◎愛に生きる
(2007-02-11)
珍しく映画を通しで見たので感想など。イングリッシュ・ペイシェントは97年のアカデミー賞作品賞他9部門獲得だそうです。こんないい映画があるのかと驚きました。
あら筋:
第二次世界大戦下のチュニジアの砂漠を舞台とした、ハンガリー人青年と探検家の妻の不倫物語。探検家は、最後に妻の不倫への怒りで自暴自棄になって、砂漠で、妻と同乗した複葉機での着陸に失敗して死ぬ。その不倫相手である青年は、墜落で重傷の探検家の妻を、泳者の洞窟に運び込み、救援を呼びに行くと称して洞窟から出かけてしまう。
結局そのために、彼女は洞窟の中で孤独な死を迎えた。
死後何日も経って、ようやく青年は飛行機で彼女を迎えに行くが、彼女の亡骸を積んだ飛行機は、砂漠の上空で撃墜される。青年は全身火傷で、イタリアで療養を続けるが、まもなく亡くなってしまう。
感想:
彼女が亡くなる寸前に、共に墜落した夫の安否のことを、不倫相手の青年にしきりに問うていた。結婚わずか一年で不倫して、不倫相手の青年も愛していたとしても、夫のことは格別な存在として、意識の中を占めているもので、まして結婚生活の破綻が一般的には大きなトラウマになってしまう消息がここにある。
瀕死の重傷を負った彼女を洞窟に置き去りにして孤独な死を迎えさせたことが、青年の大きな悔恨になった。あそこは砂漠の中で水も食糧も医療設備もない。であれば、何もなくとも彼女と一緒にいて、その死を看取ってあげるのが、愛人としての務めではなかったか。看取ることが原因で自分も飢え死にしても、そこは身を捨てて看取るのが、一度でも狂おしい愛の時間を共に過ごした者のあり方ではなかったか。
これから迎えるであろう彼女の死の重さに堪えきれなかったのか、青年はその場を立ち去った。こういうのはカルマになる。愛を全うするためには、平素から自分を捨てる覚悟がないと、いざという時に、捨てられるものではない。
その悔恨が、生きる気力をも失わせ、最後に青年は安楽死を選ぶ。青年の次の人生では、同じ失敗を繰り返さないことができるのだろうか。
一見気楽に始まった恋愛でも、最後には相手の全人生を負う結末が待っているもの。映画ならやり直せるが、実人生は一回限り。