マスミンのピアノの小部屋

ピアニスト兼ピアノ指導者松尾益民が、ピアノや教育、世の中の出来事など日々感じることを、徒然なるままに綴ります。

ラヴェル:クープランの墓

2015-12-18 23:55:50 | ラ・プロムナード・ミュジカル
23日のプロムナード・コンサートで最後に弾く曲は、ラヴェルのクープランの墓。
6曲ありますが、そのうち4曲だけ弾きます。
ラヴェルの曲は全般的に難しい曲が多いですが、この曲も非常に難しい。
なので、苦労しています。
技術的な難しさはもちろんのこと、解釈的にもなかなかつかめなくて試行錯誤の連続、昨日あたりからやっとわかって来た…そんな感じです。
でも、とてもいい曲ばかり。

曲のタイトルは、「クープランの墓」ですが、これは日本語に訳した時、単純に「tombeau」という言葉を「墓」としたためですが、お墓を表しているのではありません。
フランス語は一つの単語にいろんな意味があって、「偉大な死者にささげた芸術作品」という意味もあり、「クープランを讃える曲」というような意味が正解だと思います。
クープランは18世紀フランスの作曲家で、愛国心の強かったラヴェルは、クープランのみならず、18世紀フランスの音楽全般に対する音楽としての捧げ物、オマージュを書こうと思い、1914年にこの曲の構想を練り始めました。
時は第一次世界大戦、ラヴェル自身も兵役で戦争に行きましたので、1917年に除隊になってから、作曲を再開して完成させました。
戦争で多くの友人が亡くなったので、それぞれの曲は、それらの友人に捧げられ、追悼の曲となっています。
友人の追悼であると共に、18世紀に対するオマージュ…いろんな側面を持っています。
ただ、追悼と言っても、悲しみが盛り込まれているのではなく、お墓に備える花…とでもいうような曲…かもしれません。
18世紀の音楽に対するオマージュですから、曲は18世紀に流行った形式を使っています。
ラヴェル最後のピアノ曲です。

第1曲 プレリュード(前奏曲)
ジャック・シャルロ中尉に捧げられています。
古典的な組曲では、冒頭にプレリュードが置かれることが多いので、それに倣ったものです。
16分音符の無窮動的な動きが全体を支配しています。
第4曲 リゴドン
ピエールとパスカルのゴーダン兄弟へ。
リゴドンは、プロヴァンス地方の発祥の2拍子の宮廷舞曲のこと。
明るくテンポの速い主部に対して、中間部の憂いを含んだ旋律は印象的です。
第5曲 メヌエット
ジャン・ドレフュスへ。
メヌエットは、3拍子のゆったりとした宮廷舞曲。
優雅で気品のある優しい曲です。
第6曲 トッカータ
この曲の初演者であるマルグリット・ロンの夫、ジョゼフ・ドゥ・マルリアーヴ大尉へ。
トッカータとは、鍵盤楽器による、速くて細かな音の動きによる即興的でとても技巧的な曲のこと。
同音連打が多く、手が重なるところもあって技術的にも困難ですが、多彩な表現が盛り込まれていて、最後に向かって壮大な盛り上がりを見せて一気に終わるため、非常に演奏効果の高い曲です。

曲の魅力を余す所なく発揮した演奏をしたい所ですが、なかなか難しいですね。
ホントは、第2曲フーガや第3曲フォルラーヌも弾きたかったのですが、余裕がなかったですね。
またいつか完成させたいものです。

さて、CDは下記の3つ、それぞれに魅力があります。
モニク・アース ラヴェル:ピアノ作品全集
パスカル・ロジェ ラヴェル:ピアノ曲全集
菊地裕介 ラヴェル:ピアノ・ソロ作品全集





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