国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

欧州に拡大するイスラム嫌悪

2008年02月26日 | 欧州
欧州でイスラム嫌悪の動きが高まっている。従来は極右とされる一部政党に限られていたのだが、オーストリア南部のカエルンテン州議会では州内にモスクやミナレットの建設を禁止する条例が承認された。極右とされる勢力が多数派となった訳である。今後、他の地域でも同様の条例や法案が成立する可能性は高いだろう。 欧州は多文化主義・宗教への寛容性という建前をうち捨てて、キリスト教文明というアイデンティティを明確にしつつある。欧州を人体に喩えるならば、内部で増殖し始めたイスラム社会を免疫細胞が異物と認識して攻撃し始めた段階である。預言者に関する悪意に満ちたイラストをデンマークの新聞が繰り返し掲載していること、モスクやミナレットの建設を禁止する条例が承認されたことこそがその攻撃のよい例である。 イスラム教では改宗が死罪にあたることを考えると、キリスト教への改宗による同化は期待薄である。また、宗教行事にほとんど参加しない世俗的イスラム教徒として欧州で生きていくという選択枝も考え得るが、結婚や葬儀といった行事はやはりイスラム教の教義に則って行わねばならず、そこでキリスト教社会と対立してしまうように思われる。欧州のイスラム教徒は最終的には大部分が追放され、従来イスラム移民が行っていた低賃金労働は東欧出身労働者が代行するという未来が予想される。 . . . 本文を読む
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対立し始めた中露関係:ロシア極東を中国から守る防波堤としての台湾

2008年02月25日 | 中国
1月29日の時事通信が伝えるところによると、ロシアの対中兵器輸出がほぼゼロになり、中国が求める最新鋭兵器の輸出にも応じていないという。その一方でロシアはインドには最新鋭兵器を輸出しており、ロシアがインドを友好国、中国を仮想敵国と本格的に位置づけ始めたことが伺える。 2月14日にはロシアのプーチン大統領が記者会見で台湾を国家として賞賛するという異例の発言があった。従来中露は、中国が台湾の独立阻止、ロシアがチェチェンの独立阻止を主張し相互がそれを承認するという関係にあったが、このプーチン大統領の発言はそれを覆すものであり非常に注目される。ロシアの台湾政策が本格的に変更されるかどうかは分からないが、すくなくともその可能性が出てきたことは確実だろう。 このようなロシアの動きの背景には、国際金融資本に対する戦いでロシアが完全勝利を収め、国際金融資本によるチェチェン分離独立運動を完全に封じ込んだという認識があるのだと想像される。そして、国際金融資本に対する戦いでは同盟関係にあった中露両国が、4000kmの長大な陸上国境を有する大陸国家同士として敵対し始めたことを意味すると思われる。ロシア極東は従来から中国人の人口の浸透圧の脅威に晒されており、中国人不法移民に地域が乗っ取られかねないと言う懸念は国境沿い地域で依然として強い。中国は領土問題では台湾問題を最優先としており、現状ではロシア極東の領土奪還を主張する声は世論の一部にはあるものの政府公式見解には出ていない。しかし、もし中国が台湾を回収して統一に成功すれば、その次には19世紀半ばにロシアに奪われた極東の領土の奪還が政治課題に挙がってくることは十分考えられる。ロシアにとっては、台湾問題は極東の領土を守るための防波堤とも言えるのだ。 近未来に在韓米軍が撤退して韓国が中国の衛星国に転落すると、台湾・日本・ロシア極東は中国のより強い圧力を受けることになる。その中で最も脆弱な台湾を中国から守るためにロシアが台湾政策を変更し、台湾の独立を承認するか、あるいは台湾に軍事援助を行うという政策が採られる可能性は十分あるだろう。 . . . 本文を読む
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米韓同盟崩壊後の韓国は中国の衛星国となり、日本の脅威に対抗するために中国に軍事的に依存する?

2008年02月22日 | 韓国・北朝鮮
YONHAP NEWSが2月18日に、米韓同盟崩壊後に朝鮮半島に冷戦が再来するという記事を載せている。この記事の元ネタであるNBRの報告書はネットで公開されているので要旨の部分だけを翻訳した。この報告書の中で重要なのは一番目のS. Enders Wimbushの論文で、米韓同盟が解消され米軍が日本を含む東アジアから撤退した場合にどのようなことが起きるかを予想している。南北朝鮮の他に中国・日本・ロシア・台湾・インドがプレーヤーとして挙げられ、それぞれがどの様に行動するかが述べられている。米韓同盟が崩壊すると韓国が中国の影響下に入り衛星国化すること、韓国は日本の脅威に対抗するためにも中国により深く依存すること、日本や韓国・台湾が核武装に向かうこと、日本はアジアでの孤立状態に置かれるがそれを打開するため対露関係を改善し領土問題を解決させることなどが予想されている。 将来米韓同盟が崩壊するかどうかは重大な問題である。私は、近未来に米国はその経済的疲弊故に軍隊を縮小させ、東アジアや中東から撤退せざるを得なくなると想像している。ソ連崩壊後に東欧からソ連軍が撤退したのと同じ事が起きるという予想である。日本は米軍の太平洋艦隊を購入しその維持費を支払うことで米軍のプレゼンスを確保し続けることが可能になるかもしれないが、韓国は同様の行動を取る余力が無く、従って中国の衛星国に転落せざるを得ないだろう。衛星国が宗主国より繁栄しているという異常な状況は長くは続かず、韓国の繁栄は終焉し、やがて北朝鮮と統合されて消滅する筈である。朝鮮半島が現在のように分断されている状況こそが不安定であり、中国はそれを安定化させるために統一させると想像されるからであり、David C. Kangの予想する南北冷戦は実現しないと予測する。 なお、S. Enders Wimbush氏もDavid C. Kang氏も触れていないが、北朝鮮は建国に旧帝国陸軍関係者が関与していることから日本と強い繋がりを有していると想像される。日朝の対立は演出されたものだろう。北朝鮮は日本とも中国とも良好な関係を持っている点で韓国に対して決定的に優位に立っているのだ。将来の朝鮮半島統一が北朝鮮主導のものになることは確実だろう。韓国にとっては竹島問題のために日本が脅威となっていることが戦略的に見て最大の失敗であったことになる。 . . . 本文を読む
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EUが入国管理を強化、指紋採取へ:背景にある、国際金融資本からG8への世界支配者交代

2008年02月18日 | イスラエル・ユダヤ・国際金融資本
日米に引き続いて、EUが渡航者に指紋などの生体認証情報の提出を義務づける方針を明らかにした。これで、G8諸国の内で入国に指紋提出が必要でない国はロシアとカナダの二カ国のみとなる。両国も恐らく近いうちに指紋採取に踏み切ると想像する。 日米EUのいずれも、指紋採取の理由としてテロ対策を筆頭にあげている。しかし、真の目的が不法移民や犯罪者の入国阻止にあることは間違いない。日本を例に挙げると、中国人や韓国人の入国者は旅券だけで管理することが困難であり、それ故に指紋を含めた生体認証情報が必要になっていると考えられる。欧州についても、不法入国者の多くが欧州を経由して他地域に向かう航空券を購入して欧州の乗り継ぎ空港で合法的に入国しその後不法滞在していることから、合法的入国者の管理を強化する方針に踏み切ったのだと想像される。 米国が指紋採取の方針に踏み切ったのは2001年の911事件がきっかけであるが、それに先立つ2001年1月のブッシュ政権成立が米国の入国管理政策の重要な転機であったと思われる。クリントン政権時代の米国は金融業や情報産業を中心にバブルが形成され、そのバブルめがけて多くの外国人が流入していた。国境の垣根を低くして米国に人材を集めて米国の世界覇権を維持していこうというのがクリントン政権の政策であるが、その裏では製造業や事務職の職場が外国に大量に流出して、米国の中産階級が大きな打撃を受けていた。米国の国益よりも国際金融資本の利益が重視され、国際金融資本が米国を支配していたのがクリントン政権であったように思われる。 ブッシュ政権は対照的に国境の垣根を高くしており、日本やEUもそれに追随している。ブッシュ政権では国際金融資本は影響力を失い、それに代わって米国の国益を追求する人々が政権に就いているのだ。日本やEUでも、環境問題や安全性を根拠に域内で販売される商品への各種規制が強化され、それによって途上国からの輸入品が排除される動きがある。中国産毒入り餃子の問題がマスコミで大々的に扱われているのも同様の意図であろう。ブッシュ政権の成立と共に国際金融資本からG8へと世界支配者が代わり、それ故にG8各国が自国の国益を表立って追求することができるようになるという革命的変化が起きている様に感じられる。 . . . 本文を読む
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李明博政権の起死回生の一手:韓国軍戦闘部隊のイラク大規模派遣による、在韓米軍撤退阻止

2008年02月17日 | 韓国・北朝鮮
韓国の柳宗夏元外務部長官は戦時作戦統制権移管=米軍撤退という認識を示している。そして、韓国の安全保障には米軍の駐留が必要であると主張している。しかし、米軍は盧武鉉政権との間で合意した戦時作戦統制権移管をそのまま実行する意志を変えていない。韓国はこの絶体絶命の危機を乗り越えることができるのだろうか?「米国主導の計画、例えば大量破壊兵器の拡散防止やテロの根絶、貧困対策などには、パートナーとして協力していくべきだ」という発言がヒントになる。 韓国が今取りうる有効な手段は一つしかないと思う。それは、韓国軍戦闘部隊のイラク派遣である。在韓米軍に匹敵する三万人規模の大規模派遣が必要だろう。ベトナム戦争で韓国がベトナムに軍を派遣して米国に恩を売ったことがその後の米軍駐留維持に繋がっていることを考えれば、李明博新政権が韓国軍派遣を考えるのは当然とも言える。韓国支配階層の子弟は海外留学や無理なダイエットなどで徴兵を回避するものが多いことから痛みは少ない。4月の総選挙で与党ハンナラ党が勝利した後に韓国軍戦闘部隊のイラク派遣が検討されることになるのではないかと私は想像する。 ただ、ベトナム戦争当時とは異なり韓国は少子化が進んでおり、一般の韓国人(特に学生やその親)の反発はかなり強くなると想像される。大規模なデモが行われ、大統合民主新党の地盤である全羅道では光州事件の再発もありうるだろう。その強い反発を力で押さえ込むことができれば、米軍が韓国を評価して在韓米軍撤退の方針を撤回するかもしれない。力で押さえ込むことに失敗すれば李明博政権は崩壊し、大統合民主新党が再び政権を握ることになるだろう。 米国大統領選挙の行方も韓国に関係してくる。オバマ候補の外交顧問であるブレジンスキー氏が国家安全保障担当大統領補佐官に就任していたカーター政権は在韓米軍撤退の方針を打ち出したことがあり、韓国にとっては鬼門だろう。マケイン候補もブッシュ政権の延長線で在韓米軍撤退に賛成と思われる。韓国にとって一番都合の良いのは、米英一極主義であろうと想像されるヒラリーになるのではないだろうか。 . . . 本文を読む
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次期米国大統領に選ばれるのは誰か?

2008年02月15日 | 米国
田中宇氏は2月12日の記事「米大統領選の焦点はテロ戦争の継続可否」で、ヒラリー候補=米英一極主義者、オバマ候補=多極主義者という明解な分析を提示している。911以後の米国国内での闘争が民主党大統領候補者選を舞台に繰り広げられているという内容である。ヒラリー候補の外交政策はクリントン政権時代の延長線上にあるという想定はもっともなものだ。 私は、米国の次期大統領はオバマ氏に内定しているのではないかと想像している。根拠は、オバマ氏の外交顧問にキッシンジャーと並ぶ国際政治専門家であるズビグニュー・ブレジンスキー氏が就任していることである。ブレジンスキー氏が負け馬に乗るとは思えないのだ。対抗馬のヒラリーが健闘しているのは、大統領選を盛り上げるという役割、あるいはヒラリーを支援する米英一極主義者のあぶり出しなどの理由が考えられるだろう。 田中宇氏はオバマはケネディの再来ではないかと主張している。しかし、私はオバマはカーター政権の再来ではないかと想像している。カーター政権の前任は不人気な共和党のニクソン・フォード政権であり、その外交政策はキッシンジャーが主導していた。ニクソンはベトナム戦争での敗北、ドルと金の交換停止を通じて米国の国力を大きく低下させ世界を多極化させた人物である。現在のブッシュ政権がイラク戦争での敗北やドルの下落を通じて米国の国力を大きく低下させていること、ブッシュ政権の外交政策にキッシンジャーが深く関与していること、ブッシュ政権の不人気を考えると、ブッシュ大統領はニクソン政権の再来という性格を持つ。それならば、次の政権はブレジンスキーが外交顧問に就任しているオバマになるのが自然だと思われる。 カーター大統領は元州知事で中央政界にはほとんど縁のない人物であった。オバマ氏も上院議員に当選して日が浅く、目立った政治的業績を残していない点で類似している。クリントン政権時代から現在まで一貫して中央政界に関与してきたヒラリーとは対照的である。 なお、ブッシュ政権の不人気、ブッシュ政権が8年間続いたことから考えて、共和党候補が次期大統領に選ばれる可能性は低いのではないかと想像する。 . . . 本文を読む
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女性の髪を隠すか隠さないか:トルコで起きている文明の衝突

2008年02月13日 | トルコ系民族地域及びモンゴル
女性の髪を隠すか隠さないかは欧米文明とイスラム文明の相違点の象徴である。現在トルコで起きているスカーフを巡る議論は、欧米文明の影響下に置かれ世俗化したトルコ支配階層と、イスラム文明に所属し世俗化していない一般住民(トルコ人+クルド人)の間の対立を深刻化させており、これは欧米とイスラムの二大文明の衝突に他ならない。具体的には、支配階層の多く居住するイスタンブール・イズミル・アンカラの三大都市とその他の地域の対立と言うことになるが、これらの大都市にもクルド人や一般のトルコ人が多数居住していることが問題を複雑化させている。世俗派と宗教原理派の混住というこの現状は、カトリック・セルビア正教・イスラム教の三宗教の教徒が混住していた内戦前のボスニア・ヘルツェゴビナに類似している様に思われる。 以前から述べているとおり、トルコの支配階層はトルコという国を複数(おそらく三つ)に分裂させることを狙っている様に思われる。分裂の理由は一つはクルド人かトルコ人か、そしてもう一つは世俗派か宗教原理派かである。トルコ政府はクルド民族を認めず分離運動を弾圧することで逆にクルド人の分離独立の意志を煽っている様に思われる。近未来にイラク北部に石油で潤う富裕なクルド国家が誕生すれば、トルコ国内のクルド人はその引力に引かれて分裂することだろう。そして、もう一つの分裂は世俗派トルコ人と宗教原理派トルコ人の間で煽られている。これによって、トルコの支配階層はクルド人と宗教原理派トルコ人という二つの不良資産をリストラして、富裕かつ世俗的な支配階層だけから成る小国を作り出すことを狙っているのだろう。 トルコの分裂は旧ソ連の中央アジアとも類似した状況を作り出すと思われる。最も奥地にありペルシャ系のタジキスタンに相当するのがクルド人国家であり、ロシアの影響が強く世俗的なカザフスタンに相当するのが世俗派トルコ人国家、ロシアの影響力が相対的に弱いウズベキスタンやトルクメニスタンに相当するのが宗教原理派トルコ人国家になる。このようにして生まれる複数の国家はキリスト教圏とアラブ圏・ペルシャ圏の間の緩衝国家として有効に機能することだろう。私は、トルコの分裂は欧州(独仏連合)が裏で筋書きを書いており、将来世俗派トルコ国家だけはEUに加盟させることでトルコ支配階層と話がついているのではないかと想像している。 . . . 本文を読む
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2月17日のコソボ独立宣言はキリスト教とイスラム教の戦争を通じて欧州に反イスラム運動を巻き起こすか?

2008年02月10日 | 欧州
表向きは独仏連合とロシアはコソボ問題で対立している。しかし、ドイツ・フランス・ロシアは英国に対抗する大陸国家連合として緊密な連携を保っており、事実上の同盟関係にあると想像され、裏で何らかのシナリオが立てられている筈である。セルビアとコソボの戦争を回避する為の外交努力がないがしろにされていることから考えて、ドイツ・フランス・ロシアはコソボで戦争を起こすことを狙っているとしか思えないのだ。では、その戦争の目的とは何だろうか?私は以下の三種類を想像している。 1.ドイツ・オーストリア連合による、第一次世界大戦を起こした責任者であるセルビアの弱体化作戦: ロシアがセルビアを支持していることから考えて、この可能性は薄いと想像する。 2.戦争・民族浄化作戦を通じて早期にコソボとセルビアに国民国家を形成させ、バルカン半島を安定させることが目的: このシナリオの可能性は十分あるが、ボスニア戦争の惨禍を経験した欧州が何故コソボに譲歩を迫ると共に住民交換による平和的解決を主張しないのか疑問である。 3.キリスト教とイスラム教の宗教間戦争をコソボで起こすことで、欧州に反イスラム感情を蔓延させて、中近東や北アフリカ出身のイスラム教徒を追い出すことが目的: ボスニア戦争がカトリック+イスラム教vs東方正教会というキリスト教の内戦であったのとは対照的に、コソボの戦争はイスラム教と東方正教会の激突になる。この宗教間戦争と、西欧でのイスラム教徒移民反対運動が結びつくと、カトリックやプロテスタントの間に東方正教会への同情と支援が広まることになる。運動の中心はフランスのルペンに代表される親ネオナチ勢力だが、保守系有権者の広範な支持が期待できる。私は最近、この「宗教間戦争シナリオ」が真の目的なのではないかと考えている。 . . . 本文を読む
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