◎情報だけは提供される
(2012-02-01)
世界観の変貌には2段階あって、まずは肉体だけが世界ではないという変貌と、世界は自分だったという変貌である。
ドラッグも、統合失調症における変化した世界観も、霊能力の開顕も、お題目や念仏を死ぬほど唱え続けたマントラ・シッディも、突然肉親を奪われるというような不条理に直面するという事件も、まずは肉体だけがこの世界ではないという世界の裂け目を見せてくれる。
その裂け目に出会うのは、まずは一瞥は一瞥であって、自分・自我は温存されている。通例そのステップを踏まないと次のステップには進まない。
20世紀初頭に心霊主義の時代というのがあって、世界中でブラバツキー夫人やら、ルドルフ・シュタイナーやら、出口王仁三郎が盛んに霊だ霊界だとやった。残念ながら心霊はいまだにワイドショーネタでしかないが、その先に行くには、時代全体としては欠かせないステップなのだったろうと思う。
心霊ネタというのは、霊がかりではあるが、人間は死後どこへ行くか、死後どこかへ行く自分とは何なのか、この世に生まれる前の自分は何なのか、自分はこの世に何のために生まれてきたのか、という課題へのとっかかりにはなる。
しかし心霊主義のような第一ステップへのきっかけですらまだ準備のできていない人たちがいる。
『酸素をふがふが吸う魚のことは、過去に何度か冗談のネタにしたことがある。奇妙なこいつのおかげで進化が促された。だが本当のことを言うと、酸素を吸うところまで至っていない魚もたくさんいる。
自分のことかどうか、大半の魚は分かっている。
たとえばLSDを初めて摂取した者はパニックを起こしやすいという。まだ準備のできていない魚を、私が早まって岸へ誘い出してしまったとしたら、それは悪いことをしたと言わざるをえない。招待状を出す相手は、もう少し注意して選別するべきだったのだろう。
現状では残念ながら精神変容をもたらすすべてのドラッグの価値と危険について、正確でアップデートされた情報とアドバイスを提供することは、とても難しい。』
(死をデザインする/ティモシー・リアリー/河出書房新社p126から引用)
これからの時代は、最終的にはその両ステップの準備のできた者だけを相手にしていくことになるのだろうが、情報提供だけは万人にもれなく行われるのだろう。