◎第五元素の説明
(2006-12-30)
錬金術書の挿絵や説明が、ユング派の心理学者が主張するような人格の成長やら自我の形成・確立という心理現象に留まるものではないように、ニュートンの物理学的世界観には、物質、時間、空間を一歩超えている形跡を見ることができる。
第五元素とは、地水火風の四元素の次のものであるが、ニュートンの手稿によれば、そのような捕らえ方となっている。
『とくに興味深いのは、ニュートンの一覧のなかに第五元素が含まれていることである。イシス、ユノ、ケレスと、さまざまな民族によってさまざまに呼ばれたこの元素を、ニュートン自身は「クィンテセンティア〔第五元素〕もしくはエレメントールム・カオス〔諸元素のカオス〕、すなわちムンドゥス〔世界〕」と呼ぶのだと言い、それは錬金術ではアンチモンあるいは「マグネシア・ゲブリ〔ゲーベルのマグネシア〕」と表わされるのだと注記している。「マグネシアとは、火でも空気でも水でも土でもなく、それらのすべてである」と彼は述べている。
それは火のようでも、空気のようでも、水のようでも、土のようでもある。熱であり、乾であり、湿であり、冷である。水のような火であり、火のような水である。物質的霊であり、霊的物体である。それは濃縮された世界霊である。
要するに、天界の第五元素が天を地に上から結びつけているがごとく、下から地を天に結びつけているのが錬金術師の第五元素なのである。 』
(錬金術師ニュートン/Bドッブズ P195-196から引用)
このように第五元素とは、四元素とは全く同列ではなく、もはや物質とは呼べない物質のことである。ここで形容されている第五元素(マグネシア、アンチモン)の属性は、冥想体験の深化の中で、自分というものを持ちながら、神を見た時に得られるビジョンと同様であるので、ニュートンは錬金術研究のプロセスの中で、それを見たか、直観したかのいずれかなのだろうと思う。
錬金術研究という一つの行に打ち込む”一行三昧”により、このような窮極についての洞察か、もはや体験とはよべない体験が起こったとしても、それは不思議なことではないと思う。