◎吉祥の記号
(2013-06-30)
『卍とハーケンクロイツ/中垣顕實/現代書館』は、ハーケンクロイツのタブーにチャレンジした一冊。と言っても、書いてある通り,卍にもともと邪悪の意味はないが、著者が浄土真宗の人なので、卍そのものについての呪術的な意味についての突っ込みはそれほどなかったように思う。古代ユダヤ教で、卍を使っていたのは、さもありなむ。シュリーマンはトロイ遺跡で卍付の遺物を掘り出しただけでそれ以上のことはなかったようだ。
ミスティカル・パワーそのものは、もともと白でも黒でもないが、ホロコーストがらみで使われたために、スワスティカ(卍)は、現代の魔女狩りに遭ったわけだ。
本来の公平な見方として、密教事典(法蔵館)の説明を挙げる。
右旋が逆卍でsvastika、左旋がsanvastica。
『吉祥の記号で唐代で集合の意味に用いてから,我国
でも用いる。太陽の象徴として右旋は昼間で光明を,左旋は夜間で破壊の意といい,
インドでは右旋を男性神ガネーシャ,左旋を女性神カーリー女神に用いる。またヴィシュヌやクリシュナの胸の旋毛とし、仏教では仏陀の胸や手足・頭髪に現れる吉祥相(三十二相の12・32)で,仏心の象徴とされた。例えばアマラヴァティー出土の仏足の文様など。
それを如来の智火や煩悩断除のam字に代用して、胎蔵曼荼羅の一切如来遍知印に用いる。その他,仏教一般の紋章とし、右旋を正しいとするが、中国以来混在し、卍字火舎には左旋を用いる。
もとはダニューブ河岸で発生し、ギリシア・ローマ時代に用いられ、インドの叙事詩ラーマーヤナにも見え、左旋(逆万字)はナチスの十字記号にも用いた。』
(密教事典/法蔵館P650から引用)
※卍字火舎は、蓋に卍型の煙出しのある香炉。
右旋の逆卍(ハーケンクロイツ)は、昼間で、光明で男性神ということなので、上昇、左旋の卍は夜間で破壊で女性神というところなので、下降というのが、本来の意味というところではないだろうか。
北欧では、トールのハンマーという意義もあるらしいが、ルーン・ガルドゥルに、北欧古武術のグリーマで勝利を目的として用いられたシンボル、グリーマ・ガルドゥルという逆卍の変形みたいなのがある。(ルーン文字の世界/国際語学社P175)
この世のものは、ものによって上昇させるべきものも下降させるべきものもあり、本来細かく異った対応があるべき。そこを一律に上昇を狙ったのでは混乱するばかりではなかったか。