中国は貯蓄率が非常に高く、それが膨大な貿易黒字に繋がっている。世界的景気後退の中で、現在の中国に求められているのは内需拡大であり、その為には貯蓄を減らして消費を増やす必要がある。2005年の国内貯蓄率(対GDP比)は48.1%に達しているが、この一部が消費に向かうだけで中国は内需の劇的拡大を成就できるのだ。
しかし、現実には中国の貯蓄率は高止まりしており、内需拡大の障壁であり続けている。この原因を分析したのが冒頭の張 明氏の論文である。それによると、政府の消費支出が低く、特に教育や医療、社会保障などへの支出が限られているため、個人の間では将来の生活に対する不安が広がっており、これに備えることが貯蓄の強い動機となっていること、中国では企業部門や政府部門の貯蓄が多すぎること、各部門の貯蓄が代替できないことが挙げられている。中国の高貯蓄率は構造的なものであることが示されている。
現在はこの高貯蓄率は外貨準備への米国債積み上げと言う形で処理されている。しかし、近い将来に米国が破綻しドルが暴落すると、中国はドルと元のペッグから離脱せざるを得なくなる。欧州も保護主義に向かい、中国は欧米という工業製品の輸出先を失って大恐慌に陥るだろう。十三億という膨大な人口を抱えながら内需を拡大できず輸出に頼るしかないという中国の弱点が、結果的に中国を滅亡させることになるのだ。そして、大恐慌下の中国では上海を筆頭とする沿海地域が北京政府から独立し、社会保障の充実や議会制民主主義の導入を含めた社会民主主義的国家を目指してゆくことになると想像する。 . . . 本文を読む
ニュースサイト「theTrumpet.com」で、コラムニストのRobert Morley氏は、日本・中国・ロシアの三カ国は大々的な軍事同盟に今まさに釘付けになっている、と述べている。北方領土問題が解決されれば、日本とロシアの間には外交的対立の芽はなくなり、中国の脅威に対抗する同盟関係(非公式なものかもしれないが)が成立するだろう。一方、中国とロシア、中国と日本の間には対立の芽が存在するため、これをどう解決してゆくかが問題となる。21世紀の日本は、東アジア共同体を通じて中国をコントロールしようと試みつつ、ロシアやインドと軍事的に協力して中国を封じ込める路線を採るのではないかと私は想像する。
EUがキリスト教・民主主義・人権尊重という共通の価値観を有するのに対して、アジアは宗教を採ってみても神道・仏教の日本、道教の中国、ヒンズーのインド、イスラムのインドネシア、東方正教会のロシアとばらばらである。また、経済的格差も非常に大きい。EU型の共同体をつくるのは無理だろう。ただ、宗教がバラバラで経済的格差も大きいが成功しているASEANがある。日本はASEANをお手本にした東アジア共同体を目指してゆくべきだろう。
現在、イランの核問題はP5+ドイツによって取り扱われているし、北朝鮮の核問題は当事国の南北朝鮮に加えてP5+日本で取り扱われている。ユーラシア大陸西部と東部の安全保障システムは既にできあがっているのだ。米国撤退後の東アジアでは、安全保障問題は日中露三カ国、あるいはそれにインドを加えた日中露印の四カ国の協議で全て決定されることになるだろう。これは、EUが英仏独の三大国、あるいは英仏独伊の四大国に事実上支配されているのと類似したシステムである。 . . . 本文を読む
7月に行われたモルドバの総選挙で共産党が敗北し、親欧州の野党連合が勝利した。野党連合のミハイ・ギムプ議長(大統領代行も兼任)は、ルーマニアとの統合支持を明言している。この背景には、ルーマニアのEU加盟以降、ルーマニア国籍の取得申請をするモルドバ国民が急増していることが挙げられると思われる。国民のルーマニアへの流出を防ぐ方法は、もはや統合以外に存在しないと言う判断があると思われる。EU加盟には経済的水準が低すぎるモルドバが、ルーマニアとの統合により早期にEU圏内に入ることができるという算段もあるだろう。そして、モルドバのルーマニアへの統合によってEUは東側へ更に一歩拡大することになる。
ロシア系住民の多い沿ドニエストルは国際的には承認されていないものの、モルドバ政府の統治を受けていない地域である。キプロス共和国の北キプロスと似た存在であり、EUへの統合の障害にはならないと思われる。むしろ、沿ドニエストルを支援するロシアが弱い立場になると想像される。また、モルドバのEU圏内入りは隣接するウクライナに早期のEU加盟への希望を与え、それに反対するロシアとの間で対立が深まると思われる。
将来的には、北方領土の返還と共にカレリアがフィンランドに返還され、東プロイセンが欧州出身のイスラエル人の避難先としてロシアからドイツに返還される様な事態が想定されるが、沿ドニエストルとグルジア共和国の南オセチア・アブハジアの三地域はロシアの西側への橋頭堡として残ると思われる。この三地域の問題は、ロシアのEU加盟によってのみ解決可能であろう。 . . . 本文を読む
永らく米露両国の間の対立の焦点であった東欧・ポーランドとチェコへのミサイル防衛(MD)網関連施設配備計画が中止となった。この背景には、米国が弱体化してもはやロシアを敵に回す余裕が無くなったことが挙げられる。また、米国が苦労しているアフガン占領問題で、ロシア・中央アジア上空経由の輸送を確保したいという狙いもあるだろう。この事件は、世界が米国一極体制から多極体制へと転換する大きな転換点の一つになると思われる。
東欧のポーランド・チェコは国民感情の面で共に反ドイツ・反ロシアの傾向が強い。両国は米国との同盟関係を支えにしてきたが、それが弱体化することで外交的に大きな打撃を受けるだろう。しかし、独仏連合とロシアの関係が良好である以上、東欧諸国もその輪に加わる以外に選択枝はないだろう。
また、米露関係の改善は、日露関係の改善に繋がる可能性がある。鳩山政権で北方領土問題が解決される可能性が高くなってきた様に思われる。 . . . 本文を読む
民主党の鳩山由紀夫代表が7日、2020年の日本の温室効果ガス排出量を1990年比で25%削減すると明言した。2007年時点で1990年より9%排出量が増加していることから、2007年と2009年が同レベルと仮定すると、2020年までの11年間に31.2%の削減が必要になる。常識的に考えればこのような大幅な削減は不可能である。鳩山新首相の意図は何だろうか?
この答えは、常温核融合(核変換)の実用化以外にはあり得ないだろう。核変換はエネルギー源としての利用法もあるが、現時点ではそれよりも核変換による放射性廃棄物処理が重要であると思われる。三菱重工の岩村博士がセシウム→プラセオジウム、ストロンチウム→モリブデンの核変換の反応システムを確立させており、これが実用化される事のメリットは非常に大きいからだ。エネルギー源としての核変換は、ウランが枯渇するまでは実用化を急ぐ必要もなく、先延ばしにされる計画なのかもしれない。
核変換を利用することで、放射性廃棄物の心配なしに原子力発電を行うことが出来るメリットは非常に大きい。今後暫くの間は全世界で原子力発電所の建設ブームが起こるだろう。三菱重工・日立・東芝は外資と組んで原発建設に参入しており、大きな利益を挙げることが期待される。日本でも、発電量の大部分が原子力になり、火力はピーク時の電力を支えるためのものに変わっていくだろう。また、プラグイン-ハイブリッド車や電気自動車が普及して、自動車からの二酸化炭素排出も激減すると思われる。このような変化により、30%を越える二酸化炭素削減は十分可能であり、かつ、日本企業の繁栄も生み出すことになるだろう。
核変換の他にもう一つ重要なのが、ロシアのサハリンからのパイプライン輸送による天然ガス供給である。天然ガスは石油や石炭よりも炭素の含有割合が低いので、二酸化炭素排出抑制に利用できるのだ。従来は日本の天然ガスはLNGだけだったが、よりコストの安いパイプライン輸送のガスを導入することで、供給源の多角化も行える。既に日本国内でも列島を縦断するパイプラインの計画が進んでいるが、このパイプラインをロシア産ガスが流れる日も近いと思われる。 . . . 本文を読む
民主党は、インド洋で給油活動を行っている海上自衛隊の来年1月撤退と、米軍普天間飛行場の県外移設の二つの政策を打ち出している。これらの政策に対して米国は大きな不満を表明しているが民主党の姿勢は変化しておらず、対立が表面化している。この事態は一体何を意味するのだろうか?
私の想像する答えは、民主党の政策は米国の弱体化に対応するものであるという仮説だ。つまり、来年一月までに米国政府が破綻し、イラクやアフガンでの戦争が終わって米国軍が本土に引き上げることになる。インド洋での給油活動も当然不要になるのだ。また、米国政府と日本政府の間で、いわゆる「思いやり予算」による第七艦隊の維持を含めた在日米軍の規模についての交渉が実行されることになり、その中で普天間飛行場の廃止など(場合によっては、石原都知事が強く主張している横田基地の日本返還も?)決定されることになるのではないかと想像する。
来年1月までに米国政府が破綻するとして、その原因になるのは何かという問いの答えは難しい。ブログ「ヤスの備忘録 歴史と予言のあいだ」の管理人であるヤスさんは、8月30日の講演会で、「現在崩壊しかけているのは米国の金融バブルを中心とした1995年体制の経済システムである。米国の破綻の引き金になり得るものは多数あるが、既知のものはいずれも対処可能である。コンピューターの2000年問題で大きなトラブルが起きなかったことを忘れてはならない。対処不可能な未知のものが引き金を引くことになるだろう。破綻が急速なものか、あるいはゆっくりしたものかもわからない。」と発言していた。
また、軍学者の兵頭二十八氏は8月29日の講演会で「米国経済が将来破綻して米軍が本土に引き上げることになったら日本の防衛は大丈夫なのか?」という私の問いに対し、「米国はドルを印刷するという解決策がある(つまり、なかなか破綻しない)。また、日本には思いやり予算がある」と答えていた。やはり、思いやり予算で将来の在日米軍を維持するという計画はあるようだ。 . . . 本文を読む
鳩山新首相の掲げる政策はアメリカの反発を招いている。しかし、鳩山氏の政策は決して反米ではなく、米国の衰退という事態に対応するものであると思われる。鳩山政権の誕生は、米国の衰弱(具体的にはドルの下落・米国債の下落・米国株の下落のトリプル安)がもはや秒読み段階に入っていることを示しているのだろう。場合によっては、鳩山政権が米国の衰弱の引き金を引くことになるかもしれない。
中国と韓国は鳩山政権の誕生を歓迎している。従来の米国の属国体制では不可能だった日中両国の接近が可能となることは確実だ。ただ、これは中央日報の言う「福沢諭吉が1885年に主張した脱亜入欧との確実な決別宣言」というのは過ちだろう。鳩山政権が目指しているのは新たな大東亜共栄圏の建設であり、日本を中心とする東アジア秩序の再建設に他ならないのだ。日本とASEANは既に緊密な関係にあることから考えて、新たな大東亜共栄圏建設のポイントとなるのは日中の接近であり、韓国はその視野の中心からから外れている。韓国のマスコミは鳩山政権樹立を歓迎しているようだが、日中両大国が緊密化することは、実際には韓国にとって利益よりも危険の方が大きいと思われる。
日本や中国が米国の衰退に対して準備を十分に行っているのと比べると、韓国は明らかに準備不足である。韓国は依然として在韓米軍の駐留を前提とした安全保障プランしか持っていない。また、韓国は経済的にも、科学技術面でも、日本と中国の両大国に対抗するという国家戦略を変更する構えを見せていない。最近の衛星打ち上げはそのような国家戦略の象徴とも言える。しかし、米国が衰退し中国が強大化する近未来の東アジアで、韓国が生き延びる道は、かつてのソ連に対するフィンランドのように、中国の属国になる以外にないと思われる。その様な国家戦略の方針転換を行わないまま、韓国は脳天気に日本の変化を喜び、時間が過ぎるにまかせている。あるいは、鳩山政権の「在日外国人への地方参政権付与」政策は、韓国を油断させるための策略なのかもしれない。 . . . 本文を読む