、中国軍が中露国境を越えて侵入してきた際の極東地区の住民の避難先として確保する。樺太南部のユジノサハリンスクをロシア東部地域の首都、あるいは臨時首都候補として整備する。最悪の場合は極東のロシア人は樺太の橋頭堡に脱出して日本の支援の元に本土奪還の機会を待つこともできる。ナポレオン戦争や第二次世界大戦で、ロシア軍は西方からの敵の侵入に対してどんどん東へ撤退する戦術を採った。日中戦争でも中国国民党政府は南京から奥地の重慶へと撤退した。しかし、現在のロシア極東は中露国境沿いに人口も交通網も集中しており、奥地へ撤退するための交通機関も、奥地の拠点もない。中国の脅威を考慮して、国境から離れた地域に拠点を置き本土と鉄道で直結するのは合理的である。核ミサイル時代に通常兵器のみの使用を前提とした戦術が果たしてどこまで有効なのかは分からない。ただ、現在のロシア極東は通常兵器レベルでも中国軍の脅威に対して脆弱であると言える。そして、現状では中露関係は比較的良好だが、将来ダマンスキー島事件の様な軍事対立が起きないという保証は何もない。それに対しては、ハバロフスク・ウラジオストク・ブラゴベシシェンスクの三都市は最前線の軍事要塞的地域とし、現在のウラジオストクの都市機能をナホトカと樺太南部に、ハバロフスクやブラゴベチェンスクの都市機能をコムソモリスク・ナ・アムーレに移すような政策が考えられる。そして、バム鉄道が複線電化されてシベリア鉄道のメインルートとなり、現在のシベリア鉄道は北朝鮮への鉄道輸送を行うローカル線に転落することになる。ハバロフスク・ウラジオストク・ブラゴベシシェンスクの三都市は中国が全く脅威でなかった時代に国境沿いに建設された。国境沿いの方が、満州を植民地支配するのに好都合でもあったのだろう。しかしながら、中国の経済的躍進、あるいは人口の激増は今やロシア極東に対する大きな脅威となっている。この現状で、ハバロフスクやウラジオストクに更に中枢機能を集中させるのか、それとも国境から遠いコムソモリスク・ナ・アムーレ、ナホトカ、樺太南部などに中枢機能を移すのか?その答えは恐らく数年以内に分かるはずである。 . . . 本文を読む
アムール=ヤクーツク鉄道の未開通区間であったネリュングリ炭田地区~サハ共和国の首都ヤクーツク間のうち、ネリュングリ炭田地区~トモット駅間の360kmは1985年に工事が開始され、1997年に完成、2004年には旅客輸送も開始されている。残るトモット-ヤクーツク間の建設も2010年を目処に進められているという。
人口二十万人余りのヤクーツクはサハ共和国の中枢であるが、外部との交通網は従来は道路と河川交通と航空輸送だけであった。アムール=ヤクーツク鉄道のルートに並行する基幹道路である連邦道M 56(レナ・ハイウェイ)の写真を見るとぬかるみの悪路だが、永久凍土地帯では降った雨が凍土に遮られて地下にしみ込みにくいこともあるのだろう。トラック輸送に向かない荷物は、短い夏の期間を利用して上流の鉄道駅からレナ川の貨物船に荷物を積み替えてヤクーツクを含む地域全体に運ばれているという。一年分の貨物を夏の間にまとめて輸送して備蓄しておくのである。そのコストの高さは言うまでもない。
アムール=ヤクーツク鉄道が完成すれば、ヤクーツクまでの貨物輸送は従来のトラック+河川交通から鉄道輸送に切り替わることになる。それはヤクーツクへの輸送コストの引き下げと四季を通じた安定した輸送の実現によって、サハ共和国の生活コストを大きく引き下げることになる。サハ共和国の資源の開発コストも引き下げられ、より開発が進むことが期待される。
サハ共和国はロシアの領土の六分の一を占める巨大な国家であり、その住民の過半数はトルコ系とされるヤクート人などのアジア系民族である。天然資源不足と人口過剰に悩む中国は隙あらばこの地域を占領し自国に編入することを狙っていると想像され、ロシアもそれを恐れている。日本はこの地域をオーストラリアと並ぶ安定した資源供給源として確保し中国に侵略されることを防ぐために、ロシア政府、サハ共和国政府と交流を深めていく必要がある。 . . . 本文を読む
インドネシアはオーストラリアのすぐ北隣に存在し十倍の人口を有し、今後経済成長が予想される。日本が中国に感じているのと同様の脅威をオーストラリアは感じている筈だ。日本の経済的影響力を生かして自国をインドネシアから防衛したいのだろう。オーストラリア側から「自国の広い土地を利用して自衛隊との共同軍事訓練を」との声があるのも、自衛隊が滞在することでインドネシアの脅威に対抗したいのだと思われる。インドネシアは人口の大部分がイスラム教徒だが、オーストラリアに近いニューギニア島西部や小スンダ列島東部ではキリスト教徒が優勢である。分離独立運動も存在し、オーストラリアがそれを支援してきた可能性は高い。2002年に独立した東チモールにオーストラリアは平和維持部隊を展開しているが、これは自国をインドネシアから防衛するための最後の砦への形を変えた占領である。そもそも、東チモールの独立を決定した1999年の住民投票は1997年のアジア金融危機での経済破綻に続いて1998年に起きた民主化運動でスハルト政権が倒されたことがきっかけである。アジア金融危機は東チモールなどのキリスト教徒優位地区を分離独立させる目的でオーストラリアが国際金融資本に依頼して実行したのではないか。日豪両国は安保共同宣言に際してこれらの地域の将来について突っ込んだ秘密合意を行っていると想像する。オーストラリア側としては、東チモールの独立とキリスト教優位状態の維持が最低ラインであり、出来ればイリアンジャヤ、小スンダ列島東部でのキリスト教優位状態を維持したいだろう。しかし、戦国時代末期に侵略を目的とした西九州でのキリスト教布教を経験しその根絶に大きな被害を出した日本にとっては、キリスト教化された地域をイスラムに戻したいというインドネシアの希望はよく分かる。具体的決定については想像するしかないが、日本の軍事力のプレゼンスを望んでいると思われる事から考えて、インドネシア側にやや有利、オーストラリア側にやや不利な内容だったのではないか。将来日本が改憲した後は、在日米軍基地と同様の自衛隊基地がインド洋のシーレーン防衛の明目で設置されるかもしれない。また、ハワード首相の来日直前に米国の最高実力者の一人であるチェイニー副大統領が「イラク派兵への感謝が目的」という明目で日豪両国を訪問したのは共同宣言の根回しが目的だったのだと思う。 . . . 本文を読む
表向きは米国とイランは核問題で激しく対立し、開戦直前の状況にあるとされる。しかしながら、イラク情勢を巡って米国とイランは交渉を持っており、米国の戦争はどう考えてもイランの国益に貢献している。このことから考えられるのは、米国とイランの核開発問題を巡る対立は単なる茶番であり、実は米国とイランは親密な関係にあるのではないかということだ。では、「米国のアフガニスタン・イラク攻撃は友好国イランへの貢献」という仮説について考えてみよう。米国とイランの対立があまりに真に迫っているために覆い隠されている米国とイランの友好関係は、クルド人国家・パシュトン人国家・バルチスタン人国家というペルシャ系民族の国家やイラク南部のシーア派アラブ人国家を生み出す点でイランにとって大きな利益である。米国は犯罪国家の汚名を着て戦争を実行するという大きな損失があるが、それを上回る利益があるだろうか?私が考えつくのは、中東の国境線が民族や宗教の境界線に合致することで平和がもたらされ西アジアからの米軍の撤退が可能になる利益と、米国の経済的崩壊時にイランが米国に支援を行うことで恐慌の混乱を回避する利益ではないかと想像する。同様に、イスラエルを何らかの形で滅亡させることでパレスチナ問題を解決する利益、スンニ派イラク人居住地域を併合する利益と引き替えに、サウジやシリアなどのアラブ諸国は米国の経済崩壊時に経済支援を行う予定なのかもしれない。別の仮説としては、米国は多民族国家であるイランを攻撃して、ペルシャ系だがスンニ派の多い西部のクルド人地域や、シーア派だがトルコ系でアゼルバイジャン共和国という国民国家を持つ北西部のアゼリー人地域、イラク南部と同様シーア派だがアラブ系住民の住む南西部地域、パキスタンのバルチスタン州と同じバルチスタン人の住む地域などを占領し切り離してそれぞれ別の国にするというより壮大な国境線引き直しも考えられる。アラブ人地域のフゼスタン州は大油田地域なので、ここを失うとイランは一挙に貧乏国に転落してしまうだろう。アメリカ軍部が発表した新中東地図はまさにこのシナリオである。以上、米国がイランを攻撃しない説とする説について考察してみた。正解は近日中に明らかになることであろう。 . . . 本文を読む
全世界の東方正教会信者の精神的指導者であるコンスタンティノポリス総主教庁のバルトロメオス1世総主教がウィーンでトルコ政府による迫害を非難している。ハルキ神学校の再開問題を含め、東方教会とトルコ政府の間の対立は余りに根深い。コンスタンチノープル総主教庁はローマ法王庁と同格の教会とも考えられ、その指導者がトルコ政府を公式に批判したというのは余りに重大なニュースである。2002年の欧州閣僚理事会全体会議による『ハギア・ソフィア(トルコ語ではアヤ・ソフィア)を教会に戻すように、イスタンブルをキリスト教の都市にするように』と言う内容の決議、2006年10月末のローマ法皇のコンスタンチノープル総主教庁訪問、3月13日のプーチン大統領のバチカン訪問もこれと関連している可能性があるだろう。
欧州で「欧州文化に同化しないイスラム教徒」への反感が高まっていること、程度の差はあれ欧州でイスラム教徒が二流市民扱いされていることを考えると、トルコでキリスト教徒が二流市民として迫害されるのは相互主義の点からは当たり前という見方もできる。しかしながら、東方教会のみならずカトリックやプロテスタントの信者も含めて欧州人はイスタンブールを欧州の都市であると考えている。歴史的に見てもコンスタンチノープルは欧州文化の中心の一つであったし、オスマントルコも多民族国家としてイスラム教徒とキリスト教徒の共存を認めていた。オスマントルコ滅亡後のトルコ共和国がトルコ民族の国民国家を目指したこと、トルコ共和国が欧州キリスト教文明の中心の一つであるコンスタンチノープルを領土に含めたことがこのキリスト教弾圧の原因の全てであり、その解決は容易ではない様に思われる。今年5月に予定されている国会議員の投票による大統領選挙、11月4日に予定されている総選挙を控え、トルコ国内の世論の動向だけでなく、イスラム主義の与党と世俗主義の軍の力関係にも注意が必要だろう。 . . . 本文を読む
トルコが周辺国との戦争に敗北した後、コンスタンチノープルを欧州側に割譲させる大義名分が必要である。クルド人迫害、アルメニア人虐殺は根拠にはならない。そこで、「かつての東ローマ帝国の支配民族であり、オスマントルコ時代もこの地域に多数居住していたギリシャ人・アルメニア商人達に領土を返還せよ」という主張を出すしかないだろう。しかし、五世紀以上前に滅亡した東ローマ帝国を引き合いに出すには、前例が必要である。そこで考えられるのが、現在ロシアやポーランドが支配している旧プロイセン地域とパレスチナ問題である。 旧東独からプロイセン、バルト三国地域へのドイツ人入植は「東方への衝動」とも呼ばれる中世以後の移民によるものであり、第二次大戦後のドイツ東方国境の移動はポーランドの領土奪還的な意味合いもある。もしドイツが「シレジアや西プロイセンは数百年前にはポーランドの領土であった地域であり、近世のドイツ領土化は侵略的側面があったことは否定できないのでこれを放棄する」と宣言し、ロシアも「東プロイセンはかつて一度もロシア人が居住したことのない地域であり、ロシアに領有の正当性はないのでドイツ(あるいは欧州)に返還し、ロシア人住民は全員本土に引き取る」と宣言するならば、モンゴル高原を故郷としておりコンスタンチノープルを領有する歴史的正当性を持たないトルコは窮地に追いやられるだろう。ロシアとドイツは国際平和のために自国の領土の一部を放棄した名誉ある国家として、新たな世界秩序の中で中核的地位を占めることになる。また、イスラエルを建国したアシュケナジーも東欧地域出身であることを告白し、イスラエルを去る(行き先はロシアからドイツに返還される東プロイセンなどが考えやすい)ことも考えられる。後に残されるスファラディはパレスチナを故郷としアラブ系の生活風習を持つ民族であり、帰還したパレスチナ人と共にイスラエルに住むことの正当性はある。 ただし、欧州はトルコの完全な滅亡は望んでいないだろう。むしろ、トルコがサウジ・シリアなどのアラブ国家やイランなどとの間の緩衝国家として機能することは欧州にとっても、アラブ国家やイランにとっても好ましいのだ。トルコを共通の敵とすることで欧州はイラン・アラブ国家と友好関係を持つ事ができる。 . . . 本文を読む
かつての東ローマ帝国でアルメニア人はギリシャ人に次ぐ支配的地位にあり、オスマントルコ帝国でもコンスタンチノープルを中心とする都市部に多数のアルメニア商人が居住していたことが注目される。この都市部アルメニア人の迫害と海外移住は今回問題になっている20世紀はじめの二回目の迫害ではなく19世紀末の第一回の迫害がきっかけであると思われるが、都市部アルメニア人の故郷への帰還がもし認められるならば、それはかつてオスマントルコによって滅ぼされた東ローマ帝国の復活を意味するとも考えられる。欧米に居住するアルメニア人の多くはコンスタンチノープルなどの都市部出身であるとも考えられ、彼らがボスポラス海峡という地政学的要地をイスラム教徒から奪還するための新たなシオニズム的運動の推進者になるのかもしれない。それは忌まわしい侵略者であるトルコ人の追放として、ほぼ全ての欧州民族に強く支持されることだろう。1960年代にドイツがトルコから大量の外国人労働者(その1/3がクルド人)を受け入れたことも、日本が従軍慰安婦の強制連行を捏造して謝罪し続けたことも、欧州によるトルコ弱体化作戦の一環だったのかもしれない。アジア大陸の東端と西端に位置する半島に居住する人口七千万人の周辺から孤立した民族という点で、トルコと南北朝鮮は非常に似通っている。
ブッシュ政権による北朝鮮・イラク・イラン三カ国の「悪の枢軸」との認定は北朝鮮とイランに関する限りは冷戦と同様の茶番劇であり、実際には友好関係にあると想像される。そして、この「悪の枢軸」認定は、国際金融資本の世界支配後の多極化世界で極となる日本・中国・ロシア・欧州・イラン・アラブなどの利益のために米国が悪役を厭わず戦争を起こすことが目的であると思われる。冷戦の真の目的が日独両国の封じ込めであったのと同様、米国の「テロ戦争」の真の標的は韓国・イスラエル・トルコだろう。この三カ国が弱体化すること、あるいは滅亡することは全ての周辺国が望んでいることである。その望みを米国が軍事力を用いて実現することの引き替えに、日本・中国・ロシア・EU・アラブ産油国・イランなどが米国の経済的苦境を助ける(具体的には、ドル暴落時の金融支援)という密約が存在するのではないかと想像する。 . . . 本文を読む
トルコはEUへの加盟を強く望んでいる。EU側は建前ではトルコの加盟を歓迎し検討しているが、本音では加盟を望んでいないと思われる。現在でも英仏伊を上回る人口を有し、近い将来にはドイツをも上回るEU最大の国家(ロシアが加盟しない場合だが)がEUに加盟することは、余りに巨大な発言力を与えることになるからだ。トルコの貧しさ、トルコから欧州への移住者が欧州に溶け込まないことも問題だ。更に、オーストリアはかつてのオスマントルコにウィーンを包囲された記憶も残っているだろう。
キプロス問題、アルメニア人虐殺問題、クルド人問題などの問題点はトルコのEU加盟を阻止する目的で取り上げられているように思われる。ブッシュ親子による第一次湾岸戦争・第二次湾岸戦争はイラクのクルド人地域の自治を推進することに大きく貢献している。近い将来にイラクのシーア派地区はイランに、スンニ派アラブ地区はサウジやシリアに吸収統合され、クルド人地区は独立国家となってトルコ領のクルド地区を併合することになるのではないか?このシナリオではサウジ・イランが勝者となり、イラクは消滅する。トルコは領土・人口縮小で大きく弱体化する上、大都市に移住した多くのクルド人とトルコ人の間で内部対立が深刻化する可能性もある。第一次湾岸戦争・第二次湾岸戦争は実はクルド人国家建設によってトルコを弱体化させる目的でオーストリア・ドイツ等の欧州諸国が計画し、サウジやイランの協力の元に米軍が実行した戦争なのかもしれない。無論、米国にとっても石油ドル体制の延命という利益があったことも事実であるが、それは一時的なものに過ぎない。 . . . 本文を読む
国際金融資本の世界支配が揺らぐと共に、世界に残された分断国家の一つであるキプロスでも再統合の動きが出てきた。キプロスは緩衝地帯沿いと南部のギリシア系地域の二カ所に英国の軍事基地を有しており、そこは英国海外領土となっている。しかし、南北のキプロスが統合されることになれば、英国の軍事基地も撤収されて英国から領土がキプロスに返還される可能性が考えられる。キプロスの軍事基地は英国本土からジブラルタル・マルタ島を経てイスラエル・スエズ運河などに向かう海路の要衝であり、英国・イスラエル・国際金融資本連合の地中海の海上覇権(地中海帝国)には無くてはならないものであった。ジブラルタルとマドリッドの間の航空路線が2006年12月16日に開設されて分断が徐々に解消されつつあるのと同様の、地中海帝国解体の動きと考えて良いだろう。
冷戦時代に統合に向かった東西ドイツ、南北ベトナムも含め、第二次大戦後、あるいはそれ以前に生まれた多数の分断国家・分断地域はいずれも地政学的要衝にあり、分断状態による安全保障上の脅威のために国際金融資本系の軍事力の存在に依存してきた地域が多い(例外はパキスタン-インド)。イラク戦争の泥沼化とドルの国際基軸通貨としての地位低下に伴って、最近になって北アイルランド・ジブラルタル・キプロス・インド-パキスタン、南北朝鮮、台湾-中国で対立が緩和しつつあることは偶然ではないだろう。これらの対立は、分割統治という国際金融資本の得意技によって煽られ維持されてきたものだと考えられる。また、国際金融資本に大きく依存してきたイスラエルとシンガポールは周辺国の圧力を受けて現在急速に弱体化しつつある。スエズ地峡とマラッカ海峡という地政学的要所を支配するためにユダヤ人・華僑を送り込んで建国された両国は国際金融資本にとって最後の砦であり、それ故に攻防戦が激しいのだろう。盧武鉉大統領による南北朝鮮の統一推進路線についても、このような世界的な分断国家の解消推進の一環と見ることが出来る。EU結成による欧州統合も、大きな視点で見れば国際金融資本によって分裂・対立させられてきた欧州大陸国家の分断解消と言えるかもしれない。また、分断国家解消は単なる統一ではなく、民族や言語、文化、風俗、地理的境界による新たな分断を今後生み出す可能性もあることに注意が必要だろう。 . . . 本文を読む
ミッシュ氏は「ムーディーズは不思議の国の鏡の後から信用リスクを評価しているようだ。驚くべきねじ曲げられた論理によって、ムーディーズは信用リスクの上昇を祝福している。格付け引き上げによりこれらの大銀行の借り入れ費用は低下するが、その結果もし救済が必要になった場合の費用は増加するだろう。ムーディーズ社のゲーリー・バウアーはこれを「現実の反映」と主張するが、ジョナサン・ハッチャーは日本をモデルとして取り上げた上で、too big to fail(大きすぎて破綻させられない状態)なのだ、と言っている。」と皮肉っている。 ミッシュ氏とジョナサン・ハッチャー氏のコメントが全てを示している様に思われる。1990年代に日本の多くの金融機関や途上国の債務格付けを意図的に暴落させて金融危機を作りだしたムーディーズは、金融危機が自国に迫ると逆に格付けを引き上げ始めたのだ。国際金融資本のダブルスタンダードをこれほど明確に示すニュースはない。また、この格付け基準変更はFRBを含めた米国政府・国際金融資本の合意であるとも考えられる。格付け引き上げの対象にならなかったシティグループやウェルズファーゴが破綻の危機に直面した場合に支援しないことを意味している可能性もあるだろう。ジェフェリーズ社の件では、投資銀行の投資判断が如何に詐欺的かということもわかる。ブッシュ大統領の3月8日から14日までの中南米訪問の間は暴落阻止チームが踏ん張るとすれば、Robert Pretcherの「3月15日に気を付けろ!」という予想どおりに米国の金融市場の破綻が起きるかもしれない。 . . . 本文を読む
近い将来に在韓米軍は撤退して朝鮮半島は中国の影響力の大きな地域になる。釜山や木浦といった南東南岸の都市まで中国の軍隊が押し寄せる事態は想定しておく必要がある。その時、対馬海峡の制海権・制空権を維持するには、日本も「金門・馬祖」的な地域を支配下に置く必要が出てくる。九州=台湾、福建省=朝鮮半島南部と仮定すると、馬祖島=対馬、金門島=済州島に相当する。日本が中国大陸での橋頭堡として育成してきた上海の間の航路・航空路の安全を確保するためにも、済州島を支配することが絶対に必要だ。無論、直接支配は余りにコストが高く行うべきでない。日本が行うべきなのは、中国大陸に対する台湾的な小国としての済州島を支援し、間接支配下に置くことである。1948年4月3日の四・三蜂起とその後の闘争により済州島では当時の人口の3割近くが虐殺されたという説がある。また、日本には約10万人の済州島出身の在日韓国・朝鮮人が居住しており、親族に虐殺の被害者を持つもの、虐殺から逃れるため日本に密航した者も多いだろう。更に、韓国の支配階層の多くは外国渡航などを通じて自国の民度に絶望している者も多いだろう。日本は、済州島出身者を中心とする在日と韓国の支配階層の二つの集団を利用して、済州島に台湾的な小国を建国させてるのが望ましい。そして、難民処理を含め、日本と朝鮮半島の間の交渉の仲介役として、江戸時代の対馬藩的な機能を持たせるべきである。日韓両国も済州島の戦略的な重要性は理解していると想像する。日本政府は「日本軍による従軍慰安婦の強制連行が済州島で行われた」との日本人学者の主張に基づいてこれまで謝罪を行ってきた。多くの日本人学者が済州島を訪問し調査を行っていることだろう。済州島住民の家族構成や生死についての情報収集を通じて、人口の3割近くが虐殺されたとされる四・三事件についての情報も収集されているだろう。私は、河野洋平元官房長官の「慰安婦強制連行への謝罪」や、それに先立つ日本人学者の「済州島での慰安婦狩り」証言、更にそれを全世界に発信して広めた朝日新聞などの左翼マスコミの活動は、このような戦略に基づいた日本政府による陰謀ではないかと考えている。韓国政府が昨年7月に済州島を国際都市を目指す「特別自治道」に指定したことも、何か別の戦略的意図があると想像される。 . . . 本文を読む
記事「市場の潤滑化:暴落防止チームによる秘密の価格操縦」では、昨年3月に米国がマネーサプライ指標の一つであるM3の公表を中止した理由は、ニューヨーク連銀からの株価平均先物の買い支え資金貸し出しを隠すためではないかとの指摘がある。株価平均と比べてその先物を買い支えるのに必要な資金はずっと少ない筈だが、それですらマネーサプライ指標を大きく動かしてしまうほど莫大な資金が投入されているのかもしれない。
CALM BEFORE THE STORM(嵐の前の静けさ)と題されたグラフを見ると、ボラティリティ指数(株価の変動性)、途上国市場の金利のスプレッド(途上国の国家債務返済能力の低さに対応する金利上乗せ分)などのリスクプレミアムが昨年夏以降急激に縮小している。また、同時期から株価は一本調子に上昇し始めている。これは恐らく、「暴落防止チーム」による株価指数先物の買い支えの効果なのだろう。2月28日の不自然な反騰や3月5日の値下がり幅の不自然な小ささも恐らく「暴落防止チーム」の買い支えなのだろう。
しかしながら、この株価買い支えを永遠に継続するのは不可能だ。低所得層向け住宅ローンの焦げ付きが激増しており、米国の金融機関はリスク全般に対して敏感になっている。低所得者層向け住宅ローン以外の高リスクの貸し出しに対するリスクプレミアムも近い将来に急激に増大するのは避けられない。それは、負債返済能力の低下した多くの米国大企業の経営を直撃して破綻に追い込むことになる筈だ。近い将来の米国の恐慌突入はもはや避けられないだろう。
あとは、何が恐慌突入の引き金になるか、である。恐慌発生後の事態を自国に有利にするためにも、米国政府は主要国の政府や中央銀行と綿密に打ち合わせた上で恐慌突入のシナリオを準備している筈である。ケネディ暗殺や911自作自演テロが綿密な計画を立てた上で実行されたと想像されるのと同様のことである。その引き金は中東・東アジアなどでの軍事紛争、米国国内での暴動や大企業破綻なども考え得るが、2月27日の米国株価の急落がシステム障害によるものであるとの一部報道もあったことを考えると、米国国内のパソコンの夏時間未修整による金融市場の混乱(3月12日に起きることになるはず)が一番可能性が高いのではないかと想像する。 . . . 本文を読む