純米燗オヤジの戯言 佐用の酒屋 地酒のDON

「完全発酵の純米酒を燗で呑む文化を普及させたい」そんな純米燗伝道師を自負する酒屋のオヤジ奮闘記。

究極の夏酒特集・・・夏こそ燗酒だ!

2016年07月16日 | 純米酒
 夏と言えば・・・


1.冷房でからだが冷える

これから暑くなると、クーラーの効きすぎた部屋で、手足が冷え切り、その上に冷たい飲み物やアイスクリーム、ビール、チューハイなどを摂りすぎて、意識せずとも胃腸をも冷やして弱らせてしまう



2.冷房の効いた部屋で「燗酒」で、ほっこり!

冷酒の場合、呑み口は良いのだが、胃腸のアルコールの吸収が始まるのは人肌に温まってからになるので、時間をおいて、一気に胃腸がアルコールを吸収し、酔いも一気に回ってしまう。

燗酒は、その点では、最初から温かいので、アルコールの吸収も穏やかで、酔い心地も良く、体に優しいとも言える。量を飲み過ぎると、もちろん駄目やけどね。(笑) また純米酒の旨味・甘味を舌が一番感じる温度帯が40~50度なので、その温度帯で純米酒のポテンシャルが最高点に達すると言う意味でも、燗酒は純米酒にとってベストなのだ。



3.冷酒の功罪

純米酒は、「冷酒」・「常温(冷や)」・「燗酒」と様々な温度帯で、味わいが変化していくのが特性であり、これを愉しむのも醍醐味のひとつだから「燗酒」のみを推奨するわけではないのだが・・・

でも、やはりキンキンに冷やして呑むと、純米酒の「香り」も「旨味」も感じにくく、どんなお酒でも、それなりに呑めてしまう万能性を有してしまうのが始末にをえないところで・・

例えば・・フルーティな香りが立つ(強烈な香水を纏ったような)「吟醸酒」でも、冷やすと賓の良い穏やかな香りとして呑めるし・・醸造用アルコール・糖類・酸味料を添加して途中で発酵を人為的に止めた「ベタベタと甘さが際立つ日本酒」でも、冷やすとアッサリとした味わい(言いかえれば、薄っぺらい味わい)として、それなりに呑めてしまう・・

これは鼻と舌を麻痺させて呑んでいるのと一緒と言えるのかも・・良かれ悪しかれ、没個性のお酒になり下がってしまう。このことが、「冷酒」として呑む「功罪」を端的に顕しているといえるかも・・ただ、このような事象があることも踏まえて冷酒を愉しもうと言う提案です(笑)



4.夏でも、からだに優しい「燗酒」がお薦め!!

私などは、夏でも純米酒を「燗酒」で愉しむ。
その理由は・・・
①体に優しく、
②純米酒の本来の旨味・甘
味のポテンシャルを味わえ、
③穏やかな酔いを愉しめ、
④料理と相性が良くなり、
⑤温度を上げて、いじめることで、本来の味が開いてくるからだ。
⑥ビールやチューハイは胃腸を冷やして、お腹を壊すし、炭酸がお腹にたまり、沢山呑めない。こんな個人的体質の理由もあります(笑)





究極の夏酒を紹介します。



「玉櫻 殿(しんがり) 五百万石純米H27BY」
これは、櫻尾尚平杜氏が自分で呑む為に囲っていたお酒なんだわ。夏でも燗で呑みたい杜氏は、すっきりとして、スルスル呑めるように自分用に割り水したアルコール度が低め(13度)のお酒を瓶に詰めていたのだ。(あくまで自分用で商品にする気持ちはなかったらしい。)たまたま私が蔵を訪問した時に、このお酒をおすそ分けしてもらい呑んでみたが・・・これが、スッキリ美味いやんかぁ!・・・というのが一昨年のお話で、今年も商品化されたのであった。(笑)
上品なバナナ様の含み香と、穏やかで優しい旨味、「きもとづくり」のような乳酸系の涼風の如き酸で、キレキレでスルスル呑める。
また燗につけると、より酸が立ち、旨味も増幅し、すべらかに呑ませてくれて「滋味深さ」抜群。こんな爽快な純米酒みたことない・・・って言いすぎか?(笑)



「十旭日 純米吟醸 夏仕立てH27BY」
十旭日にしては、珍しい夏用爽快スッキリ仕立ての純米吟醸酒。
アタックで、口当たりの優しい旨味が主張し、口中に膨らんでいく。また含み香に熟した果実のようなニュアンスがある。そして柑橘系の爽快な酸もキレて、まさに爽快さを体現する。どとらかというと溶けにくい部類の「佐香錦」という酒米の特性を最大限に活かしてスッキリと仕上げている。
燗につけても、酸がたち、軽快で呑み飽きしない。夏の定番の燗酒としてお薦めだ。




「奥播磨 純米吟醸 深山霽月(みやませいげつ)」
これ、奥播磨のラインナップの中では、一番スッキリとキレるタイプで、ある意味、奥播磨らしくないかもしれない。でも先日の下村酒造店での「奥播磨利き酒会」において、私の採点ではダントツの一位でした。(笑)
ほんのりと洋ナシのような上品な含み香が鼻をくすぐりながら、旨味も柔らかく広がり、その後、柑橘系の酸が爽やかにキレる。もちろん冷酒でも美味いですが、やっぱり燗酒が絶品。
魚料理を中心とした和食を中心に、粕漬、糠漬けなどの発酵食品とも良く合います。これからの熟成のしかたも大いに愉しみです。ワクワクさせられる魅力をもっています。


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