米国の世界覇権崩壊後の日本にとって最大の脅威は中国であることは自明だろう。その脅威に対抗して日本の独立と繁栄を維持するには、中国を分裂させることがほとんど唯一の方法ではないかと思われる。中国を分裂させる最大の原動力は、中国国内の巨大な貧富の格差である。貧困地域に金を奪われてきた富裕な沿海地域(広東省+香港、福建省、上海+江蘇省+ 浙江省)が北京政府から独立することになると想像する。また、中国西部では少数民族問題が分裂の引き金となるだろう。国家内部の貧富の格差が分裂を引き起こした先例としてはユーゴスラビアが挙げられる。ユーゴスラビアではセルビアが政治的主導権を握ったのに対して、富裕なスロベニアとクロアチアは多額の税金を徴収されそれが貧困な南部(特にマケドニアやコソボ)に振り向けられることに不満を高めていた。当時のスロベニアとマケドニアの所得格差は六倍であったという。一方の中国では、1人あたりGDPが最も多い上海市と最も少ない貴州省の差は12倍を超えていると言われ、旧ユーゴスラビアの二倍以上の国内格差が存在することになる。中国を旧ユーゴスラビアに喩えると、最先進地域であったスロベニアに相当するのが上海+香港であり、相対的先進地域であったクロアチアに相当するのが広東省・福建省・江蘇省・浙江省・北京市・天津市であろうか。そして、民族紛争を抱えるボスニア・ヘルツェゴビナとコソボに相当するのが新彊ウイグル自治区・チベット自治区・内モンゴル自治区であり、貧困地域であるマケドニアに相当するのが雲南省・貴州省などの南西部高原地域や河南省・山西省・陝西省・甘粛省などの黄河流域内陸部であろう。これらの地域では交通の不便さや工業用水の入手困難さのため工業化が困難であり、それ故に今後も貧困地域に留まると想像される。クロアチアは第二次大戦中に親ナチス政権が存在したが、中国でそれに相当するのは南京の汪兆銘政府であり、その支配域は上海+江蘇省+浙江省の華東沿海地域を含んでいる。この点でも旧ユーゴスラビアと中国は類似していると言えるだろう。私は、ユーゴスラビア紛争とはセルビア中心のユーゴスラビアが解体されて、オーストリアを中心とする秩序に再編成されていく過程であったと考えているが、来るべき中国分裂は北京政府中心の中国が解体されて日本を中心とする秩序に再編成される過程と言うことになるだろう。 . . . 本文を読む
来年11月には米国の大統領選挙が行われ、民主党政権が濃厚だ。ドル覇権崩壊が大統領選の後に起きるならば、ヒラリー新大統領が日中間で破滅的大戦争を発生させて日本文明を滅亡させるというシナリオが考えられる。米国に対する膨大な債権を有する日中両国が大戦争で破滅することは米国が対外債務を返済する必要が無くなる点で非常に有益であるし、日中の過剰な工業生産力が処理されることも世界的デフレ回避のために有益である。米国支配階層は常にこの「日中破滅シナリオ」を念頭に置いて行動していると考えるべきだろう。この恐怖のシナリオを回避するには、ドル覇権崩壊とその事後処理の大部分を米国大統領選挙までに完了させなければならない。事後処理にかかる時間を考えると、一刻も早くドル覇権を崩壊させることが日本にとって必要であると考えられる。
この観点から見ると、LEAP/E2020の予測する2008年2月までの米国大手金融機関破産というのは遅すぎるのではないかというのが私の懸念である。
ドル覇権崩壊後に日本が行うべき事は明らかである。日本と同様に米軍に安全保障を依存しているアラブ諸国と共同で米軍に運営資金を出すことが必要だろう。ドル覇権崩壊後の米軍は軍人の給与や燃料の手当すら困る資金欠乏状態になると想像されるからである。アラブ諸国と共同で米軍の一部を買い取ってしまうのも良いかもしれない。紙切れに過ぎない米国国債よりは米軍の設備を手に入れた方が得策である。米国にはもはや軍事力以外に大々的に輸出できる商品は存在しないのだ。
また、日本・中国・韓国に集中する工業製品の過剰生産力についても早期にこれを解消していく必要がある。日本が工業国として生き残るには韓国に身代わりになって貰う以外に解決策はない。韓国の製造業が消滅することは日本の製造業の生き残りにとって必要不可欠である。更に、中国についても対米輸出依存型経済から内需依存型経済への移行を早期に促していく必要があるだろう。世界一の人口を抱える中国は、米国の消費者ではなく自国の消費者のためにその工業力を使うべきなのである。この「中国の内需型経済への移行」に果たして何年の時間がかかるかは不透明である。その混乱期の中国が対日戦争に踏み切らないように、日本政府としては対中政策に細心の注意を払っていく必要があるのではないだろうか。 . . . 本文を読む
10月21日のポーランド総選挙は、ドイツとロシアを共に敵に回しEU内部で孤立することになった奇矯な民族主義政権が倒れて、親ドイツ、親EU政権が誕生することになった点で非常に意義深いと思われる。新政権はユーロの2012年導入を目指すなど欧州統合にも積極的であり、これでマドリッドからワルシャワまで、欧州大陸の5大国全てが欧州統合推進派に足並みを揃えたことになる。ロシアが親ドイツであることを考えると、欧州半島ほぼ全体が親ドイツに塗りつぶされたと考えても良いだろう。 英国・スウェーデン・デンマークなどの欧州拡大賛成派は、トルコをEUに加盟させないためにフランスのサルコジ大統領が提案している「賢人会議」に反対だという。これらの国々はトルコをEUに加盟させることでEUの統合を阻止したいと考えていると思われる。揃って通貨にユーロを採用していないことも、通貨主権の統合に反対であることの証拠である。この観点から見ると、欧州統合反対派はEU未加盟国を含めても英国・スウェーデン・デンマーク・ノルウェー・アイスランドの5カ国しか存在しないと想像される。ポーランドの前政権はユーロ導入に反対する点でこの英国・スカンジナビア連合の貴重な味方であったが、それが今回の総選挙で敗れたことは大きな痛手である。いずれにせよ統合反対派の劣勢は明らかであり、彼らは統合された欧州の中で孤立し、最終的には統合に飲み込まれていくことだろう。 ただ、欧州統合推進派の前途は決して安易なものではない。統合反対派の代表である英国の不動産バブルと同様にスペインやアイルランド、東欧諸国などの欧州辺境諸国を中心とする不動産バブルも崩壊しつつある。それは相対的に貧困なこれらの諸国の経済に大きな打撃を与えるだろう。ユーロ高の中でも輸出が堅調なドイツと異なりこれら諸国は膨大な経常赤字を出している。既にドイツ国債の利回りとフランス・スペインの国債の利回りの格差が拡大しているという情報もある。ユーロ加盟国の場合は国債価格の暴落、ユーロ未加盟国の場合は通貨の暴落という形式で統合推進派諸国は攻撃を受けることになるだろう。英国は自らの不動産バブルを崩壊させることでそれを欧州辺境諸国に波及させ、欧州統合を崩壊させるという一種の自爆テロ計画を準備している様にも思われる。欧州大陸諸国と英国の間のこの深刻な対立の行方から目が離せない。 . . . 本文を読む
ここ数日、急速な円高が進行中である。今月はじめには114円台だったのが今日は109円台に突入している。この動きを受けて12日のロイター通信は円キャリートレード解消の動きと分析し、105円付近まで円高が進むが100円を割るような大幅な円高は起きないだろうと予想している。しかし、100兆円規模とも言われる膨大な金額の円キャリートレードが巻き戻されれば、円高が105円で済むはずがない。前回円キャリートレードが巻き戻された1998年のLTCM破綻時では一日で10円、三ヶ月で30円も円高が進んでいる。今回はキャリートレードを手がける金融機関の数も増加していると想像され、更に大規模なドル暴落が起きることが想像される。かつてこのブログ記事で触れたとおり、1ドル50円~60円という一見突拍子もない水準に到達するまでは円高が止まらないのではないかと想像する。
テロ戦争突入以後、米国は膨大な経常赤字を記録している。この経常赤字は主に日本・中国・中東産油国の三つの地域からの対米投資によって埋め合わせされてきたと想像される。日本政府は2004年3月16日を最後に以後為替介入を行っておらず、最近の日本から米国への資金流入は実はこの「円キャリートレード」が主役になっていたのではないかと私は想像する。また、中国と中東産油国は通貨をドルに対して固定しており、広義のドル圏を形成することでドルの暴落を阻止してきた。しかし、今や両地域は資産をドル以外の通貨に振り向けようとしている。ロイター通信は13日に、ペルシャ湾岸産油国が通貨のドルペッグ制から離脱する可能性を報道している。仮に円キャリートレードが解消されてドルが円に対して暴落すれば、中国と中東産油国は米国の経常赤字埋め合わせの重荷を一手に引き受けさせられることになる。それは両地域内での激しいインフレを招くと想像され、それを回避するために中国と中東産油国は通貨のドルペッグを急遽廃止することだろう。そして、経常赤字の埋め合わせ先三つを全て失ったドルは暴落することになる。 . . . 本文を読む
今回のスペイン国王のセウタ・メリリャ訪問は公式には「住民との親睦を深めること」とされている。しかし、スペイン政府はジブラルタルを英国から奪還する目処を立て、それと同時に不法移民問題で重荷になりつつあるセウタとメリリャをモロッコに返還することを決意し、スペイン国王は両地域に別れを告げるために訪問したのではないかと私は想像する。軍艦と大砲が最新兵器であった19世紀と異なり、ミサイルや超音速戦闘機が最新兵器となった現代ではセウタやメリリャの重要性は低下している。また、国際金融資本の世界支配崩壊に伴ってジブラルタルが英国領土であり続ける必然性はなくなり、EU統合の枠組みの中でスペインに吸収されていくことはほぼ確実である。ジブラルタルを奪還するという悲願とセウタ・メリリャの領有は道義上両立しない。そして、欧州文明にとってはこれらの地域が大きな脅威となっている不法移民の玄関口になっていることも問題であろう。欧州としてはモロッコの経済発展を促進させることでモロッコからの不法移民流入を防止するとともに、不法移民への罰則を強化する(例えば、悪質な不法入国・滞在者に無期懲役あるいは死刑などの重い刑罰を与えるなど)ことが必要になってくるだろう。命懸けで流入してくるアフリカからの不法移民には、それに見合った刑罰でなければ阻止は困難だからだ。
日本から遠く離れたスペインのことなどどうでもよいという考えの人も多いだろう。しかし、重要な国際海峡の対岸の橋頭堡の行方というこの問題は、日本と韓国の関係と似通っている。国際金融資本の世界支配崩壊に伴って現在、世界中で国境線や文明間境界線の引き直しが進んでいる。日本文明と中国文明の境界線は従来朝鮮半島中央部の軍事境界線に存在してきたが、近い将来に米軍が撤退して朝鮮半島は統一され、日本文明と中国文明の境界線は対馬海峡(あるいは鴨緑江?)に移動することになると想像される。その時、日本は陸軍を派遣して釜山の橋頭堡だけは維持すべきか、それとも対馬を最前線にすべきかという問題と、このスペインの問題は重なってくるであろう。 . . . 本文を読む
中国の「改革開放政策」とは、福沢諭吉の唱えた「脱亜入欧」の中国版である、という林思雲氏の主張は実に興味深い。日本はそれ以前の古い文明を棄てて西洋の新文明を全面的に導入したが、中国は旧い中華文明を堅持し続けるために西洋文明を学んだに過ぎなかったことがかつての中国の停滞を生み出したという内容である。中国が中華文明堅持に執着したのは、大文明国としての自信か、あるいは日本と異なって他の文明に学ぶという経験がなかったことが理由であろうと想像される。
私がこの文章を読んで考えたのは、停滞を続けるイスラム社会のことである。日本文明の源流が中国文明であるのと同様に欧州文明の源流は中近東文明であり、現在のそれはイスラム文明と同義である。中国が西欧文明化に踏み切って先進国への道を歩み始めることが出来たのに対して、イスラム社会は西欧文明化に踏み切ることが出来ずに停滞している。それはかつての中国の停滞と同じ理由なのかもしれない。そして、イスラム社会が停滞を脱するには、何らかの形で脱イスラム化を行うことが必要になるだろう。しかし、イランやサウジアラビアに代表される様に、トルコを除く中近東イスラム圏の政治はイスラム教の教義(イスラム法)に深く支配されている。つまり、支配階層であるイスラム学者(ウラマー)自身が脱イスラム化しなければならないのだ。それが果たして可能なのだろうか?私は正直なところ、中近東地域の文明化=西欧文明化は困難なのではないかとも感じる。イスラム社会に詳しい皆さん方の御意見を伺えれば幸いである。 . . . 本文を読む