先日の旅行中にちょっとした事件があった。
主人公は私、いえ、私の靴。
履いて行ったのは、旅行用に決めている前で紐を結びタイプの黒の革靴。
踵が5センチ以上あるのに、底が全体的に厚いので、とても履きやすい。
買ったのは10年以上前だけれど、旅行にしか履いていないので、
さほど傷んでいない。
今回も迷うことなく、その靴を履いて行った。
ところが、飛行機の中で何気なく足元を見ると、左側の靴の先が少しばかり剥がれている
それに、靴底の真ん中辺りにいつの間にかひびが入っている
あれれ、おかしいな、穿いたときは全然何ともなかったのに・・・
気が付かなかっただけかしら?
まあいいわ、すぐにどうこういうことはないだろう、と思ったのが甘かった。
翌日、息子の車で新穂高で向かっているときのこと、足を組み替えた途端、
ごとっと何かが落ちる音が~
見ると足元に何か黒い塊が落ちているじゃない。
思わず足を見ると、左の靴底の後ろ半分がない!
ひびのところがぱっくり割れて落っこちたのだ
後ろに座っていた、私、娘、Tちゃん、
ええ~~!と絶叫と大笑い
驚きあきれるとはこのことかしら。
まさに靴が崩壊したのだ!
こんなに急激に崩壊するとは有り得ないでしょう~
信じられない!
信じられなくても事実は事実、困ったわ。
大笑いがおさまったら、
「なんでそんな古い靴を履いてきたんだ!」と
非難の嵐がごうごうと私に吹き付ける。
そりゃそうよね、私だって自分じゃなかったら非難すると思うもの。
でもね、家を出たときは何でもなかったのよ~
途中に靴を売っていそうなお店を見つけたら買おうと、
みんなで窓の外を注意しながら行ったけれど、
そう都合よくはいかない。
結局そんなお店は見つけられないまま新穂高についてしまった。
娘が持っていた髪止め用のゴムで落っこちた部分を止める。
2,3歩歩くとずれてきてはずれそうになるので、右足で
とんとんと押し戻しながら、誰にも気づかれないことを願いながらロープウエーに乗る。
せっかくの新穂高、お天気も上々、それなのに落ち着かない。
できるだけ動き回らないようにしながら、何とか新穂高観光は終えた。
そうなったら、とにかく靴屋へまっしぐらというところだけれど、
どこへ行けばいいのか
すると、娘が、前回お友達と来たとき、靴屋さんを見たような気がすると言う。
それっとばかりに娘の記憶を頼りにその靴屋さんへ。
さすが若さか、娘の記憶通りに行ってみたら、靴屋さんはあった。
私だけそこで降りて、みんなはホテルへチェックインに向かう。
その靴屋さんは、小さいけれどなかなかお洒落なお店だ。
でも、残念なことにバーゲンはやっていなかった
定価で買うのは不本意だけれど、非常事態だ、やむを得ない。
棚に並んでいる靴を見まわして、中でも安価な一足をさりげなく選んだ。
黒だし、全体的に厚底で履きやすそうだ。
事情を話して、残骸と化した靴は捨ててもらうようお願いする。
いやもう、きまりが悪いったらない。
靴屋さんのご主人は、さすがプロ、驚く様子もなく、
「それは大変でしたね。うちが見つかって良かったですね~」と言ってくださった。
靴屋は、高山にその1軒しかないのだそうだ。
やれやれ、娘が靴屋さんの場所を憶えていてくれてほんとうに良かったわ。
新しい靴を履いて店を出ると、やっと観光気分になった。
チェックインを済ませて、車を置いて来た夫たちと合流して高山の町をそぞろ歩きながら
旅行に古い靴は履ちゃいけないと、つくづく肝に銘じたのだった