◎現代の洗脳の全容
我々は自分では、正気だと思って生きている。そうした中で洗脳とはこんな風に見えてくる。
洗脳をインプットしてくるものは以下である。
1.食物
食欲をそそる3要素とは塩、糖、脂だと広汎に知られるようになって久しい。この3種を入れるとバカ売れするからだ。
安くてうまいとは、塩、糖、脂が入って安いと、ほとんど同じ意味。口福の天国は身近にあった。
その代表格は、夏ならアイスクリームであり、通年であれば、スイーツ。
またステーキ、魚食にデザートは、食欲を充足させるという点では満点である。
感覚刺激に際限はない。その点で人間の真の幸福の方向性を大いに誤解させ得るものである。
2.飲料
精神を変容させる飲料の代表はアルコール。
コカ・コーラの初期には、本当にコカが入っていたらしい。
これらは現実と向き合わないで、特定の自分の精神を拡大あるいは狭窄して見せるもので、人間の真の幸福とは関係のないものではある。
日本では、アヘン、大麻など向精神性薬物の規制が厳しいが、欧米ではレイブなど野外でのドラッグパーティがあるなど緩い。オランダみたいに妙に緩い国もあれば、アメリカのようにほぼ建国以来ドラッグが文化の一部だった国もある。
3.嗜好品
日本では、タバコ、コーヒー、茶が代表格。いずれも意識をちょっと覚ますのに好適である。
連続的に意識を覚まし続けないと現代社会では勝者となりえないから、いわば合法ドラッグとしてタバコ、コーヒー、茶がたしなまれる。
これで効かなくなるとカフェイン剤とか、レッド〇〇とかリポ〇〇とかまで行ってしまう。
この社会に適応するために必要な悲しい嗜好品だが、これなしでは大半の人がやっていけない。
4.音楽
1960年代のビートルズの頃から彼らは薬でラリッて作曲しているんだと言われていたが、後年そうであったことが露見し、日本の音楽シーンもそういう状況証拠が仄聞されるようになっている。
また最近は、電車内でモバゲーをやっていない人は耳にイアホン・ヘッドホンがつけられている。
BGMという言葉があるが、音楽にはなにがしか「いやな気分を深刻化させない」という効果はある。そうしたものが何もなければ、通例倦怠や退屈という形で余剰心的エネルギーが顕在化するのだが、音楽はそれを緩和する。
そのように、スマホ・携帯での音楽は十分に洗脳効果を果たしている。
5.映像
代表格はテレビであったが、映画の洗脳機能は、見終わったあと数分間は映画世界に入ったままだから言うまでもない。
最近はyoutube動画も加わり、視聴覚で人を別世界にいざなう。
6.イデオロギー・ドグマ
ソ連・中国など赤い国家では、その共産思想を国民全体に対して洗脳することが国是であったので、非常に政治イデオロギー洗脳の方法が発達した。それを研究したリフトンの著作は、第二次世界大戦終了後まもない時期のことであったが、その後彼がオウムについても研究を発表しており、世界の終末の強要と暴力的な救済がその動機であったことは、赤い洗脳と似た路線であるように思う。
宗教も政治も「世界の終末の強要と暴力的な救済」を応用すれば、小はカルトとなり大は地上の地獄が現出する。
7.マスコミ
「現代文明は、マスコミをとってしまえば何もない」というのは、人々の意識の中身の9割以上が、教育、宣伝、マスコミからのニュースで流されたものの蓄積でできあがっているという意味。
これを広義のマスコミによる洗脳でないとしたら、何と名づけるべきだろうか。
逆に個々人の本当のオリジナリティなど何処にあるというのだろうか。
8.スマホ/携帯
意識の隙間埋めマシーン。
熟達した瞑想家の目には、一見連続しているかのように見える意識の流れに隙間が見える。
その隙間は、死の世界。
スマホ/携帯はパケット通信で、パケットとパケットの間には必ず隙間がある。意識と意識の隙間もそれと同じ。禅ではどういうきっかけで悟りが起こったかを非常に熱心に記録している(禅関策進など)。それは隙間のひょっとした瞬間に起こっている。
スマホ/携帯は、その瞬間への気づきを失わせ、人間進化の可能性をノーチャンスにしている。
このように自分は何も悪いことはしていないと自覚している大多数のおじさん、おばさん、青年、少年少女、老人が、あらゆる手段、それも日常的な手段でもって、覚醒している一日18時間程度はのべつまくなしに、外的刺激でもって受動的に精神を揺るがされる脅威に晒されている。
オレたちはいつから本来の自主性、能動性、自発性を失ったのだろうか。それを何者かに奪われたのだと気づく間もないうちに。
古代ローマの大衆はパンと見せ物を要求したとことを、我々は嗤うが、確たる人生の目的についての自覚がなければ、このような目まぐるしく変わる目先の欲求を充足することばかり繰り返す「動物」に成り下がり、それではもはや人間である意味を喪失する。