国際情勢の分析と予測

地政学・歴史・地理・経済などの切り口から国際情勢を分析・予測。シャンティ・フーラによる記事の引用・転載は禁止。

2月17日のコソボ独立宣言はキリスト教とイスラム教の戦争を通じて欧州に反イスラム運動を巻き起こすか?

2008年02月10日 | 欧州
● コソボ独立を容認=アハティサーリ案は現実的-米次官補  時事通信 2008/02/05-19:23

 来日中のフリード米国務次官補(欧州・ユーラシア担当)は5日、セルビア南部コソボ自治州の独立問題について「交渉による解決はもはや不可能だ。現実的にならなければならない。国際社会には行動を起こす責任がある」と述べ、アハティサーリ国連特使が昨年まとめた仲介案に沿い、国際社会の監視下で独立を認めるしかないと強調した。都内の米大使館で記者団に語った。
http://www.jiji.com/jc/c?g=int_date1&k=2008020500889






●コソボ、17日に独立宣言か=自治州首相「100カ国が承認へ」  時事通信 2008/02/08-22:32
セルビアのサマルジッチ・コソボ担当相は8日、アルバニア系住民が多数を占めるセルビア南部のコソボ自治州が、今月17日に一方的に独立宣言するとの見通しを明らかにした。AFP通信が伝えた。
 同相は声明で、「セルビア政府は、サチ(コソボ自治州首相)が不法にコソボの一方的独立を宣言するとの重要情報を得ている」と指摘した。
 一方、サチ首相はこの日、記者団に対し「世界の約100カ国から、独立宣言直後に承認する用意があるとの確認を得ている」と述べた。コソボにとっては、欧米諸国などから国家承認を取り付けることが独立の絶対条件となっているだけに、幅広い国際社会からの承認のメドが立ったことで、宣言への「ゴーサイン」と判断したとみられる。
http.www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2008020800938





●セルビア大統領、コソボ独立宣言に改めて反対表明 読売新聞  2008年2月9日
 【ミュンヘン(ドイツ南部)=中谷和義】セルビアのタディッチ大統領は8日、ミュンヘンで同日開幕した国際シンポジウム「安全保障政策会議」で講演し、同国コソボ自治州の独立問題について、「コソボが呼び水となって多くの新たな紛争が顕在化しかねない」と警告、同州の一方的な独立宣言に改めて反対した。

 3日の大統領選で再選を決めたばかりのタディッチ氏はセルビアの欧州連合(EU)加盟を重視する親欧米派だが、コソボ独立を支持する欧米とは一線を画した。「独立のプロセスを決めるのは国連だ」とも述べ、コソボ独立に反対する国連安全保障理事会常任理事国ロシアの拒否権に独立阻止への期待をにじませた。
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20080209-OYT1T00521.htm








●コソボ独立「決して認めず」安保理協議でセルビア大統領 産経新聞 2008.1.17 17:04

国連安全保障理事会は16日、国連暫定統治下にあるセルビア南部コソボ自治州の独立問題について協議を行った。セルビアのタディッチ大統領は、「コソボの独立は決して認めない」と改めて独立を承認しないと明言、安保理での交渉継続を訴えた。しかし、独立を支持する米欧に、国連での事態打開をはかる意思はすでになく、安保理の外で独立に向けた動きが進むことになる。

 タディッチ大統領は「民主的な方法や外交によってセルビアの主権を守る」とも述べ、暴力や戦争に訴える考えはないことを強調した。さらに、「もし暴力行為が起きても、コソボの(少数派である)セルビア系住民を助け、保護する用意がある」とし、「コソボの将来的な地位に関する解決は安保理で行われるべきだ」と主張した。

 コソボ自治州のサチ首相も協議に出席。終了後、記者団に「まもなく決断する」と、近く独立宣言を行う意思を示した。

 ハリルザド米国連大使は、「(暴力だけでなく)経済的圧力などの措置もとられることがないよう望む」とセルビアを牽制(けんせい)した。

 セルビアの後ろ盾として独立に反対するロシアのチュルキン大使は、「コソボが一方的な独立を選んだ場合、国連加盟国になることはできないだろう」と指摘し、コソボが国連に加盟を申請しても、ロシアは拒否権を行使し、阻止すると警告した。
http://sankei.jp.msn.com/world/america/080117/amr0801171704018-n1.htm






●コソヴォの国連加盟は絶対にない ノーボスチ・ロシア通信社 2008年1月23日

ロシアは、コソヴォに、もしコソヴォが独立を一方的宣言した場合、完全国家になることを認めない。ロシアはコソヴォが国連や他の国際組織に加盟することに拒否権を発動した。この立場は国連安全保障理事会(通称、国連安保理)会議でロシアの国連常任代表ヴィタリー・チュルキンにより表明された。

コソヴォ問題協議の会議から具体的な結果を期待する者は殆どいなかった。いや、誰もいなかったと言っても良い。セルビアとコソヴォの代表は、再び、全く正反対の立場を表明した。前者は、セルビアの1構成内に留まり地域が統一されることを要求している。もし守られない場合は、国際法の原理を踏み躙るものであり、セルビアの領土は保全されることが前提とする国連安保理議決1244にも違反すると主張している。そして、妥協案として、以前の香港やオーランド諸島の例に倣い、非常に広い自治権をコソヴォに提供する用意があることも表明した。後者は民族自決権の実現以外何らの可能性も検討していないと主張している。

ロシアの常任代表は、コソヴォ問題解決のロシアなりの案、すなわち、地域の将来のステータスに関する両者の交渉の足固めができるために国際社会がどのように行動するかその計画理念を示す「ロード・マップ」を提案した。チュルキンの言葉によれば、12月19日の最後の会議の時点から比べて、ロシア・セルビアの立場を支持する意向のある国の数は増えた。国連安保理の新しい構成のもとでは、ロシアの立場は、過去の安保理の構成の時よりも大きな支持が得られる。乱暴に言えば、問題が代数的な多数決で決まるなら、この多数決が誰のための利になるかは判らないと表明した。ロシア側には、従来通り、地域のステータスの相互に受け入れられる臨時メカニズムを作り上げることを提案した中国が立っている。アメリカは、同国の安保理代表のザルマイ・ハリルザードは袋小路から抜け出す唯一の方法は、国際管理下で地域の独立を認める「マルッティ・アフティサーリ計画」(前フィンランド大統領)であることに固執し続けている。

しかしながら、プリシティナ(コソヴォの首都)でもワシントンでもどうやら、独立について一体いつ公式発表するのかは最終的に定まっていない。「コソヴォ独立の最終決定の時間はまだ来ていない」とハリルザードは述べた。「ヘビ」という渾名を持つコソヴォ解放軍の前の野戦司令官で現在のコソヴォ首相のハシム・タチは、自分が選挙に勝利すれば2月にも独立を宣言することを約束した。しかし、今では、具体的な期日は、どうやら、いつもの約束不履行をすることでコソヴォ市民を落胆させないように、明言は避けている。ニューヨークでは彼は、「これ(独立宣言)は、非常に早く、アメリカとEUはそれを認める用意があればすぐに可能になる」と言い返すに留まった。

コソヴォの独立は、どうやら、専ら時間の問題のようだ。恐らく、このことは、国際法の枠内で地域の独立を許さないよう執拗に試みている人たちも判っているはずだ。しかし、一体どれ位の時間の問題なのだろうか?コソヴォはいつ決定的ステップに踏み出すのか?なぜならコソヴォの政治家はすでに約1年セルビアからの独立の様々な時期を挙げている。そして、その都度、その時期は「頓挫」している。

最後の「Xの時間」として、従来通り、2月-3月が挙げられている。コソヴォ(とその西方)は、その最初のラウンドが1月20日、第2ラウンド(もしあれば)が2月の上旬のセルビアでの大統領選挙の結果を待ち望んでいる。論理は簡単だ。投票前に独立を宣言することは自殺行為だからだ。この場合、セルビアの大統領のポストを得るのは、ガーグスク刑務所に投獄されているヴォイスラフ・シェシェリがリーダーになっているセルビア過激党出身の民族主義者トミスラフ・ニコリッチだろう。コソヴォを維持のため、西側との関係を含めてすべてを犠牲にする覚悟のあるニコリッチと交渉することは実質的に不可能だ。選挙での彼の主要ライヴァルで現在の国家リーダー、ボリス・タディチは、セルビアは、コソヴォを維持することを義務付けられていても、それでも、「EUの加盟国になるチャンスを失わってはならない」と考え、同じEUにはるかに忠実な立場を取っている。

タディチもニコリッチもセルビアが独立宣言に対してコソヴォ・メトヒア問題セルビア政府大臣スロボダン・サマルジッチは、セルビアとアルバニア地域に分けられた都市、ミトロヴィッツェに何を持って応えるか頭を悩ませている。セルビアの政治家は、「彼らが導入する規制以外に他の方策、とりわけコソヴォに2003年に撤退したロシアの軍隊を戻すことを含めて、可能性がある」と益々頻繁に言う。しかしロシアはこの情報をまだ確認していない。さらにもう1つの「相応しい解決策」は、コソヴォに滞在するセルビア公式代表の立場を強化する方向で調整することだ。かくして、1月には、セルビアとアルバニア区域に分けられた都市、ミトロヴィッツェに、自分の代表機関が設置された。これは、次の唯1つのことを意味する。セルビア人居住地区が独立宣言した場合、セルビアの政府機関はこの地域での機能を持ち続けるだろう。そしてセルビアは、この地域をコソヴォの司法権が及ないように試みるだろう。
http://jp.rian.ru/analytics/politics/20080123/97565048.html






【私のコメント】
コソボが2月17日に一方的独立を宣言すると言う情報が流れている。セルビアの大統領選挙が終了した今、コソボにとっては独立宣言の障害は何もない。近日中に宣言が行われることは確実だろう。それは、コソボに居住する少数派のセルビア人の迫害という新たな問題を作り出すことになる。セルビアの軍事介入による紛争勃発は確実だろう。また、ロシアは国連安保理での拒否権行使を明言しており、コソボは独立しても国連に加盟できない、不完全な国家の地位に留まることになる。

恐らく、コソボの独立宣言直後にコソボ内部のセルビア人居住地域が独立宣言を行い、セルビア軍が軍事介入して泥沼の内戦が開始されることになるのだろう。そして、ボスニア戦争と同様の凄惨な民族浄化が行われ、コソボからセルビア人がいなくなりセルビアからアルバニア人がいなくなる状態で停戦となるのだろう。

表向きは独仏連合とロシアはコソボ問題で対立している。しかし、ドイツ・フランス・ロシアは英国に対抗する大陸国家連合として緊密な連携を保っており、事実上の同盟関係にあると想像され、裏で何らかのシナリオが立てられている筈である。セルビアとコソボの戦争を回避する為の外交努力がないがしろにされていることから考えて、ドイツ・フランス・ロシアはコソボで戦争を起こすことを狙っているとしか思えないのだ。では、その戦争の目的とは何だろうか?私は以下の三種類を想像している。


1.ドイツ・オーストリア連合による、第一次世界大戦を起こした責任者であるセルビアの弱体化作戦:
ロシアがセルビアを支持していることから考えて、この可能性は薄いと想像する。

2.戦争・民族浄化作戦を通じて早期にコソボとセルビアに国民国家を形成させ、バルカン半島を安定させることが目的:
このシナリオの可能性は十分あるが、ボスニア戦争の惨禍を経験した欧州が何故コソボに譲歩を迫ると共に住民交換による平和的解決を主張しないのか疑問である。

3.キリスト教とイスラム教の宗教間戦争をコソボで起こすことで、欧州に反イスラム感情を蔓延させて、中近東や北アフリカ出身のイスラム教徒を追い出すことが目的:
ボスニア戦争がカトリック+イスラム教vs東方正教会というキリスト教の内戦であったのとは対照的に、コソボの戦争はイスラム教と東方正教会の激突になる。この宗教間戦争と、西欧でのイスラム教徒移民反対運動が結びつくと、カトリックやプロテスタントの間に東方正教会への同情と支援が広まることになる。運動の中心はフランスのルペンに代表される親ネオナチ勢力だが、保守系有権者の広範な支持が期待できる。私は最近、この「宗教間戦争シナリオ」が真の目的なのではないかと考えている。
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4 コメント

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Unknown (Unknown)
2008-02-10 15:13:29
世界大戦が迫る。ロシアイラン北朝鮮連合に日本は対抗できるのか?

終わりの時になるか、どうか
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Unknown (Unknown)
2008-02-11 18:17:09
先日世界経済について、東京で開かれたG7の結果ですが、全くのナンセンスだと思います。
そもそもロシア、中国が参加していないので、G7はもはや昔のような影響力を持っていない。G7という仕組み自体が機能不全である。
G7を“本音を語る場”とするならば、もっと現実的な話をするべきだ。例えば「アメリカという国は崩壊するので、もっと貯金をして輸出を増やすべき」とか、「石油に代わるエネルギーを早く開放しよう」など。
また「米ドルが基軸通貨として機能しなくなる」ということも認めてほしかった。世界には統一通貨が必要だと思う。しかし大切なのは、そ通貨がどのように作られ、分配されるかを透明にしなくてはならない。今のように一部の権力者によって秘密に管理されている通貨システムは地球の癌だ。
記事:
http://benjaminfulford.typepad.com/benjaminfulford/2008/02/post-9.html
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Unknown (Unknown)
2008-02-17 19:56:06
今回ばかりは疑問です。欧州は宗教戦争に懲りています。これ以上、テロに巻き込まれたくないでしょう。今此処で、キリスト教対イスラム教が鮮明になれば、欧州内でのテロは避けられません。
これは欧州人が一番、避けるべき事象であり、よってありえないと思われます。
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Unknownさんへ (princeofwales1941)
2008-02-18 19:30:45
>欧州は宗教戦争に懲りています。これ以上、テロに巻き込まれたくないでしょう。今此処で、キリスト教対イスラム教が鮮明になれば、欧州内でのテロは避けられません。

欧州はテロは恐れていないと思います。恐れているのは、イスラム教徒の移民がどんどん増えて欧州が乗っ取られることです。

実際、デンマークの新聞でムハンマドの風刺漫画が何度も掲載されていますが、これはイスラム教徒を刺激して宗教間対立を激化させたいというEUの意志を示しているように思われます。その一方で、欧州に同化する傾向のあるイスラム移民は体制内に取り込んでいくという方向性もあると思われます。
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